私立アスラ女学園 拾弐アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 一本坂絆
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 易しい
報酬 0.9万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 02/24〜02/28

●本文

 ヴァレンタインデーと言えば、日本では女性が意中の男性にチョコレートを送る日だが、女子が多い―――というか、女子しか居ないアスラ女学園では、ヴァレンタインは女性から女性にチョコレートを送る日となっている。最近では女友達同士で自作のチョコや、買ってきたチョコを食べたり、交換する行為が一般的に行われている為、それ自体は特別な行為と言うわけでは無い。しかし、アスラ女学園では、『本命のチョコ』も女性に渡されたりする。


 ガチャリ。
 扉が開き、辻 守(つじ まもり)が生徒会室に入ってきた。
「ごきげんよう。辻さん」
 優雅に紅茶を飲みながらの、藤華・キャベンディッシュ(とうか・―)の挨拶。
 藤華の目の前には、机に堆く積まれたチョコレートの山。
「ちょうど良かったですわ。辻さん、食べるのを手伝って頂けませんかしら?」
「それは致しかねます、キャベンディッシュ先輩」
 そう答えた守は、手にぎっしりと包みが詰まった紙袋を提げている。無論、包みの中身はチョコレートだ。
「アラ、貴女もですの?」
 藤華は頬に手を添えて、
「困りましたわね。最近のチョコレート菓子は混ぜ物が入っていますから、再利用する事も出来ませんし‥‥‥」
 そう言いながら、チョコレートを摘む藤華。
「量が量なので、幾らかは断ったのですが‥‥‥」
 守が机の上に紙袋を置いた拍子に、紙袋に詰まった包みが机の上に転がり落ちる。
「相手には悪いですが、一人では食べきれるかどうか‥‥。知人にでも配った方が良いのでしょうか?」
「余りお勧めしませんわね。我々が、妄りにチョコレートを配る訳にはいきませんのよ? 昨年の惨事を再現する事になってしまいますわ」
 それは去年のヴァレンタインデーの事。当時の生徒会が、どこぞの小説宜しく、生徒会役員のチョコレートを景品として、宝探しゲーム開催した。しかし、それはある意味成功で、色んな意味で失敗だった。結果も然る事ながら、そこに至るまでの『過程』が余りにも凄惨だった為、一度限りで禁止となってしまった。現実は物語の様にはいかない。
「夜坂先輩等は大変でしょうね‥‥」
「まぁ、此処が一番安全ですし、他の方々もその内来るでしょう」




※注意※
・ドラマのキャストを募集します。
・生徒会はNPCとして扱います。生徒会メンバーを演じる事はできません。ご了承ください。
・実際のドラマでも、二十代の役者さんが高校生を演じる事は良くあります。あまり年齢を気にせずにご参加ください。
・お題に沿ってストーリーを考えて頂いても構いませんし、キャラクターや取りたい行動だけ書いて、後はお任せと言う形でも構いません

†私立アスラ女学園の御案内†
・アスラ女学園では生徒はもちろん、教職員も女性を採用しています。
・当学園では、文武両道の精神と、生徒による自治を重んじています。
・各クラブ活動、学校行事の運営、生活指導は生徒会主導の下に行われています。
・自宅登校が基本ですが、学生寮もあります。
・また、中等部、初等部の敷地が隣接するように並んでいます。隣接しているだけで、中等部、初等部とは敷地、施設は別れています。
■歴史
創立は約三百年前。元は仏教色が強かったのですが、戦火に焼かれた事と、施設の近代化に伴い、現在では名称と一部の伝統にのみ名残が残っています。敷地内にお堂があるのはそのためです。
■学校施設
校舎は三階建て。
敷地は『校門から校舎(下足場所)まで十分はかかる』と言われるほど広く、グランド、体育館、室内プール、図書館、部活棟、各道場、テニスコート、花園、食堂、カフェテラスなどの施設がそろっています。学生寮も敷地の中に入っています。
■生徒会
アスラ女学園の生徒会は生徒会長が三人おり、副会長がいません。
『スリーオブフェイス』
【生徒会長】
小扇 一羽(こおおぎ ひとは)
夜坂 東(よるざか あずま)
片馴 静奈(かたなれ しずかな)
『ライトアーム』
【書記長】遠昏 真戯(おちくら さなぎ)
【会計士】風祭 葛篭(かざまつり つづら)
【風紀委員長】辻 守(つじ まもり)
『レフトアーム』
【運動部連代表】藤華・キャヴェンディッシュ(とうか・キャヴェンディッシュ)
【文化部連代表】荒縄目 夢路(あらなめ ゆめじ)
【学生寮代表】木霊 菜々実(こだま ななみ)
■高等部の制服
総ボタンでスカート丈が長いワンピース。色は濃いチャコールグレー。
襟と、ワンピースの中に穿くぺティーコートは白。
ショートタイは一年生がレッド、二年生がダークグリーン、三年生は白地に黒い十字のラインが入る。
■立地
広い敷地を確保する為、山が近い場所に建てられていますが、住宅地も近い為、少し歩けばコンビニやスーパーもあります。最寄り駅から二十分程で市街に出る事ができます。

