私立アスラ女学園 拾参アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 一本坂絆
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 1万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 03/22〜03/26

●本文

「寒っ!」
 グランドに集まった生徒達は、皆、半袖の体操服にブルマ姿。
 今年は暖冬だ暖冬だと言われているが、この格好ではその恩恵を受けたところで、大した違いは感じられない。
 それでも、生徒達が半袖の体操服にブルマという格好で、グランドに集まっているのは他でもない。
 今日が『マラソン大会』の日だからだ。
 とは言え、アスラ女学園は生徒数が多い為、マラソン大会も、何日かに分けて行われる。今グランドに集まっている生徒の数は、全生徒数の十分の一程度である。
 そんな生徒達の中、マラソンコースの説明がかかれたプリントを手に、片馴 静奈(かたなれ しずかな)は歯軋りをする。
「何で‥‥‥『9.1キロ障害物競走』になってんのよ!」
 マラソン大会では、毎年、10キロ程の距離を走るのが慣わしだ。
 が―――
 ワナワナと震える静奈の手に握られたプリントには、『9.1キロ障害物競走』の文字が躍っている。
どうしてこんな事になっているのかと言うと、今年の準備の指揮をとっていたのは、夜坂 東(よるざか あずま)だったわけで―――
「あの馬鹿―――! 推薦で大学決まって暇だって言うから任せてみれば!」
 夜坂東―――生徒会長にして、学園一の伊達女。
 静奈の隣に立つ、荒縄目 夢路(あらなめ ゆめじ)は諦めたような顔で、
「今の今まで確認とらんかったんが致命的やな‥‥‥」
「辻さんが補佐やってたんでしょう? だから、安心してたのに。何でこんな事になってんのよ」
「ほら、辻は風紀の仕事以外では、年上に口出しすんの苦手やから」
 体育会系の哀しい性か‥‥。鉄壁の風紀委員長も、今回は完全に役立たずだったようだ。
「このゴール直前にあるローションプールなんか、完全に夜坂の趣味やな」
「気温の事は考えてないわね、アイツ‥‥‥!」


 ゴール横のテント。
「タオルもっと用意して! 運動部のシャワー室は? 使えるようにしてある?」
 夜坂東が―――彼女にしては、とても珍しい事に―――先頭に立って指示を出す。
 テントには、タオルやスポーツドリンクが並び、御汁粉まで用意され、万全の体制で、生徒達のゴールを待っている。
 テントで御汁粉の準備に勤しんでいた木霊 菜々実(こだま ななみ)は、作業の手を止めて、
「ねぇねぇ、あっちゃん。どうして障害物競走にしたの?」
 菜々実の、当然のとも言える問いに、
「10キロ程度なら、45分もあれば走りきれるだろう? それじゃあ、面白くないじゃないか」と飄々と答える東。
 だが、一つだけ、彼女が見落としている事がある。
 それは、とても簡単な話。
 普通の女子は、そんなに速く走れません。



※コースは全長9.1キロ。極力平地を選び、学園内を大回りに回るコースです。
※各障害物は、取り合いにならないよう、ちゃんと数が用意されています。
※大会運営委員が監視をしているので、ズルはできません。
※かなりキツイです。リタイアする場合は、近くの大会運営委員に声を掛けてください。
【第一障害物】
スタートから2キロの地点にある。
陸上競技用のハードルが、100メートルにわたり並んでいて、一つ一つ跳び越えて進む。
初っ端から体力を奪う嫌な仕掛け。
【第二障害物】
スタートから4キロ地点にある。
直径約1メートル、全長500メートルのトンネルが横たわっていて、その中を這い進む。
四つん這いや、匍匐で進まねばならず、無駄にしんどい。
【第三障害物】
スタートから6キロ地点にある。
10メートルに渡り、コース全体に、ゴム紐が縦横無尽に張り巡らされている。
一度引っかかると、中々出られない。
【第四障害物】
スタートから8キロ地点にある。
用意された縄跳びを使い、走り跳びで200メートルを走る。
此処に来て体力を奪う仕掛け。
【第五障害物】
ゴールの目の前にある。
コース全体に広がる、深さ50センチ程のローションプール。
プール自体は20メートル程の距離だが、よく滑る。





