泳げ?改造鯉のぼり!アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
氷邑
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芸能 |
フリー
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獣人 |
フリー
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難度 |
やや易
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報酬 |
0.8万円
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参加人数 |
6人
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サポート |
0人
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期間 |
06/25〜06/28
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●本文
「はぁ‥‥」
お笑い番組『ガハッ! とチャンネル』のAD、タイちゃんこと平井・平等は溜息ばかりついている。
「平井くん、何かあったの?」
「あのこと、まだ気にしているのか‥‥」
「あのこと?」
スタッフの一人が言った「あのこと」とは、平井が企画したコメディ番組が却下されたことだ。
「仕方ないよ。出演者少なかったし」
「時期が悪かったとしか、言いようがないねー」
スタッフ達の噂話は、どよ〜んな気分の平井に丸聞こえだった。
更に落ち込むかと思われた平井だったが
(『だったら、もっと面白い企画を書いて実行させようじゃないかー!!』)
と燃えていた。心の中で、だが。
思い立ったが吉日。平井は即、ノートパソコンを起動し、怒濤の勢いで企画書を作成した。
所要時間10分。マジで!? と思われるが、事実である。
「プロデューサー、新しい企画を考えましたっ!」
怖いよ、タイちゃんとプロデューサーが驚くほど平井の表情は凄かった‥‥ようで。
「こ、今回の企画は何かな?」
「これです!」
<企画書の内容>
内容『時期はずれでも鯉のぼりは泳ぐ!』
二人一組になり、真鯉、緋鯉のどちらかを改造し、面白い鯉のぼりを作成する。
<例>
緋鯉を人気アーティストブランド張りにアレンジし、等身大の女の子に大人気の『クリスちゃん』人形の下半身を入れ、人魚にする。
(これを見本に、面白い鯉のぼりを作ってもらう)
最もインパクトのある改造鯉のぼりを作った一組には、賞金10万円を贈呈。
「改造鯉のぼりって‥‥フィギュアじゃないんだよ、鯉のぼりは」
「面白ければ無問題、というのがプロデューサーの口癖でしたよね?」
鬼気迫る表情で、プロデューサーに言う平井。笑顔なのが更に怖い!
プロデューサーは、コクコクと、人形のように頷くことしかできなかった。
こうして、時期はずれの企画が実行されることとなった。
●リプレイ本文
「季節はずれの企画だから、滑ったらどうなるかわかっているよね? タイちゃん」
お笑い番組『ガハッ! とチャンネル』のAD、平井・平等を脅すプロデューサー。
「わ、わかってますよ‥‥」
平井は、プロデューサーとある賭けをしていた。
「この番組が失敗したら、僕は人間鯉のぼりになります!」
勢い余って、このような宣言をしてしまったのだ。
こんなこと言うんじゃなかったよ‥‥と後悔しても遅い。
(「皆さん、面白い改造鯉のぼり作ってくださいね‥‥!」)
●3部作改造
グライス・シュタイン(fa4616)は、緋鯉を選ぶとハサミを手にし、迷うことなく腹を切った。
「緋鯉のおなかをジョキジョキジョキリ♪」
鯉の開きというオチか? と思いきや‥‥長さ1メートルくらいに、ザックザックときり続けた。
その後
「首に結べば、スーハーマンの出来上がり! 勝ったッ! 第3部完ッ!」
第3部、と言うのには理由がある。
この改造鯉のぼりだが、3度目の正直での完成品だ。第1部、第2部は失敗作である。
●活け造り?
「『鯉のあらいのぼり』デ〜ス! 相方と作らなきゃならないんデスね? じゃあ、タイちゃんお願いしマス!」
白海龍(fa4120)は、平井を指名して改造鯉のぼり作成に臨む。服装は板前で、白海が刺身包丁を持っているのはネタを見てのお楽しみ。
「えっと、まず真鯉の「身」の部分をごっそり切り取りマス」
身って‥‥スカスカですよ!? と突っ込んではいけない。
「頭と尻尾が残りマスので、「骨」を軽い布素材で作って、頭と尻尾を繋ぎとめマス。
身の部分はオサシミ風にいくつかに切り、それぞれがほつれないように、ちゃんと泳ぐように、裏布をつけて処理シマス」
刺身包丁でバッサリ切るのかと思いきや、相方平井が用意したハサミでジョキジョキ頭と尻尾を切り落とす白海。
「タイちゃん、縫合宜しくデス」
「手術じゃないんですけど‥‥」
苦笑しながらも、切り落とした頭と尻尾を縫い付ける平井。その間、白海は残りの作業に取り掛かった。
「次に、サシミ盛りに見えるように並べタラ、骨鯉の後ろに並んで泳ぐように繋げマス! 刺身のツマ等も作って添えマス!」
この時点で、改造ではなくなっている。活け造りだ。
「う〜ん、鯉の刺身が飛ぶだけじゃ地味デスかねえ。タイちゃん、一緒に泳いでミマセンか? タイちゃんなのにコイ! みたいなー!」
「い、嫌ですー!!」
平井が泣き出してしまったので『鯉のぼり』ならぬ『タイ(鯛)のぼり』は没った。
●職人技
「よろしくお願いしますね、護国院さん」
「ま、よろしく頼むよ」
楓・フォルネウス(fa4046)と護国院・玄武斎(fa4159)は、共に緋鯉を選んだ。
「こういう創作活動ってのは想像力を駆使するからねぇ。あっしみたいな脚本家にとっちゃ『いんすぴれーしょん』ってやつを高めるいい機会さね」
創作意欲に駆られた護国院は、緋鯉にダンボール紙で作った龍の手足と角を付け、粘土を土台にし、滝に見立てた水色の紙テープを垂らした棒に立てかけた。
「鯉ってのは滝を昇って龍なる生き物って言い伝えがあったような気がしたんで、ちょいと龍っぽくしてみたんだが、どうかね?」
彼が言うように、中国では鯉は天界の龍門に登り、龍になるという伝説がある。
緋鯉が、今にも天高く舞う龍のように見える改造は見事だ。
「護国院さんとは別の方向で私も作ろうっと♪」
楓は、緋鯉をピンクに塗り、ピンクの花びらを鱗みたいに一枚一枚貼り改造。これはこれで、手間のかかる作業で。
作成から数十分後、完成。
「題して『花鯉のぼり』のピンクちゃん、です♪ 赤とか黒じゃ味気ないと思ってピンクにしてみました」
赤の緋鯉が、全身ピンク色に施されている。
二人の改造鯉のぼりには、職人芸が感じられた。
●肉体芸術?
