私立アスラ女学園 捌アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 一本坂絆
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 0.7万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 10/26〜10/28

●本文

 空が茜色に染まる頃、アスラ女学園第三拳法部伝統の大鉄板焼きのスペースのすぐ横で、夜坂 東と小扇 一羽は早めの『夕食』をとっていた。
 私立アスラ女学園の文化祭『舞芸祭』を明日に控えた今日、夜を徹して前夜祭が行われる。元々は徹夜での作業を公認した事から始まり、予行と称して屋台や喫茶関係の店が営業を行い、ステージ関連のイベントが宣伝の為にショートライブを始めた。今では夜通しでのドンちゃん騒ぎの場と化している(このせいで、次の日開店が遅れる店が激増する)。
 当然として前夜祭でのイベントや屋台の営業は『学園祭運営委員会』が取り仕切る為、その元締めである生徒会も、交代で仮眠を取りながら前夜祭での指示に当たる。
「そっちのも美味しそうだなぁ‥‥」
 東が一羽の紙皿に乗る豚平焼きを覗き込んで、「あ〜ん」と口を開く。
「あらあら、東ちゃんは甘えん坊ね」と言いながらも、豚平焼きを一口サイズに切り分けて東の口に運ぶ。
「ん、美味しい」
 もぐもぐと口を動かし、満足そうな東。
「当然ですわ。私自らが作っているのですから、不味いなんて言わせませんわよ」
 藤華・キャヴェディッシュが手早くホタテのホイル焼きを作りつつ、横合いから会話に加わる。
 運動部連代表にして第三拳法部主将である藤華は、髪はいつも通りの派手な縦ロールながら、袖の無い胴着とスパッツと言う格好で、腰から下を覆うエプロンを着けて鉄板に向かっている。貴族然とした雰囲気の(実際に英国貴族の血を引く)藤華には、かなり違和感のある格好だ。『貴族たるもの厨房に立ってはならぬ』と言う家訓を持つキャヴェンディッシュ家だが、学校行事と言う事で学園祭期間中は例外的に店を手伝っている。他の生徒の前で恥をかく訳には行かないと、屋敷の料理番とワンツーマンで特訓する辺りに藤華・キャヴェンディッシュと言う少女の性格が見て取れる。
「そういえば、ここ暫くグレンさんのお料理を頂いていないわね」
「イベント事が一段落したら、御二人とも家へ招待しますわ。グレンも喜びますわよ」


 一方。前夜祭が始まってもまだ準備が終わっていない店も沢山あるわけで‥‥。
「うあああああ! 終わらない! このままのペースじゃ、朝までに絶対終わらない!!」
 泣きそうな顔で、狂った様な速度で金槌を振るう少女。
「買出し部隊戻りましたー!」
 改装中の教室に、コンビニや他のクラスの屋台での買出しを終えた少女達が走り込んで来る。
「よぉし! 三班と四班は休憩に入れ! 一班と五班は三班四班と交代して作業開始!」
 慌しく動き回る少女達。その耳に、
 
 どん! どどん!
 
 空気を震わせ、下腹部に響く音が聞こえ、窓の外の暗い夜空を眩しく輝く光が照らし出す。
「あ! 花火の予行始まっちゃったよ‥‥見に行きたかったのにぃ」
「コラ、そこ! 手を動かす!」






■前夜祭
文化祭初日の前夜に行われる徹夜必須のイベント。一般公開はされておらず、参加できるのは生徒のみである。
ライブなどのイベント類は本番ほどに尺を取ることはできない。
前夜祭はあくまで、準備と予行の為に行っている祭り。


†キャスト募集†
 ドラマ『私立アスラ女学園』への参加者を募集します。
※注意※
・生徒会はNPCとして扱います。生徒会メンバーを演じる事はできません。ご了承ください。
・実際のドラマでも、二十代の役者さんが高校生を演じる事は良くあります。あまり年齢を気にせずにご参加ください。
・お題に沿ってストーリーを考えて頂いても構いませんし、キャラクターや取りたい行動だけ書いて、後はお任せと言う形でも構いません。

