クリスマスドラマSPアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 一本坂絆
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 1万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 12/26〜12/30

●本文

 アスラ女学園の敷地の一角。
 そこに、巨大なクリスマスツリーが生えていた。
 その全高、約15メートル。
 植えられているモミの木に、クリスマス用の装飾を施して作られたツリーの飾り付けは、梯子や、電線工事の作業車を利用して行われている。周囲の木々にも飾りが施され、クリスマス色が前面に押し出されている。ただし、飾り付けをしているのは生徒ではなく、全員業者の人間だ。
 これは生徒の自主性を重んじ、多くのイベントが学園生徒の主催で行われるアスラ女学園にしては珍しく、生徒主催のイベントではない。冬休み中の行事である為、当然と言えば当然なのだが‥‥。
 クリスマスイヴとクリスマスに、学園の敷地の一部を一般開放して行われるこのイベントは、学園の経営陣による企画だ。
 所謂イメージ戦略。
 受験生向けとしてはやや遅いが、地域の住民に対するアピールとしても役立っている。
「うふふ、寒い寒い。どうしてスポンサーの胡麻磨りに、我々(風紀委員会)が付き合わなければならないんですかね、赤鍵さん。こんな事、警備委員会に任せておけば、十二分に事は足りるでしょうに。ああ、寒い寒い」
 眠そうな半眼で飾り付けの様子を見ていた少女が、自分と同じく飾り付けの様子を『監視』している風紀委員会副会長、赤鍵 参道に、カップアイスを頬張りながら声を掛ける。
「胡麻磨りだから、だろう。これも体裁と言うやつさ。部外者を学園内に入れる以上、関係者も立ち合わにゃあならん。それよりも―――兵藤、寒い寒いと言うのならまず、アイスを食うのをやめな! 見てるこっちが寒くならぁ!」
 兵藤と呼ばれた少女は、アイスを食べてこそいるが、寒いと言う言葉の通りに、何枚もの衣服を重ね着している為、やや着膨れして見えた。
 アスラ女学園高等部の冬用制服の上に着ているのは、スノーボード用のウェア。頭にはニット帽を被り、首にはロングマフラーを二本巻き、手にはスキー用の手袋を、足には防寒用のタイツを履いている。靴下は当たり前のように二重履き。ウェアの上からは分からないが、ポケットに懐炉を入れ、服の下にも貼るタイプの懐炉を幾つも貼り付けている。
 名は、兵藤 織衣(ひょうどう おりぎぬ)。
 風紀委員会所属第一弓兵隊隊長。
 そんな織衣を、参道は横目で見やり、
「何つーか、毛糸のパンツまで履いてそうな勢いだな、お前」
「失礼な!」
 眠そうな目はそのままに、織衣が参道の言葉に対して、憤りを露にする。
「せめてニット地のショーツと言って貰おう!」
「大した違いはねぇよ!」
「うふふ、でもその方が、響きがお洒落な感じ?」
 心底どうでもいい事だった。
「うふふ。警備委員会と言えば、赤鍵さん。挨拶に行かなくて良いんですか? 赤鍵さん。同級生の方も、居るんでしょう?」
 学園と専属で契約している警備会社、通称『警備委員会』には、その性質上、風紀委員会のOGも多く所属している。現在二十歳の参道にとって、顔見知りの者も多い。
 しかし、参道は織衣に対し、肩を竦めて見せるに留まった。
「うふふ。今年こそは卒業するんでしょう? 赤鍵さん。確か、そういう約束でしたものね。流石、元風紀委員会会長。律儀ですね。赤鍵さん」
「うるせぇよ」
 参道はジッとツリーの飾り付けを眺めている。
「うふふ。良いクリスマスになればいいですね? 赤鍵さん」


■クリスマス特別開放期間
クリスマスイヴとクリスマス限定で、学園の一部を一般開放します。飾り付けが施されたモミの木やその周辺の木々は、夜にはライトアップが施されます。
これは、生徒側ではなく、理事会側主催のイベントです。
無論、学園生徒も見学できます。


