真夏の夜のドラマSPアジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
柏木雄馬
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
3万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
08/21〜08/25
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●本文
今年の夏が終わった。
例年通り、何も特別な事も無く。
俺たちの、夏は終わった。
空は青く、高かった。太陽は遥かに遠く、白い入道雲が伸びていく。
夏は盛りを過ぎつつあるが、まだまだ暑さは続きそうだった。
始業式を終えた校舎の屋上に、二人の男子生徒が佇んでいた。
真っ黒に日焼けした顔。しかしながら、その表情は暗かった。
「‥‥夏休み、終わっちまったな‥‥」
「‥‥ああ‥‥」
「‥‥結局、彼女できなかったな‥‥」
「‥‥‥‥」
乾いた校庭を見下ろしながら『主人公』が溜め息をつく。先程まで見えていた下校する生徒の姿も今は無く、ただ風が砂を巻いて吹き抜けるだけだった。
「‥‥こんな所にいたんだ。まだ帰んないの?」
哀愁漂う二人の背中に、一人の『女生徒』が声をかけた。『悪友』は振り返ったが、『主人公』は微動だにしない。そんな『主人公』の様子に、『女生徒』は悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「ほっほ〜♪ その様子じゃ彼女は出来なかったみたいですな〜♪」
そう言って『女生徒』が横から『主人公』の顔を覗き込む。『主人公』はぷいと顔を背けた。
「俺たちは青春を無駄にしている。そうは思わないか、『悪友』?」
夏休みの前、終業式後のHRを終えた教室で、『主人公』は『悪友』にずずいと詰め寄った。
「俺たちの人生には潤いが無い。それもこれも、女ッ気の無い現状がいかんのだ。受験を控え、実質、高校最後の夏休み。このままで良いのだろうか、いや、良くはない!」
拳を振り上げて熱弁を振るう『主人公』。『悪友』が立ち上がり、はっしと『主人公』の両手を掴んだ。
「その通りだ、『主人公』! これまで僕たちは何もしてこなかった。諦観の美徳を言い訳に、人生を諦めた恋の敗残兵だった。‥‥でも、でも、もう野郎二人で過ごす夏休みは嫌だよ、『主人公』!」
「だが、これからは違う。俺たちは磨けば光る原石だ。我々はこれから恋の狩人と化す!」
「同志!」
がしっ、と、暑苦しく抱擁を交わす漢二人。
その横で、醒めた顔をした『女生徒』が、呆れ果てていた。
「‥‥いやー、『悪友』君ならともかく、『主人公』は無理でしょ」
バカにした笑みを浮かべる『女生徒』を、『主人公』は睨みつけた。『主人公』と『女生徒』は、小学校の頃から同じクラスの、いわゆる『幼馴染』というやつだった。『腐れ縁』という表現の方が正しいかもしれない。
「俺は今までの俺とは違う。今の俺は、野望に目覚めた一匹の虎。今年の夏こそラブラブだ!」
「‥‥ま、頑張れ」
何か生温い視線を残して、『女生徒』は去って行った。
「生意気な‥‥夏休み明けを見て吠え面かくなよ‥‥。よし、善は急げだ。行くぞ、『悪友』! 二人で幸せな夏休みを手に入れるんだ!」
「‥‥それはいいけど‥‥もうしゃべり方、元に戻していいか?」
「ノリが悪いぞ、『悪友』‥‥。ま、とりあえず町に出ようや」
こうして、二人の夏休みは始まったのだった‥‥