※注意※
・ドラマのキャストを募集します。
・生徒会はNPCとして扱います。生徒会メンバーを演じる事はできません。ご了承ください。
・実際のドラマでも、二十代の役者さんが高校生を演じる事は良くあります。あまり年齢を気にせずにご参加ください。
・お題に沿ってストーリーを考えて頂いても構いませんし、キャラクターや取りたい行動だけ書いて、後はお任せと言う形でも構いません

†私立アスラ女学園の御案内†
・アスラ女学園では生徒はもちろん、教職員も女性を採用しています。
・当学園では、文武両道の精神と、生徒による自治を重んじています。
・各クラブ活動、学校行事の運営、生活指導は生徒会主導の下に行われています。
・自宅登校が基本ですが、学生寮もあります。
・また、中等部、初等部の敷地が隣接するように並んでいます。隣接しているだけで、中等部、初等部とは敷地、施設は別れています。
■歴史
創立は約三百年前。元は仏教色が強かったのですが、戦火に焼かれた事と、施設の近代化に伴い、現在では名称と一部の伝統にのみ名残が残っています。敷地内にお堂があるのはそのためです。
■学校施設
校舎は三階建て。
敷地は『校門から校舎(下足場所)まで十分はかかる』と言われるほど広く、グランド、体育館、室内プール、図書館、部活棟、各道場、テニスコート、花園、食堂、カフェテラスなどの施設がそろっています。学生寮も敷地の中に入っています。
■生徒会
アスラ女学園の生徒会は生徒会長が三人おり、副会長がいません。
『スリーオブフェイス』
【生徒会長】
小扇 一羽(こおおぎ ひとは)
夜坂 東(よるざか あずま)
片馴 静奈(かたなれ しずかな)
『ライトアーム』
【書記長】遠昏 真戯(おちくら さなぎ)
【会計士】風祭 葛篭(かざまつり つづら)
【風紀委員長】辻 守(つじ まもり)
『レフトアーム』
【運動部連代表】藤華・キャヴェンディッシュ(とうか・キャヴェンディッシュ)
【文化部連代表】荒縄目 夢路(あらなめ ゆめじ)
【学生寮代表】木霊 菜々実(こだま ななみ)
■高等部の制服
総ボタンでスカート丈が長いワンピース。色は濃いチャコールグレー。
襟と、ワンピースの中に穿くぺティーコートは白。
ショートタイは一年生がレッド、二年生がダークグリーン、三年生は白地に黒い十字のラインが入る。
■立地
広い敷地を確保する為、山が近い場所に建てられていますが、住宅地も近い為、少し歩けばコンビニやスーパーもあります。最寄り駅から二十分程で市街に出る事ができます

●今回の参加者

 fa0190 ベルシード(15歳・♀・狐)
 fa0913 宵谷 香澄(21歳・♀・狐)
 fa2459 シヅル・ナタス(20歳・♀・兎)
 fa2791 サクラ・ヤヴァ(12歳・♀・リス)
 fa3393 堀川陽菜(16歳・♀・狐)
 fa3426 十六夜 勇加理(13歳・♀・竜)
 fa4548 銀城さらら(19歳・♀・豹)
 fa5559 黒羽ほのか(20歳・♀・鴉)

●リプレイ本文

 ジャージ姿。頭に鉢巻。手には竹刀。
 実際に走る生徒達よりも気合の入った格好の、鉄 大河(シヅル・ナタス(fa2459))は、
「良いかお前ら! 去年はサッカー部に上位を独占されたが、今年こそ、我が水泳部が上位を独占するくらいの気概を持って挑め!」
 ビシッ!
 竹刀で地面を打つ。
 スパルタチックな大河の言動に対して、生徒達は今一乗り気ではない。
「だりぃ〜」
「何でこんな寒い中走らされんのよ‥‥」
「つーか、今回は夜坂先輩の企画でしょ? まともな結果になるわけ無いじゃん」
 ぶーぶーと不平不満を漏らす生徒達を、大河はもう一度、竹刀で地面を打って黙らせ、
「万が一、ビリになるような人間や、リタイアするような人間がいたら、覚悟しておけよ!」
 肉食獣のような笑みを浮かべて忠告する。