●今回の参加者

 fa0913 宵谷 香澄(21歳・♀・狐)
 fa2459 シヅル・ナタス(20歳・♀・兎)
 fa2791 サクラ・ヤヴァ(12歳・♀・リス)
 fa3393 堀川陽菜(16歳・♀・狐)
 fa3426 十六夜 勇加理(13歳・♀・竜)
 fa3584 花田 有紗(15歳・♀・リス)
 fa3605 ルージュ・シャトン(12歳・♀・猫)
 fa4581 魔導院 冥(18歳・♀・竜)

●リプレイ本文

 ヴァレンタインデーたるこの日。放課後であるにも拘らず、鉄 大河(シヅル・ナタス(fa2459)は校内の見回りを行っていた。
 生徒に行き過ぎた行動が無いか、またあればそれを注意して廻り、チョコを大量に貰う生徒には、チョコを入れる為の紙袋やダンボールを渡して回っているのだ。
 鉄 大河‥‥‥口は雑だが、気配りは細かい。
「相変わらず、この時期は馬鹿騒ぎだな」
 誰とも無く呟く大河の手には、チョコの入った紙袋。
 生徒から奪った―――訳ではなく、個人的に貰ったものだ。
 鉄 大河‥‥‥渡す相手は、居ないのだが‥‥。
 そんな大河の元に、一人の生徒が寄ってくる。
 赤羽さくら(サクラ・ヤヴァ(fa2791))だ。
 さくらは開口一番に、
「チョコ分けて〜♪」とチョレートをねだるが―――
「断る!」
 断固拒否された。
 大河は甘いものが好きなのだ。
「いいじゃん。チョコ沢山貰ってるんだし」
「まぁ‥‥それはそうだが‥‥チョコをもらえるのは嬉しいが‥‥同性から大量に貰うってのは、女としてどうよ?」
 なんだか微妙な気分だった。
「先生はあげる人いないの?」
 無邪気に尋ねるさくら。
 ビキリと大河の動きが固まる。
 言ってはならない事を、言ってしまった。
 固まる大河を気にする事無く、さくらはそれにしてもと前置きをし、
「日本のヴァレンタインデーって変わってるよね。ヴァレンタインデーはカードとかお菓子を親友にあげる日‥‥でしょ? 何か曲解されてる気がするんだよな〜」
 苦笑を浮かべるさくらに、硬直からなんとか復活した大河は、
「外来の文化だしな。習慣風習なんてぇのは、国が変われば内容も変わるもんさ。日本文化だって、外国じゃかなり曲解されてんだろ? 同じ事だ」
 珍しく、まるで教師の様な(実際に教師だけども)事を言った。


