Blue in Red 9アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 氷邑
芸能 3Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 7.9万円
参加人数 12人
サポート 0人
期間 05/13〜05/17

●本文

 青は、南国の孤島を取り囲むように広がったネイビーブルー。
 赤は、その孤島に聳え立ったホテルの中で起こる惨劇を象徴する血。
 日本国の謀略によりランダムに集められた32名の一般市民が、たった一つの生存権を賭け、孤島のホテルで殺し合いを行う。
 帰る事も、逃げる事も出来ない人間の極限が見せた弱さ、醜さ、美しさ、裏切り、愛情、友情、絆。そして運命を捻じ曲げようとする比類無き強さ。

 千ページ以上にも及ぶ良い意味でも、悪い意味でも問題作と言われたこの長編小説の映画化が決定し、撮影は順調に進んでいる。
 撮影は、内閣総理大臣・真山壱がモニター室で様子を窺っている場面から始まる。

・シーン1
 モニター越しに榊都を見た真山は、ある事件のことを思い出していた。
 それは、このサバイバルゲームを開催する以前に実験的に行った少人数での生き残りを賭けた戦争だ。その中に、都の血縁者が参加していた。
「あの時の‥‥。あれと同じように自ら命を絶つと思いきや、生きることを選んだか。だが、それは一瞬だろう」

・シーン2
 ユーリー芳村、カナ芳村父娘は、大広間に集まらず、自力で脱出しようと試みた。
森には罠があるかもしれないから外に出るのはやめよう、というカナも言うことを聞かずユーリーは飛び出すと同時に、仕掛けられた罠により死亡。
 それを呆然と見ていたカナの背後に迫ったのは‥‥。

・シーン3
 栗原亜依は、赤城拓也、いや、彼の中に潜む赤い狼を捜し求めていた。
「必ずあたしのものにしてみせるわ‥‥」
 結婚詐欺師である亜衣は、どんな手段を使っても欲しいものを手にしてきたのだ。
 歩いているうち、亜衣は格闘家の坂崎明憲と鉢合わせした。

・シーン4
 サバイバルゲームを企画した真山に復讐すべく、船医の志水剣一郎はメスを手に真山がいる場所を探している。
 その途中、赤い狼に「何故、復讐をする」と問われ、剣一郎は愛した女性の敵討ちだと、キッとした表情で即答。
 赤い狼は、何を考えて質問したのだろうか。

・シーン5
 生きることを望んだ都は、医務室で精神崩壊状態に近い数井療子を放ってはおけなかった。あなたは、まだ必要とされているんだよ。だから元気出してと説得するが、療子は何の反応も示さなかったが、花沢美咲が医務室に治療を求めに来た時、微かに動いた。療子は、美咲の手当てをするのだろうか。
 モニター室でその様子を見ていた真山の元に、秘書の神凪華とキリング・ドールが。
 真山は、華が命令に従ったことに関しては何も言わなかった。

<登場人物>
 赤城拓也:本編の主人公。復讐を決意したことで「拓也」と犯罪者的人格「赤い狼」の人格が融合。
 神凪華:真山の命令で参加者として参加中の秘書。 
 志水剣一郎:内閣総理大臣、真山壱の復讐に燃える船医。
 数井療子:看護師。志水が懸命に治療した矢田メイの死を見た後、心を閉ざした。
 榊都:自殺志願者だったが、負傷したことで生きたいと願う。
 ユーリー芳村:休暇を利用し、娘と共に旅行中に今回のゲームに巻き込まれた。
 カナ芳村:ユーリーの娘。交流のなかった父と和解し、共に行動している。
 栗原亜衣:結婚詐欺を繰り返している享楽的な女性。
 坂崎明憲:相撲スタイルの格闘技を得意とする格闘家。
 花崎美咲:医務室に治療を求めに来た女性。

 真山壱:内閣総理大臣。
      冷酷非情、国粋主義者、選民思想に凝り固まった人物。

※武器はホテル内を破壊する恐れのある重火器の類意外であれば問わず。
※その他の配役は生存者のみ選択可能です。
※キリング・ドールはNPCが演じます。

<これまでの生存者、死亡者(五十字音順)>
 生存者:赤城拓也、数井療子、カナ芳村、神凪華、栗原亜依、榊都、坂崎明憲
      志水剣一郎、花沢美咲、檜村零児、方城瑞希、丸山高貴、ユーリー芳村
     
