私立アスラ女学園 七アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 一本坂絆
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 0.7万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 10/23〜10/25

●本文

「ハーイ、いくよ! せぇのッ―――!」
 掛け声と同時に鉄骨が立ち上がり、白い屋根を持つテントが出来上がる。
 同じ光景はグランドの至る事で、学園内の道の至る所で、更には校舎の裏手にある小高い丘で、見る事が出来る。正門、裏門からは、業者のトラックが出入りし積荷を下ろしている。その鉄骨や木材、段ボール箱を少女達が手分けして運んでいる。
 まだ授業中だというのに、多数の少女達が作業に当たっていた。
 少女達は皆、一枚のカードを首に紐で吊っている。生徒会発行の『授業免除特別許可証』である。
 現在アスラ学園は文化祭の準備中だ。文化祭では学園の広大な敷地内の至る所で催しが行われる。その為、学園祭数週間前から授業時間を潰して準備に当たらなければ、到底間に合わないのだ。しかしながら、全ての授業を休講にすると言う訳にもいかない。 そこで、各グループに数枚ずつ、『授業免除特別許可証』が配られるのだ。
 学園祭が近付くにつれて、アスラ女学園内は徐々に飾り付けを増やしていく。






■文化祭準備期間
出し物によっても違うが、学園が公認しているのは文化祭の二週間前からである。
大まかな指示は『学園祭運営委員会』が行っている。

■授業免除特別許可証
生徒会発行の正式な授業免除許可証。予めこの証明証を持って担当教諭に申請すれば、授業が公休扱いになる。グループの人数や出し物の内容にもよるが、大体人数の三分の一の数が発行される。これをグループ内で交代で所持する事で、準備時間を有効に使う事ができる。


†キャスト募集†
 ドラマ『私立アスラ女学園』への参加者を募集します。
 舞台は放課後(夕方)、或いは夜の学園です。

※注意※
・『お姉様』と中等部生徒に血の繋がりはありません。
・警備員も女性です。
・生徒会はNPCとして扱います。生徒会メンバーを演じる事はできません。ご了承ください。
・実際のドラマでも、二十代の役者さんが高校生を演じる事は良くあります。あまり年齢を気にせずにご参加ください。
・お題に沿ってストーリーを考えて頂いても構いませんし、キャラクターや取りたい行動だけ書いて、後はお任せと言う形でも構いません。

†私立アスラ女学園の御案内†
アスラ女学園では生徒はもちろん、教職員も女性を採用しています。
当学園では、文武両道の精神と、生徒による自治を重んじています。
各クラブ活動、学校行事の運営、生活指導は生徒会主導の下に行われています。
自宅登校が基本ですが、学生寮もあります。
また、中等部、初等部の敷地が隣接するように並んでいます。隣接しているだけで、中等部、初等部とは敷地、施設は別れています。
■歴史
創立は約三百年前。元は仏教色が強かったのですが、戦火に焼かれた事と、施設の近代化に伴い、現在では名称と一部の伝統にのみ名残が残っています。敷地内にお堂があるのはそのためです。
■学校施設
校舎は三階建て。
敷地は『校門から校舎(下足場所)まで十分はかかる』と言われるほど広く、グランド、体育館、室内プール、図書館、部活棟、各道場、テニスコート、花園、食堂、カフェテラスなどの施設がそろっています。学生寮も敷地の中に入っています。
■生徒会
アスラ女学園の生徒会は生徒会長が三人おり、副会長がいません。
『スリーオブフェイス』
【生徒会長】小扇 一羽(こおおぎ ひとは)、夜坂 東(よるざか あずま)、片馴 静奈(かたなれ しずかな)
『ライトアーム』
【書記長】遠昏 真戯(おちくら さなぎ)
【会計士】風祭 葛篭(かざまつり つづら)
【風紀委員長】辻 守(つじ まもり)
『レフトアーム』
【運動部連代表】藤華・キャヴェンディッシュ(とうか・キャヴェンディッシュ)
【文化部連代表】荒縄目 夢路(あらなめ ゆめじ)
【学生寮代表】木霊 菜々実(こだま ななみ)
■高等部の制服
ワンピースは総ボタンでスカート丈が長い。色は濃いチャコールグレー。
襟と、ワンピースの中に穿くぺティーコートは白。
ショートタイは一年生がレッド、二年生がダークグリーン、三年生は白地に黒い十字のラインが入る。
■立地
広い敷地を確保する為、山が近い場所に建てられていますが、住宅地も近い為、少し歩けばコンビニやスーパーもあります。最寄り駅から二十分程で市街に出る事ができます。

