私立アスラ女学園 陸アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 一本坂絆
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 1.1万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 09/25〜09/30

●本文

 その日、私立アスラ女学園学生寮はいつも以上に賑わいを見せていた。
 秋の名物、大型台風が近付く日暮れの事。しかし、賑わいは、強風を受けてガガガガガガガン! と激しく揺れる窓ガラスの音に対する怯えから来るものでも、普段は味わう事のできない非日常(台風)に対する興奮から来るものでもない。
「ねぇ、どしたの?」
「知らないの? 今日は生徒会の方々が全員、学生寮にお泊りになるんですって!」
「ホント!? 生東様が拝めるの!」
「私は守さんのお姿を拝見したいわ。まだ二年生だと言うのに、三年生と肩を並べてお仕事をするなんて、素敵だわ‥‥」
 何故そんな事になっているかと言うと、話は簡単。台風の影響で、電車が止まってしまったのだ。しかも間の悪い事に、そろそろ学園祭の準備が始まるとあって、一部の生徒は生徒会に提出する見積書や計画書を制作する為に、普段より遅くまで学園内に残っていた。それは生徒会も例外ではなく、既に提出された見積書、計画書等の必要書類の整理や、準備期間の予定の取り決め。実行委員の名簿の制作と、山済みの仕事を片付けている間に自宅登校組みが帰れなくなってしまったのだ。
 急遽泊まる事になった一般生徒は、寮にいる知人の部屋に泊めてもらうか、畳敷きのミーティングルームに敷かれた布団で一夜を過ごす事となる。
 生徒会メンバーも、この際寮に泊まって少しでも仕事を片付けてしまおう、と全員が寮での宿泊を決めた。それがこの騒ぎの原因である。
 実は、一般生徒が行事や集会以外で、生徒会メンバー九人全員が揃っている所を見る機会は殆どと言って良い程に無い。この貴重な機会に、多くの生徒達が目を輝かせているのだ。
「早く行かないと!」
「あ! 待って下さい!」
 二人の女生徒が廊下に貼られた『廊下で走っちゃダメなのよ!』と書かれた張り紙を無視して、駆け出そうとした、その時―――

―――光―――

 世界が白一色に染まる。一瞬の静寂。を破って、

宕後五語午梧ッ後おオ御ォ恩!!!!

 形容しがたい音。地鳴りの様な轟音と共に、白一色に染まっていた世界が、黒一色の世界に反転する。
 黒に埋め尽くされた世界に、いくつもの甲高い叫び声が響いた。
「これって‥‥」
 言うまでも無く、それは―――
「停電‥‥だよね‥‥」







†キャスト募集†
 ドラマ『私立アスラ女学園』への参加者を募集します。
※注意※
・生徒会はNPCとして扱います。生徒会メンバーを演じる事はできません。ご了承ください。
・実際のドラマでも、二十代の役者さんが高校生を演じる事は良くあります。あまり年齢を気にせずにご参加ください。
・お題に沿ってストーリーを考えて頂いても構いませんし、キャラクターや取りたい行動だけ書いて、後はお任せと言う形でも構いません。

