芸能人探検隊(放送版)アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
柏木雄馬
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芸能 |
3Lv以上
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獣人 |
2Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
7.9万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
01/14〜01/18
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●本文
時報と共に画面が暗転する。
右上には、小さく『新春 芸能人探検隊!』のテロップ。
そのまま映像がフェードインし、画面には、照明を浴びながら鍾乳洞を進む探検隊の姿が映し出される。
足元を流れ続ける水の音、探検隊やスタッフの足音と荒い吐息、機材がぶつかり合う硬い音。雑音雑じりの音声は未編集のままだ。照明は眩しい位に明るいが、それでもすぐ先は漆黒の闇が帳を下ろしている。
突然、短くも鋭い叫び声があがる。
素早く右へとパンするカメラ。揺れる画面。暗黒を背景に、照明に照らされた大蛇がフレームインする。
センターズーム。ピントを修正。画面に鎌首をもたげた大蛇が大写しになる‥‥
(騒然とするスタッフと探検隊を映したまま、ナレーションとテロップ)
『新春特番! 芸能人探検隊!』
『大自然の驚異! 富士の裾野に広がる驚異の大鍾乳洞! その深遠なる闇の奥底に、探検隊は幻の巨大人喰い蛇を見た!』
(『どぎゃぁ〜〜〜ん!』 と効果音。スポンサー表示と共に某ハリウッド映画のテーマ曲が流れ出す‥‥)
ちゃらら〜、ちゃらら〜、ちゃらら〜、ちゃらら〜、ちゃららん!‥‥‥‥
●『新春 芸能人探検隊』探検隊員(出演者)及びスタッフ募集
1.ドキュメンタリー風ドラマ『芸能人探検隊』。
芸能人で編成された探検隊が、幻の生物・民族・秘宝・秘境などを求めて世界中を探検する番組です。演出も構成もドキュメンタリー風ですが、実際にはしっかりと脚本が存在する『ドラマ』です。(もっとも、脚本は現場の空気などで変更される事が多々ありますが)
いわゆる『カメラと照明の後に洞窟に入る探検隊』で、制作側も視聴者側もフィクションと承知しています。『子供だまし』な内容を『大真面目』に語るところは、某スポーツ紙の三面記事と感覚が近いかもしれません。
2.撮影場所
今回の『芸能人探検隊』は国内の鍾乳洞で撮影が行われます。『富士の裾野の大洞窟』という設定です。
内部は広く、人の都合などお構い無しに複雑に分岐しています。人の通れない狭い穴や、行く手を阻む地底湖や崖、高い位置にある通路(挙句に行き止まり)等です。一方、石筍や石柱の連なる大空洞や、棚田状に水の溜まったリムストーンプール、天井部が崩落して光が差し込む空間など、荘厳で美しい場所も多くあります。
3.目的と制約
上記の内容を元に『苦闘しつつも洞窟を進む探検隊』な番組を制作して下さい。
皆で『ドキュメンタリー風ドラマ』を作り上げる事が目的です。
PL(プレイヤー)のプレイングとそれに対する判定がドラマの脚本となり、
PC(キャラクター)がそれを演じることになります。
事前に決まっている大まかな流れは、『大鍾乳洞を探検中、偶然に謎の大蛇と遭遇する探検隊』です。
ただし、今回の放送部分では『冒頭の大蛇は登場させない』で下さい。
大蛇の存在を匂わせるシーンで煽っておきながら『次回に続く』で曳くのが『芸能人探検隊』なのです。
冒頭のシーンは予告編で使われる事になります。
なお、リプレイは、『実際に放送される部分のみ』(メイキング部分なし)となります。
もっとも『ドキュメンタリー風』なので、スタッフが画面に映ってしまっても構いません。
●リプレイ本文
●撮影前のひとコマ
いかにも観光地といった感のある、整備された駐車場。そこに着替えを済ませた探検隊員役の芸能人たちが集まっていた。皆、蛍光色(黄色とピンク)の迷彩柄のツナギを探検服として着込み、ヘッドライト付きのヘルメットを被っている。今回、洞窟内の撮影という事で、背嚢は背負っていない。AD(fa1766)が忙しそうに、皆に滑り止め付きの軍手を配っていた。