†キャスト募集†
 ドラマ『私立アスラ女学園』への参加者を募集します。
※注意※
・生徒会はNPCとして扱います。生徒会メンバーを演じる事はできません。ご了承ください。
・実際のドラマでも、二十代の役者さんが高校生を演じる事は良くあります。あまり年齢を気にせずにご参加ください。
・お題に沿ってストーリーを考えて頂いても構いませんし、キャラクターや取りたい行動だけ書いて、後はお任せと言う形でも構いません。

†私立アスラ女学園の御案内†
アスラ女学園では生徒はもちろん、教職員も女性を採用しています。
当学園では、文武両道の精神と、生徒による自治を重んじています。
各クラブ活動、学校行事の運営、生活指導は生徒会主導の下に行われています。
自宅登校が基本ですが、学生寮もあります。
また、中等部、初等部の敷地が隣接するように並んでいます。隣接しているだけで、中等部、初等部とは敷地、施設は別れています。
■歴史
創立は約三百年前。元は仏教色が強かったのですが、戦火に焼かれた事と、施設の近代化に伴い、現在では名称と一部の伝統にのみ名残が残っています。敷地内にお堂があるのはそのためです。
■学校施設
校舎は三階建て。
敷地は『校門から校舎(下足場所)まで十分はかかる』と言われるほど広く、グランド、体育館、室内プール、図書館、部活棟、各道場、テニスコート、花園、食堂、カフェテラスなどの施設がそろっています。学生寮も敷地の中に入っています。
■生徒会
アスラ女学園の生徒会は生徒会長が三人おり、副会長がいません。
『スリーオブフェイス』
【生徒会長】
小扇 一羽(こおおぎ ひとは)
夜坂 東(よるざか あずま)
片馴 静奈(かたなれ しずかな)
『ライトアーム』
【書記長】遠昏 真戯(おちくら さなぎ)
【会計士】風祭 葛篭(かざまつり つづら)
【風紀委員長】辻 守(つじ まもり)
『レフトアーム』
【運動部連代表】藤華・キャヴェンディッシュ(とうか・キャヴェンディッシュ)
【文化部連代表】荒縄目 夢路(あらなめ ゆめじ)
【学生寮代表】木霊 菜々実(こだま ななみ)
■高等部の制服
総ボタンでスカート丈が長いワンピース。色は濃いチャコールグレー。
襟と、ワンピースの中に穿くぺティーコートは白。
ショートタイは一年生がレッド、二年生がダークグリーン、三年生は白地に黒い十字のラインが入る。
■立地
広い敷地を確保する為、山が近い場所に建てられていますが、住宅地も近い為、少し歩けばコンビニやスーパーもあります。最寄り駅から二十分程で市街に出る事ができます。

●今回の参加者

 fa0913 宵谷 香澄(21歳・♀・狐)
 fa1234 月葉・Fuenfte(18歳・♀・蝙蝠)
 fa2132 あずさ&お兄さん(14歳・♂・ハムスター)
 fa2370 佐々峰 菜月(17歳・♀・パンダ)
 fa2791 サクラ・ヤヴァ(12歳・♀・リス)
 fa3393 堀川陽菜(16歳・♀・狐)
 fa3605 ルージュ・シャトン(12歳・♀・猫)
 fa4203 花鳥風月(17歳・♀・犬)