 スタート時間が迫る中、一条さらら(銀城さらら(fa4548))が部員達に檄を飛ばす。
「部員獲得の為、我が超研部が上位に入る事が至上命題です」
 確かに、文化部が上位に入れば目立つだろうが、水泳部と同じく、他の運動部も(主に顧問が)上位を狙っている為、それは難しく思えるが―――。
 運営委員が監視していて、不正の類も侭ならないとなれば、完全な地力がモノを言う事になりそうだ。


「位置について―――用意っ」
 パン!
 火薬の弾ける乾いた音と共に、生徒達が一斉にスタートする。
『さぁ、今、一斉にスタートしました!』
 その様子を、マルガレーテ・レオンハルト(ベルシード(fa0190))が、自転車を漕ぎ、生徒達に併走する形で、半ば強引に放送部から借り出した機器で、実況中継を行う。


●2キロ地点
「やったるでぇ!」
 ハードルを飛ぶのではなく―――片っ端から、蹴り倒しながら、突き進んでいく戎橋茜(十六夜 勇加理(fa3426))。
 豪快に走るその後姿を赤羽さくら(サクラ・ヤヴァ(fa2791))は、呆れ顔で見ていた。
「元気だなぁ〜」
 呟くさくらは、既に諦めムードになっていた。
 元々体力が無い上に、デジカメとボイスレコーダーといった機材を持って走っているせいで、余計にスピードが出ず、既に、後ろから数えた方が早い、最下位に近い順位にまで落ちている。
「それにしても、障害物マラソン‥‥また、なんか変な物を考えついたね〜」
 さくらは苦笑を浮かべると、周りを見回した。
 さくら同様、既に諦めムードで、歩き始める生徒がちらほらと見える。
 とり合えず、さくらは持ってきていた機材を取り出すと、いつも通りに、個人的な撮影を開始した。


●4キロ地点
「こちらフォックス、トンネルに潜入した。会長、指示をくれ!」
 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
 寂しい。
 長く続くトンネル。その中を、狐村静(宵谷 香澄(fa0913))は這い進んでいた。
 全長500メートル。
 這って進むには、いささか長すぎる距離。
 自然―――静の口からは、独り言が漏れ出てくる。
「うーむ。ここは前走者を追って、事故を装い、尻に顔を埋めるべきか。それとも、後続を待って、確実に捉えるべきか。悩みどころだな。いや、しかし、この狭さだ。密着率は高いが、捕まえたとしても大した事はできないか? むむ。折角の死角なんだ。何とかして生かしたいものなんだがなぁ‥‥‥。やはり尻に顔を埋めるプランで行くか。四つん這いは視覚的に燃えるんだけど、トンネルだから見え辛い‥‥残念でならないね。しかし! 視聴者諸君。『折角のブルマが見えねー』と安易にチャンネルを変えてはいけないぞ。ドラマはいつだって、九回裏二死満塁から始まるのだから! そう、合言葉は―――『チャンネルはそのままで☆』」