それ以外の装備は各員の自由とされた。紗原 馨(fa3652)はサバイバルブーツを断って使い慣れたスニーカーを履いていたし、草薙 龍哉(fa3821)は荷物係としてロープの束や縄梯子を背負っている。姫乃 唯(fa1463)は、防寒対策として探検服の下にセーターを着込み、見た目が少しもこもこに。石榴(fa0481)に至っては、照明さんからロケ用の照明を借り受けて、鍾乳洞の隅々まで照らす気満々だった。
「‥‥へぇ、こういうのも『ドラマ』なんですねぇ♪」
配られた脚本をパラパラと捲りながら紗原が言った。素直すぎる感想にADが苦笑する。
「‥‥まぁ、さすがに堂々と『やらせ』だとは言えませんから‥‥」
もっとも、脚本は現場のノリと空気でよく変更されたりするので、予定通り『ドキュメンタリー風ドラマ』が完成するとも限らない。
「それ、こっちによこしな」
草薙は、新人の豊田せりか(fa5113)が撮影に使う登山用具を持っているのを見てそう言った。自分で使う道具だから、と遠慮する豊田から半ば強引に奪い取る。
「こういうのは俺に任せとけよ」
「すいません〜。それじゃあ、お任せします〜」
礼を言う豊田にぶっきらぼうに頷く草薙。落ち着き払っているように見えて、どこか照れているようだった。
「それじゃあ、いよいよ出発です。みんな、怪我しないように頑張りましょー」
隊長役として黄金のヘルメットを被る角倉・雪恋(fa5003)が出発前の檄(?)を飛ばした。
「よろしくお願いしまぁ〜す!」
元気印な姫乃がポニーテールを揺らして挨拶をする。
「おやつは1万円までだからね〜」
角倉の冗談に周囲の出演者とスタッフから笑いが起こり、「バナナはおやつに入りますか〜?」「ジュースは〜?」などの声が上がった。
わいわいとロケ地へ続く遊歩道を歩き出す出演者・スタッフたち。その場には、マイペースで脚本を読み耽っていたジュディス・アドゥーベ(fa4339)が一人残された。
「‥‥あら?」
事態に気付いたジュディス。遠くから慌てたADが駆け寄ってくる。ジュディスは大急ぎで、ぽてぽてとそちらへ走っていった。
●『新春! 芸能人探検隊! 富士の裾野に広がる大鍾乳洞! 深遠の闇に奥底に広がる神秘の(以下略)』
「今、我々は富士の裾野に口を開ける大鍾乳洞へと足を踏み入れました。この狭く、しかし広大な大地の顎の中で我々を待ち受けるものは、一体‥‥って、これマイク入ってるわよね?」
隊列の中央。洞窟を歩きながら、角倉が手にしたマイクをポンポンと叩く。その横では、照明を持った石榴がどこか楽しそうに前方の闇を照らしていた。濡れた鍾乳洞の岩肌、その陰影が光に揺れる。
その照明に照らされて、紗原と豊田が隊の先頭を行く。その少し後が角倉と石榴。続いて、不安そうな顔をした姫乃と、荷物を背負った草薙が黙々と歩き続ける。
最後尾では、ジュディスが手にしたスケッチブックに何かを書き込んでいた。そこにカメラが寄る。
「何を書いているんですか?」
脚本どおりにADが尋ねる。ニッコリ笑って、ジュディスがスケッチブックをカメラに向けた。
「地図ですよ〜」
そこには、ここまでの道のりが詳細に記録されていた。地形の特徴を捉えたイラストの入った可愛らしいタッチの地図だった(注1)。
番組冒頭。
平穏に進む探検隊の映像を映しながら、ナレーションが大鍾乳洞の成り立ちや今回の探検の意義などを説明する。
石柱や石筍の美しい空間を抜け、奥へと進む探検隊。天然の美、光と影が織り成す陰影。探検中は数メートル先の闇も照らせぬ照明が、この時ばかりは何故か空間全てを照らし出す。
そして、人の侵入を拒むかのように待ち受ける大自然。
奥に進むに従って足元を流れる地下水の量は増えていき、やがて川のように鍾乳洞を流れ落ちる。鍾乳石でできた『橋』を渡る探検隊。この先も苦闘するだろう事を仄めかせてCMに入る。
ここまでの段階で、好奇心旺盛な石榴と紗原、慎重な姫乃、身軽な豊田に力持ちの草薙、マイペースな角倉とジュディス、という風に、探検隊メンバーの『キャラ付け』も行われていた。
CM明け。
画面の隅にジュディスの地図がテロップで表示され、探検隊の道のりや現在の状況が視聴者に示される。