「―――それではお姉様」
 丁寧に一礼してから去っていく下級生の背中を見詰め、
「‥‥愛って重たいな」と、ニヒルな笑みを浮かべる狐村・静(宵谷 香澄(fa0913))。
 両手に持つチョコレートの詰まった紙袋は、実際に重かった。
 学園きっての伊達女であるところの生徒会長よりはマシなのかもしれないが、それでも多いと言って過ぎる事のない量。
「全部食べるのは少し辛いぞ、これ」
 紙袋一杯分のチョコレート。
 お腹にも重そうだ。
 次に重くなるのは体重か?
「とは言え、折角の贈り物を無下にする訳にもいかないし‥‥」
 むぅっと唸りながら、静はとぼとぼと廊下を歩いていく。


 流石に、食堂の厨房を個人に貸し出すことはできないと断られた為、調理系倶楽部に頼み込んで、調理を進めていた戎橋茜(十六夜 勇加理(fa3426))。
 貰ったチョコレートのお返しとして作り上げたのは、チョコを溶かした生地にグミを入れ、ソースに見立てたチョコ、鰹節に見立てたアーモンドスライスをかけた、お好み焼のような外観のパンケーキだった。
「よぉし、できたでぇ! これが茜流お好み焼きケーキや!」
 茜は完成したケーキを満足気に眺めると、自分にチョコをくれた少女達を呼びに出かけて行った。


「はい、どうぞ」
 星崎ハルナ(堀川陽菜(fa3393))から綺麗にラッピングされた、チョコレートチップ入りの自家製のクッキーを受け取る河合 リサ(花田 有紗(fa3584))。
「ありがとぅ。でも、また太っちゃうかもぉ」
 そう良いながらも、貰ったクッキーを大事そうに持って立ち去る。
 ハルナにはこれと言ってチョコを渡す相手がいないので、こうして自家製のクッキーを知人に配って回っているのだ。
 似た光景は、校内のあちらこちらで見る事が出来る。
「ヴァレンタインデー‥‥年に一度の、女の子の祭典ですね〜」
 ぽややんと呟くハルナ。
「ハーイ! ハルナもチョコ配ってるですカー?」
 廊下を通りかかったシンシア・ハイランド(ルージュ・シャトン(fa3605))が、ハルナに声を掛ける。
「それにしても、日本のバレンタインは変わってますネー」
 アメリカからの留学生であるシンシアにとっても、ヴァレンタインデーにチョコを配るという風習には、馴染みが無い。
「チョコレートを配ると言う風習は、元は製菓会社のキャンペーンから始まったらしいですから」
「へ〜、そうなのですカー。ハルナは物知りですネー」
 素直に感心するシンシア。
「とは言え、私には、渡す相手がこれと言っていませんので。シンシアさんにも御一つおすそ分けです」
 ハルナがクッキーの包みを渡すと、
「では、あたしからも‥‥‥ケーキ、クッキー、トリュフチョコがあるですヨ。どれがイイですカー?」
「随分と、沢山作ったんですねぇ」
 ハルナは素直に感心する。
「調理実習室で、チョコを代理で作るって言う作業が、何か異様に多かったのですヨー」
 それは、確かに、手作りには違いないだろうが‥‥代理が作ったものは本命とか、そういったものに分類できるのだろうか‥‥。
 買えばいいのに。
 と、
「おーい」
 二人が菓子を交換し終えたところに、静が通りかかる。
 キョトンとするシンシア。
 反射的に身構えるハルナ。
「‥‥‥‥‥‥‥‥何か?」
 少なくとも、ハルナの方はかなり警戒している。
 だが、静はそんな二人の反応を気にした風も無く、
「ん〜、これから生徒会室に行くんだけどさ、暇なら付き合ってくれよ」
「生徒会室、ですか?」
 よくもまぁ‥‥‥あんな人外魔境に、と思うが、口にはしない。
「チョコの消費を分かち合おうと思ってさ。食べるにも一人よりは二人、二人よりは沢山の方がいい」
「そう言う事でしたら、構いませんが」
「お茶会ですカ? 楽しそうですネ☆」
「よしそうと決まれば早速行こうか」
「あ、先輩。ちょっと待ってください」
 ハルナは静を止めると、クッキーの入った包みを差し出す。
「ヴァレンタインですから」
「では、あたしからもプレゼントでス」
 ハルナに続いて、シンシアも菓子を差し出す。
 狐村静‥‥‥嬉しさ半分。哀しさ半分。