†私立アスラ女学園の御案内†
アスラ女学園では生徒はもちろん、教職員も女性を採用しています。
当学園では、文武両道の精神と、生徒による自治を重んじています。
各クラブ活動、学校行事の運営、生活指導は生徒会主導の下に行われています。
自宅登校が基本ですが、学生寮もあります。
また、中等部、初等部の敷地が隣接するように並んでいます。隣接しているだけで、中等部、初等部とは敷地、施設は別れています。
■歴史
創立は約三百年前。元は仏教色が強かったのですが、戦火に焼かれた事と、施設の近代化に伴い、現在では名称と一部の伝統にのみ名残が残っています。敷地内にお堂があるのはそのためです。
■学校施設
校舎は三階建て。
敷地は『校門から校舎(下足場所)まで十分はかかる』と言われるほど広く、グランド、体育館、室内プール、図書館、部活棟、各道場、テニスコート、花園、食堂、カフェテラスなどの施設がそろっています。学生寮も敷地の中に入っています。
■生徒会
アスラ女学園の生徒会は生徒会長が三人おり、副会長がいません。
『スリーオブフェイス』
【生徒会長】
小扇 一羽(こおおぎ ひとは)
夜坂 東(よるざか あずま)
片馴 静奈(かたなれ しずかな)
『ライトアーム』
【書記長】遠昏 真戯(おちくら さなぎ)
【会計士】風祭 葛篭(かざまつり つづら)
【風紀委員長】辻 守(つじ まもり)
『レフトアーム』
【運動部連代表】藤華・キャヴェンディッシュ(とうか・キャヴェンディッシュ)
【文化部連代表】荒縄目 夢路(あらなめ ゆめじ)
【学生寮代表】木霊 菜々実(こだま ななみ)
■高等部の制服
総ボタンでスカート丈が長いワンピース。色は濃いチャコールグレー。
襟と、ワンピースの中に穿くぺティーコートは白。
ショートタイは一年生がレッド、二年生がダークグリーン、三年生は白地に黒い十字のラインが入る。
■立地
広い敷地を確保する為、山が近い場所に建てられていますが、住宅地も近い為、少し歩けばコンビニやスーパーもあります。最寄り駅から二十分程で市街に出る事ができます。

●今回の参加者

 fa0640 湯ノ花 ゆくる(14歳・♀・蝙蝠)
 fa0913 宵谷 香澄(21歳・♀・狐)
 fa1463 姫乃 唯(15歳・♀・小鳥)
 fa2102 西園寺 紫(14歳・♀・蝙蝠)
 fa2132 あずさ&お兄さん(14歳・♂・ハムスター)
 fa3611 敷島ポーレット(18歳・♀・猫)
 fa3814 胡桃・羽央(14歳・♀・小鳥)
 fa4581 魔導院 冥(18歳・♀・竜)

●リプレイ本文

「ふぅ〜‥‥完成だ。我ながら自分の才能が恐ろしい」
 額の汗を拭いながら、完成したスイーツを見詰める闇野マナ(魔導院 冥(fa4581))。
「私が学園祭で動くのはギグ(ライブ)の時だけだ」等とのたまっていたマナだったが、一人だけクラスの出し物に参加しないと言う訳にもいかず、メイドパーラーの従業員として駆り出されていた。
「チョコレートとバナナをふんだんに使い、隠し味に火でアルコール飛ばした少量のワインを加えた、名づけて『悪魔パフェ』!」
 甘い物好きのマナだけあって、手を抜かない職人芸の如き一品。
「そんなオドロオドロしい名前のスイーツはいいから、こっち来なさい闇野さん」
「言っておくが、接客はしないぞ」
「そう言う訳にもいかないのよ。他の子のシフトだってあるんだから」
「そうは言うが、私にできるのはコレくらいなものだ―――」
 マナはエレキギターを取り出すと、弦を弾いてみせる。
「そんなに引きたいなら、ライヴに出ればいいじゃない」
「ギターとこの身一つあれば十分‥‥これぞロック魂だ」
「私にとってはこの教室もライブ会場だ」とマナはギターを弾きつつ歌い始める。

『 夜より尚深き暗黒を湛え 地獄の様に熱く苦い珈琲
  黒き感情の苦味を取るか 妖しき情の酸味を取るか
  それはキミ次第                      』

「‥‥‥‥‥‥‥‥メイドパーラーに、そんな黒い音楽は必要無ぇ」


 取材と言う名目で遊びまわっている羽鳥・初音(胡桃・羽央(fa3814))は、屋台を引く少女(湯ノ花 ゆくる(fa0640))に視線を止めた。
「メロンパン同好会? そんな同好会あったっけ?」
 見た所ラーメン屋の屋台を改装して作った屋台を、一人で引いている。アスラ女学園では、部も同好会もクラブも名前が違うだけで内容は同じであるため、一人と言う事は生徒会非公認だろう。
 白熊のぬいぐるみを背負った少女と入れ替わりに、屋台に近付くと、パンの甘い匂いが漂って来た。
「すいませーん」
 天音が声を掛けると、メイド服を着た少女が顔を出す。
「いらっしゃい‥‥ませ‥‥」
 どうやら屋台にはメロンパンしかないようで、天音はメロンパン一つを購入した。
「温かい‥‥内に食べて‥‥ください」
 天音は次の目的地に向かいながら、メロンパンを齧る。甘くて美味しかった。


