トラウマを克服せよ!アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
氷邑
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芸能 |
フリー
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獣人 |
フリー
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難度 |
やや易
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報酬 |
0.7万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
08/26〜08/30
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●本文
お笑い番組『ガハッ! とチャンネル』のAD、平井・平等は高所恐怖症である。
それにも関わらず、改造鯉のぼり番組で人間鯉のぼり(タイのぼり)をさせられてしまった。
それが、更に彼の高所恐怖症を悪化させてしまったのだ。
彼が高所恐怖症になったのは、幼少時に木登りしていた際足を滑らせ、高い位置から落下して骨折したのが理由である。それがトラウマとなっているのだ。
番組プロデューサーは、芸能人達に平井の高所恐怖症を治してもらおうかと考えた。
「このままじゃ、タイちゃん仕事できなくなっちゃうよ。アレでも、うちの番組は彼で成り立っているようなもんだからさ」
プロデューサーがいうように、実際、平井が企画した番組の大半は成功をおさめ、高視聴率を得ている。
「プロデューサー‥‥企画としては面白いですが、平井さんが可哀相ですよ」
「平井さんのトラウマが悪化しちゃったら、シャレにもなりませんって」
スタッフの何人かは反対したが、プロデューサーは「これでいく!」の一点張り。
平井の高所恐怖症は、果たして治るのだろうか‥‥?
●リプレイ本文
●トラウマ
「高所恐怖症か。短期間に克服出来るものではないから、時間をかけて治すのがいいだろう。平井が恐怖症を乗り越えるきっかけを掴める事が出来るよう、最善を尽くそう」
平井・平等の高所恐怖症克服協力者であるスラッジ(fa4773)が言う。
「実行サセタのは他のヒトとは言え、タイのぼりの言い出しっぺは僕ナノデ、若干責任を感じてマース! そんな僕がいろいろ言ってもダメと思うノデー、ストレイトに癒すノハ他の方にお任せシマス」
白海龍(fa4120)は軽い冗談がこんな事になり、若干責任を感じていた。実際には番組のためとか称して強引にやらかしたスタッフ一同が原因だが、平井のために心から懺悔する気でいた。
「高所恐怖症なの〜? 可哀相というのもあるけど、ちょっと残念って感じ〜」
無邪気にそう言うサクラ・ヤヴァ(fa2791)。
「だって、あんなにも壮大で綺麗な世界があるんだって言う感じなのにね〜。ちょっとずつ慣らしていくのが一番だと思うけどね〜」
「高所恐怖症ですニャか‥‥大変ですニャね‥‥。るーじゅは高いところ怖くないと言うより大好きですニャから、気持ちが分からないんですニャよね」
高いところが好きなサクラの隣にいるルージュ・シャトン(fa3605)には、平井の気持ちが理解できないのは無理ない。
「高所恐怖症であるか。催眠術や心理療法の使える人材もいないので、一番簡単かつ多くの人に用いられている方法を使うしかあるまい」
マサイアス・アドゥーベ(fa3957)の提案は、「高いところに慣れさせる」であった。
「問題は、どれくらいの高さまでなら問題ないか、ということであるな。2階のベランダは大丈夫か? 3階は?」
「住んでいるアパートは3階なので、それくらいなら大丈夫です‥‥」