 廊下を歩きながら、闇野マナ(魔導院 冥(fa4581))は、確認するように、服の上からポケットの中のものに触れる。
 手の平サイズの―――ハート型チョコレート。
 無論本命。
 想い人に、それを告げるつもりは無いが―――
 義理だと言う、つもりではあるが―――
 それを相手に渡す時の事を考えると、それだけで顔から火が出る思いだ。
(「キミには日頃世話になっているからな。その礼だ。キミには日頃世話になっているからな。その礼だ。キミには日頃世話になっているからな。その礼だ。キミには日頃世話になっているからな。その礼だ―――よしッ!」)
 胸中での復唱完了。大丈夫だ。落ち着けば失敗する事は無い‥‥‥はず‥‥だ。
 考えを巡らせながら歩いていると、丁度、廊下の曲がり角から想い人の姿が覗く。心無し、歩調を速めながら、マナは片手を上げ、
「狐村先ぱ―――」

 ―――静は二人の女生徒から、何かを受け取っているところだった。

 マナの、挙げかけた手が止まる。
 ‥‥‥‥‥‥。
 静の方もマナの姿に気が付くが、
「じゃ、そう言う事で」
 クルリと身を翻して、スタスタと立ち去ろうとするマナ。
 その腕を、静が掴む。
「グットタイミングだな、闇野」
「どこがだ! バットタイミングもいいところだぞ!」
 いきなり怒られて、きょとんと目を瞬かせる静。
「何言ってんだ?」
「何でも無い! ああ、何でも無いさ! キミの事など!」
 マナは こんらん している!
「まあ、良いや。闇野、生徒会行って皆でチョコ食べるぞ」
 ひょい―――と簡単に、手軽な風に、静はマナを抱き上げる。お姫様抱っこで。
「ちょ?! やめてくれ! 恥ずかしいから!!」
「何言ってんだ。前はもっと恥ずかしい格好をしてたじゃないか」
「アレは二人っきりの時の話だろう!」
 ジタバタと暴れるマナにお構い無しで、生徒会室へ向かう静。
 その後を追うハルナとシンシアは、
「仲がいいですネー」
「ああ言うのは、生暖かい目で見るものですよ」


 そんなこんなで、生徒会室前。
「ところで闇野、さっきは何の用だったんだ?」
「今は良い。‥‥‥人目があるから、また後で」
 既に床に下ろされているものの、此処までの過程が恥ずかしかったせいか、そっぽを向いて答えるマナ。
「アレ? 何、チョコでもくれ―――」
 睨まれた。
 静はマナの視線から逃れるように視線を外し、そこで初めて、一人の女生徒が、すぐ傍まで歩み寄っている事に気が付いた。
 黒縁の―――しかし、洒落たデザインの、眼鏡をかけた少女。
 色素の薄い茶色の瞳。瞳と同じく茶色がかった髪を、二本の三つ編みに纏めている。女子にしては、背が高い。胸元のタイは、二年生であることを示す緑色。
「へぇ? 生徒会室に一般生徒が来るなんて‥‥珍しいな」
 聞き覚えのある声。
「普段から一般生徒に対しても開放されているとは言え、皆牽制し合って入ろうとはしないのに」
 女生徒は右手に下げていたトートバックを、左手に持ち替え、生徒会室のドアを開けた。
「ようこそ、『我等が生徒会室』へ。御茶くらいなら出すよ」


