剣豪ガチバトル!アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
氷邑
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芸能 |
3Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
7.9万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
04/21〜04/25
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●本文
剣豪とは、日本刀を用いた剣術の達人、剣の腕前に優れた豪傑の呼称である。
江戸〜幕末にかけては、二刀流・二天一流の宮本武蔵、隻眼のイメージが強い柳生新陰流の柳生十兵衛、北辰一刀流開祖の千葉周作等、様々な剣豪がいた。
「三国志の次は、チャンバラガチバトルだ!」
お笑い番組『ガハッ! とチャンネル』のプロデューサーが、いきなり企画を発表した。最近、剣豪格闘ゲームにハマっているから、というのはここだけの話。
「得物はどうするんですか? 本物使うわけにはいかないっしょ?」
スタッフの質問に、プロデューサーは得意満面にこう答えた。
「本物を使うワケないだろう。スポーツチャンバラ(以下スポチャン)で勝負だ!」
スポチャンという軽いネーミングだが、国際スポーツチャンバラ協会が普及している世界34ヶ国で楽しまれているれっきとしたスポーツだ。
ルールはいたって簡単。身体のどこを打たれても負け。その手軽さから、老若男女問わず、誰でも気軽に楽しめるのがスポチャンの良さだ。
‥‥解説はこのくらいにしておこう。
「鞍馬天狗はありですかー?」
鞍馬天狗とは、随分古い作品を知っているなと驚くプロデューサーだったが
「フィクションの剣豪もOKだが、放送できる奴に限るぞ」
と返答。
「ま、とにかく。後は出場者を決めるだけだ。企画はこんなもんだろう」
プロデューサーの一方的な企画案ではあったが、番組進行は着々と進められた。
<豆知識:スポーツチャンバラ>
得物は世界共通のエアーソフト製。得物は短刀、小太刀、長剣、槍等がある。
正式な試合では、面を使用することが義務付けられている。
ユニフォーム不要。
<ルール>
1・安全維持のため、面とエアーソフト製の得物を使用すること。
2・試合は一本勝負。身体のどこを打っても良い。
3・相打ちは両者負け。一本勝負。
<番組で使用できる得物>
短刀:全長45センチ。
小太刀:全長60センチ。
長剣:全長100センチ。
槍:全長210センチ。
<番組内での試合形式>
構え方は自由。対戦相手が転倒しても試合続行。
どの剣豪に扮するかは、出演者の自由。
剣法は不問なので「円月殺法」「逆手居合い切り」は使用可とする。
面は必ず着用すること。
「おっと、これじゃただのチャンバラになってしまう。いっそのこと、決戦場を道場風のリングにして、リングアウトしたらトリモチの刑にでもするか」
真面目に思える内容に対しても、お笑い要素を決して忘れないプロデューサーだった。
この企画に、何人名乗り出るだろうか? それは、剣の神のみぞ知る。
●リプレイ本文
●東郷重位VS真里谷円四郎
右腕に赤い紐を巻きつけた薩摩藩の武士にして示現流剣術の流祖、東郷重位に扮した烈飛龍(fa0225)の対戦相手は、針ケ谷夕雲が流祖の無住心剣流三代目、真里谷円四郎に扮した左腕に白い紐を巻きつけた伊達正和(fa0463)。
烈は、笑い要素がある番組とはいえ、歴史上の人物に扮するのだから、示現流を知る人々から不評を得ないよう示現流の構え、型について実際にレクチャーを受け、本番ギリギリまで稽古に励んだ。そのくらい、東郷になりきろうとしている。カメラの前に立って演技をする以上、この程度の鍛錬はプロとして当然という彼なりの拘りだ。
対する伊達が扮する真里谷は、他流試合を千回し、連戦無敗だとか、一度しか負けてないとかいう説がある剣豪だ。他参加者が有名どころで来るだろうと、彼はあえてマイナー剣豪を選択した。
両者は面をつけると、得物の長剣を手にして道場を思わせるリングに上がった。
一礼した後、同時に構え始めた。
「はじめっ!」
烈の構えは、示現流を代表する蜻蛉の構え(左足を前に出し、剣を持った右手を耳の辺りまで上げて左手を軽く添える八相に似た構え)。
伊達は正眼(中段)に構える。現代剣道で培った脳みそは、示現流の初太刀に対するんは左右にさがりながら避けると同時の引き面だと答えを出していたが、無視する。
正眼から一足一刀、学生時代からの得意技である飛び込み胴で勝負に出た。
烈にとっては絶好の隙である。試合前に、下手の策を講じて、東郷重位らしさを損なわない事だけを戒めていた烈は迷わず長剣を振り下ろした。
「チェストォー!」
示現流独特の「猿叫」と呼ばれる独特の掛け声と共に、強烈な面撃ち!