待ち受ける結末なぞ知る由もなく‥‥
●出演者募集
以上がドラマ『夏休みドラマSP(題名未定)』の冒頭部分になります。
このドラマの制作に当たり、出演者を募集します。
PL(プレイヤー)のプレイングとその判定がドラマの脚本となり、
PC(キャラクター)がそれを演じることになります。
以下の制約の下、ドラマを完成させてください。
皆で協力して、ドラマを作り上げる事が目的です。
●制約
二人の男子高校生、『主人公』と『悪友』の夏休みを描きます。
二人の恋の奮闘、要は『振られっぷり』のシーンを幾つか設定し、
最後に、オープニングの学校屋上に戻って『オチ』をつけて下さい。
オープニングの設定から幾つかの『オチ』が作れると思いますが、どのような『オチ』にするかは皆さんにお任せします。
なお、ドラマの時間枠は限られています。
シーン数が多くなると、それだけ個々のシーンに割ける時間は少なくなります。
●リプレイ本文
かくして。
思い立ったが吉日とばかりに、制服のまま繁華街へとナンパに繰り出した飛鳥大和(役:相麻 了(fa0352))と、その悪友、梶川浩二(役:天霧 浮谷(fa1024))であったが、その結果は散々なものだった。
「チョーキモい」
「まじウザいんですけど」
「‥‥‥‥‥‥ハッ!」
けんもほろろ。一刀両断。彼女たちの断り方は容赦が無かった。
延々と声をかけ続け、ようやくOKを貰ったと思ったら、散々飲み食いされた挙句に逃げられる。
仕舞いには、少年課の刑事?(役:結城丈治(fa2605))に目をつけられる始末だった。
「Hey、guys! ホールドアップだぜ!」
逞しい身体を背広に押し込めた男が、やたらと銃身の長いリボルバーを飛鳥と梶川に突きつける。
「俺は少年課の桜小路だ。お前たち、こんな時間に何をしている。ご両親が心配してるだろ?」
あっけに取られ、顔を見合わせる二人。何かの冗談としか思えなかった。
「あのー‥‥?」
「それとも何だ。貴様ら、さては何かヤバイもんでもサバいてんな。そうか。なら、緊急逮捕だ」
あまりの展開に呆然としていた二人だったが、桜小路が手錠を取り出すのを見ると、慌てて逃げ出した。
「ちょっ、冗談じゃないって! 何だそれ!」
「アリエネェー!」
「フリィーズ!」
叫びながら、桜小路が銃をマンガの様に乱射する。
「どわあぁぁ!?」
転げながら無様に、というよりコミカルに逃げ回る二人。
夜の繁華街に、銃声と二人の悲鳴が響き渡った‥‥
‥‥数十分の逃走劇の末、二人は何とか桜小路を振り切った。
夜の公園で、精神的、肉体的に憔悴しきった二人が倒れこむ。ゼイゼイと荒い息をつきながら、梶川がぽそりと呟いた。
「‥‥なあ、飛鳥‥‥なんか俺、泣きたくなってきたよ‥‥」
「奇遇だな‥‥俺もだ‥‥」
揃って溜め息をつく二人。
夏の夜の星空だけが、そんな二人を見下ろしていた。
数日後、二人は海パン姿で海に繰り出していた。
青い空。灼熱の太陽。白い砂浜に打ち寄せる波。そこには、サーフボードを抱えた男たちに、楽しげにはしゃぐ家族連れ。そして、眩しい水着姿のギャル(死語)たちで溢れかえっていた。
「海! そこは男も女も身も心も、何もかもが開放的になるパラダイス! 地元民として、この究極のナンパスポットを利用しない手はないだろう、梶川クン!」
「おおっ、すごいぞ飛鳥クン! 今さらな気もするが、何か戦略的だ! 今度こそいけそうだ!」
早速二人は、女性だけのグループを見つけては声をかけて回った。
「ちょキモ」
「マジウザ」
「フンッ!」
‥‥結果は、前回同様、散々だった。