 死亡者:青嶋奈緒美、青柳健一、亜澄涼子、飯田健太郎、海馬厚司 、梶原ゆう
      神田カンタ、霧咲彰吾、田沼秀雄、月凪 鈴、都築哲司、野川夏希
      野川邑吏、尾藤裕二、藤吉住男、本木美鈴、矢田メイ、渡キリエ
      渡辺雄一

<映画設定>
・大きな舞台の別の一場面としてリンクしている。
・参加者が何故集められたは各々設定。
・参加者には全員孤島に入る前にマイクロ爆弾を取り付けられて、島から出ると爆発。
・ホテルの外は森、罠有り。

<赤城拓也、真山壱以外の登場人物 ※()内はシリーズ数>
・数井療子(4、5、7、8)
・神凪華(4、5、6、7、8)
・栗原亜依(6)
・榊都(5、6、7、8)
・坂崎明憲(5)
・志水剣一郎(3、7、8)
・花沢美咲(6、8)
・檜村零児(4、8)
・方城瑞希(1、2、3、6、8)
・丸山高貴(4、7)
・芳村親子(3)

●今回の参加者

 fa0330 大道寺イザベラ(15歳・♀・兎)
 fa0588 ディノ・ストラーダ(21歳・♂・狼)
 fa1058 時雨(27歳・♂・鴉)
 fa1609 七瀬・瀬名(18歳・♀・猫)
 fa3890 joker(30歳・♂・蝙蝠)
 fa4040 蕪木薫(29歳・♀・熊)
 fa4235 真喜志 武緒(29歳・♂・狸)
 fa4354 沢渡霧江(25歳・♀・狼)
 fa4591 楼瀬真緒(29歳・♀・猫)
 fa5257 レーヴァ(18歳・♀・獅子)
 fa5387 神保原・輝璃(25歳・♂・狼)
 fa5689 幹谷 奈津美(23歳・♀・竜)

●リプレイ本文

 モニター室で様子を窺っている内閣総理大臣、真山壱(joker(fa3890))は、参加者の一人である榊都(楼瀬真緒(fa4591))を見て、ある事件のことを思い出していた。
「あの時の‥‥。あれと同じように自ら命を絶つと思いきや、生きることを選んだか。だが、それは一瞬だろう」
 都が、あの時の映像をみたらどのような反応をするだろうか。
 壱はあえて都に見えるような位置のモニターにその様子の映像を流してみることにした。
 映し出されたのは、都の姉が実験で参加させられたサバイバル戦の模様だった。
「この娘もお前のように一時は生きる望みに縋りつき持ち直したが、結局は死んでいった。お前も同様に無様に死にゆくか、それとも‥‥」
 逃亡中、逃げ疲れて休んでいた都は、看護師の妹が必死に助けようとするも、目の前で死んでいく人々の姿に耐え切れずに自殺した所をモニターで見せつけられた。
「妹が自殺したのはこのせい‥‥?」
 衝撃を受けながら、妹と同じ看護師の数井療子(蕪木薫(fa4040))の様子を思い出し、慌てて医務室へ走った。
「あの人を同じ目には遭わせない!」


