colorFull−in Storeアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 風華弓弦
芸能 3Lv以上
獣人 2Lv以上
難度 やや難
報酬 6.9万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 09/21〜09/23

●本文

●in Store Live
 CDなどの販売促進の為、店舗内スペースの一角で不特定多数を対象に、無料で開催されるライブ。
 それが、インストアライブである。

 アイベックスのプロデュースでデビューした『colorFull』も、9月20日発売のデビューシングル『星数のスタート』に合わせて、宣伝活動の一環として大型CDショップでのインストアライブを行う事となり、関係者や各プロダクションに向けてその旨の連絡が届いた。
 概要としては、ライブの日付が21日と23日。
 21日に東京、間に一日おいた23日が大阪での開催となっており、どちらも開始は午後18時からだ。
 ただ今回のインストアライブでは、高原 瞬が参加しない。
『欠席理由』としては、彼が主役を演じている大河ドラマが大詰めを迎えている為に、京都の撮影所から離れられない事。そして、彼がライブに出る事によって店の内外で起きるであろう混乱を避け、本人やメンバー、そして客の安全に配慮する。その二点であった。

 ライブ会場となるのは大型CDショップのチェーン店で、場所もイベント用のオープンスペースを使用する事となる。ただし楽器を全てセッティングし、メンバー全員が揃うとなると、ステージ・スペースは少々狭いという。これに関しては演奏形式を考えるか、もしくは二手に分かれてライブを行うなど、メンバーで相談して融通をつけて欲しいとの事である。
 また、奏者の疲労を考慮してサイン会や握手会は開催せず、15分程度の時間制限を設けた撮影会のみが予定されている。

●今回の参加者

 fa0213 一角 砂凪(17歳・♀・一角獣)
 fa0441 篠田裕貴(29歳・♂・竜)
 fa0634 姫乃 舞(15歳・♀・小鳥)
 fa2495 椿(20歳・♂・小鳥)
 fa2778 豊城 胡都(18歳・♂・蝙蝠)
 fa2847 柊ラキア(25歳・♂・鴉)
 fa2899 文月 舵(26歳・♀・狸)
 fa3608 黒羽 上総(23歳・♂・蝙蝠)

●リプレイ本文

●Latent Infection
「それでは、東京と大阪の二手に分かれて‥‥という形で」
 確認するアイベックスの担当者に、姫乃 舞(fa0634)が「はい」と笑顔で答えた。
「でも、撮影会は全員でお願いします」
「ああ、六人で」
「いいえ」
 言葉を遮られた担当者は、訝しげに豊城 胡都(fa2778)を見やる。
「裕貴さんと椿さんも」
 胡都の言葉に、担当者は篠田裕貴(fa0441)と椿(fa2495)へ目を向けた。
「お二人は、それで?」
「いきなりメンバー外の僕達が混じっても何だし、避けようかと思ったんだけど‥‥」
 言葉を選びながら、少し困った風に裕貴が答え。
「撮影会の邪魔にならない隅っこで、控えてるから」
 椿は笑って、ひらひら手を振る。
「‥‥そういう事でしたら」
 淡々とした返事は、ユニットメンバー以上に目立たない様にと、言外に語っていた。二人ともメンバーより知名度があり、更に『目玉』である高原 瞬がライブに不参加の為、本来売り出したい『colorFull』より注目されると、アイベックスの販売戦略としては本末転倒になるのだろう。
 一通りの段取りを確認し、手帳にメモを取った担当者は、ボールペンで手帳の角をとんとんと叩きながら考えた末、もう一つ質問を加えた。
「それで‥‥22日の予定は?」
 ライブの予定はスケジュールの初日が東京で、三日目が大阪となっている。真ん中の22日は、実質上フリーだ。
「えーっと、移動は23日がいいのかなぁ?」
 首を傾げて、柊ラキア(fa2847)が文月 舵(fa2899)へ尋ねる。
「お店には、15時くらいに入っておいたら大丈夫やと思います。朝から移動すれば、時間的には十分やね」
「じゃあ、22日は特に予定はなし。23日に移動で‥‥問題はないか?」
 纏める黒羽 上総(fa3608)に、担当者は手帳へ何事かを書き込んだ。
「‥‥ええ。では、移動のチケットもその線で手配して、今日のライブの後に皆さんへお渡します」
「はい、よろしゅうお願いします」
 舵が了承し、打ち合わせは終了となる。
 そして一同は、席を立った。

