私立アスラ女学園 参アジア・オセアニア
種類 |
ショート
|
担当 |
一本坂絆
|
芸能 |
1Lv以上
|
獣人 |
1Lv以上
|
難度 |
普通
|
報酬 |
1.1万円
|
参加人数 |
8人
|
サポート |
0人
|
期間 |
05/07〜05/12
|
●本文
お姉様。お姉様が中等部を卒業されてから、もうすぐ二月になるのですね。
お姉様、寂しいです。駄目な私を支えてくれたお姉様。挫けそうな時には叱って下さったお姉様。そして、優しい微笑みを浮かべるお姉様。
会いたいです、お姉様。お姉様は寄宿生だから、敷地の外へ出られる事が少ない上に、最近はお忙しいのか、連絡をとる事も侭なりませんでした。
もう、居ても立っても居られません。ご免なさい、お姉様。お許しも無く会いに行く私を、お姉様はお叱りになるかもしれません。でも、会いたいのです、お姉様。
●傍観者
放課後の生徒会室。
夜坂 東は窓の外を眺めていた。
ミディアムレイヤーの髪に中性的な顔立ち、女子にしては高い背丈。その風貌は下級生を中心に、絶大な人気を誇っている。
「今日は随分と騒がしいね」
敷地のあちこちで、手に刺叉を持った少女達が二人一組で見回りをしている。腕に着けた腕章には、規律を表す円環と、自由を意味する翼を組み合わせたエンブレムが描かれている。風紀委員会の証だ。
放課後の見回りは風紀委員会の日課なので、それ自体は珍しい事ではない。ただ、今日はやけに人数が多い。物々しい、と言うべきか‥‥。
「中等部の生徒が、高等部の敷地内に無断で侵入したんですって。今の御時勢じゃ、外部からの侵入者を放っては置けないでしょ? 喩え中等部の生徒でも、万が一の事があるかもしれないって。辻さんと赤鍵さんも出張ってるわ」
傍らで書類をめくっていた、片馴 静奈が答える。
髪が長いは、額が出るように前髪を分け、ピンで留めている。目には銀縁の細いメガネを掛けている。見るからに優等生といった雰囲気の少女だ。
「休み時間に、携帯に生徒会名義の緊急メール入れたでしょ? 見てないの?」
「あのね、しぃちゃん。あっちゃんはお昼寝の時は、いつも携帯の電源を切ってるのよ」
東に代わり、木霊 菜々実がニコニコとした笑みで答えた。小さなツインテールと低い身長。その容姿は、初等部の生徒かと思う程幼い。が、れっきとした高等部の三年生だ。
菜々実の発言を聞き、静奈の顔が朱を帯びる。
「東! アンタまた授業サボってたわね!」
「単位は取れてるから、心配はいらないよ」
「だ、誰がアンタの心配なんてするかーッ!」
顔を真っ赤にした静奈の言葉を、右から左に聞き流し、東は菜々実に微笑みかける。
「ななちゃん、寮の戸締りは徹底するんだよ? 守ちゃんや参道さんならすぐに解決するだろうけど、念の為に、ね」
「は〜い♪ みんなに言っておくね」
「ちょっと、無視すんじゃないわよ!」
●追撃者
ズン!