 ユーリー芳村(真喜志 武緒(fa4235))は、娘のカナ(大道寺イザベラ(fa0330)) を励ましながら、大事な娘だけでも助けようと外に出る決意を。
「心配は要らない! 父さんを信じろ!」
 そう言えるのは、軍人時代に培ったサバイバル経験の自信故からだろう。
 カナの手をとり、外へ駆け出そうとしたその時、ユーリーはトラップに引っかかった。
「な、何だ!?」
 樹の弦が両足首に絡みつき、逆さ吊りになると同時に、タイマー音が鳴り響いた。
「何だ‥‥!?」
 ユーリーの体内からするその音は、体内に埋め込まれているマイクロ爆弾が外に出ようとしたことを感知したのだ。
「お父さん!」
「来るな! カナ、お前だけでも生きのび‥‥」
 自分の元に駆け寄ろうとするカナに全てを言い終えるユーリーの肉体は、爆音と共に砕け散った。
「いやあああ!」
 膝から崩れ落ちるようにしゃがみこんで泣き崩れるカナ。
「本当のお父さんじゃないからって‥‥頑張りすぎなんだよ。血が繋がっていなくても‥‥お父さんは一人だけなのに‥‥」
 ユーリーとカナは血のつながりが無い父娘だ。カナは戦災孤児で、不憫に思ったユーリーが引き取ったのだ。
「キミの気持ちは分るさ。僕も大切な人を‥‥」
 カナに優しく声をかけたのは赤城拓也(ディノ・ストラーダ(fa0588))。
 泣き止まないカナを優しく抱きしめた拓也は、亡き恋人のことを思い出していた。


 赤木拓也の中に潜む別人格『赤い狼』を追い求めているのは、紫が特徴的な模様のスリット入りのマーメイドドレスに身を包み、色仕掛けを武器にする結婚詐欺を繰り返してきた栗原亜依(レーヴァ(fa5257))。護身用の超小型のナイフを、何時でも使えるようにガーターベルトに仕込むという念入り振りだ。
 その最中、格闘家の坂崎明憲(時雨(fa1058))と鉢合わせ。
「あんた、邪魔よ」
 赤い狼を追い求めている亜依にとって、それ以外の男は興味が無い。
 そっけない態度で坂崎を追い払おうとするが、亜依の美貌に殺し合いを一瞬忘れる坂崎。
「お前、名前は? いい女じゃねぇか」
 亜依を自分の物にしたいと思いはじめた坂崎は、格闘家に転身してからの輝かしい実績等を語り始め、力強い自分をアピールしはじめた。
「俺は昔、関取だったんだぜ。こんなガタイだが大関まで上り詰めた。その後は、レスラーに転身したけどな」
「そうなの。でも、あたしはあなたに興味はないの」
 無視して歩き出そうとする亜依の前に、坂崎が立ちはだかる。
「勝負は一瞬で決める。それが俺のモットーだ! 俺の女になれ!」
 格闘家らしい押しの強さだが、それがかえって亜依を不機嫌にさせた。
「しつこいわね! そんなにあたしが欲しいのなら、こいつを喉にくれてやるわ!」
 ガーターベルトに仕込んだナイフを取り出し、戦闘体制に入る亜依。
「あたしは、絶対あの男をものにする! あんなミステリアスな男は滅多にいない!」
 自分は拓也に惚れているのか、彼の中に潜む赤い狼に惚れているのか。
 亜依は、どちらなのか自分でもわからなかった。
「ふん、面白いオンナだ」
 亜依と坂崎の経緯を物陰から見届けている赤い狼は、構えいたステッキを下ろすと何処家へと立ち去った。


 愛しい存在であった矢田メイの死のショックを抱え、メスを持ち壱はいる場所へと向かう医師の志水剣一郎(真喜志=二役)は、人影を見つけ懐に隠し警戒する。
「花を散らせるのは簡単だが、咲かせる才能は誰にでもあるわけじゃない」
 白い薔薇の花の香りを楽しみながら、志水の前に立ちはだかったのは赤い狼。
「あぁ‥‥君か‥‥」
 赤い狼と知った剣一郎は警戒を解いた。
「彼女は‥‥メイは死んだよ‥‥」
 弱々しくメイの死を伝えながらも、壱への復讐心は見えている。
「全ての原因は‥‥あの男、内閣総理大臣の真山だ! あの男さえいなければ‥‥!」
 二人が話している時、走って医務室に向かっている都が赤い狼と剣一郎が話をしているところにぶつかった。
「いたた‥‥。あ、た、大変なんです!!」
 都は慌てながら、総理の部屋の前で聞いた事と、自分の妹の死因を二人に話した。
「総理は、誰もこの島から誰も生きて帰す気なんてないんです! だから、お二人も歯早く逃げてください!」
 都はそう言い残すと、医務室へと向かった。
「真山は‥‥病んでいるとしか思えない‥‥」
「キミのメスを薄汚い鼠どもを斬る為だけに使うのは勿体無い‥‥私と共に来い」
 剣一郎の白衣の胸ポケットに白い薔薇を差し、真山と戦う為の仲間として彼を迎え入れる赤い狼。
「病人がいるのなら‥‥行こう。生か死か、患者の望みは知れないが‥‥」
 赤い狼を見つめ、同行を申し出る剣一郎。
「‥‥これで良いんだよな、メイ‥‥」
 誰にも聞こえない様に、ポツリと呟く剣一郎は赤い狼と行動を共にすることに。