 今年の料理研究部の出し物は、クッキーやケーキ等の洋菓子を作って売る事に決まり、部に所属する天見 一颯(あずさ&お兄さん(fa2132))もまた、本来ならばそれらの仕事を手伝わなければならない。だが、早々に戦力外通告を受けてしまった。 
 遊びに行けるのは嬉しいが、何だか悔しい。そこで、一颯はクッキーのバスケットを首に、代金を入れるポーチを肩に提げ、料理研の幟を背中に結びつけた白熊のぬいぐるみを背負ってクッキーの売り歩く事にした。その途中、化学部のクレープ屋台に立ち寄ったのだが‥‥‥まだ前夜祭のはずなのに、既にクレープの材料が品切れ状態だという。
「え、もう品切れ!? どうするの?!」
 一颯はショックを受けた風に言った。食べ歩きで全店制覇を目指していた一颯だが、こんな形で頓挫するとは。
 材料を全部試食と称して、化学部の部員の皆で食べ―――もとい、試作で材料を全て消費してしまったとか。材料を買う予算も無く、赤字は確定である。
 雨水幸恵(西園寺 紫(fa2102))を始め、化学部の面々は、
「星がキラキラして綺麗だねぇ〜」と星の輝き出した空を見上げて、現実逃避の真っ最中だ。
「材料がなくなっちゃったのか。それは大変だね」
 何処からか湧いて出た天音も唸る。
「何か良い方法は無いかな?」
 化学部員以上に真剣に悩む一颯。
「解決方法? 簡単じゃない!」
 そう言って初音が力強く微笑み、幸恵の胸を背後から持ち上げる。
「あん?!」
「初音が手伝ってあげるから、自分で材料を出すのよ、牛のように!」
 乳搾りの要領で、外から先端に向かって胸を扱こうとする天音に、
「そんな十八禁ゲームみたいな、愉快設定はありません」
 地獄突きを食らわせて悶絶させた幸恵は、現在ある材料をまじまじと見る。
 生地を作る為の粉。小瓶に入ったシナモンパウダー。砂糖。以上。
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥帰って寝ましょうか」
「いいの?!」
 空かさず、ツッコむ一颯。
「冗談は置いておいて―――」
「‥‥結構余裕あるよね」
「チープですが、焼いたクレープ生地にシナモンパウダーを混ぜた砂糖を塗して『シュガー焼き』と称して誤魔化しましょう。明日はコレを時間稼ぎにして、部員から徴収したお金で決死の材料買出しをするしかありませんね」
「こんな駄菓子みたいなので大丈夫?」
「オリジナルと言えばOKです」
 疑問の眼差しを向ける一颯に、幸恵はにっこりと微笑んだ。


 狐村 静(宵谷 香澄(fa0913))は、ブラックの缶コーヒーをぐびりと飲む。口の中に、缶コーヒー特有の水臭い苦味が広がった所で、静は大きく息を吐いた。
「―――――疲れた」
 静が教室を見回せば、ソコは死屍累々の世界である。何人かのクラスメートは、真っ白になって椅子に座り込んだり、床に倒れこんだり、目を見開いてブツブツと何も無い空間と会話を交わしている。まぁ、休めば治る‥‥‥だろう。
 準備はまだ多少残ってるが、何とか本番には間に合いそうだ。
 まだ余力の残っている静は、コーヒーを一気に飲み干すと、チャイナドレスとプラカードを手に立ち上がる。
「おや、狐村殿。これから宣伝活動でありますか?」
「ああ、もう前夜祭始まってるし。下級生を中心に、宣伝してくるわ」
「ならば、コレを」
 静は差し出された紙袋を受け取り、
「何だ‥‥コレ?」
「一年生に発注を受けていた品であります。ついでに届けて頂けますか?」
「届けて頂けますかと簡単に言うが、この学校、一学年で何クラス有ると思ってる?」