 ―――CM中―――


●6キロ地点
「茜ちゃん、真っ直ぐにゴールを目指しなさい」
 ナミディア・ガンジス(黒羽ほのか(fa5559))の言葉に従い、茜が、縦横無尽に張られたゴム紐地帯に突進する。
「アタシの魂はこんなもんでは止められへんでぇ!」
 全身にゴム紐を絡めながらも、構わずに進もうとする茜だったが、絡まるゴム紐の数が増えるにつれ、その動きも鈍くなる。
「ぐぬううう‥‥‥‥ッ!」
 終いには、強引に引っ張られた為、結んで固定していたゴム紐が解け―――次々と、茜の体に襲い掛かる。
 ビシッ! ビシッ! ビシッ! ビシッ! ビシッ! ビシッ! ビシッ! ビシッ!
 鞭打ちの様な―――連打の嵐!
「これは‥‥フリッカージャブを彷彿とさせますね‥‥‥」
 道の脇で、リタイアした生徒を介抱しながら、その光景を見ていた星崎ハルナ(堀川陽菜(fa3393))が思わず唸った。
 彼女も介抱が必要かしら? とハルナが考えていると、そこへ、リヤカーを引いた大河が通りかかる。
 大河は、クイッと、親指で、自分の引いているリヤカーを指差さし、
「おう、介抱ならこっちでやるから、星崎、お前は戻って走りな」
 良く見れば、リヤカーには、何人かの生徒が乗せられている。
 皆、疲弊して動けなくなり、リタイアしたところを、大河に発見され、拾われたのだ。
 大河の申し出に、しかし、ハルナは首を横に振り、
「いえ、私はもう、リタイアしていますから‥‥」
 ハルナは、今回のマラソンに、絆創膏やタオル、緊急時用の携帯電話といろいろな物を準備して挑んだ。が、結局、疲労には勝てず、用意した道具が日の目を見ぬ間に、リタイアしていた。
「なんだ、これ位でへばるなんて気合が足りねえぞ?」
 大河は、やれやれといった様子で息を吐き、
「まあいいか。だったらお前も、そいつを連れて、付いて来い。これから保健委員のところへ行くからよ」と、リヤカーを引いて歩き出す。
「あ、はい!」
 ハルナは、大河の言葉に従い、介抱していた生徒に肩を貸して立ち上がらせると、大河の後を追って、歩き出した。


●ゴール目前
「あ―――アレは!」
 眼前に広がる光景に、狐村 静は息を呑む。
「命の泉か!?」
 いや、ローションプールだ。
 態々、白味がかったローションを使っているあたりに、無駄な力の入れ具合が見て取れる。
 そんな―――ローションプール。
 様々な障害物によって疲労が蓄積した足腰に、滑りやすいローション地帯は過酷に過ぎる。
 静が胸を揺らしながら縄跳びを飛ぶ生徒を鑑賞している間に、既に何人もの生徒が、ローションプールへ挑み、結果、足を取られ、白濁粘液にまみれて喘いでいる。
「最後の最後でイヤらしい障害物だな‥‥‥ものすごく、色んな意味で」
 そう言いつつ、静は勢い良く、ローションプールに飛び込んだ。
 持ち前の脚力を生かして―――
 かなりの助走をもって―――
 走り込むのではなく―――
 飛び込んだ!
「ぎぃやあああああ?!!!!」
「よう、片馴。奇遇だな」
「そんなわけあるか! 思いっきり目が合ったでしょうが!」
 静ともつれ合いながら、ローションにまみれた静奈がキンキン声で喚く。
「いや、しかし―――こうもぬるぬるすると、気分的な何かがヤバい。何かのコードを超えてしまいそうな気がする」
 ヤバいのはアンタだ。
「えぇえい! は な れ ろ !」
 静の下で、必死に足掻く静奈だが‥‥‥粘液に濡れた体操服越しに、下着やらなにやらが透けて見えている事には、気が付いていない。
 静は、溺れない程度に静奈と密着し、その光景と体温を堪能しつつ、
「安心しろよ。全部、この場を和ませるジョークに決まっているじゃないか」
 爽やかな笑みを浮かべてみせる。
「嘘付くな! 貴女―――風紀委員会のブラックリスト(要注意人物一覧)の中でも、 シグナルレッド(絶対危険対象)に指定されてんでしょうが! 信じられるかあッ!」


 ―――そんな、滑ったり、縺れたり、絡み合ったりで、ドロドロのデロデロになった生徒達を、ゴール脇のテントに設置された、パイプ椅子に腰かけながら、愉しそうに眺める、夜坂 東。
「アハハハハ! 良いね。やはり、思い出とは、角も愉快にあるべきだ。後々に思い出して、一笑に伏す為にも、馬鹿馬鹿しい行為こそが相応しいね」
 そして、望遠レンズの付いたカメラを取り出すと、知人の痴態をシャッターに収めた。
 ‥‥‥‥‥‥‥後でからかって、遊ぶとしよう。