お笑い初参戦の大道寺イザベラ(fa0330)とアルディーヌ・ダグラス(fa4382)のコンビは、緋鯉を手にしながら「どうしよう‥‥」と戸惑っていた。
「こうすればいいんだよ」
アルディーヌは、真鯉を自らに巻きつけた。どうやらサリーと勘違いしているようで。サリーとは、細長い布からなっており、様々なスタイルで体を包み込むようにまとうインドの女性が着用する民族衣装だ。
「な、なるほど‥‥そうきたか、流石はアルちゃん!」
相方の咄嗟のボケに、思わず拍手する大道寺。サリーの代用としては、長さが足りない気がするが‥‥。
「じゃ、アタシはこうするのだ!」
大道寺がとった行動は、な、なんと!
真鯉を巻きつけ、イブニングドレスに見立てたという衣装のまま、舞台中央に設置してあるポールによじ登って自ら緋鯉を演じたのだ。
ネタ打ち合わせの際、スタッフ達は危険だからと反対したのだが、プロデューサーの「面白ければ何でもオッケー!」というゴリ押しにより実行に移された。
余談。本番ではカットされるが、安全面を考えワイヤーが取り付けられている。
「これが前衛芸術というモノなのよ、アルちゃん!」
人間鯉のぼりになり、芸術を熱く語る大道寺。
ワイヤーで上から吊り下げられているとはいえ、ポールをよじ登る作業は、並みの女性がとても出来ることではない。それをやり遂げた大道寺イザベラは、ある意味大物アイドルかもしれない。
大道寺は吊り下げらられた後、ポールと垂直な角度を保ち、風がたなびいているようにくねくねと動く。
「あたしは鯉のぼり! 今、あたしが鯉のぼりだよ!!」
「すごいよ、イザベラちゃん! 私もやる!」
大道寺に影響されたアルディーヌは、大道寺に倣い、サリー真鯉と化した。
大道寺・アルディーヌ組は、自らが鯉のぼりという身体を張った改造鯉のぼりを披露してくれた。
そのボケは番組終了合図が出るまでヒートアップしていた、というのはここだけの話にしておこう。
●泳げ? タイのぼり!
大道寺とアルディーヌをポールから下ろした後、プロデューサーによる審査発表は行われた。
「えー‥‥『第一回・キリキリ天高く泳げ改造鯉のぼり選手権!』最優秀選手は‥‥」
ドラムロールが鳴ると同時に、出場者達の胸が高鳴る。
「該当者無し!」
はぁ!?
「ちょ、ちょっと待ってよ! ソレ、どゆコト!?」
納得いかない大道寺が、プロデューサーに詰め寄る。
「スタッフ皆で、どれを選ぶか散々悩んでの結果だ。甲乙つけがたくってねー。おまえさんは、身体を張った鯉のぼりを見せてくれたんだけど、改造としちゃなっていない。それに、ヤバい展開になった場合、賞金は治療費になっていたんだぞ」
身体を張った芸であれば、文句なしに大道寺・アルディーヌ組が文句無しの優勝! と付け加えるプロデューサー。
「皆、タイのぼり見たいと思わないか?」
タイのぼり?
「プ、プロデューサー! アレを実行するつもりなんですか!?」
タイのぼり、という言葉に敏感に反応する平井を見た一同は「見たい!」と言い出した。
「平井さんが『鯉のぼり』になるの? それなら、負けても文句は言えないね」
「イザベラちゃん、それでいいの?」
いいの、とあっさり負けを認める大道寺。
「タイのぼり、見たいデース!」
先程、冗談で言ったはずの『タイのぼり』実現に喜ぶ白海。
「面白そうじゃないか。あっしも、是非見たいねぇ」
「私も見たいです♪」
護国院と楓は、期待のまなざしで平井を見ている。
「自分の『スーハーマン』をつけてください」
グライスが、自分の首に巻いていた改造鯉のぼりを平井の首に巻きつけた。
一時間後‥‥。
「たーすーけーてー!!」
平井は、番組スタッフの手により、強引に『タイのぼり』にされていた。
ワイヤーで吊るされているので落下する心配はないのだが、高所恐怖症の平井にとってはものすごい怖い体験である。
「良い格好だよ、タイちゃん!」
両腕はしっかりポールを掴み、下半身を真鯉に隠されて人魚状態の『タイのぼり』は、特大扇風機による強風に揺られ、楽しそうに泳いでいる。
「楽しくなんかありませーんっ!!」