学園に忍び寄るモノアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 氷邑
芸能 3Lv以上
獣人 3Lv以上
難度 やや難
報酬 8.2万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 04/10〜04/14

●本文

 頑張り屋の新人アイドル、星河ひかりが映画デビューすることになった。
 少女雑誌で連載中の学園恋愛コメディ『すくぅる☆らばー』のヒロイン、有働さゆり役をプロ、アマ問わず2000人が参加した激しいオーディションを持ち前の明るさと根性で勝ち抜き、実力で獲得したのだ。
 実はひかり、ハムスターの獣人である。
 持ち前の明るさと、人を惹きつける魅力は天性のものだが、本人は自覚ゼロ。

 学園恋愛ものなので、撮影は高校生獣人が通っている学園を舞台に行われることになったのだが‥‥良くない噂があった。
 数ヶ月前から、どういうワケかハムスター獣人が性別、年齢関係なくナイトウォーカーに襲われている。幸いなことに死亡者はいないが、中には瀕死状態の生徒もいる。唯一の関連性は、芸能関係者であることだけだ。

 監督はそれを知っていてか、ひかり以外の主要登場人物、撮影スタッフすべてを獣人の中から選出した。スタッフには、見学者の目くらましも頼んである。

 撮影開始の数日前。ひかりと撮影スタッフ達が監督に呼び出された。
「キミ達を選抜した理由だが‥‥撮影現場となる高校でハムスター獣人がナイトウォーカーに襲われる、という事件が発生している。残念ながら、出現時間が不特定だ。そこで、確実にしとめるにはハムスター獣人である星河ひかりを囮にして、おびき出そうと思う。ひかり、キミには危険なことをさせてしまうようで申し訳ない‥‥」
 監督が、ひかりに頭を下げると
「私なら大丈夫です。撮影スタッフの皆さんが守ってくれると信じていますから!」
 ひかりの一言に、監督とスタッフ達は勇気付けられた。
「ナイトウォーカーの形状、大きさなどの詳細は一切不明だが、ここに来るのは確実だ。危険な賭けになるが、スタッフ諸君にはヤツを倒して欲しい。これ以上、被害者を増やさないよう!」

 監督の力強い声に、撮影スタッフ達はひかりを守り抜くと誓った。

●今回の参加者

 fa0295 MAKOTO(17歳・♀・虎)
 fa0847 富士川・千春(18歳・♀・蝙蝠)
 fa1889 青雷(17歳・♂・竜)
 fa2321 ブリッツ・アスカ(21歳・♀・虎)
 fa2478 相沢 セナ(21歳・♂・鴉)
 fa3392 各務 神無(18歳・♀・狼)
 fa4716 エキドナ(24歳・♀・蛇)
 fa5387 神保原・輝璃(25歳・♂・狼)

●リプレイ本文

 事件が起こる数ヶ月前。
 星河ひかりのサイン入り写真集を抱えた男が、嬉しそうに歩いていた。
 彼は、ひかりが行くところならどこでも付いて行き、スリーサイズ等あらゆるデータを知り尽くしているマニアだ。そんな彼の携帯待ち受け画像は、手製のコラージュ画像。目だけがひかりのハムスターという奇妙なものだ。
「ひかりちゃんがハムスターなら、こんなカンジかなぁ」
 男は待ち受け画面を見ながらニヤニヤしていた時、大嫌いなモノが飛びついた。驚いた男は、携帯を落としてしまった。そのモノは携帯に近寄り、匂いを嗅いでいたがやがて走り去った。
「うわ、ひかりちゃんの携帯舐めてた。あー、ついてない‥‥」
 