刺す叉の柄尻が地面を打つ。
校庭の隅。白いテントの下に机、パイプ椅子、通信機材を持ち込んで造られた、対策本部の前に集結するのは風紀委員会の面々だ。
既に下校時刻を過ぎた今、この場に居るのは有志の元に集ったメンバーだ。
居並ぶ風紀委員の前には、二人の人物が立っている。
目の上で切り揃えた前髪。肩の高さで切り揃えられた横髪と後ろ髪。一回り大きな制服は、彼女が着るとロングコートに見える。手には標準装備刺す叉を持っていない。無手だ。
アスラ女学園風紀委員会風紀委員長、辻 守。
百八十センチに達する長身。ポニーテールに纏められた髪。通常の二倍の長さの竹刀を、担ぐようにして持っている。
アスラ女学園風紀委員会風紀副委員長、赤鍵 参道。
守は少女達を一望する。
「侵入者は未だ発見されていません。本来ならば、此処から先は警備員の方々の仕事です。が、それではこの広い学園の敷地を全てカバーする事は出来ません。そもそも、一般生徒の『日常』を守るのは我々の務めです。故に、朝までの特別警邏を実施し、件の中等部生徒を補導、或いは保護します」
事務的な口調は職務精神の表れか、
「必ず二人一組で行動し、侵入者を発見次第、対策本部に連絡を入れて下さい」
守の命に答えるように、今一度、刺す叉の柄尻が地面を打つ。
「「「「「「「「押忍!」」」」」」」」
■風紀委員会
生徒数の多いアスラ女学園で、時に数百人規模の乱痴気騒ぎを鎮圧する、文字通りの武闘派委員会。
標準装備は刺す叉と指錠だが、他にも色々とある。
掛け持ち不可。単位有り。公休有り。
■中等部の制服
白のセーラーカラー。白いスカート。スカーフは一年生がイエロー、二年生がダークグリーン、三年生がミッドナイトブルー。
■関連NPC
・辻 守(つじ まもり)
風紀委員会委員長。生徒会のライトアーム。二年生。『双璧』の一人。日本人形の様な、端正な容姿の持ち主。
・赤鍵 参道(あかかぎ さんどう)
風紀委員会副長。三年生。『双璧』の一人。姉御肌。二十歳。三年は三回目。
†キャスト募集†
ドラマ『私立アスラ女学園』への参加者を募集します。
舞台は放課後(夕方)、或いは夜の学園です。
※注意※
・『お姉様』と中等部生徒に血の繋がりはありません。
・警備員も女性です。
・生徒会はNPCとして扱います。生徒会メンバーを演じる事はできません。ご了承ください。
・実際のドラマでも、二十代の役者さんが高校生を演じる事は良くあります。あまり年齢を気にせずにご参加ください。
・お題に沿ってストーリーを考えて頂いても構いませんし、キャラクターや取りたい行動だけ書いて、後はお任せと言う形でも構いません。
†私立アスラ女学園の御案内†
アスラ女学園では生徒はもちろん、教職員も女性を採用しています。
当学園では、文武両道の精神と、生徒による自治を重んじています。
各クラブ活動、学校行事の運営、生活指導は生徒会主導の下に行われています。
自宅登校が基本ですが、学生寮もあります。
また、中等部、初等部の敷地が隣接するように並んでいます。隣接しているだけで、中等部、初等部とは敷地、施設は別れています。
■学校施設
校舎は三階建て。
敷地は『校門から校舎(下足場所)まで十分はかかる』と言われるほど広く、グランド、体育館、室内プール、図書館、部活棟、各道場、テニスコート、花園、食堂、カフェテラスなどの施設がそろっています。学生寮も敷地の中に入っています。
■生徒会
アスラ女学園の生徒会は生徒会長が三人おり、副会長がいません。
『スリーオブフェイス』
【生徒会長】小扇 一羽、夜坂 東、片馴 静奈
『ライトアーム』
【書記長】遠昏 真戯
【会計士】風祭 葛篭
【風紀委員長】辻 守
『レフトアーム』
【運動部連代表】藤華・キャヴェンディッシュ
【文化部連代表】荒縄目 夢路
【学生寮代表】木霊 菜々実
■制服
ワンピースは濃いチャコールグレー、総ボタンでスカート丈が長い。襟と、ワンピースの中に穿くぺティーコートはホワイトカラー。ショートタイは一年生がレッド、二年生がダークグリーン、三年生は白地に黒のラインが入る。
●リプレイ本文
「かしらかしら、ご存知かしら? 高等部の敷地内に、中等部の生徒が侵入したんですって! 風紀委員会が躍起になって探しているんですって!」
