AQOゲーマーズ!アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
柏木雄馬
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
1万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
03/26〜03/30
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●本文
『AQOゲーマーズ!』は、架空のオンラインゲーム『アルティメットクエストオンライン』を題材にしたTVアニメ。
今回は、ゲーム内の新エリア『北方開拓大地』におけるイベント、『雪原の護衛行』に参加したキャラクターたちの顛末が描かれることになる。
イベント内容は以下の通り──
●イベント『雪原の護衛行』
『北方開拓大地』最南端の港町『マーツァエ』。冒険者ギルドを兼ねる酒場『少女と踊る小熊』亭から、イベントは始まる。
「ゴブリン相手に全滅!?」
その報告を受けた時、酒場にいた冒険者たちはどよめいた。
ゴブリン。ファンタジーRPGにおいて頻繁に登場する、ザコ敵の代名詞だ。素人ならともかく、荒事を生業とする冒険者が──たとえ低レベルのヒヨッコであっても──不覚を取る相手ではない。
ましてや、その依頼を受けていたのは、新参とはいえ多少は場数を踏んだ連中だった。
「オーガはいなかったんだろ?」
「大多数に包囲されたのか?」
冒険者たちは、酒場の主人に詳しい説明を求めた。
雪に覆われた北の大地に、開拓者たちの村がある。
冬場は雪に閉ざされるこの村では、越冬の為に大量の食糧を保存する必要があり、その食糧輸送の護衛として件の冒険者たちが雇われた。
出発は一週間前。六頭の駄馬に荷を乗せて港町を出て行ったのが確認されている。その二日後、開拓村から撤収する他の冒険者たちが、村へと向かう一行と擦れ違った。これが最後の目撃情報となった。
全滅が確認されたのは二日前。到着が遅いのを心配して探索に出た村人たちが、道端で、戦場跡と物言わぬ骸たちを発見した。行軍中を襲われたものと思われる。
「護衛は勿論、馬を引く人夫から荷を乗せた駄馬に至るまで、誰一人として生き残ってはいなかった。食糧は全て奪われ、人馬の遺体は狼に食い散らされていたそうだ」
戦場跡には、輸送隊の遺体に交じって、護衛の冒険者が倒したのだろう、ゴブリンの死骸が残っていた。数は三体。他に、二匹のダイアウルフ(通常の狼よりも大型の魔狼)の死骸もあった。さらに、探索隊の狩人が戦場跡をうろついていたダイアウルフを一匹射殺している。
襲撃者の得物は、遺体の状況から槍と弓と推察された。魔法が使用された形跡はない。ただ、戦場にはダイアウルフの足跡は多く残っていたが、ゴブリンの足跡はほとんど無かった。報告書にはそう記されていた。
「この件に関しては、開拓村から再び食糧輸送護衛の依頼をされている。とにかく食糧が村に入らないと、大量の餓死者を出した挙句に村を棄てることになりかねない。この北方開拓大地での、我々冒険者に対する信頼にも影響が出ることは必至だ。厳しい状況だが、誰か依頼を受けてはくれぬか?」
●イベント解説ウィンドウ
イベント『雪原の護衛行』の内容を読んだキャラクターたちが、今度はプレイヤー向けの解説ウィンドウを開く。自分の能力値ウィンドウと見比べて、イベントに参加するかを相談する──そんな場面も、アニメでは演出として描写されていた。
状況1。
依頼内容は『開拓村まで食糧輸送隊を護衛すること』です。輸送手段その他については、特に申告がなければ前回輸送時を踏襲します。
状況2。
登場するキャラクターたちは、全滅した冒険者たちとほぼ同レベルです。つまり、下手をすれば同様に全滅する可能性があります。
残された情報から敵戦力を推察し、有効な対処法を考えて下さい。
状況3。
開拓村まではどこも雪に覆われた地形です。移動や回避に大きなペナルティがあります。
「‥‥さて、このイベント、どうする? やってみる?」
●BNO・PL向け情報
ゲーム系のシナリオです。
アニメ『AQOゲーマーズ!』に登場するファンタジー系のキャラクターを作り、そのキャラクターがアニメ劇中で行う作戦・行動をプレイングにして下さい。