†私立アスラ女学園の御案内†
アスラ女学園では生徒はもちろん、教職員も女性を採用しています。
当学園では、文武両道の精神と、生徒による自治を重んじています。
各クラブ活動、学校行事の運営、生活指導は生徒会主導の下に行われています。
自宅登校が基本ですが、学生寮もあります。
また、中等部、初等部の敷地が隣接するように並んでいます。隣接しているだけで、中等部、初等部とは敷地、施設は別れています。
■歴史
創立は約三百年前。元は仏教色が強かったのですが、戦火に焼かれた事と、施設の近代化に伴い、現在では名称と一部の伝統にのみ名残が残っています。敷地内にお堂があるのはそのためです。
■学校施設
校舎は三階建て。
敷地は『校門から校舎(下足場所)まで十分はかかる』と言われるほど広く、グランド、体育館、室内プール、図書館、部活棟、各道場、テニスコート、花園、食堂、カフェテラスなどの施設がそろっています。学生寮も敷地の中に入っています。
■学生寮
他の施設や委員会、クラブ活動にも言える事だが、生徒数が多くなると、その規模も自然と、必然的に大きくなる。寮といっても、その人数は小さな小、中学校に匹敵する。
朝食と夕食は当番制。複数の部屋が合同で調理する。これは文武両道を掲げる学園の方針によるものであると同時に、寮生のコミュニケーションを図っている。
寮監は、長期休暇を別として、通常は日替わりの当直制。
■生徒会
アスラ女学園の生徒会は生徒会長が三人おり、副会長がいません。
『スリーオブフェイス』
【生徒会長】
■小扇 一羽(こおおぎ ひとは)
常に微笑を絶やさない生徒会長。
■夜坂 東(よるざか あずま)
中性的な容姿から下級生に絶大な人気を誇る。
■片馴 静奈(かたなれ しずかな)
委員長気質の生徒会長。眼鏡。
『ライトアーム』
【書記長】遠昏 真戯(おちくら さなぎ)
百九十センチの長身と慢性的な胃炎を持つ。
【会計士】風祭 葛篭(かざまつり つづら)
ものぐさで適当な正確。真戯の相方。
【風紀委員長】辻 守(つじ まもり)
二年生にして学園一の武闘派委員会の長を務める。
『レフトアーム』
【運動部連代表】藤華・キャヴェンディッシュ(とうか・キャヴェンディッシュ)
お嬢様。英国の金獅子。縦ロール。
【文化部連代表】荒縄目 夢路(あらなめ ゆめじ)
白衣に眼鏡。関西弁。三本の三つ編みが特徴。
【学生寮代表】木霊 菜々実(こだま ななみ)
十二歳にしか見えない十八歳。寮のまとめ役。

●今回の参加者

 fa0513 津野雪加(20歳・♀・牛)
 fa0913 宵谷 香澄(21歳・♀・狐)
 fa2132 あずさ&お兄さん(14歳・♂・ハムスター)
 fa2370 佐々峰 菜月(17歳・♀・パンダ)
 fa2791 サクラ・ヤヴァ(12歳・♀・リス)
 fa4142 雨宮カナタ(17歳・♀・猫)
 fa4396 葉桜リカコ(16歳・♀・狸)
 fa4581 魔導院 冥(18歳・♀・竜)

●リプレイ本文

 ―――カッ!
 空を白く染める閃光から一拍遅れで、龍が吼えたかの様な轟音が迅る。
 暗闇に閉ざされた学生寮の廊下に立つ闇野マナ(魔導院 冥(fa4581))は、窓ガラス越しに雷を眺めていた。紫を纏った白い亀裂が空を迅り、マナの金色のショートボブを白く染める。
「ギグに遅れた上に停電か‥‥シット、いやGo to HELLだな」
 手に持ったギターのマイナーコードを弾いて独り心地るマナ。
 本来マナは寮生ではない。だが、電車の運休に伴い帰宅が絶望的となった為、学生寮に一泊する事となった。しかもその学生寮は、先程の落雷で停電してしまっている。
 マナはミーティングルームの扉へと視線を移す。ミーティングルームの中には、マナと同じく帰宅する事ができなくなった生徒達がいる。
「‥‥‥事を成すには、光源が必要だな。それも出来るだけ多くの‥‥」
 扉に背を向け歩き出そうとしたマナの背後から、
「何処に行くの?」
 声を掛けてきた少女は、タイの色から判断するに二年生のようだ。
 少女―――音ノ羽 沙弥(雨宮カナタ(fa4142))もマナと同じく、台風のせいで帰れなくなった生徒の一人だ。寮生の友達の所にでも行こうとミーティングルームを出たところで、マナの姿に惹きつけられて声を掛けたのだ。
「光源を探しにいく。出来れば懐中電灯が良い。出来るだけ多く集めたい」
 マナは簡潔に答えた。
「何に使うんですか?」
「暗闇ライブさ。そうすれば暗闇で不安がることも無かろう? クックック‥‥」
 ライブ。
 コーラス部所属の沙弥が喰い付くには十分な言葉だ。
「それ、私にも参加させて下さい!」
 別に断る理由も無いので、マナは沙弥の申し出を受け入れた。
「そうと決まれば、キーボードを持ってこなくっちゃ!」
 はしゃぐ沙弥にマナが、
「キーボードは電気がないところでも使えるのかい?」と指摘する。
「そうだった!忘れてたよ‥。じゃあ、バックコーラスとして参加する」
 一瞬肩を落とした沙弥だが、直ぐに立ち直る。
「では、光を求めて、闇夜の散歩と洒落込もう」