「飛鳥‥‥」
「何も言うな‥‥」
何というか、気の毒なくらいに気落ちした二人が、再びトボトボと砂浜を歩く。
その背中に、野太い声がかけられた。
「お前たち、こんな所で何をチャラチャラやっとるか!」
聞き覚えのある大声に、二人が振り返る。そこには、鬼の生活指導教師、天見タケシ(役:タケシ本郷(fa1790))が立っていた。上下共にジャージ姿で、サンダルだけがビーチサンダル。背中に竹刀袋を提げていた。ドギャ〜ン、という効果音とともに、カメラが下から天見を煽る。
「げぇー! 生活指導の天見っっっ!!!」
「海なのにジャージっ!? アリエネェー!!!」
どこか漫画的に驚愕する二人を、天見はそこに直れと一喝した。
波打ち際で正座をさせられる二人。直立させた竹刀に両手を置いた天見が、その正面に立った。
「最近の若造は弛んでいる! 暑い夏だからこそ‥‥って、お前ら聞いているのか!」
「はいぃっ!」
周りの目を気にして縮こまっていた二人の背がシャンと伸びる。
通りがかる人々が、三人を見てクスクスと笑っていた。
「俺の若い頃はな、今のように無軌道な奴は殆どいなかったもんだ。かく言う俺も剣道とラグビーに青春を捧げ、『さらば、涙』と叫んでだな‥‥」
語る天見の口調が段々と陶酔の色を帯びてくる。結局、二人は延々と天見の昔語りを聞かされ続け、最後は、過去の自分に酔いしれた天見に、夕陽に染まる砂浜を走らされる羽目になった‥‥
「‥‥中々うまくいかないな。俺たち、向いてないんじゃないか?」
振られ振られて幾数日。タフな日々を過ごしてきた二人だったが、梶川は少し弱気になっていた。
「諦めるな。これまで旨くいかなかったのは、俺たちが徒手空拳だったからだ‥‥これを見ろ」
「!! こっ、これは‥‥!!」
飛鳥が梶川に取り出して見せたのは、昨日、飛鳥が古本屋で見つけた二冊の雑誌だった。即ち、『必勝ナンパ塾』と『男のおしゃれ道場』なるマニュアル本。ちなみに、同時に購入した『デラ美人』なる雑誌は自室に置いて来た。
「これこそ我々を栄光へと導く魂の福音書! 灰色の日々は、今、終わる!」
飛鳥が早速、マニュアル本を実践しようと歩き出す。梶川がフルフルと震えながら眩しそうに飛鳥を見た。
「‥‥すげぇ。すげえよ、飛鳥ぁ‥‥今日のお前は輝いてるぜぇ‥‥」
この時、二人は気付いていなかった。
購入したマニュアル本が、1996年度版だということに‥‥
夜の公園のベンチに黄昏るナイトドレス姿の女性(役:DESPAIRER(fa2657))。
人を寄せ付けない雰囲気を表情にしながら、それでいてどこか寂しげな佇まいを見せていた。
「年上だぞ‥‥いくのか?」
心配そうに梶川が尋ねる。
「今日の俺は一味違うぜ。見てろよ‥‥修学の成果を試す時だ」
飛鳥がベンチの女性に歩み寄る。梶川がごくりと唾を飲んだ。
近づく飛鳥に気付いた女性が冷たい視線を流す。飛鳥はハンカチを取り出すと、それを差し出しながらフッと笑った。
「お嬢さん、ハンカチを落としましたよ」
「‥‥‥‥はい?」
女性が目を丸くする。梶川が無言でヅカヅカと歩み寄り、飛鳥にツッコミを入れた。
「それアリエネェー! ベンチに座ってる人がハンカチ落とすかよ!? マニュアル通りにも程があんぞ!?」
「何だと!? ならお前がやってみせろよ!」
「すみませんッ! 俺の彼女になって下さいッ!」
「まんまじゃねーか!」
呆気に取られていた女性が、二人のやり取りを見て吹き出した。
(「受けたっ!?」)
驚愕する二人を他所に、クスクスと笑い続ける。
「面白い人たちね‥‥とりあえず座ったら?」