「しっかし、モテる女は大変だな」
 対面で紅茶を啜る東に、静は皮肉げに言った。
 東は既に変装を解き、鬘やカラーコンタクト、伊達眼鏡を外して、タイも三年生を示す白色に戻している。
「これも仕事だよ。あとは馴れさ」と東も皮肉げな笑みを静に返す。
 生徒会室の来客用のソファーには、静、マナ、ハルナ、シンシア、生徒会長である夜坂 東、小扇 一羽、風紀委員会会長・辻 守、運動部連代表・藤華・キャベンディッシュが席についている。因みに、静は何か魂胆があるのか、守の右隣に座っていた。
「そう言えば」と守がカップから口を離し、
「昼休みに、片馴先輩が夜坂先輩の事を探していらっしゃいましたが‥‥」
「ああ、今日は学校自体を欠席したからね」
 東は風紀委員会のトップに対して、事も無げにサボりを告げ、藤華は「片馴さんも可哀相に‥‥」と小声で呟く。
 一羽は、チビチビと、マナが持ってきた蜂蜜まんじゅうを齧り続けている。
「ん? 欠席したのに、何故今、夜坂先輩は学校に?」
 マナの当然の疑問。
「靴箱やロッカーには鍵をかけて、机の中にも教科書を隙間無く詰めてるんだけど、それでもチョコを置いていく娘はいるからね。放課後になってから回収しに来きたんだ」
 東の言葉をつぐ形で、それに―――、と藤華が続ける。
「専門店で二時間も悩んで買った例の物を、渡さなければなりませんしねぇ?」
 意地の悪い笑みを浮かべ、東を横目に見る藤華。
 東はバツの悪い顔で、
「でも、まぁ‥‥自分で言うのもなんだけど、私くらい人気者になると、逆に数が減るんだよ」と強引に話題を戻す。
「人気なのに、貰う数が減るんですか?」
 不思議そうに尋ねるハルナに、一羽が微笑を崩さぬまま、
「嫉妬深い少女が、意中の相手の机にチョコを忍ばせようとしたところ、恋敵が先に忍ばせていたチョコを発見しました。因みに周りには誰もいません。さて、少女はどのような行動に出るでしょう?」
 浮かんだ答えに、静は眉を顰める。
「‥‥‥エゲツナイな」
 それを笑顔でクイズにする一羽も含めて。
 静の反応にも、東は肩を竦めて見せただけだ。
「現実なんてそんなものさ。だからこそ、物語は美しい」
「ふぅーん。そんなモンかね‥‥」
 適当に合図地を打つ静。しかし、意識は別のところにあった。
 守がカップを持ち上げている時を―――右手が塞がっているところを狙って、静は『わざと』まんじゅうを落とす。
「おっといけない!」
 静は慌てて(フリ)守の太股へ手を伸ばす。
 チャレンジャーと言うよりも‥‥
 またかよ、こいつ。
 期くして、静の手には―――

 ガチャリ。

 断じて、人肌では無い感触が返ってきた。
 訳がわからず、硬直する静。
「辻さん。折角のティータイムなんだ。装備は外しなよ」
 東が冷静に、守を窘める。
 守は―――この少女にしては珍しく、渋るように、しかしながら、縦社会的思想の持ち主であるが故に、上級生の言葉に従い、制服の内側―――守の身体のサイズより、一回り大きいぺティーコートの中にしまっていた、装備類を取り出す。
 すると―――出るは出るわ。
 標準装備の指錠に始まり、三つに分解した杖。小型のスタンガン。デリンジャー。特殊警防。スタンロッド。催涙スプレー。予備のデリンジャー。トンンファー。縄。十手。鉄扇。篭手の代わりに腕に巻いていた棒手裏剣の束。エトセトラ‥‥。
 無論、全ての装備は威力を落とされているし、守は絶対に、これらの装備を、生徒に対して使用する事は無いが‥‥。
 しかし―――
 身体のサイズより一回り大きい、ぺティーコート。
 その意味を、知る。
 生徒会メンバー以外の全員が、顔を引きつらせる。が、守は特に気にした風も無く、 静の目を見詰め、
「狐村先輩。人の思考思想はそれぞれであり、判断基準も個人によって違います。しかし、集団での生活において、それは時に他者、或いは自身を傷つける結果を招いてしまう。それを、公平かつ中立的な立場から律する為に規則があります。元来、校則は生徒に守らせるものではなく、生徒を守るためのもの。校則を守るという事は、自身を思い、他者を思いやる気持ちの表れです。どうか、ご理解下さい」
 真剣に語る守に静は、
「‥‥‥‥はぃ」
 蚊の鳴くような声で肯くしかなかった。