「アラアラ、何の為に侵入してきたのかしら?」
昼休みに、放課後に、ヒソヒソと噂話が囁かれる。
優等生気質の才華・歩(滝川・水那(fa0836))は「風紀に任せておけば大丈夫じゃない?」と、少し気にはなるものの、早々に静観を決め込んだ。態々自ら危険に飛び込む事は無い。その為に、風紀委員会が在るのだから。
「ふ、ふ、ふ、ふ〜♪」
自身で改造した無線機を手に、赤羽さくら(サクラ・ヤヴァ(fa2791))は不敵に笑む。
「感度は良好。これで風紀委員の通信を傍受できる〜♪」
さくらは独自の捜索を開始した。
●双璧
「了承しかねます」
厳然と、辻 守は言い切った。
「何の為に風紀委員会があるとお思いですか?」
日の沈みかけた校庭の対策本部前。
守の前には、やる気に満ち満ちた少女と、既にやる気を失っている少女が立っている。螺郷 沙々羅(月葉・Fuenfte(fa1234))と白鷺 桜(佐々峰 菜月(fa2370))だ。
「いくら学校の敷地内でも夜の一人歩きは危ないです! 少女を見つけ出し保護する為の人員は、一人でも多い方が宜しいのではないでしょうか?」
しかし、たとえ拒否されようとも、沙々羅は一歩も退く気は無い。沙々羅は、大人しそうな風貌に似合わず熱血だった。
「いいじゃないか。これだけ言ってんだから、今回限りって事で、さ」
赤鍵 参道が口を挟む。
「前例を作れば、それを盾にする者が必ず出てきます」
「言ってんだろ? 『今回限りだ』って。例外なんて許しゃしないさ、この『私が』ね」
参道の強い口調に、守は渋々といった様子で目を伏せる。
「わかりました。但し、一般生徒には『補導権』がありません。お二人には我々と行動を共にして頂きます」
●少女A
少女を最初に発見したのは、高坂 ハル(白井 木槿(fa1689))だった。
そこは、学生寮から少し離れた茂みの中。
「貴女が侵入者さんね。話は聞いているわ」
少女は―――中等部の、白い制服に身を包んだ少女は、ビクビクと怯えながら、恐る恐る、口を開いた。
「あ、貴女は、誰なの‥‥ですか?」
「私は高坂ハルって言うの、宜しくね♪ 貴女は―――」
と、突然。後方から伸びた手が、ハルと少女の口を塞ぎ、引き寄せる。二人の身体が木陰に引きずり込まれて直ぐに、近くを二人分の足音が通過する。風紀委員だろうか?
「全く、気をつけろよ?」
二人の口から手を離すと、手の主、一見、女子大生にも見えなくはない、少女は言った。
「ああ、自己紹介がまだだったな。私は狐村 静って言うんだ。キミが噂の子か‥‥良ければ、私にも名前を教えてくれるかな?」
狐村 静(宵谷 香澄(fa0913))微笑む。
「私は‥‥灰東 美波なのです。灰東 美波(はいどう みなみ)と言うのです」
美波から事情を聞いた二人の反応は、
「大丈夫よ、任せて。お姉様とやらには、必ず会わせてあげるから」
「オーケイ、美波に手を貸してあげよう♪」
「あ、ありがとうございますなのです」
美波は深々と頭を下げた。
「その格好だと目立つだろ? ジャージを持ってきたから着換えるといい」
「何から何までどうもなのです」
美波はジャージを受け取ると、ソロソロと後ろへ下がる。後ろを向いてセーラーのファスナーに手を掛け、ふと、視線に気が付いた。
「って、何故にお二人共こちらを向いているのですか? 見ないで欲しいのです!」
静は楽しそうに、
「いや、手伝いが必要かな〜と思ってさ」
ハルも笑顔で挙手し、
「私演劇部だから、他人を着替えさせるの得意よ?」
「結構なのですッ!」
美波が叫んだ、その時―――
「其処にいるのは誰だ!」
ライトの光が三人を照らす。複数の足音が近付いて来る。
「もう、美波ちゃんが大声出すから‥‥」
ハルが呆れたように言う。
「ふぇえ! わ、私のせいなのですか?!」
そして、静はそんな状況にも拘らず、ニヤリと笑みを浮かべ、
「我が家には、古くから伝わる伝統的な戦法がある‥‥それは、『逃げる』ことだ!」
「それは戦法ではなく、兵法だと思うのです」
―――時間は少し巻き戻る。
「ふふ、完璧な罠ですぅ‥‥鈴の音がしたらそこへ向かって一直線ですよぉ〜♪」
桜の顔は、自信に満ちていた。
地面に置かれたリンゴやジュースにピアノ線が結ばれており、その先には大きな鈴が取り付けられている。桜の言う『完璧な罠』だ。