 一角 砂凪(fa0213)は、携帯のボタンを押しながら迷っていた。
「どうしようかな‥‥メール送って、邪魔にならないかな‥‥」
 液晶の画面は、白い背景に短い一文が表示されている。
 −−体に気をつけて、ドラマの撮影頑張ってね。
「あ。でも瞬さん、携帯持ってたっけ‥‥?」
 そもそも、相手のメールアドレスすら知らない事に改めて彼女は気付く。
 何か伝える事がある時、瞬は電話で‥‥出ない場合は、留守録へ用件を残すのだ。
「砂凪さ〜ん、行きますよ〜!」
「あ、はい!」
 舞に呼ばれて、砂凪はボタンを押す。
 ピ。と短い電子音がして、携帯の液晶画面はメール管理モードから待ち受け画像へと切り替わり。
 携帯をポケットに突っ込んだ少女は、慌ててメンバーの後を追った。

●0921−Short Live in TOKYO
 小さな控え室で、八人はライブを行うメンバーと撮影会を待つ者達に分かれて待機していた。
「イン・ストア・ライブって、お客様が身近に感じられそうでいいですね」
 衣装に乱れがないか入念に確認しながら、鏡越しに舞が東京での演奏メンバーを見る。
「皆で一緒にライブはできないけど、お客さんにも満足してもらえればいいですね」
 胡都の笑顔に、彼女は一つ頷き。
「はい。お客様、来て下さるといいですね」
「来るって言うか、お店だから足を止めるのかな? 皆リラックスして、楽しい気持ち伝えようね! お客さんと一緒にこう、ノリノリな感じで!」
 盛り上がる椿だが、静かに舞は首を横に振る。
「でも、ステージはあまり広くないですから。私はノリや勢いよりも、心を込めて丁寧に歌う事を‥‥心掛けようと思います。曲を聴いて下さるお客様への感謝の気持ちは、常に忘れないようにしたいですし」
「う〜ん。そっか」
 苦笑しながら、ぽしぽしと髪を掻く椿。
「まぁ、よろしくな」
 元気付けるように、上総が二人の肩をぽんと軽く叩いた。

 ドラムセットやアンプ、スピーカーが置かれたステージを、興味深げな観客達が見つめていた。
 マイクを握った女性店員が、ステージ脇に立って整理係と進行役を勤めている。
「それでは、今日の特別イン・ストア・ライブ。昨日デビューシングルが発売されたばかりのユニット、『colorFull』の皆さんです! どうぞー!」
 トーンの高い紹介と共に拍手が起こり、ロープで仕切られた売り場の通路を抜けてメンバーが順番に現れた。
 白いカジュアルワンピースの襟元に、水色のバンダナをスカーフ代わりに結んだ、ボーカルの舞。
 色褪せた感を出したジーンズのジャケットとパンツに、水色のバンダナを肩に巻いたドラムの胡都。
 ワイシャツにジャケットを羽織ち、ズボンとをオータム・カラーにコーディネイトした上総は、水色のバンダナで髪を結び、ギターを握る手にはミサンガが揺れる。
 水色バンダナを海賊風に頭へ巻いて、白いシャツとブルージーンズをラフに着る、コーラスで助っ人の椿。
 四人は僅かな段差を上がって、演奏の準備に入る。
 男三人が背面側に位置を取り、一歩前に出てステージ中央へ立った舞はスタンドマイクに手を添え、呼吸を整えてから笑顔を作った。
「今晩は、『colorFull』です! 今日はこちらのお店で、ミニライブをさせて頂く事になりました。 短い時間ですけど、是非聞いて行って下さい。宜しくお願いします!」
 イベントスペースに集まった100人近い客へ、彼女は緊張気味に挨拶をする。
 期待と好奇心に満ちた拍手が、あちこちから起きて。
 胡都が刻む静かなリズムに、上総のギターが重なる。
 息の合ったイントロに、舞がゆったりと唄い出す。