●今回の参加者

 fa0190 ベルシード(15歳・♀・狐)
 fa0913 宵谷 香澄(21歳・♀・狐)
 fa2370 佐々峰 菜月(17歳・♀・パンダ)
 fa2459 シヅル・ナタス(20歳・♀・兎)
 fa2791 サクラ・ヤヴァ(12歳・♀・リス)
 fa3393 堀川陽菜(16歳・♀・狐)
 fa3814 胡桃・羽央(14歳・♀・小鳥)
 fa4396 葉桜リカコ(16歳・♀・狸)

●リプレイ本文

「おぉ〜‥‥皆捗ってるなぁ」
 狐村 静(宵谷 香澄(fa0913))は、クラスの貸衣装屋で使用する材料や資料、差し入れの為に買った幾らかの菓子が満載されている自転車を押しながら、感嘆の声を上げた。
 静が買出しに出掛けている間にも文化祭の準備は着々と進み、普段見慣れた通学路を、出店や広告の立て看板、派手な装飾で覆っている。
 流石に資材や生徒達が行きかう中で自転車を漕ぐ訳には行かず、静は駐輪所まで自転車を押しながらゆっくりと人々の間を抜けて行く。と、荷物の重みのせいか、自転車のバランスが崩れる。
「おおっと!?」
 自転車の重みに引きずられて倒れそうになる静だが、その身体を支える腕があった。
「気ィ付けろよ狐村。こんな所で荷物引っ繰り返したら、他の生徒にも迷惑だ」
 体育教師の鉄 大河(シヅル・ナタス(fa2459))がニヤリと笑みを浮かべて自転車の傾きを立て直す。大河は立て直した自転車の取っ手にぶら下っている荷物や、籠からはみ出している荷物のいくつかを手に取り、
「手伝ってやるよ。教室まで運ぶのか?」
「いいえ、駐輪所まで運び込めば、後は携帯でクラスの連中を呼びますから」
 静は幾分か軽くなった自転車を押して大河と共に歩き出し、
「先生は今何してるんですか?」
 文化祭の準備は主に生徒がしているが、教師も各方面に監督役として出張っている。
「保健委員会の手伝いだ」
 大河の答えに、静は始めキョトンと目を瞬かせ、次いで渋い顔になる。
「鉄先生が保健委員‥‥?」
「んだぁ?! 文句あっか!」
「いえ、何でも在りません!」
 大河が怪我をした生徒に「んなもん、唾つけとけ」とか、「そんなもんは気合で治せ」等と言っている様子が容易に想像できて、静は苦笑を浮かべた。


