Blue in Red 3アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
氷邑
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芸能 |
フリー
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獣人 |
フリー
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難度 |
普通
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報酬 |
1万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
10/21〜10/25
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●本文
青は、南国の孤島を取り囲むように広がったネイビーブルーの青。
赤は、その孤島に聳え立ったホテルの中で起こる惨劇を象徴する血の赤。
日本国の謀略により集められた32名の一般市民がたった一つの生存権を賭け、孤島のホテルで殺し合いを行う。
帰る事も、逃げる事も出来ない人間の極限が見せた弱さ、醜さ、美しさ、裏切り、愛情、友情、絆。
そして運命を捻じ曲げようとする比類無き強さ。
千ページ以上にも及ぶ良い意味でも、悪い意味でも問題作と言われたこの長編小説の映画化が決定した。
それに伴い、各方面から役者を募集している。
撮影は、登場人物達の友情、愛情を描いたシーンから始まる。
シーン1・面影
ホテルの医務室で、椅子に腰掛け物思いに耽る客船の船医。
その時、一人の男が重体の女性を連れて部屋に入ってきた。
女性に、病気で亡くなったかつての恋人を思い重ねる船医の心情は‥。
シーン2・約束
「私達、ずっと友達だよ」
「わかってる」
ホテルの一室に閉じ篭っている二人は、固い友情を誓い合う。
シーン3・家族
仕事ばかりで、家族にも何かと苦労をかけたお詫びとして今回の旅行に家族と参加したサラリーマン。
怯える家族を励まし、最後まで諦めるなと父親らしく振舞う。
その様子をモニター越しで見ている内閣総理大臣・真山壱は「くだらん」と呟く。
シーン4・回想
真山にも、かつては大切な家族や恋人がいた。
モニター越しに見た参加者達を見て、ふと、そのことを思い出すが、すぐ普段の性格に戻る。
これから、真山は何をしようとするのか‥。
<登場人物>
船医:参加者達が乗っていた船のドクター。恋人と死別した過去を持つ。
友人二人:高校生〜大学生が望ましい。
サラリーマン:仕事命だが、家族のことを大切にしている。
真山壱:内閣総理大臣。声のみの出演(一人称:私、二人称:君/諸君 、〜たまえ)
冷酷非情、国粋主義者、選民思想に凝り固まった狂人。
男性に近い声を出せるのであれば、女性でも可とする
真山以外の登場人物の名前(フルネームで)は考案の上ご応募下さい。
殺人シーンは一切ありません。
●リプレイ本文
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船医の志水剣一郎(星野・巽(fa1359)) は、ホテルの医務室で椅子に座り、写真立てを手に取り眺めていた。そこには彼と病気で亡くなった、いや、自分が安楽死させた恋人と彼が写っていた。それがトラウマとなり、剣一郎は生きることに希薄になり、生を望む者には治療を、死を望む者には死をと考えるようになった。
「人は誰でもいずれ死ぬ‥か」
ホテルの一室にいたユーリー芳村(レナード・濡野(fa4809))は、何かが崩れ落ちるような音を聞いた。元特殊部隊だった故か、危険を鋭敏に感じ取り、娘のカナ芳村(紗原 馨(fa3652))にドアの施錠をし、開けないように指示すると外の様子を見に行った。
音がした場所に駆けつけると、老朽化した天井が崩れ落ちていた。瓦礫の下にいる人物の生死を確認するため近づいた。下敷きになっているのは矢田メイ(アルディーヌ・ダグラス(fa4382))。瓦礫を退かしメイを救出するが、意識不明の重傷だった。
