宝貝、発見なるか?弐 アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
氷邑
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芸能 |
4Lv以上
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獣人 |
3Lv以上
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難度 |
難しい
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報酬 |
18.1万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
04/09〜04/13
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●本文
前回、無事ナタクの宝貝のひとつ『風火輪(ふうかりん)』発見に成功した韓国の考古学者、キム・スイル。
『風火輪』とは、『封神演義』では空を飛ぶ事を可能にする非常に珍しい宝貝と言われている。詳細は、金色の燃える車輪を想像してほしい。
そんな彼が今回の発掘に挑む宝貝は『乾坤圏(けんこんけん)』。
ナタクが誕生時から身に纏っているという、腕輪を飛ばして攻撃する宝貝だ。
腕輪、ということは‥‥風火輪同様、チャクラム状の宝貝なのだろう。
場所は、風火輪を発見した秘境の西に位置する朽ちた神殿の奥に奉納されている。研究熱心なキムが、食事と睡眠時間を削ってまで調べ上げた結果だ。
問題は、その後に起こった。
今回、キムは自分一人で宝貝を探したいと言い出した。
キムが危険に晒されることを恐れた大学教授が、不安になり知り合いにドキュメンタリー番組と偽り、出演者、撮影スタッフすべてを獣人にし、密かに協力させたことを知るなり、そのことに激怒したのだ。
「今回は私一人で行かせてもらう! 手助けは不要っ!!」
キムは狼の獣人で、戦闘力はかなりのもの。テコンドーに関しては黒帯で有段者だ。
万が一ナイトウォーカーが出現した場合、彼一人で戦闘しなければならない。格闘に長けている彼だが、長時間ともなれば体力が消耗し、やられてしまう。
気持ちはわからなくもないが、一人では危険すぎる。
心配した考古学研究所の所長は、WEAにキムを護衛して欲しいと要請した。
WEAからの通達。
『獣人諸君、キミ達には陰ながらキム・スイル氏の護衛をしてもらう。誰か一人でもキム氏に接触した場合は、任務は失敗したものとみなすので注意するように。半獣化、完全獣化で任務を遂行するかどうかは、諸君に任せる』
●リプレイ本文
●探索前日
WEAの依頼を引き受けたメンバー達は、依頼人である考古学研究所の所長に会いに行った。
「私の依頼を引き受けてくださり、ありがとうございます。用件はWEAからお聞きしたことと思いますので、説明しなくても良いですね?」
所長の言葉に、全員が頷いた。
「キムって奴、随分気位が高いんだな。自分に無断でってのが気に食わなかったんだろうな。今回の単独行動は、意固地になってるだけか、自分なら大丈夫だという確証があってか?」
九条・運(fa0378)は、前者だと思って発言した。
「それは、キム氏自身が良く知っているじゃろう。今は神殿の情報を得るのが先じゃ」
一人で遺跡探索とは余程の自信家か、相当の実力の持ち主か、怖いもの知らずの素人のどちらかなのだろうと推測するDarkUnicorn(fa3622)ことヒメ・ヒノト。
「所長さん、出来るだけ多くの情報を集めたいので、神殿の内部情報があれば教えてください」
七瀬紫音(fa5302)は、神殿内部の情報を知りたがっている。
「キムが行こうとしている神殿の内部構造について洗い出し、といきたいが、情報を入手して行動を即決したくらいだからバカな奴じゃないはず」
そう意見するタケシ本郷(fa1790)。