「 ゆっくり時々は急ぎ足で歩く
  坂上れば見下ろす景色は小さくなっていく−− 」

 短いライブのスタートは、『夢をつないで』で幕を開けた。
 続いて『GOING MY ROAD』を演奏する。
 本来キーボードが入るパートは、上総がギターでカバーをし。
 掛け合いの部分は、いないメンバーのパートを椿がサポートし。
 二曲を一気に歌い上げた舞は、MCを入れる。
「私達のデビュー曲、『星数のスタート』が昨日、発売になりました。メンバーの想いが込められた、とても素敵な曲になりましたので、皆様、是非聞いてみて下さい」
 ミドルテンポのメロディが、柔らかく歌声をのせて。

「 いくつもの出逢いと別れをくり返し
  すれ違う哀しさにも慣れたフリをして−− 」

 イベントスペースに集まった客や、ライブを聞きながら買い物を続ける客、急ぎ足に店を通り過ぎる通行人を問わず、人々の間へと歌は流れていった。

「実は、今回ライブには参加されていませんけれど、他の『colorFull』メンバーの皆さんにも御来店いただいています。皆さん、どうぞこちらへ!」
 女性店員の呼びかけに椿はステージの端へと移動し、砂凪とラキア、舵の三人が拍手で迎えられながら店内を横切ってステージに上がる。
 そしてステージと客達の間にもロープが渡され、警備員が間に入った。
「では、これより『colorFull』デビューシングルの発売記念撮影会を行います。危険ですので、押さないようにして下さいねー!」
 待ち兼ねていた客は携帯電話やコンパクトなデジカメを取り出し、ステージ中央へ並んで立つ六人へ一斉にレンズを向けて、シャッターを切り始める。
 にっこりと笑んでそれに応えていた上総は、ふと思い付いたように胡都の肩に腕を回して組み、あるいはラキアの髪をがしがしと撫で。
「あ! も〜、上総!」
「いや、手頃な場所に頭があったからな」
 交わされる和やかな会話が、メンバーの間にリラックスした雰囲気を作り出す。

 そして撮影時間が終わるまで、店内に何度も何度もフラッシュの光が繰り返し、閃いた。

●0922−Kyoto Studios
「15分、休憩入りまーす!」
 ADの声を聞き、メイクや衣装係の制止を振り切って、走り出す。
 セットを飛び出し、床に這うカメラや電源のコードを飛び越えて、マネージャーへと駆け寄り。
「何か連絡、あった!?」
 勢い込んで聞かれたマネージャーは、瞬の様子に驚いた顔をした後、首を左右に振った。
「あ、いや‥‥何も」
「‥‥そっか」
 肩を落とす青年の背を、慰める様にマネージャーがぽんと手を置く。
「アイベさんは、瞬の予定を伝えたとは言っていたけど‥‥仕方ないよ。ライブの準備もあるしね」
「‥‥だよね」
 ふーっと深く息を吐くと、瞬は『役者』の顔に戻る。
「じゃあ、戻ります」
 走っていく瞬の背中を、マネージャーは複雑な表情で見送った。

●0923−Short Live in OSAKA
「デビュー曲、一回しか演奏しないんですか?」
 大阪のCDショップでは、ライブ構成を聞いた中年の店長が不思議そうに聞き返した。
「判りやすい曲でも、何回も聞いてもらわんと客は覚えてくれはりませんよ。ほら、ラジオでもヘビーローテーションとか、やりはるでしょ」
「それやと 構成そのものを変えた方がええやろか」
 呟く舵に、店長は「う〜ん」と腕組みをして唸り。
「皆さんの都合もあるし、大層にしてくれとは言いません。ただやっぱり、デビュー曲への『ツカミ』は要るんと違いますか」
「あ、それなら‥‥」
 何事かを思い付いた様に砂凪が提案をし、打ち合わせは更に暫く続けられた。