 獣人とはいえ、自分達と同じ立場のハムスター獣人の芸能関係者がナイトウォーカーの被害に遭っているのは見過ごせないと、7人の獣人が監督の元に集った。
 身内にハムスター獣人がいるブリッツ・アスカ(fa2321)は、この一件を放っておくことができないと護衛を申し出た。
「誘き出しとはいえ、ハムスター獣人のひかりちゃんを囮にするってのは心が痛むな」
 国民的格闘家なので、髪型を三つ編みツインにし、伊達眼鏡をかけて変装して照明の手伝いとして参戦のMAKOTO(fa0295)。
「俺は、カメレオンのように背景に同化、もしくは透明化する、擬態して気配を消せる、遠距離攻撃を行えるナイトウォーカーの仕業だと思う。いずれの場合も、先駆けて発見は困難だろうな」
「何人も襲われているのに、不明な点が多いのは不思議ね。このナイトウォーカーは遠距離攻撃タイプだけど殺傷力が低い、ブリッツさんが言うように姿を消せるタイプの可能性が高いわ。姿が見えない相手なら、私と鋭敏感覚系能力を持つ人が探索するわ」
 音響として参戦の富士川・千春(fa0847)も、ブリッツ同様、ナイトウォーカーのことを考えていた。探索は超音感視、鋭敏聴覚を駆使するつもりだ。
「ハムスター獣人に固執するナイトウォーカーか。色々と推測するけど、信用に足る情報が無ければ臆測に過ぎない。尤も、そんな事に関係無く、すべき事は変わらないけど。早急に滅ぼせば、それは護る事にも繋がる。昼間、襲われたけど軽傷ですんだ芸能関係者から話を聞いてみた」
 校内という事もあり、煙草を我慢している各務 神無(fa3392)の情報によると、突然、何かに襲われたというのだ。不意打ちだったので姿は見ていないという。他の被害者の証言も似たり寄ったりだった。傷について言えば、被害者達は大型の獣によると思われる噛み傷、引掻き傷を受けていた。
「その程度でも、情報を得られただけ良しとするか。過去に起きた事件と、今回起きるであろう事件を照合するのは難しいが、何で芸能関係の奴ばかり選り好みして狙う必要があるのか、どんな手口で襲うのかが謎だ。俺も頑張らないとな」
 便利屋の信頼ガタ落ちという事態は避けたいから早く何とかしないとしゃあない、と言うのは、担任役の神保原・輝璃(fa5387)。
「芸能関係者ばかりってのはいつもの事だろ?」
 青雷(fa1889)は、原作漫画に登場する眼鏡の学級委員長、眼鏡忍役に扮していた。撮影中、側で護衛出来るようにキャストとしての参戦だ。本人はノリノリだが、監督からは一時的代役と釘を刺されている。
 瓶底眼鏡をかけ、髪を纏めた後にキャップを前後逆に被り、スタッフジャンパーを着てADに扮した相沢 セナ(fa2478)は、撮影スタッフ用のID入りランヤード等があるのか監督に聞いたところ、既に用意してあると回答された。
「これが校舎見取り図だ。皆、いつ、どこでナイトウォーカーが出現しても対応できるよう頭に叩き込み、どう行動するか考えてくれ」
 照明手伝いのMAKOTO、ひかりの護衛担当のブリッツ、音響担当の富士川、ADの相沢は監督と共に行動するので単独行動はできず、出演者の青雷、神保原もあまり動けない状態なので、十分に学園探索できるのは各務のみだ。
 ミーティングが終了したので、早速撮影準備に取り掛かった。


 本日の撮影シーンは、放課後はとっくに過ぎ、真夜中になったにも関わらず教室で創立記念祭の出し物をさゆりと忍、付き添いの担任が話し合っているところだ。
「忍くん、あたしは教室で喫茶店を考えているんだけどどうかな?」
「俺もそれに賛成。先生もそれでいいよな」
 あ、ああ‥‥とぎこちなく言う担任。
 
「しっかし、夜の学校ってのは辛気臭いね」
 撮影に携わった事が殆ど無い各務が参戦した動機は、ナイトウォーカーが出現する高校があると言う噂の真偽を確かめるため。撮影スタッフとしての参加は、校内に潜入するための肩書きでしかない。
 噂をこの目で確かめたいと、各務は学園の周囲を調査していた時、何かが素早く各務の後ろを過ぎった‥‥ような気がした。血の臭いがした。
「あいつ‥‥怪しい」
 誰もいないことを確認した各務は、半獣化し終えるなり俊敏脚足を使い
(「あれがナイトウォーカーなら、ひかり達が危ない! 急がないと! 無事でいてくれ」)
 と祈りながら、各務は仲間達の元へ向かう。

「カーット!」
 監督の一声で、このシーンの撮影は終わった。
「あっさりと終わったんで、俺、拍子抜けしたよ」
 がっかりする青雷に、良い演技だったと褒める監督。
 ナイトウォーカーをいつでも探知できるよう、半獣化して音響の仕事をこなしていた富士川が、超音感視で何かがここに接近することを察知した。
「監督、奴がここに近づいています!」
「わかった。皆、準備してくれ!」
 はい! と返事をすると、各自半獣化、完全獣化した。それを見届けた相沢が、教室の電気を消し、スタッフも照明機材をしまう。教室を照らす証明は、満月の淡い光のみだった。
「敵はハムスターばっかり狙ってるんだから半獣化で十分だ。やるからには、ひかりに指一本触れさせないし、傷つけさせん」
 ライトバスターを構えて盾になる神保原。相沢から借りた金糸のローブで全身を覆い、半獣化したひかりの前に立つ。
「一人で良いカッコはずるいっすよ」
 鱗を使い装甲を固めた青雷も、ひかりの盾となるべくカバーに入る。
「俺も、ひかりさんを傷つけさせない!」
 半獣化したブリッツは金剛力増で筋肉を盛り上げ、いつでも盾になれるようにしている。
 相沢は、暗視ゴーグルを着用し、上方からひかりを監視した時、ドォン! という破壊音がすると同時に、唸り声が聞こえた。
「ハムスターを襲い続けたナイトウォーカーのお出ましのようで‥‥」
 相沢の言葉に、皆は音がしたほうを向く。
 ハムスター獣人達を無造作に襲っていたのは‥‥大型の黒豹を思わせるナイトウォーカーだった。
「日本でクロヒョウって‥‥」
「まあNWですから。元は可愛い子猫ちゃんだったかもしれませんよ?」
 黒豹NWは背中の毛を逆立て、威嚇しながらひかりに狙いを定めている。
「ひかり、大丈夫!?」
 俊敏脚足で教室に駆けつけた各務に「私は無事です」と答えるひかり。
「無事とわかれば、遠慮なくやっつけてもいいね」
 各務が加わったことで、ひかり護衛担当以外の参戦者は一気に攻撃を仕掛けた。
 