「優衣ちゃん、頑張ってる?」
 テニス部のたこ焼き屋に顔を出した茜ヶ崎パウラ(敷島ポーレット(fa3611))は、たこ焼きを焼いていた水野 優衣(姫乃 唯(fa1463))に抱きついて頬擦りする。
「くすぐったいですよ〜、パウラさん」
 頬擦りされる優衣が目を細めて擽ったそうにする。
「たこ焼き美味しそうだね。一つ貰って良い? 優衣ちゃんが食べさせてくれたらなお良し!」
「どうぞどうぞ、遠慮しないでじゃんじゃんばりばり食べて行って!」
 たこ焼きをねだるパウラに、優衣は快くたこ焼きの乗った皿を差し出した。
「‥‥‥ナニ、コレ? おまけにスライムなんて配ってるの?」
「違いますよ〜。上手く上手く丸い形にならなかったたこ焼きは、前を通った人に試作品として配ってるいんです」
 テニス部のたこ焼き屋の目玉は、テニスボール大たこ焼き。だが、大きくなればそれだけ生地が厚くなり、調理が難しくなる。そのため、前夜祭が始まった現在も特訓の最中なのだ。
「形はほんのちょっぴり悪いけど、味はすっごく美味しいんですから!」
「ちょっぴり!?」
「大丈夫ですよ。大きさ意外は普通のたこ焼きで、おかしな物は入っていないですよ」
「いや、やっぱりやめと―――グゥ!」
 顔を逸らそうとしたパウラの顎を、優衣ががっしりと掴む。
「はい、あ〜ん☆」
「うごごごご‥‥って熱づう!?」
「どうですか?」
 優衣に訊かれ、観念したパウラはもぐもぐと口を動かし、
「‥‥‥‥‥‥美味しい」
「そうでしょう?」と優衣は自慢げに微笑み、
「あ、試作品を作りすぎて、中に入れる蛸が無くなっちゃったよう」
 もう夜と言って良い時間だが、最近のスーパーは遅くまで空いているので、急げばまだ間に合うだろう。
「ちょっと買い出しに行って来るね〜」
 結いはエプロンも外さずに、急いで店を出て行った。


「いいねぇ〜! よし、ベストアングルは頂きだ!」等と、怪しげな叫びを上げながら床の上を転がりまわって写真を撮る天音を、マナ呆れ顔で見ていた。
「何で放送部が写真取ってるの?」
 女生徒に質問された天音は、
「パンフレット紹介記事に載せるんだよ。だから、もっとこう‥‥こう!」
「目が怖ぇよ」
 学園祭のパンフレットに使うという割には、天音が撮るの写真は、嫌にローアングルからの撮影が多い。
 多分に趣味が入っているな、とマナが考えていると、
 コンコン。
 教室の扉の方から聞こえたノックに振り向けば、長身の女生徒が立っていた。身に纏っている白のチャイナドレスが、足の長い女生徒によく似合っている。
「む‥‥」
 狐村静。マナにとっては馴染みのある顔だ。
「闇野マナさんにお届け物ですよ〜」


 発注していたメイド服の丈合わせをするという事で、静とマナは空き教室へ移動。
 静は、胸元に薔薇リボンが付いた黒いパメリア系のメイド服を着たマナを見て、グッと拳を握る。
「大いにありだな!」
「何故泣いているんだ君は」
「う〜ん。やっぱり胸がきつそうだなぁ〜。闇野は胸おっきいからなぁ」
「またか! 揉むな、胸を!」
「リボンの位置を直してるんだよ〜」
「嘘付け―――って先を摘むな! はん! やめ、そんなに引っ張ったら‥‥食い‥‥込む‥‥!」
「『やめてくださいご主人様』って言ったら止めると誓う」
「な!?」っと言葉に詰まったマナだが、やがて顔を赤面させ、
「‥‥やめて下さい‥‥ご‥‥主人さ‥‥ま」
「よく出来ました♪」
 静はマナを振り向かせその唇に吸い付く。
「ん、ちゅ‥‥優秀なメイドにはご褒美を上げよう」
「あむ‥‥ん、んむ‥‥ご褒‥美?」
「そう。ご褒美」
 静は妖艶な笑みを浮かべて、マナをゆっくりと押し倒していく。


 そんなこんなで夜は老けて‥‥‥‥‥‥‥‥。
 翌朝。
 ぱんぱんぱん!
 青空に幾つかの花火が上がり。
 校内一斉放送が流れる。
『それではこれより、私立アスラ女学園『舞芸祭』を開催します!!』