「神殿の概要だが、キムのパソコンに情報が保存されていると思う。それを元にナイトウォーカーを効率よく狩っていくのが無難だろう」
タケシの言葉に、キムのデスクにあるノートパソコンに神殿のデータがあるはず、と所長は思いつくと、彼のデスクに向かい、ノートパソコンを起動させた。案の定、あらゆるデータがあったが、その中にパスワード入力制のデータがあった。
「パスワードか。「ナタク」じゃないのか?」
キムが『封神演義』の研究者で、前回同様、ナタクの宝貝を入手しようとしているのならそうに違いないと考えたタケシに
「それも考えられるのぉ」
ヒノトの考えに
「中国語で「ナタク」って打ってみれば? キムさん、中国語話せるんだろ? あ、パスワードだと英語っぽくなるか‥‥」
と付け足す九条。その意見に、それでやってみましょう言った所長は英文で「ナーザ(中国でのナタク)」と入力した途端、画面が切り替わった。
そこには、前回探索した遺跡から神殿までの距離、神殿の見取り図、『乾坤圏』が奉納されている場所のデータがあった。
「やった! これでこっちの行動がしやすくなるってもんだ」
喜ぶ九条に
「このデータでは、神殿内部の構造、宝貝が奉納されている箇所は明確になっていますが、罠がある箇所のデータは不明です」
と意見する所長。
「いや、それだけのデータがあれば十分じゃ」
ヒノトが所長を労う。
「所長さん、神殿内部の見取り図をプリントアウトできるか?」
タケシがそう言うと、所長はすぐに人数分の見取り図をプリントアウトし、メンバーに手渡した。
●探索当日
神殿の見取り図を入手した一向は、未明に現地集合した。幸いなことに、キムはまだ到着していない。
「キムのことは、バイオレットバイオレンス、覆面レスラー志望のスタントマン常盤 躑躅(fa2529)に任せてくれ!」
パンダ覆面を被って獣化している常盤は、光学迷彩を活かしてキムに近付き過ぎず、離れ過ぎず尾行することに。メンバーへの連絡は、トランシーバーで行うことにした。彼の行動が成功すれば、キムと鉢合わせする確率は低くなる。
「好。さあ、頑張りましょう。あ、神殿内には銃器持ち込みは駄目よ」
陽気に挨拶しながらも、皆に念を押す竜華(fa1294)。
「キム氏がまだ来ていないので安心したのじゃ。さて、神殿に行くとするかのう」
神殿内は暗いかもしれない、ということで、ヒノトはヘッドライトを装備している。寝袋を三つ用意しているのは、ヒノト曰く「ナイトウォーカー遺体運搬用じゃ。遺体が残っていれば怪しまれるからの」だそうで。
完全獣化するメンバーは一分以内、半径15m内にキムが来れない事を確認。ヒノトが半獣化で探索に挑むのは、獲物として襲われる確率が高いと判断したためだ。準備を終えたメンバーは、神殿内に潜入した。
「見取り図だと、神殿の最上階に『乾坤圏』が奉納されているようだ。両側に階段があるな。右と左、どっちだ?」
前衛に立ち、懐中電灯でプリントアウトした神殿内部の見取り図を悩む九条だったが、鋭敏視覚を使用し、階段に怪しい箇所がないか捜索。
「左には、僅かだけど何らかの罠が仕掛けられている。右が正しいようだ」
鋭敏視覚の判断結果は、右が二階に辿りつくと九条が判断すると同時に
『あーあー、こちら常盤。聞こえるか?』
常盤は、トランシーバーでたった今、キムが神殿内に潜入したことを報告。
「キムはん、わいらに少しずつ近づいとるっちゅうことやな」
常盤の報告を聞き終えたミゲール・イグレシアス(fa2671)は、キムがここまで来ることが近いと察知したので、急いで階段を上ろうと提案した。ここが一階最層部であるが、追いつかれる可能性もある。
二階は、最上階への階段に続く行程が単純になっている。階段同時が向かい合っているからだが、罠がある可能性もあるので油断は禁物。九条はドーマンセーマンを使用したが、反応が無いので鋭敏視覚で捜索。
「皆、安易に壁に触れるでないぞ。罠発動のスイッチがあるやもしれぬ」
ヒノトが全員に忠告する。
「隠し扉みたいなモンがあるみたいだけど、罠かもしれないから無視しとこう」