そのプレイングを用いて、劇中のイベント『雪原の護衛行』の成否を判定します。その成否に応じた内容が脚本となり、アニメ番組として放映されることになります。
●リプレイ本文
『少女と踊る小熊』亭。
イベント参加を受け付けるカウンターで、一人の少女が頭を抱えていた。
少女の前には、イベント『雪原の護衛行』の情報ウィンドウ。そこに記載された内容が少女を躊躇わせていた。
「全滅した冒険者って、私と同じ位のレベルだったんだよね‥‥。ちょっと心配かなぁ」
少女の名はユーリィー(キャラ作成:結(fa2724))。見た目は幼いが、もう『駆け出し』と呼ばれない位には経験をつんだアーチャーだった。
「でも、新しい弓、欲しいんだよね‥‥う〜ん‥‥」
そこに一人の女戦士がやってきて、悩んでいるユーリィーをよそにイベントの参加手続を済ませた。
女戦士は、ユーリィーが自分と同じイベント情報を見ているのに気が付いた。
「あんたもこのイベントに参加するのかい?」
女戦士はローザ(キャラ作成:レティス・ニーグ(fa2401))と名乗った。顔の左側にある魔除けの入れ墨が印象的だった。
そこへさらに騒々しく、銀髪の魔法剣士セイロン(キャラ作成:緑川安則(fa1206))がやってきた。
「仕事〜、プリーズ〜〜! 金とレアアイテム交換したからどんなやばい依頼でもいいよ〜。必要なら初心者をPKしておく? ってしないけどさ」
可愛い顔をしてさらりと毒を吐くセイロン。酒場のマスターにイベントの情報を要求し、それに一通り目を通すと、すぐに参加を決定した。
二人の決断の早さにユーリィーは感嘆した。
「勝手知ったる、ってね。こっちはセカンドキャラだから」
セイロンがにっこりと笑う。
「ファーストとは違う方向性を目指したんだ。体力馬鹿の次は知識馬鹿ってね。どう? 今度デートする?」
そう言って女性二人をナンパするセイロン。「海水浴なら付き合ってやるよ」と、すかさずローザが切り返す。ここは極寒の北方開拓大地。寒風吹き荒ぶ北の海。
「あはは、つれないね〜」
断られても特に気にした風もなく、セイロンはイベント参加者が集まる小部屋へと向かった。
ローザは、ユーリィーに肩を竦めて見せると「また後でな」と言ってカウンターから立ち去った。
そんな二人の背中を見て、ユーリィーは「私も一緒に行こうかなぁ」とそんな事を思っていた。
「やっほ〜! 吟遊詩人兼野伏のエリル・ルー(キャラ作成:咲夜(fa2997))だよ。よろしくね♪」
エール片手に小部屋に入ったユーリィーに、ハーフリングの少女が元気一杯に自己紹介をした。原色を組み合わせた服装がいかにも吟遊詩人らしかった。
部屋の中にはユーリィーを含めて8人の姿があった。それぞれの自己紹介を終えると、すぐに実務的な話になった。
「ダイアウルフの足跡は多く残っていたが、ゴブリンの足跡はほとんど無かった‥‥。これは推測ですが、ゴブリンがダイアウルフに騎乗していたと考えられないでしょうか?」
精霊使いのタケル(キャラ作成:志羽・武流(fa0669))が敵戦力をそう推測した。セイロンも同じ見解を示す。反対意見は出なかった。
「ダイアウルフは狼の上位種だ。特に弱点属性はない。全般的に能力が向上してはいるが、低LVのモンスターだな。開拓村の狩人が倒せる位のな」
ダイアウルフについて調べてきたコーディア・ブリーズ(キャラ作成:河田 柾也(fa2340))が調査結果を報告した。ひょろりとした身体つきをしたハーフエルフのシーフで、どこか投げやりで陰気な口調だった。
「でも、普通のゴブリンが魔狼をやすやすと従えているとは思えません。精神操作系の高位魔法使いなど、他に統率者がいるのかも」
気弱そうに自説を述べる、黒髪おかっぱ、眼鏡の少年僧侶ニコラス・アルフレート(キャラ作成:桐尾 人志(fa2341))。
「だとしたら、前回の冒険者達は同士討ちで全滅したのかもしれません」
そう言うニコラスの意見に賛同者は現れなかった。遺体の状況を記した資料に、同士討ちの兆候が無かったからだ。
がっくりと肩を落とすニコラス。コーディアだけが皆に警戒を促した。
「悪属性の魔法使いがゴブリンを手下にすることはよくあることだ。同士討ちは無いにせよ、精神操作系の魔法には警戒するべきだ」
出発の日の朝が来た。
北の大地の朝は寒い。防寒具で着膨れたニコラスは、あまりの寒さに体中をガタガタと震わせた。元気一杯のエリルとは対照的だった。