 幾らか飾り付けが施された教室で、円になって衣装や資料を広げる少女達。
「喫茶店と言う事ですし、やっぱり衣装は執事服とメイド服でしょうか?」
 その円に加っている、星崎ハルナ(堀川陽菜(fa3393))の意見に、
「どうせなら可愛いのが良いです〜」
 白鷺 桜(佐々峰 菜月(fa2370))が答える。
「内装は、ほのぼのとした感じが良いです」と桜。
「そうね、流石に執事を『可愛く』するのは無理が有るけど、メイドの方は幾らかアレンジして‥‥‥」
「ねぇねぇ、料理はどうする?」
「普通の喫茶店っぽいので良いんじゃない?」
「カレーとか、焼き蕎麦とか」
「何処の田舎の喫茶店だ!」
「取り合えず、厨房には誰が入る? 料理作る奴は、健康診断受けなきゃだわよ?」
「うっわ、ったりぃ〜」
「白鷺さんは料理できる?」
 料理の話を振られたとたん、桜の表情が笑顔のままビキリと音を立てて固まる。
「え、ええっと〜‥‥‥」
 桜は不自然に視線を逸らし、
「お料理なら、ハルナちゃんが上手そうですよ?」
 余りにあから様なので、誰もがその意味に気付いてはいるが、決してツッコんだりせずに生暖かい視線を送る優しいクラスメート達。
「‥‥‥って言ってるけど、ハルっちはどうするよ?」
「私は配膳の方が。執事服は似合いそうに無いので、可愛い系の服の方が良いです」
「そう? 星崎さんみたいな可愛い感じの子が、執事服着んのも結構良いわよ? 初々しくて」
 クラスメートの言葉に、元来押しに弱い性格のハルナは、「そうでしょうか?」と曖昧な笑みを浮かべた。
 女子高生の相談らしく、きゃあきゃあと楽しげではあるが、話が飛んで上手く意見が纏らない。
 そこへ―――
 ガラリ。とドアを開ける音。
「失礼します! 放送部です!」
 現れたのは、放送部部員の羽鳥・初音(胡桃・羽央(fa3814))だ。
「文化祭のアナウンスや案内の為に、皆さんが準備風景を取材しに来ました!」と初音。
「折角ですけど、まだ衣装も決まっていない状態なので‥‥あまり取材にならないと思います」
 ハルナが初音に、困ったような笑みを向ける。すると、初音は他の者に気付かれないように、不吉な笑みを口の端に上らせ、
「では、今はどの程度まで絞込んでいますか? 此処に来るまでにも他のお店を取材してきているので、相談に乗りますよ」
 次の瞬間にはそれを人の良い笑みに変えて言った。
 初音は少女達が見せるカタログに一通り目を通して、腕を組み『考え込むふり』をする。
 見せられた衣装は、ワンピース部分がシンプルな作りになっており、ブラウスやエプロン、ボンネットをフリルや細いリボンタイで装飾している。落ち着いた中にも可愛らしさを覗かせるメイド服だった。だが初音は、「そうですねぇ。可愛いんですけど、もっと出すところ出してアピールした方がいいと思いますよぉ〜?」と言って、自分の手荷物を漁りだし、
「コレなんか良いと思いますよ?」
 取り出したのは、面積の小さい衣装だ。
 何でそんな物を持ってるんだと言う視線が初音に集中するが、当の初音は視線を気にする事無く、
「そこの貴女。試しに着てみて下さい」
 指名された桜が、ビクリと身体を震わせる。
「わ、私ですか?」
「まぁまぁ、そう警戒せずに。どうせ女子だけなんですから、良いじゃないですか。嫌なら脱げば良いんだし」
 初音は説得しつつも、グイグイと桜の背を押して教室の隅に連れて行き、カーテンを引っ張ってきて即席の更衣室を作る。
「って何で羽鳥さんも一緒に入ってるんですか!?」
 カーテンが中からもぞもぞと動く。
「いや、ほら。私が持って来た服だし、着方が解らなくなるといけないですから」
「大体は解ります! ひぃん?! ど、何処を触ってるんですか!」
「ほらほら、狭いんですから暴れないで下さい」
「そこは関係無いじゃ―――ふぇ? あ、きゃ! そっソコはあ〜〜〜!!!」
 カーテンが中から激しく動く。
 暫くしてカーテンの中が静まり、衣装を纏ってゲッソリとした桜と、妙に艶々した初音が出てきた。
 桜が身に纏っているのは、半袖の黒いアンダーカップのワンピースだ。腰を布のコルセットで締める事で強調し、ヒラヒラとしたスカートは太股の三分の一しか隠していない。白のガーターストッキングを履いてはいるが、太股の膨らみが逆に強調されて見える。所謂『めーど服』だった。
 桜は顔を赤らめ、
「コレは‥‥ちょっと恥ずかしいです‥‥‥」
「何を言ってるんですか! コレが今の流行萌えと言うもので―――」
「初音さん」
 呼ぶ声に初音が振り返ると、そこには口は微笑んでいるものの、目を冷ややかに細めたハルナがいた。
「本番では一般のお客様もいらっしゃいますから、それはちょっと目の毒ですね?」
「そ、そうですね‥‥下手に見せるより、見えない方が萌えますよね!」
「‥‥‥‥初音さん。料理や飾り付けについてのアドバイスも頂けますか?」
「え? いや、そっちは専門外でして―――」
 言い掛けた所で、初音はハルナの放つ気配が一気に重みを増したのを感じ取り、
「ああっとおッ! もうこんな時間! 早く次の取材に行かなくっちゃ!!」
 何も巻かれていない腕に視線を落とすと、ダッシュで教室を飛び出した。


 休憩時間に入り、桜は友人の皇 ホタル(葉桜リカコ(fa4396))と共に廊下を歩いていた。
 校舎の中も、大部分に装飾が施され、資材を持った生徒達が行きかっている。
「そうだったんですかぁ〜。大変でしたね〜」
 桜が先程教室であった出来事を話すと、ホタルは桜の頭を撫でてくれた。桜は嬉しくなると同時に、ホタルを苛めたいという気持ちが湧いてきて、目に留まったフリーマーケットのチラシを見つつ、
「あ、フリーマーケットだって。ホタルちゃんはいくらで売れるかな?」
「もぅ! 桜ちゃんは意地悪ですぅ‥‥」
 桜の言葉に、頬を膨らませるホタル。
「うふふふふ。冗談ですよ。そんなに怒らないで下さい、ホタルちゃん」
 二人がじゃれあって歩いていると、コンピュータ部の前を通りかかった。
「あ、ホタルちゃん見てください。コンピュータで占いが出来るみたいですよ?」
 桜が言って、部屋を覗き込むと、丁度小柄な少女―――赤羽さくら(サクラ・ヤヴァ(fa2791))顔を出した。
 ロボレス用のロボの調整をしていたさくらは、
「何? 展示品はまだ出来てないよ」
「そうなんですか。コンピュータ占いを試してみたかったんですが‥‥」
「うぅう〜ん‥‥。そうだなぁ、簡単な相性占いくらいなら何とかなるかも」
「ホントですか! お願いします。少しだけで良いからやらせてください」
 と、桜がさくらに頼み込んでいると―――
 バキ。
 嫌な音が鳴った。
 振り向くと、新聞部顧問のマルガレーテ・レオンハルト(ベルシード(fa0190))の後姿がちらりと見えた。
「? まぁいいや。ちょっとだけだからね〜」
 さくらが二人をパソコンの前に案内し、操作を始める。しかし、
「あれれれれ? おっかしいな?」
 占いプログラムが正常に作動しない。
「昨日遅くまで残ってやったんだけどな」と肩を落とすさくら。
 見兼ねたホタルが、
「あのぉ‥‥私まだ時間ありますしぃ、何かお手伝いしましょうかぁ〜?」と提案するも、
「扱ってるのが精密機械だからね。素人に触らせるわけにはいかないよ」
 さくらはその申し出を断った。


