アイドルをクールにアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 氷邑
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 0.8万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 10/13〜10/17

●本文

タイトル:対戦相手求む
名前:MIDUHA

 誰でも良い、私と戦え。
 私は、ある組織の命令で戦う戦闘タイプ超能力者だ。
 無理矢理、休暇を取らされて退屈している。
 戦闘しか楽しみのない私には休暇などいらぬ。
 欲しいのは‥自分同等、あるいは強き者とのバトル。
 ×月×日0時、新港埠頭にて待つ。来るものは拒まず、去るものは追わず。
 挑戦者が来るのを楽しみにしている。

 埠頭に佇むMIDUHAが待ち望むものは―

 アイドル、松永彩里がアクションに初めて挑む映画『バトルガール・ミヅハ』が来夏公開されることが発表された。
 撮影は順調に‥と思われたが、ひとつだけ問題があった。
 元気系のノリがウリである彩里は、自分とは全く正反対のクールで孤高なヒロイン、ミヅハになりきれずにいる。このようなタイプの役を今まで演じたことがないのだ。

「彩里ちゃん、この仕事‥やめるかい?」
 マネージャーの真鍋晴彦が、彩里を気遣う。
「いいえ、やります。ステップアップのチャンスですから」

 心配性の真鍋は、プロダクションに相談して、役作りをしてくれる協力者を求めた。

●今回の参加者

 fa0388 有珠・円(34歳・♂・牛)
 fa0669 志羽・武流(21歳・♂・鷹)
 fa1242 小野田有馬(37歳・♂・猫)
 fa2021 巻 長治(30歳・♂・トカゲ)
 fa2764 桐生董也(35歳・♂・蛇)
 fa3285 氷咲 水華(35歳・♀・猫)
 fa4079 志祭 迅(26歳・♂・鴉)
 fa4135 高遠・聖(28歳・♂・鷹)

●リプレイ本文

●協力者
 松永彩里が所属するプロダクションの会議室に、彼女とマネージャーの真鍋晴彦、役作りの協力を申し出た八人がいる。
「この仕事はオーディションで?」
 有珠・円(fa0388)の質問に、彩里は監督直々のオファーですと答えた。
「とりあえず、脚本を見せて貰おう」
「俺にも見せてください」
 桐生董也(fa2764)と志羽・武流(fa0669)は、脚本を見てから役作りを指導する方針だ。そう予測していた真鍋は、脚本と原作の同名コミックスの第一巻を協力者達に手渡した。
「漫画版ミヅハ、彩里ちゃんに似てるね。監督がオファーしたの、彩里ちゃんとミヅハが重なるからじゃないかな?」
「本当、彩里さん似ね」
 有珠の意見に氷咲 水華(fa3285)が言う。
「お願いします、皆さん。役作りに協力してください!」
「やる気があるのはいいことです」
「前向きなのはいいことだ」
 巻 長治(fa2021)と桐生は、彩里のやる気に応えた。
「私の場合、クールな演技がデビュー当時から得意だったからこうすればいいってアドバイスがあんまり無いのよね。でも、元気で明るいアイドルをクールな演技ができるよう頑張るわ」
 氷咲は、出来る範囲での協力を申し出た。
「クールになりきれない‥か。少しずつやるしかないな」
 黙って様子を見ていた志祭 迅(fa4079)が口を開く。
「門外漢な俺に演技指導できるかどうか判らんが、取材なら何やらで、色んな役者に会っている。彼らから聞いた受け売りでも、多少の助けになるかもしれない」
「あたしがしてあげられるのは、気分を乗せる事だけになるけど‥」
 高遠・聖(fa4135)と小野田有馬(fa1242)が、控えめに応じる。
「早速ですが、明日からご協力願えますか?」
 この言葉に、協力者達は一斉に頷いた。