『一本! 勝者、東郷重位!』
黒子に扮した審判三人が、高々と赤旗を掲げた。
「負けたよ、烈さん」
「良い勝負だったぞ」
互いを賞賛した烈と伊達は、リングを下り観戦に回った。
●藤堂平助VS宝蔵院覚禅房胤栄
新撰組八番組長、藤堂平助に扮して右腕に赤い紐を巻きつけた雨堂 零慈(fa0826)の相手は、宝蔵院流槍術の流祖で奈良は興福寺の僧、宝蔵院覚禅房胤栄(ほうぞういんかくぜんぼういんえい)に扮した左腕に白い紐を巻きつけたタケシ本郷(fa1790)。
「北辰一刀流三段の腕、揮ってみせよう‥‥。新撰組八番組長、藤堂平助‥‥参る」
長剣を正眼に構える雨堂に対し
「何の、返り討ちにしてくれるわ!」
豪快に笑い、槍を中段に構えるタケシ。
「はじめっ!」
審判の合図と同時に、二人は巧みな足捌きで少しずつ相手に近づいた。
タケシは、雨堂が撹乱戦術を取ると見越して後の先を取ると決めていた。槍の間合いギリギリまで引き付ける。
(「実力はわからぬが‥‥二倍段くらいに考えても五分五分くらいだろう‥‥」)
時代劇俳優であり、いわば剣術が本芸の雨堂は冷静に観察した。
槍には基本的に突き、薙ぎ払い、振り上げ、振り下ろしの四種類しか攻撃法が無く、大振りなので行動パターンは読み易い。まずは間合いの外からタケシの技の隙の大きさを確認するつもりだったが、タケシも動かない。
一向に打ち合わず、リングの中を2人はぐるぐる回る。痺れを切らしたディレクターからADを通じて早くチャンバラしろと指示が出た。
「‥‥うぉりゃーっ!」
タケシは叫び声をあげて雨堂を挑発。
「く‥‥」
こう着状態を破った雨堂は間合いを詰める。長剣と槍の切っ先がぶつかった。タケシは渾身の槍を繰り出したが、雨堂は素早く退く。あっと思った時にはタケシの腕に篭手打ちが決まっていた。
『一本! 勝者、藤堂平助!』
審判三人が高々と赤旗を掲げると、雨堂は礼の後
「北辰一刀流の技の前に敵は無し‥‥」
勝利台詞を言い、静かにリングを下りた。
●メアリ・リードVSジョゼフ・ブローニュ・サン=ジョルジュ
次の対戦は、海外剣豪勝負だ。
MAKOTO(fa0295)が扮するのは、1730年代頃にイギリス海軍の攻撃を受けた時に相棒のアン・ポニーと共に勇敢に戦った実在の女海賊、メアリ・リード。男物のゆったりとした18世紀海賊衣装を身に纏い、男装の女海賊らしい行動と言動でメアリになりきり勝負に挑む。首には赤いスカーフを巻いている。
マリアーノ・ファリアス(fa2539)が扮するのは、音楽家にして軍人、剣術の名手であるジョゼフ・ブローニュ。「サン=ジョルジュ」という騎士号が有名だが、今に残るヴァイオリン協奏曲を残した音楽家であり、モザール・ノワール(黒いモーツァルト)の渾名を持つ。
17歳でフランス中の剣術教師を打ち負かしたという説に基づき、マリアーノは爽やかで理知的な少年剣士を演じるつもりだ。メイクで小麦色の肌にし、貴族階級で育てられた少年なのでフランス貴族風の衣装を身に纏い、首に白いスカーフを巻いている。
男装の女海賊と黒いモーツァルトの対戦は如何に。
面を着け、リングに上がり一礼を終えた後、マリアーノは敬意を払い挨拶する。
「有名なメアリ・リード様と戦えるとは、光栄の極みです」
「ハッ あたしを女扱いすると、怪我するよ!」
挨拶し終えた後、MAKOTOは小太刀を右手に持ち、構えは半歩前に出た右構え。マリアーノは長剣をフェンシングのように構えている。
「はじめっ!」
マリアーノは、合図と同時に攻撃を仕掛けた。
「ちぃっ」
リーチ差を生かしたマリアーノの連続突きを、MAKOTOは舌打ちしながらも巧みに小太刀を動かして捌く。海賊らしい奇襲攻撃を狙っていたが、つい相手を観察した所に少年に先制攻撃を許してしまった。
「どうした、ちっとも当たらないじゃないか?」
「‥‥これからですよ」
仕切り直そうとマリアーノが距離を開けると、それを待っていたMAKOTOは距離を詰めて逃がさない。一瞬で攻守が逆転した。今度はMAKOTOが上下左右、千変万化の海賊刀技を披露する。
リング上の2人の位置がめまぐるしく入れ替わる。
第三戦は好勝負となった。
激しい攻防の中でマリアーノが仕掛ける。少年剣士の突きが横薙ぎの斬りに変化した。奥の手として練習したサーブルの動き。しかし、攻防に熱中しすぎたのか疲れからわずかに切っ先は鈍る。MAKOTOもよく見ており、寸でのところでかわした。
この好機を逃さず、MAKOTOの素早い胴撃ち!