「重傷者だ! 衛生兵! いや、医者!」
メイを担ぎ、ユーリーは危険を承知で助けを求めた。
その声を偶然聞きつけた剣一郎は、医務室のドアを素早く開けユーリーを招き入れた。
「‥真理亜?」
メイに、死んだ彼女の姿を重ね合わせる。
「あなたは軍人ですか? ならば、手当てくらい手伝えるでしょう?」
ユーリーがメイの容態を見ている間、剣一郎は医療器具と薬を手早く用意するが、医務室には簡易的なものしかない。
「‥生きたい」
意識が朦朧としているメイが、剣一郎に懸命に生きたいと伝える。
「‥生きたい‥こんな私でも‥」
メイは、バーで会った男の言葉を思い出した。
『罪人に自らを裁く権利は無いと知れ』
冷たさの中に、優しさと犯罪者である自分にも生きる権利があるとメイは思った。
「生を望むものは何があっても助ける」
その言葉も虚しく、メイの容態は生死を漂うほどに悪化した。
「出血が止まらない! 輸血が必要だ。彼女の血液型は‥」
剣一郎は乗船前に行った時の健康診断カルテをモバイルから引っ張り出し、メイと自分が偶然同じなので、注射器を使い、輸血を行った。
輸血の甲斐があり、メイは意識を取り戻した。
「あなた‥私の生きる光になってくれる‥?」
「私は‥君と共に生きても良いのだろうか‥?」
剣一郎の言葉に、コクンと頷くメイ。真理亜と共に写っている写真が入れてある写真立ては、伏せられていた。
二人の様子を見守ると、ユーリーは静かにその場を去った。
●
月凪鈴(紗原 馨二役)と梶原ゆう(沢渡霧江(fa4354)) は、ホテルの一室に閉じ篭っていた。
ゆうと鈴が知り合ったのは、親の都合で引っ越してきた町で、最初に声をかけたのが鈴で、家がはす向かいで、何度か行き来しているうちに友達になった。年の差はあれど、二人の友情は続いている。
生活サイクルの違いから、二人の仲は疎遠気味に。仲直り、というより復縁のきっかけとして、ゆうが今回の旅行の話を持ちかけ、二人で行くことになった。
明るく元気、ジーンズにTシャツという動きやすい服を重視する男勝りな鈴だが、時間が経つにつれ疑心暗鬼になっているが、それでも、ゆうだけは信じている。
「ゆう、絶対生きて帰ろうね、二人で」
「うん」
今が友情の確かめ合うチャンスだと思ったゆうは、ロングスカートのポケットにしまっていた鈴にプレゼントするファンシーな狼のぬいぐるみストラップを取り出し、鈴に手渡した。鈴も同じことを考えていたのか、銀の指輪を鞄から取り出し、ゆうに手渡した。
「ありがとう、鈴。大切にするよ。それと‥ストラップは私とおそろいだよ」
「本当? 嬉しいな。大切にするよ。ゆう、楽しい旅行にしようね?」
鈴の温かい言葉に、ゆうは励まされた。
時間が経ち、二人は空腹感をおぼえた。それと同時に、ノック音がする。
「誰だろ‥?」
鈴は訝しげにドアを少し開け、ワゴンに料理が盛り付けられいる皿を乗せた人物をじっと見た。赤いスーツを身に纏った赤い狼の人格である赤城拓也(ディノ・ストラーダ(fa0588))だった。
「ここに料理が盛られた二枚の皿がある」
ドア越しでも、料理の芳醇の香りが漂う。それに釣られ、ゆうもドアの前に来た。
「どちらを食べるも、どちらかだけ食べるも君達の自由だ。ただし、どちらかに毒が‥いや、無粋な事はやめておこう。それと‥隣人が明日も友人でいるとは保障は何処にも無い」
意味深な言葉を残し、赤い狼は去っていった。
二人は悩んだ。どちらを食べても、食べなくても死ぬことには変わらない。全く同じ料理のどちらか、あるいは両方に毒が‥という恐怖もあったが、二人は食べることにした。同時に食べたい方を指をさして決める、という方法でどちらにするか決めたが、偶然、同じ皿を選んだ。笑いながら「いただきます」と、一皿を二人で分け合った。料理だが、実はどちらにも毒は入っていない。二人を困惑させる赤い狼の策略だった。
「私達、ずっと友達だよ」
「わかってる」
鈴とゆうは、固い友情を誓い合った。
●
ユーリーは部屋に戻ると、カナの無事を確認した。無事だったので、安心した。