探検隊は少し開けた空間に辿り着いていた。片側は少し急な坂になっていて、その底を『小川』が流れている。
「これは一体なに!?」
そんな姫乃の悲鳴を遠くに聞き、探検隊やカメラが走り寄る。揺れる画面と雑音が臨場感を演出する。カメラは、驚愕の表情を浮かべて後ずさる姫乃(注2)を画面に収め、その視線の先へと向かった。
そこに白い、骨のようなものが固まって置かれていた(注3)。
「小動物の骨、ですかね? 食べられた跡みたいな‥‥」
「コレを食べた肉食獣‥‥? それってかなりの大きさじゃないかなっ!?」
真っ先に辿り着き、好奇心を湛えた瞳で覗き込む紗原と石榴。遠くでは草薙とADが何やら言葉を交わしている(注4)。
紗原と石榴の会話を聞いて、姫乃がオドオドと辺りを見回す。照明が隅まで届かない空間は不気味だった。
「‥‥そういえば、ここって何か出そうな雰囲気ですよね‥‥?」
その言葉に皆が沈黙し、薄気味悪そうに周囲を見回した。その様子をカメラは遠景で撮影、心細さを演出する。
「‥‥あっ、あっちにも何かありますよ!?」
充分に間を保たせてから、紗原が闇の奥を指差す。その先には大蛇の脱皮した抜け殻がぶら下がっているはずで‥‥
「どこっ!? どこですか!?」
慌てて石榴がそちらに照明を向ける。‥‥ここまでは脚本通りだった。
照明が、天井付近の闇の奥でぶら下がる蝙蝠たちを照らしつけた。急に浴びせられた光に蝙蝠たちが驚き、一斉に宙を舞う。あっという間に、隊員とスタッフたちの周りは蝙蝠だらけになってしまった。
「はぅっ!? ごめんなさい蝙蝠さんっ」
座り込んで謝る石榴。悲鳴を上げて、姫乃が隣にいる草薙に抱きつく(注5)。慌てた紗原は濡れた岩肌に足を滑らせてしまい、斜面を転がり落ちていった。
ハプニング。それでもカメラは止まらない。
やがて、蝙蝠たちはこの騒がしい空間から飛び去って行った。
「みんな、大丈夫!?」
ディレクターよりも早く角倉が皆の無事を確認しようと声を上げた。
「‥‥もう、何でこんな事になるんですかぁ〜!」
地面にへたり込んで伏せていた豊田が顔を上げ、ずれた眼鏡も直さずに泣き言を漏らした(注6)。
斜面から転がり落ちた紗原は、かすり傷程度で無事だった。元々、そんなに高いわけでもない。
紗原は『小川』に落ちてずぶ濡れになっていた。色の薄い探検服に、下に着込んだタンキニの水着が透けている。慌ててADが下りていき、バスタオルをかけてやった。出演者の安全に気を配るのが彼の役目、想定外の事態ではあるが、責任を感じていた。
ADが紗原を連れて上へ登ろうとするのをディレクターが止めた。
このまま撮影を続行する、とディレクターは宣言した。
再びCM明け。ナレーションが、崖下に落ちた隊員の救出が行われる、などと探検隊の状況を説明する。
ロープを斜面に垂らし、命綱の安全装置を確認する豊田。それをカメラが丁寧に追う。
「OK? それじゃ、行きますよ〜」
斜面の上の草薙に確認する豊田。彼女を支えるロープを身体に巻いた草薙が頷く。腰を落とし、踏ん張り、両手で少しずつロープを送り出していく(注7)。
斜面の下には、『小川』の横でバスタオルを肩にかけて震える紗原(注8)。辿り着いた豊田がダウンジャケットをかけてやる。
「寒かったよね、酷い目にあったわね」
豊田は、実感のこもった労わりの言葉(注9)をかけ、紗原の頭をタオルでゴシゴシと擦ってやった。
「‥‥それじゃあ滑るだろうな」
上がってきた紗原のスニーカーを見て、草薙が呟いた。草薙は背嚢から藁草鞋を取り出すと、それをスニーカーの上から履かせてやった。
「これで大丈夫だろう。実際、入水鍾乳洞では、こうして滑り止めにするらしい」
作業を淡々と進めながら、草薙が呟いた。
気がつけば、ジュディスは一人だった(注10)。
スケッチブックに描かれたイラスト。それに満足してふと頭を上げれば、目の前には三つ又の分かれ道が待っていた。隊員たちがどの道を選んだのか分からない。どうやら地図を描くのに夢中で逸れてしまったようだった。
「どうしましょう‥‥」
分岐点で途方に暮れるジュディス。とりあえず、えい、と適当に選んで進んでいった‥‥
探検隊本隊。休憩を挟んで撮影は続けられた。冷え切った紗原にはありったけのカイロが渡され、今やもこもこさん2号と化していた。