「‥‥よく平気だね」
「子供は風の子なんだよー。ニコもそんな着膨れてるからかえって寒いんだよ」
お坊ちゃま育ちのニコラスに無茶を言うハーフリング野伏、エリル。
そこに、乗せられるだけの荷を背に乗せた6頭の駄馬が、人夫に轡を取られてやってきた。開拓村への第二次食糧輸送隊だった。
編成は前回と同様。ソリなどは使わず、徒歩での雪原踏破行となる。これには、ある意図があった。
「輸送手段は前回と同様で良いと思います。奇襲しやすいとゴブリン達は考え、油断するでしょう」
作戦を立案したタケルが言う。
「雪原という地形は不利ですが、うまく利用すれば有利になると思いませんか?」
‥‥かくして輸送隊は出発した。ニコラスが仕える神に小さく祈りを捧げる。
「知識と理性の神よ‥‥どうか無事にママの所へ帰れますように‥‥」
輸送隊が雪原を行く。
昼は、一列縦隊の輸送隊に冒険者が随伴し、さらにタケルが召喚した風の精霊に敵意ある者の接近を警戒させた。
夜は、エリルがキャンプ地の周りに、その地形地形を利用した罠を仕掛けて警戒に当たった。
敵襲は夜営中に行われる可能性が一番高かったが、それでも決め付けるのは危険だった。前回の輸送隊は行軍中に襲われている。
‥‥そして、何事も無いまま三日が過ぎた。
空はいつも暗く曇天に覆われ、見渡す限りは雪の原。変わり映えのしない単調な景色が続いていた。
スキルを用いて警戒を続けるタケルとエリルには疲労が蓄積し、SP(スキルポイント)の回復に支障が出てきた。他の冒険者達も、緊張感を持続させることが難しくなっていた。
天候が急変したのは、そんな時だった。
突然、雪がちらほらと降り出したかと思うと急に風が強くなり、輸送隊は5分もしない内に吹雪に包まれた。
同時に、タケルの召喚した風の精霊が敵意ある者の接近を感知した。
「敵襲です! 10時の方向!」
タケルの警告に、急な吹雪への対応に追われていた一行は、驚きつつも戦闘態勢を整える。
「速いですね‥‥まっすぐこちらに向かってきます」
そう言って、タケルが敵がいるであろう方向を指差した。だが、吹雪に阻まれて何も見えない。
「これじゃあ、長距離の狙撃は無理だよ!」
弓を構えたユーリィーが風に負けないように叫ぶ。エリルは臍を噛んだ。これでは、歌声を聴いた者を眠らせる『眠りの呪歌』の効果範囲も半減する。
吹雪の向こうから、ダイアウルフに騎乗したゴブリンが近づいてくるのが見えてきた。その横に表示されるデータウィンドウ。
『ゴブリン狼騎兵 MonsterRank4』。
「ランク4‥‥オーガと同じランクのゴブリンかよ!」
セイロンが思わず叫んだ。
「ゴブリンの打撃力にダイアウルフの機動力が上乗せされるのか」
大剣を構えたローザが敵の能力を推察する。敵の方が優速である以上、分断しての各個撃破は難しいだろう。
「敵はあたしが引き付ける。出来る限りまとめてみせるから、吹っ飛ばしてくれ」
「分かった。支援砲撃ならまかせて〜」
セイロンが口調だけは軽薄に言ってみせた。
「神よ、この者に祝福を‥‥!」
ニコラスがローザに『抵抗力上昇』と『防御力上昇』の呪文をかけた。そのまま全員に支援魔法をかけていく。
さらにタケルが風の加護を与えて、敏捷性と移動力をを少しでも上昇させる。
味方の援護を受け、囮になるべくローザが前進を開始した。
前方に突出したローザに、先頭のゴブリン狼騎兵Aが槍を構えて突進する。ローザは繰り出される槍の穂先を掻い潜ると、すれ違いざまに大剣でゴブリンを薙ぎ払った。
ただの一撃でゴブリンはHP(ヒットポイント)が0になり、ゴブリン狼騎兵AはダイアウルフAに姿を変えた。
「伊達に重剣士は名乗っちゃいないよ!」
だが、攻撃後の硬直時間に、第二、第三の狼騎兵がローザに槍を突き立てる。狼騎兵が走り抜けた後、ローザのHPは半減していた。
即座にニコラスが回復魔法をローザにかける。だが、ダメージ量は回復量を上回っていた。
槍での突撃・一撃離脱がゴブリン狼騎兵の最大の武器だった。突撃は移動攻撃の為、移動のままならぬこの地形では、歩兵には反撃時しか攻撃機会がない。
「ポールウェポンの方が良かったか‥‥いや、この地形では同じか‥‥」
止めを刺すべく反転してくる狼騎兵。さらに前方から、後続の狼騎兵たちが迫る。
ローザは動じなかった。防御体制を取る事無く、敵の頭数を減らす事だけを考えて大剣を構える。