 廊下を光が移動する。ペンライトの光だ。
 狐村 静(宵谷 香澄(fa0913))はペンライトで足元を照らしながら、寮内を散策していた。顔には暗い廊下とは正反対の、楽しそうな表情を浮かべている。
 探検でもする様な気持ちで廊下を歩く静。と、いきなり背後から、
 べち!
 鈍い音がした。
「んあ?」
 振り返って背後を照らすと、白熊のぬいぐるみとライトを持ったツインテールの少女が廊下に倒れていた。
 少女は額を摩りながら起き上がると、自分がライトで照らされているのに気が付き、逃げるように走り去る。
「‥‥‥何だ、ありゃ?」


「ううう‥‥失敗失敗」
 転んだ拍子にぶつけた額を摩りながら、一颯は廊下を歩いていた。相手を驚かせる為に、足音を忍ばせて背後に廻ったまでは良かったが、まさか驚かす前に転んでしまうとは。
 当初、台風なんてつまんないと思っていた天見 一颯(あずさ&お兄さん(fa2132))だったが、寮全体が停電するに至ってその考えはがらりと変わる。この珍事を前に、好奇心旺盛な一颯がじっとしていられる訳が無い。
 一颯は片手にお気に入りの白熊のぬいぐるみを、もう片手にペンライラトを持つと暗い廊下へと飛び出したのだった。
 一颯が反省していると、またも人影発見。今度こそはと明かりを消し、足音を忍ばせ背後に近付く。近付いて見ると随分と背の高い少女だ。もしかしたら、百九十センチはあるかもしれない。
 一颯は自分の顔ではなく、白熊のぬいぐるみをライトで照らすと少女の背中を叩く。
 少女が長い髪をなびかせながら振り返り―――
 寮全体に絶叫が響き渡る。


「自分、そない大荷物持って何処行くねん」
 赤羽さくら(サクラ・ヤヴァ(fa2791))は背後からの声に振り向くが、ライトの光のせいで影しか見えない。此方からも相手に光を当てる事で、ようやくその人物が誰なのかはっきりした。
「あ! 荒縄目先輩!」
 さくらは生徒会メンバーが寮に来ているという話を思い出した。
「ボクは配電盤関係を見に行こうと思って」
 ちょうどさくらがブログの更新をしている最中に停電が起きた為、腹を立てたさくらは停電の原因究明に乗り出したのだ。その手にはLED製のハンドライトと工具が握られている。
「荒縄目先輩は何してるの?」
「ウチはななちゃんの手伝いや」
 夢路は小脇に抱いた段ボール箱を見せる。
「ライト持っとらん奴もおるやろうからな。持っとったとしても、ライトやと一方向しか照らせんし」
 夢路が箱の中身をと出して見せようとした時―――突如、廊下に悲鳴が響き渡る。
「ひぁあ!」
 その悲鳴に驚いて、さくらは思わず夢路に抱きついた。
 抱きつかれた夢路は特に気にした風でもなく、辺りを見渡しながら、
「何処のアホがはしゃいどんねん」と至って冷静な風である。次いで、自分にしがみ付きながらビクビクと震えるさくらを見て、
「なんや、恐いんか自分。しゃあないな、事のついでや。付いてったるわ」