彼は特殊部隊あがりの戦闘の元プロだった。軍務一筋で家庭を顧みることが無かったため、妻の死に目にも会えなかった。そのことを後悔し現役を引退、サラリーマンに転身したが、慣れぬ仕事の結果は思わしくなく、上司から「ダメダメな奴」と言われる始末。不在がたたったせいか、カナには他人のように接している。無骨、不器用、コミュニケーションの取り方がわからない彼が取った行動は、親子関係の修復を図るため、このツアーに参加したのだが、不幸にもサバイバルゲームに巻き込まれてしまった。
「ユーリーが旅行に誘わなければ、こんな事に巻き込まれずに済んだんですよ!」
カナに八つ当たりされても、ユーリーは謝ることしかできない。コミュニケーションを取ろうとしている努力の結果は虚しかった。
その時だった。廊下から誰かが争っているかのような音が聞こえた。
「こ‥怖い‥」
内気なカナは、立ったまま怯えている。
「大丈夫だ! お前は俺が必ず守る!」
ユーリーの表情は、情けない父親から戦闘のプロになっていた。カナをぎゅっと抱きしめ、殺されても死なんぞという意気込みを見せた。
「私は、こんな旅行なんてどうでも良かった‥お父さんに愛されたかったのよ」
愛される実感したかった、もっと一緒に過ごしたかったという本音に気付き、その思いを「お父さん」と呼んだユーリーに伝えることで、二人は普通の親子に戻った。
「最後まで諦めるな! 諦めたら負けだ!」
「うん!」
危険な状況下で、親子の絆は更に固まる。
「くだらん」
モニター越しでその様子を見ていた内閣総理大臣・真山壱(joker(fa3890))が呟く。
●
そういう壱にも、愛する妻と、目に入れても痛くないほど可愛がっていた娘がいて、家族仲はとても良かった。だがある日、自宅で娘が殺されていて、妻は行方不明になった。娘を殺害した犯人はすぐに捕まったが、彼は妻の恋人だった。二人で逃げようと計画したが、そのためには娘が邪魔だったので殺し、妻は口論の末、殺害したと自供。正確には犯人は元恋人で、ストーカーであった。
妻と仲が良かった妻方の親戚、方城瑞希(七瀬・瀬名(fa1609))はそれを断固拒否したが、壱は裏切られたと思い込む。
そんな荒んだ過去のせいで、元々歪んでいた思想に拍車がかかり、現在の壱に。そんな彼だが、お互いに信じあう人々を見て、妻を信じられなかった自分をふと省みる。
その頃、瑞希はモニターに気付かず、端末を探していた。フロントにいけばパソコンがあり、そこからシステムに侵入出来るかもと考えながら、フロントを目指して歩き出した。
「こんな戦い、早く終わらせなくちゃ。そして、皆で此処を脱出するの。そうすれば‥あの人の野望も消えるかな? 元の優しいあの人に戻ってくれたらいいな」
総理の親類である瑞希は、どうしても壱に優しい叔父様に戻って欲しかった。
フロントに着き、持参したモバイルをフロントのパソコンに接続し、爆弾の解除方法を探す為、システムに侵入を試みるが、プロテクトが解除できず焦りだす。
「なんて頑丈なプロテクトがかかっているのよ‥。まぁ、国家機密だし、しょうがないか‥」
と言いながら、再度挑戦する事に。
壱は、瑞希が政府にとって不利益な行動をしていたことをあえて知っていて、このサバイバルゲームに参加させたのだ。
静まっている医務室に、ノック音がした。剣一郎がドアを開けると、そこには本来の人格である拓也がいた。
「‥どうぞ」
無害と判断した剣一郎は、拓也を医務室に入れた。
「こんにちは、先生。えっと‥あの‥そこの美人の具合はどうなの?」
突然そう言い出す拓也に剣一郎は驚く。初対面のはずなのに、何故メイのことを拓也は知っているのだろう?
「あなたは‥あの時の‥」
メイは、拓也が以前会った時と雰囲気が違うことを察して警戒していた。
「お腹がすいているだろうと思って、料理を作って持ってきたんですけど‥余分でしたか? あれ? 三人分用意してある。でも、バツが悪いようですね。たはは‥」
拓也は料理を乗せたワゴンを部屋に置くと、医務室を出て行った。
現在の生存者、26名。一時の休息が終わろうとしている‥。