食・奈落佳人アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
氷邑
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芸能 |
3Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
やや易
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報酬 |
6万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
05/01〜05/05
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●本文
「奈落佳人って知ってる?」
午前4時44分44秒に奈落佳人なる人物が現れ、恋の怨みを晴らしてくれる。
中高生の間で広まっている都市伝説‥‥であったが、20代以上の若者、更には壮年世代の間でも有名な噂話になっているが、時には「こんなのあり?」と思うこともあるようで‥‥。
奈落佳人は、謎の美女であると同時に、かなりのグルメで、大食いである。
それで良くモデルのような体型を維持できますね、というツッコミはご遠慮願いたい。
「今日も美味しいものが食べたいですね‥‥」
奈落佳人がそう呟いた時、依頼が舞い込んできた。
「良いことを思いつきました。依頼を引き受ける代わりに依頼人に料理を作ってもらうことにしましょう」
佳人様、それで宜しいのですか?
『佳人ちゃんばっかりずるい〜!』
と駄々をこねるのは、双子の兄妹、ターグァとニューアル。その二人を見かねた奈落佳人は、二人をお供に依頼人の元に向かった。
<シーン1>
女子高生・瑞穂が奈落佳人を呼び出した理由は、浮気ばかりしている彼を奈落送りにするためだった。瑞穂に奈落佳人は料理を作るように命じるが、瑞穂は万年家庭科アヒルである。
そんな彼女が作る料理は、どんなものになるのだろうか?
<シーン2>
料理専門学校で一流シェフ目指して頑張っている光彦は、かつては恋仲だったが、今はライバルである彼女を奈落送りにしようと奈落佳人を呼び出した。
光彦が得意とするのはフランス料理だったが、奈落佳人は「おふくろの味な料理が食べたいです」と言い出した。彼は、佳人の要求に応じるのだろうか?
<シーン3>
料理上手の結婚1年目の主婦、今日子は、暴力を振るう夫を奈落送りにするべく奈落佳人を呼び出した。奈落佳人のご注文は「子供向け料理」。ターグァとニューアルのためのリクエストだ。
今日子は、どのような料理を作るのだろうか?
「どのような料理が食べられるのか、すごく楽しみです♪」
楽しみにしている奈落佳人と、お供のターグァ、ニューアルであった。
<登場人物>
奈落佳人:午前4時44分44秒に現れ、恋の恨みを晴らすと言われている謎の美女。
グルメなので、料理の批評は辛口気味。
ターグァ:奈落佳人のお供の少年。子供っぽい口調。佳人を「ちゃん」付けで呼ぶ。
ニューアル:ターグァの双子の妹。口調は兄と同じ。
瑞穂:料理下手な女子高生。料理は指定されていないので自由創作。
光彦:フランス料理シェフ志望の調理専門学生。佳人におふくろの味をリクエストされる。
今日子:料理上手な主婦。子供はいない。佳人に子供向け料理をリクエストされる。
※その他の配役はお任せします。
※各料理の判定は、奈落佳人、ターグァ、ニューアル兄妹と依頼人相談のうえお決めください。
●リプレイ本文
●自由創作料理
瑞穂(宝野鈴生(fa3579))は、奈落佳人が来ますようにと祈った。それが通じたのか、奈落佳人(橘・朔耶(fa0467))とターグァ(ヒノエ・シオン(fa5487))、ニューアル(カナン 澪野(fa3319))の双子兄妹が姿を現した。