 医務室にいるのは、メイを救うことができなかったショックで心を閉ざした看護師の療子だけだった。

「お願い、助けて‥‥」
 治療を求め、療子に元に駆け寄った花沢美咲(幹谷 奈津美(fa5689))に対しても、虚ろな目でぼんやりと見ているだけだった。
 途方に暮れた美咲は、療子の身に何が起きたのか、何故彼女が心を閉ざしたのかを訊くだけ訊いてみることに。
 沈み込み、心の傷を背負い込むだけならまだしも、自分の心を閉ざしてしまう程のものだというなら、多くを求める訳にもいかない。
 医務室に辿り着いた都は、療子がまだ心を閉ざしていることが悲しかった。
「数井さん‥‥助けを求めている人を見捨てるの?」
 美咲と都の言葉に勇気付けられた療子は、ゆっくりと目に光を取り戻した。自分のやるべきことを思い出した療子は、美咲の手当てを素早く始めた。
 美咲の治療を終えた療子を、都は抱きしめた。
「良かった‥‥数井さん、生きてこの島を出ようね」
「うん‥‥」
 大粒の涙を流しながら、小さく頷く療子は都の服の裾を掴む。
「ありがとう、都ちゃん、それと‥‥」
「美咲です、花沢美咲」
「ありがとう、美咲ちゃん‥‥」
 都と美咲に気恥ずかしげに微笑んだ療子は、心を閉ざしてはいなかった。
「恥ずかしいところ見せちゃったね、頑張ろう」
 治療を求める人に暖かく治療を施すことを決意し、療子は医務室を出て行こうとすると同時に、都は
「私は、生きる為の準備してきます」
 と医務室を後にした。その理由は‥‥知る由もなく。


 医務室から出た榊都と、壱の秘書である神凪華(沢渡霧江(fa4354))はばったり遭遇する。華は昔の実験については覚えているが、さすがに血縁者までは見抜けなかったが、数多の戦場で培った感覚から、都が危険な因子だと判断する。
「いつか終わる命だ。それが今になっただけ」
 キリングドールに、都を総理のいる部屋の前、音声マイクや監視カメラの死角で殺害するよう命じる。
「合図をしたら、彼女を家族のもとへ送ってやれ」
 華が合図を送ろうとした時、壱からモニター室に戻るよう命令された。

 モニター室に戻った華とキリング・ドールに関しては、壱は何も言わなかった。
 華の妹の返り血で濡れたキリング・ドールと、血にまみれ横たわる妻子を抱きしめていた自分に付いた血が重なり一瞬の眩暈を起こした。過去に家族を殺され怒り狂った彼が、結果的に華に「妹」という家族を殺させた、その矛盾に気付いているのか、気付かないふりをしているのか。
 華の目を見る事が出来ない総理だったがそれを振り払うように華とキリング・ドールを追い出すようにシャワー室へ向かわせる。
「その体を綺麗にしてこい。それと‥‥暫く、狩りには出なくていい。此処で休め」
 そう言うと、壱は華とキリング・ドールに背を向けた。

 華は内部で色々葛藤して、あげく指示に従ったのに壱は無反応だった。
 その苛立ちを堪え、キリング・ドールは本来の十分の一も能力を発揮していないと呟く。
 総理の命を奪える優越感、それだけが華のプライドを支えていた。


「皆、お疲れ様。撮影もクライマックスに突入した、あと数回で終わりだが、最後まで頑張ってくれ」
 監督の一言に、出演者、スタッフは「はい!」と返事をした。

 生と死の間で、参加者達の心は大きく揺れ動く。