●指導1
 翌日。撮影現場に志羽、巻、桐生の三人が訪れた。
「宜しくお願いします」
 真剣に演技指導を受けようとする彩里が礼儀正しく挨拶する。
「ミヅハの設定と人物像をおさらいしてみましょうか。それで少しは演じやすくなると思いますよ」
 台本を見ながら、志羽が言う。
「そうだな。ミズハが育った環境、境遇を考え、何を思い、どう動くかを考えて表現してみよう」
 志羽と桐生の考えに、巻はうんうんと頷く。
「あたしが演じるミヅハですが‥戦う理由が台本に無いので、動機がわからないんです」
「それをこれから考えるんだ。いくつか質問する。何故、ミヅハが戦闘しか楽しみがない? 何故、自分と同等、または強い相手を求める?」
 まだまだ続きそうだったが、返答に困る彩里を気遣い巻が止めた。
「すまん。だが、それが彩里のミヅハになるわけだ」
 反省した桐生は、そのまま黙り込んでしまった。
「元気系とクール系の最大の違いは、感情表現の様式ではないでしょうか。その訓練を重点的に取り組んで見ましょう。一番大事なのは喜怒哀楽、特に『喜』『楽』の感情をあまりストレートに出さないことですかね」
 巻に続き、志羽が発言する。
「そうですね。何事にも冷静に対応してみましょう。無愛想と思われますが、撮影が終わるまで最低限の挨拶と会話をしないとか。事情を話せば、他の皆さんも理解してくれると思います」
「志羽さんが言うように、普段から感情を抑えるトレーニングをしてみましょう。これは役と素の状態を切り替える訓練にもなるでしょう。ハードになりますが、彩里さんにやる気があるなら大丈夫なはずです」
 頑張ってやってみます! と彩里はやる気を見せた。

●指導2
 その翌日は彩里がオフということなので、彼女の自宅で指導を行うことに。訪れたのは、氷咲と志祭、小野田の三人だ。
「昨日の疲れが残っているだろうが、頑張れよ」
 志祭のクールさに、自分もこんなふうにミヅハを演じたいと思う彩里。
 彼女の部屋で、演技指導を行うこととなった。
「無理してその役をやろうと思うんじゃなくて、その役がどういうものなのか理解するところから始めるといいんじゃないかしら。少しでも自分に近い部分が見つけられれば入っていきやすいものよ」
 昨日も同じ事を言われたような‥と思いつつ、彩里は自分なりに色々考えた。
「おまえ、友達とかスタッフと楽しく話をすることが多いだろう。孤高なミヅハとは大違いだな。こんなことを言うのは酷かもしれんが、撮影が終わるまであまり人と関わらないことだ」
「それはやり過ぎよ。自分と役の切り替えができるまででいいんじゃないかしら?」
 志祭の案に、小野田が反論する。
「小野田さんの言う通りよ。一生懸命、ミヅハをやろうとして頑張っているんだからきっとできるようになるわ。何もしないよりいいはずよ」
 先輩女優の氷咲のアドバイスに、彩里は「はい!」と元気の良い返事をした。
「彩里ちゃん、一緒に映画を観に行かない?」
 小野田が彩里を外に連れ出そうとするが、それはまずいと氷咲と志祭に止められたので、仕方なく小野田が持ってきた(ゲーム機込み)シューティングゲーム、サイキック格闘ゲームをして彩里の気分を高揚させた。面白いことを経験すれば、自分でも演じたくなるという小野田なりの考えだ。
「気楽にいきましょう。彩里ちゃんは元気な子なんだから、そのままでもクールと遠い訳でもないわよ」
 小野田の励ましの後、志祭による簡単なアクション指導で本日の役作り指導は終了した。