 廊下を歩いていた白鷺((佐々峰 菜月(fa2370))は、皇 ホタル(葉桜リカコ(fa4396))の姿を発見した。
(「あらあら、ホタルちゃんに会いたいと思っていたら本当にあえました。やっぱり私達は相思相愛ですね」)
 見れば、ホタルは時折キョロキョロと辺りを見渡しながら歩いている。まるで誰かを探しているようだ。もしかしたら、ホタルも自分の事を探しているのかもしれない。
 そう思うと桜は堪らなくなって、背後から、
「わっ!」とホタルに抱きついた。
「ひう!」
 身体を強張らせるホタル。
「私ですよ、ホタルちゃん」
 よく知った声に、ホタルはホッと胸を撫で下ろす。
「もぅ、桜ちゃんの意地悪〜」と頬を膨らませるホタル。
「御免ね。ホタルちゃんがあんまりにも可愛いから」
 桜は自分の頬をホタルの頬に摺り寄せるが、ホタルはそっぽを向いたまま、
「意地悪な桜ちゃんは嫌いですぅ〜」
 そこで、桜はホタルの身体から手を離し、
「ホタルちゃん‥‥私のこと、嫌いなの‥‥?」
 はっとホタルが振り返れば、暗闇にうるうると光る桜の瞳があった。
「私はホタルちゃんの事好きですよ? ホタルちゃんはあたしの事、好き?」と桜。
 その問いに、ホタルは顔を赤く染めて下を向き、もじもじと身体をゆすった後、
「私も‥‥好きですよぅ」と呟いた。
 それを合図に、桜がホタルの胸に飛び込む。
「あん! 桜ちゃん、そんなとこ噛んじゃダメですよぅ〜」とじゃれあう二人。
 そんな二人のに、別の方向から光が差す。
「おっと、邪魔しちゃったかな?」
 廊下を散策していた静だ。
 桜はホタルの胸に顔をくっつけたまま笑顔で、
「はい。お邪魔ですよ?」
「おお恐い恐い。ではっさっさと退散―――」
 言いかけて、静はライトの明かりを消し、素早く壁に身を寄せた。
 キョトンとしている二人、静はジェスチャーだけで『静かに』と指示した。
 言われた通り黙って耳を済ませると、廊下の角から人の声が聞こえてくる。
「―――掴むなら袖ではなく、後ろ越しの布を摘んでくださいな。咄嗟の対応ができませんわ。まったく、そんなに恐いなら格好などつけなければ宜しいのに」
「仕方ないだろ。格好をつけるのも仕事の内さ」
「素直になっていれば、愛しいあの方に守って貰えたかもしれませんわよ?」
 どうやら相手は二人組みらしい。
 静は頃合を見計らって、ライトで自分の顔を照らし、角から飛び出した。
 ボウ!
 静が飛び出すと同時に布が空気を孕んだ様な音がして、鼻先に何かが突きつけられる。
「‥‥‥‥おおう!?」
 少ししてから、それが寸止めされた拳だと気が付いて、静は大きく後ろへ飛び退った。後ろへ下がった事で、拳の持ち主の姿を視界に納める事ができた。
 六つの縦ロールを垂らし、腰を軽く落とした姿勢で拳を突き出しているのは、藤華・キャヴェンディッシュ。その横には夜坂 東の姿もある。
 藤華は二度三度と瞬きをして、
「あら、この機に乗じて変質者が入り込んだのかと思いましたわ。顔を砕く所でしたわよ?」
 平然と恐ろしい事を言ってのける藤華。
「面白そうだからやった、後悔はしない」
 静は胸を張れないいような事を、胸を張って言った。
「反省なさい」
 藤華は静の世迷言を斬って捨てると、東が持っていた段ボール箱を静に手渡す。
「何だこれ?」
「ペナルティですわ。中にはキャンドルライトが入っています。これをミーティングルームにいる生徒達に配りなさい」
「げ!」
「生徒会名義の正式な依頼ですわよ? 拒否する事は許しません」
 藤華にきっぱりと言われて、静は呻いた。


 寮内の見回りをしていた二条鴎(津野雪加(fa0513))は木霊 菜々実と出会う。
「あ、鴎ちゃん」
 菜々実は額にライトを取り付け、小さな身体に不釣合いの大きなダンボールを持っている。
「菜々実ちゃん、どうしたんですかその荷物?」
 鴎が訊くと、菜々実は箱の中身を取り出して見せた。パーティー用のキャンドルライトである。
「お部屋の中ならこっちの方が便利なのよ。だから、みんなに配ってるの」
 確かに、一方向しか照らす事が出来ない懐中電灯よりも、全周囲を照らす事が出来るこのライトの方が室内には向いているだろう。
「鴎ちゃんは何をしてるの?」
 菜々実が小首を傾げて尋ねる。
「おいたしそうな子が何人かいますから、心配なので見て廻っているんです」
 そう答えた鴎の背中に、突如ズシリとした重みが加わる。
 突然の事に、鴎は「ひぅッ!」と喉を絞るような悲鳴を上げた。
 急いで振り返るが、鴎には走りながら廊下の角を曲がる人影しか見る事が出来なかった。
「‥‥‥今のは」
「一颯ちゃんだね」
「見えたんですか?」
 鴎の身体越しにしか見えなかっただろうに、菜々実にはその人影が誰だか判別できたらしい。