「こんにちは、春雨サラダです。少しでもお力になれたらなーと思っています。どうぞ、よろしくお願いします。3階くらいの高さが大丈夫、ということは、それ以上は駄目なんですか?」
元気良く自己紹介を終えた春雨サラダ(fa3516)は、平井の高所恐怖度を聞きだした。
「はい。飛び降りられないほどの高さが駄目です‥‥。小さい時、木の頂上から落ちて以来、高いところが怖くて‥‥。死ななかったのが奇跡なくらいです」
幼少期のトラウマを思い出したのか、ダラダラと冷や汗が出ている。
「平井、あまり無理はするな。と言いたいところだが、あんたのために集まった者のために少し頑張ってみないか?」
スラッジの言葉に、やれるだけやってみますと怯えながらも答える平井。
その様子をじっと見つめる群青・青磁(fa2670)。
(「人のトラウマを見せもんの番組にするんじゃねぇ、と平井の分もプロデューサーをぶん殴って止めてぇとこだが‥‥局に出入り禁止にでもされっと困るからな。
平井の奴も仕事も手につかねぇ情況ってことは、日常生活に支障をきたすかもしれねぇしな。そうなる前に、何としてでも克服させっか」)
心の中で意気込む群青だった。
「とりあえず、話を持ちかけたプロデューサーに話を聞こう。それから、どうするか考えるべきだ」
スラッジの意見に、皆は賛成した。
平井と協力者達は、プロデューサーと打ち合わせを始めた。
「高所恐怖症が悪化したのは、番組の演出とはいえ平井に無理をさせたからだろう。ADとして多少は無茶を言われる事もあるだろうが、それで潰れてしまっては元も子もないだろう」
その意見はご尤も。
プロデューサーは平井が憎くてやったわけではなかったが、スラッジの言葉に冷汗を流していた。
「あんた、平井を失うのは痛いから人を集めて恐怖症を治そうとしたんだろう?」
「あ、ああ‥‥」
まるで蛇に睨まれた蛙だった。プロデューサーは心を見透かされたかのように頷き、頭を下げた。
「と、とりあえず、平井くんが怪我しないように克服の手伝いをしてあげてください‥‥」
竦んだ状態で、普段使わない敬語でお願いするプロデューサー。
●克服法
「これを持ってください」
サクラが平井に手渡したのは、雑巾だった。
「まずは、非常階段を掃除してください〜。あたしとルージュちゃんも手伝うから〜」
二人の案は、徐々に高いところに慣らそうというものらしい。
「ここが終わったら、そこの階段を掃除してくださいです」
一段ずつ、丁寧に掃除をする三人。一段目が終わると二段目、それが終わると三段目と徐々に高くし、一心不乱に掃除。
「はい、終了です〜。まだ高いところは怖いですか〜?」
気がつくと、3階まで掃除していた。
「だ、大丈夫です‥‥」
平然とした表情だが、声が震えている平井。
「テレビ局のビルならば高いところには事欠くまい。まずは窓越しなら大丈夫か?」
「だ、大丈夫です‥‥」
時間の制約付きだからそう悠長にやる訳にもいかないが、マサイアスはスパルタ式でトラウマを悪化させるよりは地道な治療が良いと仲間達に話した。
「彼はパイロットでも登山家でも無いし、バンジージャンプの企画をさせようという鬼はさすがに居らんだろう。ヤバそうな所を見極める事で、少しずつ改善する糸口が見つける、これであるな」
要するに完治は無理でも日常生活に支障が無ければ良いのだ。局の屋上や非常階段で立ち竦む事が無ければ、上出来と考えなければいけない。
「では、屋上に行くである」
屋上までの階段はゼイゼイ言いながらも普通に上っているが‥‥屋上につくと、平井の顔は青ざめた。
「‥‥駄目であったか」
屋上には、「龍(たつ)のぼり」と化した白海がいた。
というが、単にパンツ一丁の姿で肌を白塗りにし、白布を巻いただけなのだが。
「季節外れにも程がありマスが、鯛のぼりの時と同じ要領で僕が天に昇りマス! タイちゃ〜ん、地上側から見上げると大した高さでもナイんダヨ〜〜」