●リプレイ本文

「いやいやいや、実際、私は思う訳だよ」
 ずるずるずる。
「今日はクリスマスイヴ。日本では、恋人達が仲睦まじく過ごす日と相場が決まっている」
 ずるずるずる。
「だから、周りの恋人達を見て、人肌が恋しくなってしまうのは必然。更に言えば、その寂しさを紛らわせる為に素敵な出会いを求めるのは当然じゃないかな人として!」
「ふざけるのは顔だけにして下さい」
「こりゃ手厳しい」
 ずるずるずる。
 公開中の学園内敷地の一角。装飾が施された木々が並ぶ道を、狐村・静(宵谷 香澄(fa0913))が螺郷・沙々羅(月葉・Fuenfte(fa1234))に引き摺られて行く。いつもの様に人肌が恋しいとのたまって、ガールハントに勤しんでいた静。敷地の一般開放の機に乗じて、不埒者が現れないかと独自の見回りを行っていた沙々羅。二人は出会うべくして出会い‥‥‥なる様になった。静は沙々羅にあっさりと、本分で見せ場がバッサリ切られるくらいに簡単に、捕獲され、連行されてしまった。
「と言う訳で、連行してきました!」
「うふふ、残念ながら、本日の風紀委員会は開店休業中ですよ、螺郷さん。警備委員会の方に連れて行って下さい、螺郷さん」
 着膨れる程に防寒着で身を固めた兵藤 織衣は、眠そうな半眼で、氷菓子をザラザラと口に流し込み、ガリガリと噛み砕いて言った。
「一応、うちの生徒です。大事にしたくは有りません!」
 ヤル気の無い態度の織衣に、毅然と言い放つ沙々羅。
「うふふ。ん、ん、ん〜‥‥『色狐』の狐村 静さんですね? お噂は予てより、同じクラスの南郷さんから聞いていますよ?」
 静の悪名は、風紀委員会の隊長格にまで知られているようだ。
「うふふ、余り仕事を増やさないでくださいね、狐村さん」
 そこで、織衣は沙々羅に視線を移し、
「―――所で、螺郷さん」
「何ですか?」
「うふふ、そんな薄着で寒くないんですか? 螺郷さん」
 これでもかと服を着込んでいる織衣に対し、沙々羅が着ているのは制服のみ。服の下も下着だけである。織衣でなくとも、上着の一枚くらいは羽織ってもおかしくは無い気温だと言うのにだ。
 織衣の質問に、沙々羅は胸を張って答えた。
「この程度で寒いと言うのは、気合が入っていない証拠です」
 丁寧な物腰に反して、沙々羅は体育会系の精神を持っている。軟弱も不埒も許さぬ質実剛健の精神に、暑さ寒さは何の問題にもならないのだ。
「うふふ、熱い熱い。常に身体の芯を燃え滾らせている人は、身体が火照って仕方が無いと言った所ですか。身体の熱を持て余す?」
「な! 何を言って―――」
 遠回しなセクハラ発言に、沙々羅が硬直した隙に、織衣が沙々羅のスカートを捲りあげる。ついでに、拘束されていたはずの静が、天を仰ぐ姿勢で地面にスライディングを決める。
「おや、本当に下着だけですね」
 瞬間―――沙々羅はスカートを捲り挙げている手を両手で掴み、引き寄せ、自身の片腕の肘を織衣の腕の内側に差し込んで、自身の重心を落とし、極める―――よりも早く、織衣が自身から捕られた手に身を寄せ、手首を外回りに切って(回して)沙々羅の手を解き、拘束が解けた手の、掌で、沙々羅の身体を軽く突く。
 バランスを崩し、数歩後ろに下がる沙々羅。
「うふふ、いい腕ですね、螺郷さん。三年生でなければ、風紀委員会にスカウトしているところです、螺郷さん。実に残念ですよ、螺郷さん」


 パシャパシャとフラッシュを焚きながら、カメラのシャッターを切るのは赤羽さくら(サクラ・ヤヴァ(fa2791))。今回も、ブログに載せる為の写真撮影のようだ。その傍らでは、天見 一颯(あずさ&お兄さん(fa2132))が「わぁ‥‥‥すごく綺麗だねっ♪」と白い息を漏らす。一颯は入学以前にはこのイベントに参加した事が無く、見るのは今回が初めてになる。ツリーの電飾を反射してキラキラと輝く瞳は、一颯の心情そのものだ。
 さくらも撮影の手を止めて肯き、
「本場のクリスマスとまで行かないまでも、結構凄いよね〜☆」
「うん☆ ‥‥でもやっぱり寒いや。もう少ししたら中に入ろう」
「そうだね、パーティーの準備も終わる頃だし」
 現在、アスラ女学園の女子寮では、寮に残っている生徒達による、クリスマスパーティーの準備が、着々と進められている。一応、一颯はその計画立案に関わっているのだが、料理が全く出来ないため、手伝いを諦めて、ツリー見学に繰り出しているのだ。
「でも、その前にもう少し‥‥」
 二人の少女は、魅せられた様にツリーを見上げる。