「配電盤関係に異常は無し‥‥か」
「うぅ〜。そうなると原因は外にあるね」
 配電盤関係のチェックを終えたさくらは窓の外を見る。先程と比べて風は更に強くなり、横殴りの雨が降っている。とても出歩ける状況ではない。こうなると完全にお手上げである。
「先輩、何か他に手は無い?」
 さくらが夢路に尋ねる。
「一介の美術部部員に何が出来るっちゅうねん」
「美術部?」
「おう。ウチは美術部の所属や」
「え、でも、白衣着てるじゃん?!」
「美大生かて白衣くらい着るわい。エプロンやと袖が汚れてまうから、こっちを着とるんよ」
「そ、そんな理由‥‥‥」
「そんな理由て、うちのガッコの制服は高いんやで」


 成り行きで、静と一緒にライトを運ぶ事になった桜とホタル。
 三人がミーティングルームに向かっていると。マナと沙弥に出くわした。
 制服を着ている二人を見て、
「お前達、ミーティングルームに泊まってる一般生か? ちょうど良かった、このライト運ぶの手伝ってくれ」
「ライト? 闇野さん、ライトだって! これで暗闇ライブが開けるよ!」と小躍りする沙弥。
 それを聞いた桜はマナに、
「暗闇ライブ? ライブをするんですか?」
「ああ」
「楽しそうですね♪ どんな歌を歌うんですか?」
「色々だ」
「‥‥えぇ、と‥‥私達も行って良いですか?」
「好きにすれば良い」
 マナの放つ近寄りがたい雰囲気のせいか、どうにも会話が弾まない。
「手強い感じです‥‥!」
 桜が唸ると、静が自信満々な笑みを浮かべて、
「まだまだだな。いいか、スキンシップと言うのは―――肌と肌の触れ合いだあーーー!!」
 いきなりマナに抱き付く静。
「むむ! 一年の割に大きい‥‥私より大きいんじゃないのか? 羨ましいッ!」
「こら待て! 何処を触って?! ひゃあ! 胸を、胸を揉むなぁ! って下はヤメ―――んぁあ! や、はぁ‥‥クッ、お前の勝手な『お約束』を押し付けるんじゃない! 暗いからって音声でしかお届けできない様な事を―――ちょ!? そこはホントにぃ‥‥あ、あ、あああ―――らめぇーーー!!!」


 数分後。
 ぐったりとその場に倒れこみ、荒い息を吐きながら時折身体をピクピクと痙攣させるマナの横で、
「こちらは発展途上かぁ‥‥けど、こういうのも悪くないね。青い果実ってとこかな?」
 後ろから抱き締めるような格好で沙弥の胸を揉む静。
 沙弥は「きゃ〜♪ いや〜ん、だめだよ〜」と口では拒絶しているが、本気で嫌がってはいないようだ。寧ろ楽しんでいる風ですらある。
「屈辱だ‥‥‥」
 マナは暗い表情でのそりと起き上がると、沙弥の頭をペシリと叩く。
「いつまでやっている。行くぞ」


 廊下を歩いていた一颯は微かに聞こえてきた歌声に引かれて、ミーティングルームの中を覗いた。
 中では、キャンドルライトの仄かな明かりに照らされたマナが、沙弥のバックコーラスの元、歌を歌っている。

『跪け 人間どもよ
 奉れ 私を崇めよ

 私こそは 魔界の王
 選ばれし 悪魔の長

 恐れよ人間ども それこそが私の喜び
 逆らうのならば その身体で思い知れ

 天が嘶く 私に服従せよ
 風が吠える 私に捧げよ』

 始めこそ、異様に黒い曲を歌っていたマナだが、他の生徒達のリクエストを快く受け入れ、ライブを盛り上げていく。
 闇に閉ざされた寮に、静かな歌声が響く。


 キャンドルライトで照らされた食堂で、風紀委員副会長赤鍵 参道は聞こえてくる微かな歌声を肴に、ウーロン茶をチビチビと飲んでいた。
「電気はまだ復旧しないのかい、ななちゃん」
「さっき、復旧したって携帯電話で確かめたのよ」
「じゃあなんで、暗いままなんだい?」
「もう直ぐ消灯時間だし、それに―――」
 菜々実は歌声に耳を済ませて微笑み、
「偶には、こういうのも良いかなって」
「成る程」