「話、まとまったか?」
 店側との打ち合わせを終えて戻ってきた四人を、上総が迎えた。
 胡都と椿は、暢気に『おやつ争奪戦』を繰り広げている。
 裕貴が作ってきたモンブランと芋羊羹に、栗きんとん。そして駅の土産物屋で仕入れた地元銘菓に、店員に頼んで近くの店まで買いに出てもらったイカ焼きやたこ焼きなどが、節操なくテーブルに並べられていた。
「はい、あんじょうしてもらいました」
「よかったです。頑張って下さいね」
「勿論! 東京のライブには、負けないよー!」
 舞の応援に、ラキアが首から提げたゴーグルを弾ませて気合を示す。
「えっと‥‥控え室に戻るね。ソースの匂いがつきそうだし」
 香ばしい匂いに苦笑しながら、砂凪は部屋を出て。
「じゃあ、ライブの進行を詰めようか‥‥二人に取られる分は想定して、お菓子も多めに作ってきたし」
 後に続く裕貴が、ぬかりなく笑んでみせた。
「舵ー! 舵のバンダナ、僕が結ぶー!」
 はいはいと手を挙げるラキアは、ずっと舵の後ろにくっついている。
「あら、おおきに。今日は一緒に、頑張ろね」
 柔らかく、舵の手がラキアの頭を撫でる。
「うん。舵と一緒は寂しくないけど、でも瞬いなくて寂しーし」
「そうやね。せやけど、皆で、今できる精一杯で『colorFull』の音を届けましょう」
 微笑んで、舵はラキアを元気付ける。そこへ、上総が顔を出した。
「よかった、まだいたか。一つ相談があるんだが‥‥瞬に何か、土産を買おうと思ってな。後で、土産物屋に寄らないか?」
「「寄る寄る!」」
 ラキアと砂凪が揃って返事をし、舵と裕貴は顔を見合わせて笑った。

「お待たせしました。本日のイン・ストア・ライブは、アイベックスよりデビューしたばかりの注目ユニット、『colorFull』です! 皆さん、どうぞこちらへ!」
 拍手と興味の眼差し。それは、東京も大阪も変わらない。
『花道』の様に設けられた通路を手を振りながら−−ラキアはピースサインを作って通り、今日の演奏を行う四人はステージへと上がった。
 黒いTシャツに黒いパーカーを着て、いつものゴーグルを提げたボーカルのラキアは、迷彩柄のカーゴパンツのベルトに、水色のバンダナを結んでいる。
 フリルの付きの白い長袖Tシャツに水色のジーンズで、襟元にお揃いの水色バンダナを巻いた、ダンサーの砂凪。
 藍色のタンクトップと白い半袖メッシュカーディガンにフレアのデニムスカート、そしてラキアが緩く止めた水色のバンダナを襟元で揺らして、舵はステージ上手のキーボードへ。
 白地にグレーのストライプシャツをラフに着こなし、ベージュのパンツの太腿に水色のバンダナを結んだサポート役でコーラス担当の裕貴は、茶色のショートブーツの踵を鳴らして下手のスタンドマイクへ。
 東京のライブでもそうだが、みな『星数のステージ』のPVを撮影する際に着ていた衣装で揃えていた。
 聴衆がマイクの前に立つラキアの言葉を待って息を潜める中、彼はすっと深く息を吸い込み。

「 笑うのも涙するのも ただ一生懸命に
  願うのも託していくのも 愛すればこそ 」

 少し外れた音も気にせず、力いっぱいその声をアカペラで響かせた。
 声が十分に伸びたところで、舵はキーボードのリズムマシンをスタートさせ、細い指を鍵盤に滑らせる。
『夢をつないで』のイントロに合わせ、砂凪は動作の大きくない身振りと共に軽やかなステップを踏む。
「『colorFull』のムードメーカー担当、柊ラキアでーす! 今日は怪我しないように、騒いでね!」
 MCを入れたラキアは、『夢をつないで』を裕貴のコーラスと共に唄う。
 その後は東京と同じく『GOING MY ROAD』を演奏し、『星数のスタート』で短いライブを纏めて、撮影会となった。

●Important Inference
 帰京の為に駅へと走るタクシーで、アイベックスの担当者は携帯電話をかけていた。
「言われた事も出来ない有象無象ではありませんですが、それ以上の成果を導き出す事も難しいようですね‥‥確かに、自分の事で手一杯といったところですか」
 手帳を繰り、ただ淡々と言葉を口にする。
「敷いたレールの上に乗せればそれなりに走るでしょうけど。ポップス・シーンの牽引役となると‥‥」
 言葉を濁し、更に二言三言の会話を交わすと担当者は電話を切り、前を走る−−メンバーの乗るタクシーのテールランプを眺めた。