「私を呼び出したのはあなたですね。私が依頼を引き受けるかどうかは、あなたの腕次第です」
「どういうこと?」
「今から料理を作ってください。お腹がすきましたので」
『おなかすいたぁ〜!』
三人がそういい終えると同時に、どこからともなくスポットライトが瑞穂の部屋を照らす。その先には、簡易厨房と冷蔵庫、料理器具一式が用意されていた。どこから? というのは謎。
奈落佳人の友人兼部下、料理の達人である深紅のチャイナドレスを着た女性、チュウニャン(最上さくら(fa0169))が、厨房に立っていた。
「あいつを奈落送りにするんだからっ!」
瑞穂は、勢い良く調理を開始。
「依頼人は、材料を手際よく用意しました」
料理は、定番ともいえる卵焼き、タコさんカニさんウインナーとおにぎり、ポテトサラダ、デザートは苺に決めた。
チュウニャンが実況している間、おにぎりは握りが甘かったのかご飯が崩れ、卵焼きはちゃんと巻けておらず塊状態、ウインナーは原型を留めておらず、サラダは水分でべちゃべちゃ、苺はそのまま。
「お弁当でしょうか? 何故途中で混乱したのでしょう? お弁当として完成させることができるのでしょうか!」
瑞穂は調理の手際が悪く、忙しなく調理することで出来が悪くなるタイプのようだ。
「できたっ!」
瑞穂は、自信満々にお弁当を奈落佳人達に差し出した。
合掌の後、黙って完食する奈落佳人だったが、味がお気に召さなかったのか、依頼は引き受けなかった。
「どうして!!」
憤慨する瑞穂に
『ねえ、どうしてこの料理作ったの?』
双子の言葉に、瑞穂は、彼に初めてお弁当を作り、食べて貰ったこと、前日に胸をときめかせ、慣れない手つきで料理したことを思い出した。
(「だから、あたしはお弁当を作ったんだ」)
そう気づき、複雑な心境になった。
「恋愛も料理と同じ。落ち着いて冷静に手順を踏んで行動すれば、最も望む答えに行き着くでしょう」
瑞穂の本心を悟った上で説得し、去る奈落佳人。
「じゃあ、今度は彼氏の為に頑張って作りなよ」
「今度は‥‥頑張ってみてね」
ターグァとニューアルも去っていった。
「そんな馬鹿なこと、あたし、あいつの事なんか‥‥!」
悔しそうに唇を噛み締める瑞穂だった。
●お袋の味
プライドが高く、料理の腕に自信アリの光彦(丙 十哉(fa5574))だが、目上の人間以外の意見は聞かない。
ターゲットは、女性でありながら、自分同等の評価を受ける彼女。光彦は、鼻っ柱を砕かれた気分だった。逆恨み同然の依頼である。
「佳人様、俺の輝かしい将来に立ち塞がるあの女を奈落送りに!」
祈りが通じたのか、奈落佳人は双子を従え登場するなり「おふくろの味の料理が食べたいです」と言い出した。
今回も、いきなりスポットライト、厨房(以下略)が、チュウニャンと共に登場。
(「おふくろの味、とは‥‥和食か?」)
光彦が思考中の時、騒ぎで目覚めた弟の明人(倉橋 羊(fa3742))が「何かあったの‥‥?」と光彦の部屋に入ってきた。
明人は、光彦と恋人がライバル的な関係になり、上手くいっていないことに胸を痛めいている。以前のようになってもらいたいと思っているが。見知らぬ女性が兄がいることを疑問に思ったが、彼女と仲直りしている相談をしているのだろうと思った。
「明人、お前も手伝え」
兄の言葉に、仲直りする気になったんだと安心した明人は、協力を申し出た。
「おふくろの味、って言ったら肉じゃがだな」
野菜をきっちり整えて切り、繊細な味付けし、見栄えにも拘る。
「純和風に出汁から凝っています。おおっ! 野菜の面取りも! 職人芸です! 手元の狂いは一切認められません! どんな美味なものができるか、期待出来ます!」
チュウニャンの実況に熱が籠もる!