●準備が既にお祭り騒ぎ
 一方、女子寮で準備を進める生徒達は、パーティー用の料理を作る為にフル回転で作業をしていた。料理部の人間は都合良く、中心的存在に祭り上げられ、鬼のような形相で方々に指示を飛ばしている。
 こういうパーティー料理は、食べきれるかどうかよりもまずは量だ。沢山の料理が並んでいると言う光景は、それだけでも『パーティー』といった雰囲気を演出する。しかし、いくら冬休みに入り、大半の生徒が帰省しているとは言え、寮生だけで普通の学校の総生徒数に匹敵すると言う、桁違いの規模を誇るアスラ女学園。人手は多いに越した事は無い。その為、料理が出来る生徒(寮の食事は当番制なので、極少数の生徒を除いては、徐々に料理を覚えていく)の殆どが、厨房に投入されている。
 星崎ハルナ(堀川陽菜(fa3393))もそんな生徒の一人だ。料理自体はそこそこ上手くできるレベルのハルナは、フライドポテトやサラダなど簡単な料理を中心に作る。手間がかかったり作り方が難しい料理は、この場合作り方を聞くよりも、できる人間に任せた方が早く済む。
「わ〜! 可愛い‥‥」
 ハルナが隣でブッシュドノエルを作っている、シンシア・ハイランド(ルージュ・シャトン(fa3605))に尊敬の眼差しを向ける。
 シンシアはロール状の生地をチョコレートクリームでコーティングしながら、
「う〜ん‥‥‥でも、こういう量がモノを言う場合は、時間をかけて凝った物を作るより、簡単な料理を多く作った方がいいかもしれませんネ〜」
「でもこういう凝った料理があった方が、パーティーっぽくて良いと思います」
「それもそうですネ〜」
 シンシアは自分の手についたクリームを舐め取ると、ハルナにチョコレートクリームが入ったチューブを向け、小首を傾げてみせる。
 ハルナは行儀が悪いとは思いつつも、女として生まれてきた以上勝つ事の出来ない誘惑に負け、人指し指を差し出す。その指の腹に、少量のチョコレートクリームが乗せられた。乗せられたクリームを舐めるハルナ。
「おいしいです♪」
 シンシアは幸せそうなハルナに微笑みかけ、
「がんばりましょう。疲れている時は、みんなが美味しく食べる姿を想像しながら作るのが一番ですヨ〜☆」


 そんな風に皆が頑張っている傍らで、極一部の料理が壊滅的に出来ない人間である白鷺 桜(佐々峰 菜月(fa2370))は。配膳係に任命されていた。
「むうぅ‥‥上手に出来てたと思うんですけど〜‥‥」
 難解な事件に直面した名探偵の顔で考え込む桜。真相は「‥‥ええと、この白い粉は砂糖かしら? 塩なのかしら‥‥?」と『片栗粉』を片手に悩む姿を目撃されたからなのだが‥‥‥。とんだ迷探偵ぶりである。
 でも、任されたからには頑張らないとですね! と気分を入れ替え、配膳に勤しむ桜は、
「パーティまで時間がありません、急がな―――きゃ!」
 張り切った途端、失敗すると言うお約束をしでかした。躓いて、盛大にすっ転び、お盆に載せられた料理を床にぶちまける。
「‥‥ええと、はいもう何もしません〜!」
 ふぇええ〜! と流石の桜も涙を浮かべるが、今日は聖夜。皆が優しくなる日。一人の少女が、桜の肩をポンと優しく叩く。他の少女達も、床にこぼれた料理を拾って片付けていく。
「大丈夫よ、桜さん。気にしないで」
「うう‥‥皆〜‥‥‥」
 瞳を潤ませる桜の目の前で、少女達は、床に散らばった料理の内、比較的汚れの少ない物、或いは汚れていない部分を『白鷺 桜専用』と書かれた、餌入れを大きくした様な皿に盛り付けて運んでいった。
「えッ?! ちょ! マジ(本気)ですか!」
 桜の悲痛な叫びに、作業に勤しむ生徒全員が振り向き―――首を縦に振る。
 ガチ(本当)だった。