満足げな桜を除く、他の三人は‥‥‥地図を広げ、今後の作戦を練っていた。
「端から順にローラーを掛けていますが、今の所、目ぼしい報告はありません」
「鍵が必要な野外施設は、閉める時に十分に注意するよう通達してるしねぇ」
「いくら敷地面積が広いとは言え、屋外で隠れられる場所は限られていると思うのですが‥‥」
「あっれ〜?! 罠どころか、発言すらもスルーですかぁ!?」
桜はダッシュで三人の会話に加わる。
「はいはいはい! 校舎の中なんか隠れやすいですよぅ!」
「それはありません」
一蹴されてしまった。校舎内にはセキュリティーシステムが導入されている。侵入者がいれば、とっくに警報が鳴っているだろう。
「あと、放課後に生徒が出入りしていて、風紀委員会が見回っていない場所と言いますと‥‥学生寮、でしょうか」と沙々羅。
ガッ! と守の無線から通信を知らせる不快な音が鳴る。守は無線越しに二、三の応答を繰り返し、無線を切る。
「侵入者を発見。場所は学生寮近辺。どうやら高等部の生徒が侵入者を手引きしているようです」
日常が手を貸したのならば、異常は日常を纏い、日常を演じる事ができる。
この時間、敷地内で、複数の少女が目撃されても不自然では無い場所。これといったセキュリティーも掛かっておらず、隠れる場所が無数にある場所。そこは―――
「一箇所のみです」
つまり―――沙々羅が指摘したとおりの、学生寮。
沙々羅は見る。
守はワンピースとぺティーコートの間に手を滑り込ませ、取り出した三本の、長さ三十センチの棒を素早く連結させる。
「杖―――杖術ですか‥‥」
手に杖を持ち、守は桜に視線を向けた。別に忘れていた訳ではないようだ。意図的にスルーしていたのだ。
「桜さん」
「え? あ―――はい!」
「あの仕掛けは、後で撤去しておくように」
「‥‥‥‥はい」
●彼女の為にできる事
ハルが寮に帰宅していた歩に連絡を取り、一行は窓から寮内に侵入(一部の者は帰宅)した。ハル達は、途中、無線を傍受しながら美波を捜索していたさくらと、通り掛りに出くわした鉄 小夜(月影 愛(fa2814))と合流していた。
風紀委員が後手に廻っていた為に、その無線を傍受していたさくらの捜索も今一捗らなかった。小夜は、完全な成り行きである。
歩の方にも、感に任せて寮内を捜索していた村雨りりあ(結城ハニー(fa2573))が合流している。
「よく私の携帯番号知ってましたね、高坂先輩」
傍観を決め込むつもりだったのに、しっかり巻き込まれている歩。
「ふふふ、部員経由でちょっとね」
歩は仕方が無いといった様子で、
「まぁ、事情は解りましたし、こうして手を貸した以上、協力する事も吝かではありませんけど‥‥」
りりあは微笑み、美波に諭すように話しかける。
「気持ちは分かるけれど、騒ぎを起こすのは感心しないな。これじゃ『お姉様』の立場がない‥‥かもだし」
「やっぱり‥‥迷惑でしょうか」
美波が俯き、
「そんな事無いわ、妹に慕われて嬉しくない姉なんて居るわけないじゃない」
ハルがフォローする。
「そのお姉様って、あたしと同じ一年生何だよね?」
さくらが美波に訊いた。
「はい。彼街市 氷子(かがいし ひょうこ)と言う方なのですが‥‥」
全員が、黙り込む。一学年が三十クラス前後というとんでもない人数の生徒を抱かえる、アスラ女学園の寮である。寮生の数も半端では無いのだ。
「みんな何してるの?」
突然の声は背後から。振り返った視線の先には、白い体操着にブルマーを履いた少女が立っていた。木霊 菜々実だった。
「静ちゃん、りりあちゃん、お夕飯もう終わっちゃったのよ?」
「奈落の掃除に熱中し過ぎて下校時間が過ぎたことに気が付かなかったのよ。彼女達は私を手伝ってくれていたの」
ハルが上手く演技を挟み込む。
歩が、意を決したように、探るように、菜々実に声を掛ける。
「あ、あの、木霊先輩!」
「ふえ?」
「彼街市 氷子さん‥‥て知っていますか? ちょっと用があって、部屋を知りたいんですけど‥‥」
菜々実は、クラスも、学年も、所属クラブも違う、寮生ですらない者も混じった一同を見回し、美波をじっと見つめて、
「新入生の子だよね。部屋は三の二十一号室なのよ」
にっこりと微笑んだ。そして、パタパタと、小走りに駆けて行く。