早速、明人に味見をさせたが、何故か苦い顔をした。
「美味しいんだけど‥‥おふくろの味とは違うカンジ? 懐かしいような気になるものだと思うんだけど」
おふくろの味=和の家庭料理という固定観念を持っている兄に
「昔作ってくれたナポリタンとか、ホットケーキとかがいいんじゃない?」
と言う弟の一言に、光彦はキレた。
「素人が生意気言ってんじゃねえよ! 俺はプロに習ってんだぞ!」
「じゃあ好きにしたら! 料理は心! 料亭で出るみたいな肉じゃがで『手料理』って感動してくれるような人はいないよ!」
明人は手伝い放棄し「後は勝手にやれば!」と光彦の部屋から出た。
光彦は、自慢の肉じゃがを奈落佳人達に差し出したが‥‥三人の様子は微妙だった。
『不味くはないけど‥‥』
「ざけんな! 舌おかしいんじゃねえのか!?」
悪態をつく光彦に呆れた双子。
「この人、自分勝手だよなぁ」
「佳人ちゃんにお仕置きされちゃえー! あっかんべー!」
『佳人ちゃん、判定はお任せ〜』
双子が去ったので、光彦と奈落佳人の二人きりになった。
「肉じゃがですが、見栄えと味は上品で、良い腕と感覚があるにも関わらず、食す相手の事を考えてはいませんね」
「十分だけ待て! 今、別のものを作る!」
光彦は、大慌てで弟が言った「昔作ってくれたホットケーキ」を焼き始めた。
「何をするつもりでしょうか? おおっ! ホットケーキ! ホットケーキを焼いています! 先程の機械の様な精密さは見られませんが手馴れています!」
焼きたてのホットケーキも好評だったが、奈落佳人は何がご不満なのか、依頼を断った。
「相手の事を思いやり、優しい心を感じますが‥‥これは私が求めている料理ではありません。もっと精進なさい」
と説得してから帰った。
残されたケーキの皿を見詰めた光彦は、彼女にも良く作ったっけか‥‥とふと思った。料理は技だけ、という態度だったことを反省し、食べる相手を思いやる調理師になりたいと思っていた初心を思い出す。
そして、彼女との仲直りも考えた。
●子供向け料理
夫が出張中で留守の頃を見計らい、今日子(丙 菜憑(fa5575))は、奈落佳人を呼び出した。
「お願い! 私に暴力を振るう夫を奈落送りにして!」
「わかりました。その代わり、子供向けの料理を作ってください。その出来次第で、あなたの怨みを晴らしましょう」
「わかったわ、それで奈落送りにできるのなら子供向け料理を作るわ」
涙目ながらも、今日子は了承した。
『何かな、何かな?』
双子兄妹は、どんな料理が出来るのかワクワクしながら待っている。
「さて、子供向けの料理‥‥どうしようかしら?」
冷蔵庫の中を見て、最初に目についたものは卵だった。
「卵‥‥子供向け料理‥‥オムライスがいいかしら」
今日子は、手馴れた手つきで材料を用意し、調理を始めた。
「子供が出来たら‥‥皆で食卓を囲んで楽しく食事するってあの人といろんな話をしたわね‥‥」
しみじみと独り言を呟いてはいるが、今日子の手は休んでいない。
(「子供が出来たら、夫の態度が変わるかも‥‥」)
チュウニャンは、今日子の後ろに立ち、控えめに実況を始めた。
「丁寧に切りそろえた具材を炒め始めました。パラパラと解れるかのように、具材が炒まっていきます。次は‥‥卵を取り出し、割って溶き始めました。段々と依頼人の顔が穏やかになっているように見えるのは、私の気のせいでしょうか?」
子供向け料理を作っているうちに、今日子の心境が徐々に変化してきているのを奈落佳人は即座に感じ取った。
オムライスが出来上がった頃、良く考えれば、自分にも非があったのかもと反省する今日子だった。
できたてほやほやのオムライスを食べた双子兄妹は、声を揃えて『おいしい!』と大喜び。
「一応‥‥及第点だけど‥‥。本当に良いの?」
今日子の目をじっと見つめて、ニューアルが訊ねた。
「本当に奈落送りにしていいの?」
心配になったターグァも訊ねる。
『ん〜どうしよう? 佳人ちゃん、どうする?』
困った二人は、奈落佳人の意見を求めた。
「あなたは、どうしたいのですか?」
「奈落送りは‥‥やめたいと思うんだけど‥‥」
浮かない表情で、今日子はそう言うと、奈落佳人は依頼説明を行った。暴力夫が、奈落送りにする悪人でないことを今日子の本心から悟った上で、異世界でのお仕置きのみ行う事を約束した。
「今回は特別です。あの子達が喜んでくれたオムライスの御礼ですから。ターグァ、ニューアル、今日子さんのご主人をお仕置きしなさい」
『はーい♪』
二人は、はしゃぎながら夫が出張で宿泊している札幌のホテルに向かい、容赦の無いお仕置きをした。
「な、何で俺がこんな目に‥‥」
それは、あなたが一番ご存知のはずですよ? ご主人。
●厨娘(チュウニャン)の包子
「お待たせしました〜。締めくくりはこれです〜」
蒸したての包子を、満面の笑みで奈落佳人達に振る舞う厨娘。
蒸篭からは、できたての証拠である蒸気が立ち込めている。
出された包子を食べた奈落佳人は、満面の笑顔になり機嫌が良くなっている。
「やはり、厨娘の料理が一番美味しいですね♪」
『厨娘の包子が一番美味しいね♪』
双子は、顔を見合わせてニッコリ微笑みながら一口ずつ食べている。
料理は愛情、だね♪