放送では、ナレーションが、今度は逸れたジュディスの探索が行われる、と状況説明をしているはずだ。
「ジュディス隊員が迷子ですってぇ!? ま、まさかサボタージュ!? おやつが1万円じゃ不満だったのかしら‥‥私のおやつを上げるから出てきなさーい!」
テンションを上げた角倉が先頭に立って先を進む。一方、マッパーを失った事に姫乃が不安を口にする。
「こんな所で迷ったら、もう外には出られないかも‥‥!」
まるで舞台俳優か少女漫画(劇画)のようにうろたえる姫乃。どうしましょう!? などと騒ぐ姫乃(注11)の頭を、角倉がハリセンで引っぱたいた。
「大丈夫! 迷ったらダウジングで道を探すから!」
ビシィッ、と親指を立ててみせる角倉。隊員たちは頼りになる隊長を信頼の眼差しで見つめた(注12)。
と、行く手から聞こえてくるジュディスの悲鳴。隊員たちは顔を見合わせて走り出した。
辿り着いた先は、地底湖だった。
地底湖、というと語弊があるかも知れない。水は浅く、天井部分は崩落して日の光が差し込んでいる。壁面の陰影と差し込む光。水面がきらきらと光っている。
「美しい‥‥地の底にこんな綺麗な場所があったなんて‥‥」
キャラを忘れ、素に戻った石榴が進み出る(注13)。靴を脱ぎ、日差しで多少温くなった水面に足を踏み入れる。
ちなみに悲鳴は、この水の中に落っこちたジュディス(注14)の上げたものだった。ずぶ濡れになってもぽわわんとした表情のジュディス。怪我がないのを確認されると、すぐにもこもこさん3号にされていた。
「へぇ‥‥これって天然のスポットライトみたいね。まるでミニステージ」
石榴がクルリとステップを踏むように一回転する(注15)。
ここでエンドテーマと共に、ナレーションが、人の手の届かぬ大自然の造形美が云々と、締めの台詞を言うのだろうが‥‥
隊員たちは、ただ静かに、この美しい風景をいつまでも眺めやった(注16)‥‥
●次回予告も撮りました
予告BGM開始。
画面にジュディスの書いた地図が大写し(何故か完全版)。そのままイベントの場所がアップになって点滅。
映像。積み上げられた小動物の骨の山。岩肌には何かが這った濡れた跡。
「これは‥‥さっきの骨もそうだけど、かなり大きいよ‥‥!」
その跡を触る隊員。はっとしたように手を引っ込める。
「まだ温かい‥‥! 近くにいるかも‥‥!?(注17)」
画面暗転。以後、OPの大蛇登場シーン。
さらに追加。予定(?)より遥かに大きな蛇。慌てて逃げ出す探検隊とスタッフたち。
映像に最後に映る、大蛇の腹の下でキラリと光る何か‥‥!
次回、芸能人探検隊(撮影編)! 来月公開予定!
●注釈
注1‥‥見栄えのいいデザインの地図‥‥だが、詳細ではなく、実際の使用に耐えられそうにない。
注2‥‥撮影前の元気な姿からは想像できない名演技。少しわざとらしいのもポイント。
注3‥‥なぜ哺乳類がこんな日の差さない鍾乳洞の奥にいるのか、理由は明らかにされない。永遠に。
注4‥‥この時の、マイクには入らなかった会話。
草薙「‥‥なぁ、アレって、スタッフが用意したものか?」
AD「ええ、そうですよ。大蛇の存在を案じさせる獲物の骨です。それが何か‥‥?」
草薙「いや、ならいいんだ。探検隊というとどうにも‥‥なあ‥‥」
AD「‥‥?」
注5‥‥同じ場所に草薙とADがいて、姫乃はADではなく草薙に抱きついた。理由は敢えて語るまい。
注6‥‥『泣き言をいう豊田』は芝居。本来、他のシーンだったのだが、豊田がアドリブで転用した。
注7‥‥演出ではあるが、実際に草薙が豊田の体重を支えた。斜面は余り高くないので命綱は飾り。
注8‥‥芝居ではなく、本当に、冗談抜きで寒い。
注9‥‥豊田の言葉は、撮影を続行したディレクターへの当てつけを含んでいた。
注10‥‥ひとり、といっても、カメラさんと照明さんと音声さんがいるわけだが。
注11‥‥実際には迷う心配はなく、これも姫乃の芝居。少しやりすぎた。
注12‥‥ありえない。
注13‥‥照明は既に取り上げられている。
注14‥‥当初は演出で落ちる予定だったが、どうやら素で落ちたらしい。
注15‥‥やっぱり地底の水は冷たく、体温を奪われた石榴はその後、もこもこさん4号に。
注16‥‥角倉が水浴びの為に用意していたワンピースの水着。結局、水が半端なく冷たくて出番なし‥‥
注17‥‥蛇は変温動物なので温かいわけがない。