『一本! 勝者、メアリ・リード!』
審判三人が高々と赤旗を掲げた。
「さすがですね、メアリ。私は、まだ修行が足りないようです」
「今日の対戦、苦戦だったけど楽しかったよ」
MAKOTOとマリアーノは握手の後、礼をしてリングを下りた。
●李書文VS宮本武蔵
最後は、ゆったりと体を包む赤い中華服の下にカンフースーツも穿き、体のラインが見えないよう、男装して李書文に扮した竜華(fa1294)と、二天一流の開祖で、二刀流使いで有名な白い長鉢巻を締め、着物、羽織姿の宮本武蔵に扮した名無しの演技者(fa2582)。
「好、お互い楽しめるよう頑張りましょう」
「我が名は宮本武蔵。おぬしが李書文か。話には聞いておるぞ。ほとんどの相手を一撃で倒したことから「二の打ち要らず」、槍を得意としたことから「神槍」と恐れられたる猛者と。この武蔵の相手に相応しいわ!」
そう言っていただけて光栄だわ、と竜華は槍を手にした。
「神槍と言えば、李書文よね。彼の槍術は六合大槍というのだけど、八極拳の一部で李書文以外にも神槍と呼ばれる使い手を多く輩出しているの。八極拳のほかにも六合大槍を扱う槍術はあって、例えば心意六合拳がそうなんだけど、名前が同じでも別の技法だから間違えちゃ駄目よ。そもそも六合大槍は‥‥」
「長いわ!」
竜華の薀蓄に我慢できず名無しの演技者は台詞を遮った。
「誰が、そんな事まで話せと言ったか! 見てみろ、みな引いておるではないか!」
「しょうがないでしょ! ディレクターが紹介のVTR流してくれないんだもの、漫画読んでない人は李書文なんて知らないわよ。激しく不利だわ!」
竜華逆ギレ。
「む、気持ちは分かるが、あー、今は試合に集中した方が良いと思うぞ」
「分かったわ、ごめんなさい。じゃ最後に猛虎硬爬山のことだけど」
「いい加減にせい!」
二刀をぶんぶん振り回して怒る名無しの演技者。
さて、前までの試合があまりにシリアスだったので、この試合はディレクターからコント特盛の指示が出ていた。
すごく強引だが、プロは泣言を言ってはいけない。
「はじめっ!」
竜華は槍を中段に構え、名無しの演技者は右手に長剣、左手に小太刀を持ち、相手の出方を窺っている。
名無し武蔵は竜華が突き、薙ぎ払いをメインに攻撃してくると予測し、小太刀を投げつけ、怯んだところを攻撃しようとしたが、竜華はひょいとかわした。
「ちょっとー! それ反則じゃないの!?」
「笑止、我が流儀では反則ではない!」
冷たい竜華の突っ込みに、凄い威勢で答える名無しの演技者。つまり俺がルールブック、竜華呆れて声も出ず。
仕切り直し。
螺旋の動きで相手の剣を跳ね除けた竜華は素早く突きこむ。
顔を捻って間一髪で槍を避ける名無しの演技者。
「見たか! これぞ二天一流、五分の見切り!」
「やるわね!」
竜華は素直に相手を褒めるが、槍は彼女がわざと外した。相手にも見せ場を作ってやろうという彼女の配慮だ。
「わはは、李書文敗れたり!」
笠にかかって名無しの演技者は突撃した。残った長剣を竜華に投げつける。これには驚いた竜華が槍で剣を弾くが、名無しの演技者はそのまま突っ込んで来た。
思い切りタックル。
避けきれず、二人は、もつれ合うような状態でトリモチに引っかかった。
「だから反則でしょー!!」
「何を言うか、我が流儀では‥」
「まじでむかつく」
「やれやれ‥‥このようなカタチで負けるとはな。次の試合を‥‥と思ったが、我らで最後だしな。李書文、全てを終えた後に茶を飲まぬか?」
「そ、そんなことより‥‥この状態を何とかしたいわよ!」
『両者、リングアウト!!』
主審が高らかに宣言する。
剣豪ガチバトル最終決戦は、両者場外というあっけない結末で終了。
番組視聴率だが、竜華がトリモチにひっかかり色っぽいポーズになった場面で急激に上がったとか。