 色々あったが準備が整い、パーティーが開始された。
「おいし〜いッ☆」
 皿に盛られた料理を次々と消費する一颯。そんな一颯の取り皿に、ハルナは新しい料理を取り分けてやる。
「いっぱいありますから、そんなに慌てなくても大丈夫ですよ」
「鳥は、本当は七面鳥の方がいいんですが、高いですからネ〜。なんでニッポンの七面鳥はこんなに高いんですカ!」
 シンシアは日本の物価にお怒りのようだ。
 するとさくらが小首を傾げて、
「季節ものだから、高く売りつけようとしてるんじゃない?」
「それ、ホントにありそうで嫌ですね‥‥」
 渋面を作るハルナ。そんなハルナは、今ミニスカサンタルックに身を包んでいる。ハルナにしては珍しい事だが、これは人に着せられたものだ。着せた張本人の生徒会会計士風祭 葛篭は、遠くからカメラ目線で、グッと親指を立てている。
「おそろいですネ〜♪」
 同じく、ミニスカサンタルックに身を包むシンシアの嬉しそうな笑顔に、ハルナは曖昧な笑みを返すに留まった。シンシアも人に着せられた口だが、始めこそ文句を言っていたものの上手く丸め込まれ、今では結構ノリノリである。因みに、シンシアにこの衣装を着せたのは、ハルナに衣装を着せた者と同一人物だ。
 始め、隅で自分専用の皿に盛られた料理を、死んだ魚のような目で、もそもそと咀嚼していた桜は、今はプレゼント交換に土偶を出して、周囲からブーイングをくらっている。本人にとっては可愛い物らしいが、そんな特殊な性癖を有しているものは、桜の周りには居ないようだった。


 そんな寮内の喧騒を余所に、屋外では‥‥‥
「暖かい‥‥暖かすぎて幸せすぎて、もうこのまま死んでもイイ‥‥♪」
 静は幸せそうに息を吐く。静は予め、文化祭で知り合った他校の生徒に招待状を出しておいたのだ。そして今は、人気の無い場所で『お楽しみ中』である。
 肌蹴させた少女の首筋に顔を埋めて、熱い息を吐く静。
「ぁ‥‥んぅ‥‥ふぅう! ん! ダメです、お姉様‥‥ここじゃ‥‥ぁ‥‥寒いですぅ」
「そう? ここはとっても熱くなってるけど?」
 少女の制止の言葉は、下腹部を下る静の手を止める役には立たなかった。
「ひぐぅッ―――」
 声を荒げそうになる少女の口を、静の口が塞ぐ。長い長い口付けを終え、透明な糸を引きながら二人の唇が離れた時には、少女の瞳は潤み、息は熱く上気し、身体は小さく弛緩していた。
「クリスマスに一人でいるのは少し寂しい。君さえよければ、今日は一緒にいてくれないか?」
「ふぁ?‥‥‥ふぁい‥‥」
 朦朧とした意識のまま、静の問いに答える少女。その返事に満足し、静は少女の服の中入れた指を泳がせる。腕の中で、熱い息を吐きながら悶える少女を弄びつつ、それにしても、と静は思う。今年で学園生活が終わりというのは悲しい。この花園を手放すかと思うと泣けてくる。
(「それならいっそ留年‥‥はダメか? ‥‥ダメか」)
 既に膝は崩れ、声が漏れないよう奥歯を噛み締めるばかりの少女を、更に追い詰めていく。
 まぁ、取り合えずは、今を目一杯楽しもう。