「触らぬ神に祟りなし、ちゅうから、ほっといてもええやろ」
とミゲールが言った瞬間、九条が中央部に罠があると報告。平たい床だが、中央部にやや出っ張りがあり、それを踏むと罠が発動するかもという忠告も忘れずに。
階段に向かおうとする前、常盤からの連絡が。
『こちら常盤。キムだが、現在階段付近に接近中。ヘタすると、合流しちまうかも』
それはマズイと判断したメンバーは、中央部の出っ張りに注意しながら最上階の階段目指して突き進んだ。それと同時に、何かを引き摺るような音がした。それをいち早く察知したのはヒノトだった。
「奴に尾行されるとは‥‥フラッシュメモリを持ってきて正解じゃった」
情報媒体であるメモリが役に立つ、とヒノトはフラッシュメモリを手にし、自ら囮を買って出た。
●戦闘開始
最上階の奥には古びた祭壇があり、その中央に銀色のチャクラムらしきものが奉納されている。
「ここは異常無し」
危険箇所を念入りにチェックする九条の報告に、皆ほっとしたが‥‥問題は、この後どうするかだった。
「ナイトウォーカーが現れないようだから、キムさんがコレを見つけるのを物陰に隠れて見学しない?」
「紫音、そうは言っておれんようじゃ。わしらの後をついてきた奴がおるでの」
「キムの奴が早くも追いついたってことか!?」
慌てるタケシに反応するかのように、常盤からの連絡が。
『こちら常盤。キムだが、二階の隠し扉をうっかり開けちまった! 一瞬で反転しちまったから、どこに行ったかは残念ながらわかんねぇ!」
キムではないということは、ヒノトがいう「奴」とは、ナイトウォーカーかもしれないと全員身構えた。
「敵のお出ましのようだ」
水鏡の刃を構えた陸 琢磨(fa0760)が待ちかねたぞ、という表情で言った。
出現したのは全長八メートル以上あると思われる大蛇だった。大蛇は鎌首をもたげ、メンバーを一口で飲み込もうと長い舌をチロリと出し、襲い掛かった。
九条は金剛力増使用後、七星剣で脆そうな所を狙い、コアを探りながら攻撃を仕掛け、更に火炎砲弾を使用。ヒノトが標的だと察知した竜華は、積極的に爪で攻撃し、コアを砕く事を目指す。
「白華崩拳っ!」
竜華の爪は、大蛇の腹部を貫いた。
「ワイが動き止めたるさかい、止めは任せたでー!」
格闘家のミゲールは持ち前の怪力に金剛力増を付加して大蛇に白兵戦を挑む。
ヒノトは、俊敏脚足で大蛇の周りをぐるぐると走りながらコアの位置を探した。だが表面にある筈のコアが見つからない。
「うぐぐ‥‥」
大蛇に締め上げられてミゲールの顔がどす黒く変色する。ようやくコアの位置を確認できた。
「コアの位置がわかったのじゃ! 顎の下なのじゃ!」
死角となる顎の下に宝石のようなコアがあった。
ヒノトの報告を聞いたメンバー達は、顎の下を狙おうとするが、それには牙を掻い潜らねばならない。
「フェイントを使え。二、三人で同時にかかれば十分だ」
大蛇は攻撃力はあるが動作は鈍い。動きを見切った陸は、水鏡の刃を振るって大蛇の頭部に攻撃を集中した。
「コア破壊は任せるね!」
七瀬は、顎を狙う仲間をフォローすべく飛石礫弾で大蛇の注意を引く。
「顎の下って、逆鱗かよ」
九条はライトブレードを掴んでニ刀流にすると、ミゲールを助けるべく連続攻撃を仕掛けた。獣人達の連携攻撃にさしもの大蛇も身を捩って悲鳴をあげる。
「今じゃ!」
ヒノトは俊敏脚足で接近し、そのまま勢いを乗せ日本刀、角、仕込み日傘の三刀同時一点突き。度重なる攻撃に堪えかねたように仕込み日傘の細剣がコアに食い込んだ。瞬く間に亀裂が走り、木端微塵に砕け散る。
コアを破壊された大蛇は断末魔もあげずに消滅した。
「やったね」
「もう一仕事残ってますよ」
その一時間後、キムは『乾坤圏』が奉納されている祭壇に辿り着いた。大蛇との戦いの痕跡は獣人達が必死で消していたが、果たしてキムの目にはどう映ったか。
「己の力を過信した点は反省すべきだ‥‥」
今後は念入りに下調べし、誰かと探索しようと決めたキムだった。
一切接触せず、大蛇を退治したので今回の任務は成功とみなされた。