白海は身体を張って、ちょっとでも平井が安心すればと考えた。少し震えた彼の声に、平井は変だと思った。
竜獣人の白海は獣化すればこんな高さどうという事は無い。勿論、人間時は落ちればただでは済まないが、翼を出せば済むことだ。
「名演技ですけど‥‥ねえ」
翼が出せると分かっていれば怖くはない。滑稽な姿を見上げて平井は微笑む。
「こんな高い場所で笑えるやなんて、少しは効果が出てきたん?」
雅楽川 陽向(fa4371)が笑顔で言った。
「本当ですニャか〜。高い所が大好きになりすぎて困るかもですニャよ〜☆」
ルージュはそう言って、平井を屋上から追い出した。
「慣れてきたなら、もう少し経験して貰った方がいいって感じぃ?」
不思議そうに聞くサクラに、陽向は苦笑いを浮かべる。
「今さっき聞いたんですけど、白海さん、背中に白布巻いてて、翼出せんらしいの‥‥そんなの平井さんが知ったら卒倒しはるわ」
「えっ?」
絶句するサクラ。改めて見た白海の姿は、まさに懺悔のポーズ。
(「怖いデエエエエス!!」)
内心でそう叫んでいるが、それを平井に悟られてはいけないので踏ん張っている。
でもやっぱりきつい。
(「タイちゃん許してクダサァァァアアイ!!!」)
僕のコノ姿を見て、また明るくて元気なタイちゃんに戻ってクダサいと思いながら、白海は夏の風になびかれていた。
「平井さん、皆さん、休憩しませんか?」
春雨は、人数分のクレープを買いに行っていたようだ。
「ここじゃ落ち着かないでしょうから、非常階段で食べましょう」
春雨は、全員を引き連れて非常階段に向かった。
「平井さん。チョコバナナとクルーツクリーム、どっちが良いですか?」
「じゃあ、チョコバナナで」
春雨に手渡されたクレープを、平井は少しずつ味わいながら食べた。
「高い所に別の思い出ができれば少しは気持ちもましになるんじゃ無いかなー、と思うんですけど、皆さん、どうでしょうか?」
「あ、それ、私も考えていました。少しづつ高さが上がって行ったら大丈夫やと思うので、ハイキングに行きましょう!」
陽向の案に、皆は賛成した。
富士山は無理だろうと推測し、近くの見晴らしの良いハイキングコースに翌日行くことに。
「綺麗な景色と、おいしいご飯。野外で食べるには絶好の機会やと思いますよ」
高所でも、楽しい事がある事を話す陽向。
翌日、平井一行はハイキングコースに出かけた。
(「おにぎり持って、水筒持ってと。おやつはピーナッツとラーメンやな♪」)
遠足感覚で張り切っている陽向に釣られてか、平井も楽しそうな表情になっていた。
「さあ、次はキャンプやね♪ バーベキューとか、キャンプファイアで夏の思い出作りもええんと違う」
夏だから、というのは方便だ。キャンプ場は山にあるものだから、自然と高い所に上らせる事が出来るという陽向の思惑だった。勿論、出来るだけ高いキャンプ場を選んでいた。
「バーベキューより、カレーのほうがええかな?」
「ん〜そうだね〜。カレーのほうがキャンプらしくてあたしはいいと思うな〜」
「ルージュもそう思います‥‥」
「我が輩は何でも良いが、カレーのほうが思い出に残るであろう!」
カレー派は多かったので、皆でカレーを作ることに。
(「これで少しでも症状が軽くなるのか‥‥?」)
そう思いながらも、スラッジはナイフでジャガイモの皮も剥いていた。
夕飯後、皆で少し小高い丘に向かい、星を見上げた。
「綺麗ですね‥‥。星を見ていると、僕の恐怖症はなんてちっぽけなことなんだろうって思います」
「タイちゃん、高いところ平気になったようデスネー」
「え‥‥?」
無意識のうちに、平井は高い岩場に上っていた。白海にそう言われ、平井は顔が少し青くなり、ふらついた。
「だ、大丈夫であるか!?」
マサイアスに支えられながらも、平井はまだ青ざめていた。
結果:平井・平等の高所恐怖症克服はかなり遠い道のりとなるであろう。
しかし、獣人達は平井の元気を取り戻すことに成功した。