 MAKOTOは間合いを詰めると強化した爪でナイトウォーカーの身体を一気に貫いた。
「‥‥えっ?」
 と思った刹那、残像を残して黒豹の姿が目の前から消える。
「後ろですっ!」
 富士川の声に反射的に体が動いた。背後に回った黒豹の爪が空を切る。
「なんてスピードだ」
 黒豹はMAKOTOの反撃より速く間合いを取った。このスピードと音もなく走る隠密性が姿を見せなかった理由か。

「青雷、ひかりのナイトはお前に譲る。いくぜっ!」
 神保原は青雷に護衛を任せ、ナイトウォーカー戦に加わった。敵の速度を潰すには手数を増やすより無い。
「加速全開! 行くぜっ!」
 俊敏脚足で近づくと、ナイトウォーカーの腹部にライトバスター連打攻撃。黒豹は神保原から逃げる。その先にはブリッツがいた。
「ナイトウォーカーなあんたに言うだけ無駄だろうけど、弱い奴ばかり狙うその腐った根性は気にいらないな!」
 爪と細振切爪を発動させたブリッツは足、首を狙ってラッシュ攻撃を仕掛けた。黒豹はこれも逃げる。
「逃しませんよ!」
 富士川はNWの逃げ道を塞ぐように虚闇撃弾を飛ばした。たたらを踏む黒豹の足を止めようと相沢も両手に気を込めて全力の虚闇撃弾を放つ。
 たまらず悲鳴をあげたNWは校舎に逃げる。
「大したスピードだが、所詮は畜生か‥‥」
 白夜を手にした各務は壁を走り、待ち構えていた。NWは誘い込まれた事に気付いたろうか。各務は窓に飛び込むNWの懐に入り、抜き打ちで切り上げた。
 その時、金属が当たったような感覚があった。黒豹は体を痙攣されて窓の端にぶつかり、地面に崩れ落ちる。
「存外に打たれ弱い。いや、それ故か‥‥」
 NWを追い詰める仲間の姿にハッとして青雷は後ろを向き、咄嗟にひかりに抱きつき守ろうとした。その行動は、ひかりに惨い光景を見せないための心遣いである。純真無垢なひかりが見たら、トラウマになるだろう。
 腹部にコアを確認した参戦者は、ダメージにより動きの鈍ったNWに一斉攻撃。
「月の光があるってのは、ありがたいね」
 各務が右手をかざし、掌に月の光を集めて円盤状にした。
「青月円斬っ!」
 青月円斬が放たれた後、神保原が思いっきりライトバスターを叩き付けた隙を狙い

『とどめだっ!!』

 MAKOTOとブリッツが同時に爪でコアを破壊すると、断末魔の叫び無く、ナイトウォーカーは消滅した。


 ナイトウォーカーを始末したのは良いが、何故、ナイトウォーカーがハムスター獣人ばかりを襲っていたかは疑問だ。
「分かった、猫故に鼠を獲ろうとしてたんじゃねえ?」
 青雷の意見に、富士川は首を傾げる。ナイトウォーカーが感染した生物の好みに左右されるという話はあまり聞かない。
「ともあれ、これでハムスター獣人が襲われることは無いな」
 身内も安心するだろうと、ブリッツは一安心。
 便利屋としての面子を保つことができた神保原は、こんな奴の相手は御免だ吐き捨てるように言う。
「皆、ありがとう。これで、安心して今後の撮影ができる」
 監督が、激しい戦闘を終えた皆を労う。
「青雷くん、ひかり演ずる有働さゆりの同級生役で良ければ、映画に出ないか?」
 その言葉に、青雷は二つ返事でOKした。