女性は二人に朝霞夕子と名乗った。
「いやー、夕子さん、笑った方が素敵ですよ。『貴女の微笑みは100万ドルの夜景に勝る』」
「お暇ならこれからお食事でもどうですか? 『君の瞳に乾杯』しましょう」
何か色々と間違っていたりするものの、初々しくも真剣な二人の様子に夕子が微笑んだ。
「そうね。付き合ってあげてもいいけど‥‥私、少し喉が渇いたな」
「「買って来ます!!」」
二人が同時に立ち上がり、自動販売機に向かってダッシュする。
「おい、なんかコレいけそうじゃないか」
「ああ。そんな気がしてきたよ。‥‥飲み物、何がいいのか聞かなかったな」
「買え買え、全種類買え」
両手一杯に清涼飲料水を抱えた二人が走って戻ろうとする。その時、誰かにぶつかって二人は転倒した。
「す、すみませ‥‥ん?」
ぶちまけられたペットボトルを慌てて拾いながら、二人がぶつかった相手を見上げる。
「‥‥‥‥あ?」
そこには、咥え煙草で二人を見下ろす『いかにも』な長身の男(役:氷桜(fa4254))が立っていた。
男は二人の胸倉を掴むとズイと顔を近づけた。
「‥‥人にぶつかっておいてそれだけか‥‥? どうにも‥‥誠意が感じられんな‥‥」
余りの迫力に言葉を無くす飛鳥と梶川。男の指には、メリケンサック状になった指輪が光っていた。
騒ぎを聞きつけ、ベンチから夕子がやってくる。来ちゃ駄目だ、と飛鳥が叫ぶ前に、夕子が男に気付いてハッとした。
「暁‥‥どうしてここに‥‥?」
「‥‥夕子?」
暁、と呼ばれた男が夕子を見て狼狽する。慌てて二人を放し、煙草を踏み消し、夕子に向かって正対する。
「‥‥夕子‥‥その、なんだ‥‥俺が、悪かった‥‥」
俯き加減でポツリポツリと言葉を紡ぐ暁。その胸に、夕子は飛び込んだ。
「いいの。悪かったのは私の方‥‥私のこと、許してくれる?」
返事の代わりに、暁は夕子をギュッと抱き締めた。
散乱するペットボトルの中、呆然と尻餅をつく飛鳥と梶川。夕子は二人に「ごめんなさいね」とウィンクすると、暁と腕を組んで夜の街へと消えていった‥‥
お盆も過ぎ、夏休みも半ば以上が終わろうとしていた。
飛鳥大和の幼馴染、高橋 舞(役:悠奈(fa2726))は、一人、駅前のショッピングモールを歩いていた。
夏休みを機にコンタクトレンズにし、髪を染め、流行りの服に身を包んで町に繰り出したものの、どうもコンタクトは相性が悪いらしい。目をしぱしぱさせながら歩いていると、危うく誰かにぶつかりそうになった。
「すいません‥‥って、あれ? もしかして、さおり先生‥‥かな?」
舞は、ぶつかりそうになった相手をマジマジと見つめた。学校と違って、眼鏡をかけて髪も下ろしているが、それは担任の山口さおり(役:都路帆乃香(fa1013))だった。
「あら、舞さん。貴女もコンタクトにしたの?」
「はい。でも何か合わないみたいで‥‥」
「似合ってるわよ。あっ、でも髪の色は新学期には元に戻しておきなさいね。じゃないと天見先生に怒られちゃうわよ?」
「は〜い」
普段と違う様子にお互い驚きつつも、楽しそうに会話をする二人。
そこに、真っ黒に日焼けした飛鳥と梶川の二人がやってきた。
「すいませ〜ん。今、アンケートしてるんだけど、時間いいかな?」
二人はそう言って、彼氏はいるのか、今、時間があるのか、などを次々と質問していった。
(「随分と古臭い手だけど‥‥これはナンパなのかな‥‥?」)
それにしても、ちょっと外見を変えただけで幼馴染に気付かないとは。舞のこめかみがピクピクと震えた。
(「つーか、そのまま口説くか!? しかも、間違ってるから、その方法!」)