●指導3
 有珠と高遠は『バトルガール・ミヅハ』の予告ポスター撮影の予行練習ということで、彩里の指導を行うことに。想定した衣装を用意し、撮影現場を借りた。
 彩里は、歌番組の収録とCM撮影が終わってから、二人がいる撮影現場に向かうことになっている。
「お待たせしました」
 息を切らしながら、彩里と真鍋が撮影現場に駆けつけた。
「待ってたぞ。これに着替えてくれ」
 カメラのセッティングをしている有珠に代わり、高遠が彩里に衣装を渡し、更衣室に案内する。
 着替え終えた彩里は、恥ずかしがりながら更衣室から出てきた。
「これって‥ボンテージじゃ‥」
 ミニスカ風ボンテージは、17歳の彩里には少し刺激が強過ぎたかもしれないが、これも演技のためと割り切り、撮影に臨んだ。
「良く似合っているよ、彩里ちゃん。早速、撮影を始めるよ。まずは普通にいこうか」
「は、はい」
 何も考えないで、目線だけこっちにと指示する有珠に応えるように、彩里は普段の自分をアピールした。
「彩里ちゃん、「可哀相」「ザマァ見ろ」の中間の顔ってできる?」
「中間‥ですか。難しいですが、やれる範囲でやってみます」
 彩里は、先程の元気ポーズからややセクシーなポーズに変え、カメラのほうを向いた。
「目を瞑って。俺が「ハイ」と言ったら目を開けてね。いつ言うかわからないよ、神経を尖らせて」
 いつ言われるかわからない彩里は緊張のためか、先程の元気なイメージを出していない。
「ハイ」
 有珠の合図と同時に、彩里は目を開けた。その視線はクールそのものだった。
「なかなか良い表情だったよ、彩里ちゃん」
「本当ですか?」
 一瞬のクールさから、いつもの笑顔に戻った彩里は素直に喜んだ。
「お疲れ様。いいクールガール振りだった」
 タオルを手渡した高遠が褒める。
「できる奴に言わせれば、演じる役の心を理解できりゃ、自然に身体が動くらしい。目は口ほどに物を言うの言葉通り、視線も重要らしい。演じる役が自分が持っているイメージと違っても、今の松永彩里を捨てることはないと思うぞ? 違う人間を演じるだけであれば、役者は誰でもいいんだ」
 その言葉を聞いた彩里は、監督は自分ならこなせると思いオファーを申し出たんだと改めて思った。
「疲れただろう、トランプでもして息抜きしよう。有珠もやらないか?」
「いいね、やろう」
「ポーカーフェイスの訓練にもなる。ババ抜きはけっこう力が付くぞ」
 そう聞いた彩里は、やりましょうと乗り気になった。
 彩里、有珠、高遠の順にやることになった。最初は楽しそうにしていた彩里だが、枚数が少なくなるたびに表情が変わる。有珠が一番乗りに上がり、残りは彩里と高遠になった。彩里はババが残ったらどうしよう‥と不安になってきた。
「どうした、クールガール。早く引かせてくれ」
 高遠の言葉が催促のように聞こえる。どうしようかと悩んでいたその時、彩里は先程の撮影を思い出した。目を閉じ、トランプを高遠に差し出す。
「さあ、どうぞ。どっちが当たるかはあなた次第です」
 先程の不安はどこえやら。彩里はクールな視線で高遠を見てそう言った。高遠が迷った末取ったカードは‥ババだった。
「切っ掛けを掴んだようだな。それなら、簡単に堕ち‥いや、自分と違う役を演じる壁を乗り越えられるんじゃないかな。次の機会には、一皮向けた松永彩里を取材できることを楽しみにしているぜ」
「はい、お待ちしてます」

 協力者達の指導のおかげで、彩里は無事、元気とクールを演じ分けることが出来た。

●その後
 映画撮影に歌番組、ラジオ収録等、松永彩里は多忙なスケジュールに追われている。
 TVに出演している彼女は笑顔だが、映画撮影時はクールに変わる。指導後、志羽から貰ったお守りを握り締めて。
「彩里、ファンから花束だよ」
 真鍋が、休憩中の彩里に花束を手渡す。それを見た彩里は、
「綺麗ね。マネージャー、控え室に置いてちょうだい」
 とクールに振舞った。

「抜き打ちテストは合格‥ですね」
 物陰でその様子を見ていた巻は、うっすらと微笑んだ。