「目的地も判ったし、もう直ぐお姉様に会えるわよ」
りりあが美波の肩を叩いた。
流石に走ると目立つので、一同は早足で廊下を進む。美波が遅れがちな為、静が手を引く。
目的の部屋まで、あと少し。
「マズイよ! 風紀委員会に居場所がばれたっぽい!」
無線機に耳を当てたまま、さくらが叫ぶ。
「ハリーハリー! 急がなくっちゃ」
小夜が足を止めぬまま、廊下の窓から外を見ると、刺す叉を持った少女達が寮の周りを包囲しつつあった。
「確かに、まずいですね」
部屋の扉まで、後二十メートル有るか、無いか。
「走るぞ!」
もう此処まで来たら、目立とうが目立つまいが変わりはしない。力強く一歩を踏み出す。
しかしそのタイミングで―――このタイミングで―――突如として―――廊下の―――目的の部屋の途中にある―――T字の曲がり角から―――人影が飛び出してきた。
その人影は、美波の身体を、がっしりと、両腕で、力強く抱きしめる。
「ひやぁあ!?」
「捕まえましたー! もう離しませんよ!」
人影は、沙々羅だった。
美波は何とか逃れようと沙々羅の腕の中でもがくが、上手く力を逃がされ、全く外れない。
「ふふ、見つけましたよぉ!」
更に、桜が現れる。
「彼女が侵入者さんですねぇ? 螺郷さん、そのまま抑えておいて下さいねぇ」
桜は手には、カーボーイが振り回しているような、先が輪になったロープが握られている。
桜はそれを豪快に振り回す。しかし所詮は素人。ロープは手首へ巻き付き、そのまま腕へ、肘へ、肩を経て上半身、更には下半身にまで絡みつき、
「わ? あ、あ、あ!」
足を取られた桜は派手に転倒。
「貴女は何をしに来たんですか?」
歩が思わずツッコむ。
「無論、そちらの、灰東 美波さんを補導しに来たのです」
厳然―――と声が響いた。曲がり角から辻 守が、そしてその背後に従う様に、赤鍵 参道が現れる。
「中等部の資料との照会が終わりました。灰東 美波さん。貴女の行動は、初、中等部を含む、アスラ女学園全体の規則を著しく乱す行為です」
「全く、同じ学校なんだから許してやれよ。融通の利かない奴らだな」
静が噛み付くが、
「融通が利かぬからこそ規則と言うのです」
守は表情すら変えない。
「騒がしきと思えば、美波、噂の侵入者は貴女だったの」
またしても、廊下に声が響く。守達の、更に背後に少女が立っていた。気の強そうな少女だった。そして、誰もが思った。
(「誰だアンタ―――!」)
ただ一人、美波を除いては。
「お姉様!」
お姉様こと彼街市 氷子は、守と参道の横を通り過ぎ、美波の前に立つ。
「お姉様‥私、お姉様に会いたくて‥」
氷子は、自分に縋り付こうとする美波の頬を、思いっきりひっぱたいた。
バシン!
思わず身を竦めてしまいそうな音が廊下に響く。
「こんな事をして、周りにどれだけの迷惑が掛かるか、判断できなかったとは言わせぬわよ」
氷子は目に涙を浮かべる美波に背を向ける形で向き直ると、守と参道に深々と頭を下げる。
「今回の騒動は私にも責任がありし事。どうか、私にも処罰を」
その様子を見ていた守は、
「大体の事情は判りました。理解できるとは言いませんが」
が、と守は言葉を区切り、
「一般生徒の危害を加えるつもりは無いようですし、何にせよ今日はもう遅い。灰東 美波さん、本日は寮に泊まる事を進めます。木霊先輩には私から話しておきますので」
「詳しい沙汰は明日にでも」と言い残し、風紀委員達に撤退の指示を出す為立ち去る。
風紀委員が去った後の廊下に、美波の嗚咽の声が残った。
「ごめんなさい‥‥お姉様。私、お姉様に‥‥私、寂しくて‥‥」
氷子は、美波の震える身体を抱きしめる。
「馬鹿な子ね。愛おしいわ」
微妙に手持ち無沙汰なさくら、
「これで『いっけんらくちゃく』?」
ハルは微笑み、
「どちらかというと、一軒は落着。といった感じかしら」
静は美波に近付くと、その頬に口づけ、その場を去る。
「報酬に貰っていくぞ、幸せモノ♪」
氷子の頬が引きつり、美波が頬を赤らめる。
りりあは「じゃあね♪」とキスとウインクを残して立ち去る。
雁字搦めになっている桜は、沙々羅に救出されている。
三々五々に散っていく一同を見送る氷子と美波。
「美波。今日は私の部屋に泊まりなさい。同室の子には、私から話しておくわ」
「はい!」