敵がローザに群がってくる。そこに、セイロンの範囲攻撃魔法が飛び込んだ。
炸裂する『ファイアーボール』。ローザに攻撃しようとしていた狼騎兵の半数が突撃を止められ、そのHPを大幅に減らされた。
「巻き込んじゃったらごめんね〜」
そう言いながらも、セイロンの攻撃は正確無比。確実に、最も効率のいい場所へ魔法を叩き込む。
「2発、3発、これで打ち止め〜」
余ったSPで『マジックアロー』を放つセイロン。3本の魔法の矢が、死にかけのダイアウルフに突き刺さった。
5体の狼騎兵が消え、代わりに5組のゴブリンとダイアウルフが出現していた。一定のダメージを与えると分離するらしい。
「おら、行くよ!」
そこにローザが大剣を振り回して突っ込んでいく。それをフォローするように、抜剣したセイロンが後に続いた。
奮戦するローザとセイロン。その戦場を迂回して、後続の狼騎兵が輸送隊に迫っていた。走りながら狼騎兵が短弓を撃ち放つ。
「輸送隊をやらせはしませんよ!」
その弓矢をタケルが風で払い落とした。
近づく敵のみに狙いを絞ったユーリィーが反撃の矢を浴びせる。風が強いので、精密射撃は諦めた。
狼騎兵は弓を槍に持ち替えると、散開して、吹雪を隠れ蓑に四方から突っ込んだ。
「わわ、突っ込んできたよ!」
「こっちからも来た!」
防御射撃を浴びせるユーリィー。さらに、タケルが『風の刃』、ニコラスが『聖闘波』の魔法を放つ。だが、それぞれ狼騎兵のHPを削りきれずに突入を許してしまった。
大きくHPを減らす駄馬と冒険者たち。ニコラスが回復に専念する。
「『眠りの呪歌』を歌うよ! みんな耳を塞いで!」
エリルが警告をする。呪歌は敵味方を区別しないからだ。だが、移動攻撃をする狼騎兵は、その警告の間に効果範囲外に出てしまっていた。
「それでは駄目だ!」
コーディアが叫ぶ。
「攻撃は集中しろ。ゴブリンを叩き落すんだ!」
コーディアは吹雪の向こう側に目を凝らした。エルフの血が、彼の感覚を鋭いものにしていた。
「‥‥来たぞ、1時の方向!」
合図で、全員の攻撃が一匹に集中する。たまらずゴブリンがダイアウルフから転げ落ちた。
「構うな! 次、9時方向!」
‥‥コーディアの迎撃管制で狼騎兵の猛攻を数ターン凌いだ後衛組だったが、タケルとニコライのSPが底をつき、ついに限界に達した。
最後に残った狼騎兵3騎が突撃する。1騎はなんとか弓とスリングで止めることが出来るだろうが、残る2騎は確実に、傷ついた誰かに止めを刺すだろう。
狼騎兵の攻撃が届こうとするまさにその時、やけになったエリルが味方に無警告で『眠りの呪歌』を歌った。
抵抗に失敗し、ユーリィーとニコラスが崩れ落ちる。『抵抗上昇』がかかっていなかったら、コーディアも眠らされていただろう。
完璧に呪歌を歌い終えたエリルの顔に思わず会心の笑みが浮かぶ。
見れば、狼騎兵達は完全に突撃を止められていた。ゴブリンとダイアウルフ、どちらかが抵抗に失敗すれば、狼騎兵としての戦闘力は無くなるのだ。
コーディアが『呪文無効化』のスクロールで皆を起こす。この時点でもう大勢は決していた。
戦闘が終わるのとほぼ同時に、吹雪は吹き始めた時と同様、唐突に収まった。
冒険者達は、ゴブリン狼騎兵9騎を討ち取り、3騎を捕虜にした。
損害は、荷を運ぶ駄馬が一匹死亡。輸送手段はなく、6分の1の荷を捨ててゆく事になった。
冒険者達のHPの減少は大きく、ニコライが数日掛かりで治療した。襲撃があれば危険だったが、開拓村に着くまで何事も無く終わった。
開拓村に着いた一行は、歓呼の声で迎えられた。食糧に対する不安は、それほど大きかったのだろう。
村についてすぐ、ニコライは捕虜になったゴブリンに尋問を始めた。急な吹雪といい、今回の事件の背後に大きな影を感じていた。
ローザとセイロンは新たな仕事を探している。開拓村でも幾つかのイベントがあり、それに目を通していた。
エリルは初めて来た開拓村を好奇心いっぱいの瞳で歩き回り、タケルは宿で今回の事件の顛末を記録していた。
コーディアは、すでに村にいない。全滅した冒険者の遺品を家族に渡しに行くというリンクイベントに参加したのだった。
目標金額を稼いだユーリィーは、それを持って武器屋に行き、そこで欲しい弓矢を新たに見出した。当初欲しかった弓を買うか、もう少し貯めてそちらを買うか、今も武器屋で悩んでいる‥‥。