怒りに震える舞を他所に、飛鳥のナンパ攻勢は続いた。
「‥‥その手首のビーズ? 可愛いね、よく似合ってるよ」
その飛鳥の言葉に、舞は目を瞬かせた。長い付き合いだが、そんな台詞を聞いたことは無い。
(「まさかあの飛鳥が私を褒める日が来るとはね〜」)
なんとなく面白くなって、舞は他人の振りをして話を合わせた。
「自分で作ったんです。このビーズ、限定物なんですよ?」
そう言ってニッコリ笑ってやる。飛鳥は目に見えて狼狽した。
(「ちょっと、そんな照れないでよ。こっちまで恥ずかしくなるじゃない」)
その時、一陣の風が吹いて、飛鳥の手の手帳から、一枚の紙切れが舞の方へと飛んできた。
(「これは‥‥!」)
舞が驚愕に目を見開いた。
子供がクレヨンで書きなぐったような、一枚の色紙。それは、幼稚園の時に飛鳥と舞が交わした『婚約証明書』だった。
飛鳥が慌てて色紙をひったくる。やってから、飛鳥はハッとした。
「あ‥‥いや、ゴミみたいなもんだけどさ‥‥俺には大事な宝物なわけで‥‥ハハ、ゴメン‥‥」
舞の目から涙が零れ落ちた。何てことはない。先程の風で、コンタクトの目に埃が入ったのだ。
(「あ痛‥‥ちょ、痛、痛、マジ痛い!」)
目を押さえ、舞が慌てて走り去る。それを見ながら、飛鳥は溜め息をついた。
「また振られた‥‥泣くほど嫌だったかなぁ‥‥」
これまで様子を見ていたさおりが、呆れたように溜め息をついた。
「飛鳥君‥‥梶川君‥‥貴方たち、こんな所で何をしてるんですか?」
「え、何で俺たちの名前‥‥って、もしかして、さおり先生!?」
自分たちがナンパしていた相手を知って、二人が驚愕する。だが、餓狼と化した二人はすぐに態勢を立て直す。
「ああ、もう、この際さおり先生でもいいや。俺の彼女になって下さいッ!」
さおりのこめかみがピクピクと震えた。
「『この際』、『でもいいや』、ね‥‥フフフフフ‥‥ところで飛鳥君、梶川君。夏休みの宿題はもう終わったんでしょうね? んん?」
さおりは言いながら、二人の耳たぶを引っ張って行った‥‥
結局、夏休み中にナンパは成功しなかった。
始業式の屋上で、飛鳥と梶川、舞の三人がたむろっている。
「バカだね。あの調子じゃ、彼女なんて夢のまた夢だよ」
手すりに身体を預けながら、ポツリとつぶやく舞。
「あの調子って、お前‥‥」
その時、舞の手首にあの時のビーズのブレスレットが光っていることに、飛鳥は気がついた。
「おまっ、それっ‥‥! じゃあ、あの時の‥‥!?」
「ん? 今頃気付いたの?」
飛鳥の顔が見る間に赤くなっていく。
「みっ、見たのか!? アレを!? まさか、あの時泣いてたのは‥‥」
あれは、目にゴミが入っただけ。そう言おうとして、舞は口を閉じた。世の中、真実の方がつまらない事もままある。
「別に嫌いだから逃げたわけじゃないんだよ? ‥‥でも、あの口説き方は勘弁して、マジで」
見詰め合う飛鳥と舞。その後ろでそっと、梶川が屋上を後にした。そのまま海岸まで走り去る。
「飛鳥の裏切り者! 結局、俺は噛ませ犬かよ〜!」
いつかのように夕陽に染まる海岸を、梶川は一人で走っていく。涙がたなびき、キラキラと光る。
話の展開次第では、『自分がいつの間にか幼馴染と付き合ってたEND』や、『自分にだけ彼女が出来ていたEND』、それでなくても『俺たちの友情は永遠だゼEND』くらいはありえたのに‥‥!
「ちくしょう、このラブラブさんどもめー! 俺一人だけこのザマとは‥‥そんな道化っぷりが大好きだー!」
梶川の魂の咆哮が、クラゲの湧いた夕陽の海に響いていた──