 その教室は服で覆われていた。
 文化祭で貸衣装屋を行う為に集められた、メイド服やチャイナ服や和服が其処彼処に掛けられている。
 貸衣装屋をするにあたり、予め運営委員会に業務内容を打診して見た所、衣装を着たままで校内を歩くのは許可(他にも仮装系の店やイベントがある為)。アスラ女学園の制服の貸し出しに関しては、必ず回収する事と、タイのカラーを既製の三色以外のものに変える事を条件に許可が下りた。
「そっかー。学園祭だから、男物の衣装も用意しなきゃならないんだなぁ」
 針仕事が苦手な静は、現在衣装サイズのサンプルを勤めていた。但し、女性用ではなく男性用である。始めは女性用に立候補していた静だが、「狐村さんは背が高いから、そのサイズの服はあんまり需要がないと思う」と言われてしまった。静の身長は約百七十センチ。女性の身長の全国平均が百六十センチ前後である事を考えると、かなり高い。
 静は男のコスプレには何ら興味は無かったし、男性客がどれ程来るかは判らないが、用意して置くに越した事は無い。
「どうせなら色々と触っても良いんだぞ、南郷」
 静は暇を持て余して、静の身体に布を当てて採寸を取っている少女に軽口を叩くが、
「遠慮するであります」
 にべも無く断られた。
 そこへ―――
 ガラリ。とドアを開ける音。
「失礼します! 放送部です!」
 現れたのは、放送部部員の羽鳥・初音だ。
「文化祭のアナウンスや案内の為に、皆さんが準備風景を取材しに来ました!」と初音。
「んぁ? そう、じゃあテキトーに見てって良いわよ」
 許可を貰って、部屋を見て歩いていた初音。暫くすると、初音はくるりと三年生達に向き直り、
「皆さん! 私としましては、もっと開放的な衣装を望むのであります!」
「ほほう!」
 その突然の発言に、いち早く食いついたのは静だった。
「コスプレとは、衣装を身に纏う事による己の解放! ならば、それ相応の物を用意しなければなりません!」
 初音は力説しつつ、自分の手荷物を漁りだし、
「コレなんか良いと思いますよ?」
 取り出したのは、フリフリでスケスケのゴシックドレスだった。
 何でそんな物を持ってるんだと言う視線が初音に集中するが、当の初音は視線を気にしない。
「‥‥それは、見て楽しむ分には良いけど、着て楽しむ物じゃないんじゃないかな?」
 三年生の一人が言い、
「私は嬉しいですけどネ!」
 静がカッと目を見開いて言った。そして皆に殴られた。
「そうですか。残念です」
 肩を落とし、衣装を仕舞おうとする初音。その肩を、大きなたんこぶを作った静が、優しくポンと叩いた。
「まぁ、折角持って来てくれたんだし、衣装を無駄にするのも惜しい。折角だから、取材も兼ねてコスプレ体験をさせてあげよう」
「え? それって私がやるんですか?」
「勿論だとも!」
 静がフリフリでスケスケのゴシックドレスを片手に、初音を引き摺って行く。
「ええええええ!! いいですよ!」
「ハッハッハッ! 恥じらいは良いな〜。日本の文化だ!」
「何の話ですか! ちょっと! 力強いなこの人!?」
 初音はジタバタと暴れるが、初音を掴む静の手は全然外れない。普段は酔っ払いの親父みたいな娘だが、運動部の助っ人に呼ばれる身である。文化部の一年生とは膂力が違う。
「ええい、暴れるな! 誰かそっち! 足持て足!」
「了解であります」
「ホントにいいで―――って着替えに羽交い絞めや恥ずかし固めは関係ないでしょ?! ちょ、や、むぐーーー! んッむん‥‥んあ! むーーーーーーーーーーー!」
 二人がかりで引き摺られて行く初音の姿が、即席の更衣室の中に消えていった。