colorFull−WindingRoadアジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
風華弓弦
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芸能 |
3Lv以上
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獣人 |
2Lv以上
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難度 |
やや難
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報酬 |
6.9万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
11/22〜11/24
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●本文
●this Road
「無期限活動休止?」
『ええ。事実上は、解散となりますね。残念ですが‥‥』
その言葉さえ、あくまでも淡々とした口調で告げる担当者に、受話器を握る高原 瞬は眉根を寄せた。
「続ける可能性の話は‥‥?」
『あくまでも、可能性としての話ですから。この先、彼らが名実ともにトップクラスのアーティストとなりうる‥‥または、そうなった時、彼らにその気があって、こちらも受け皿があれば‥‥ですかね』
「それはもう、皆に知らせた?」
『これからですね。一応、先にそちらへ連絡しておこうと思いましたので』
その説明に瞬は黙り込み、回線越しの会話にしばしの沈黙がおりる。
そして大きく一つ息を吐いてから、漸く口を開いた。
「お願いが出来る立場ではないと、承知した上で‥‥お願いが、あるんだけども。もしも損失が出るようなら、こっちが責任取るからさ‥‥」
長い話を終えた瞬は、受話器を置くと傍らのマネージャーを見やる。
「何とか、スケジュール‥‥都合がつきそうかな」
心配そうに尋ねる瞬に、マネージャーは小さく苦笑して手帳を確認する。
「半日以上とか、あまり長時間は難しいけどね。でも、何とか調整して出来るだけの時間を確保してみよう」
「‥‥うん。ちょっとだけでも、いいんだ。ちょっとでも『colorFull』が見れれば、それで。皆からしてみれば、僕は傲慢な裏切者だろうしね。それから赤が出た時の事は、僕から社長に話しておくよ」
大きく溜め息をつく瞬は、電話から手を放すと次の仕事へと向かうべく事務所を後にした。
そして、『colorFull』のメンバーに、二つの連絡が届いた。
一つ目は、『colorFull』の企画が一時凍結となる事。凍結期間は無期限で、活動再開の目処が実質上ついていない事を意味する。
二つ目は、活動休止前の『最後の活動』について、その内容をある程度ならば希望を汲むという。
例えば、いきなり武道館でライブといった突飛な事は出来ないが、小ホール規模ならライブの開催も検討される。あるいは、ラジオやテレビなどのメディアへの出演。もしくはセカンド・シングルをメンバーで作り、レコーディングを行う事でも構わない。
ユニットとしての、一つの『区切り』をみせる事。
それが、『最後の活動』の主旨であるという−−。
●リプレイ本文
●解かれた糸
楽屋では、二人の少女が空間を持て余していた。
「広い、ね」
「‥‥はい」
ポツリと呟く一角 砂凪(fa0213)に、姫乃 舞(fa0634)も首を縦に振る。
いつも、賑やかだった楽屋。
誰かが足らなくても、分かれて仕事をしても、いつも笑顔と活気があったように思う。
そんな『colorFull』も、楽屋で顔を合わせているのは、彼女ら二人だけで。
「色々事情があるだろうから、仕方ないかもしれないけど、やっぱり寂しいなぁ」
「ええ。残念と言うか‥‥自分自身の至らなさが辛いです」
「そんな事ないよ。舞さん、頑張ってたし! でも、最後くらい‥‥皆で揃いたかったね」
「ありがとうございます。皆さんは‥‥きっと、忙しいんですよ」
短いやり取りの後に、また沈黙が降りる。
そこへ、パンパンと手を打つ音が響いた。
「しんみりするのは早いよ〜! まだ『colorFull』は、終わってないんだから。お客さんも、きっと待ってるよ」
沈む空気を、新井久万莉(fa4768)は明るい笑顔で吹き飛ばす。
「俺も長いこと裏方稼業やってるんで、結成ライブや解散ライブも舞台脇で色々と見てきた。その中には、本人達の事情だったり、周りの都合だったりで今度みたいな活動休止ってのもあったが‥‥けどまあ、ふらりとすぐに活動を再開したり、逆に10年以上経ってから、再結なんて事もあるんだ」
久万莉に続き、犬神 一子(fa4044)が少女達の肩を励ますように叩いた。
「いつかまた、花開く日も来るさ」
「お〜い、ステージで音合わせしてぇんだが、いいか?」
「はい」
楽屋へ顔を出したジェンド(fa0971)に、少女達は席を立つ。
二人を先に送り出してから、彼は久万莉と犬神の腕を掴んで引き止めた。
「ちょっといいか? 内緒で、頼みがあるんだが」
●Rehearsal
「砂凪さん、舞さ〜ん!」
ステージで待つ甲斐・大地(fa3635)が手を振り、冬織(fa2993)は首を傾げた。
「ジェンド殿は?」
「あら? 私達を呼びにきて‥‥」
舞が振り返れば、少し遅れてジェンドが姿を見せる。
「お待たせっと」
軽い足取りで追い付くと、彼はエレキギターを提げた。
「後ろの席のお客さんまで、全部顔が見渡せそうだね」
ステージの中央で砂凪はしゃがみこんで客席を見上げ、彼女の傍らに舞が立つ。
「約300人、収容だそうです」
コンサートホールでのライブ。
それが二人の選択した『colorFull』休止前の、最後の活動だった。
客席脇や最後尾には、撮影用のカメラがセットされている。
−−当日、来る事が出来ないファンの為にも、録画映像をWeb上で公開してほしい。
そう、久万莉がアイベックスと交渉した結果だ。
「まず、音を確認してもらわねぇとな」
サポートのバックバンド・メンバーと確認を終えたジェンドが、軽く弦をストロークし。
「CDもPVもばっちりチェックしてきたから、結構自信あんだぜ」
親指を立てるジェンドに続き、大地が胸を張った。
「僕も、振り付けチェックしてきたよ。合わせてもらって、いいかな」
砂凪は舞と顔を見合わせると、勢いをつけて立ち上がる。
「全員では出来なかったけど、ユニットの皆の心は、曲の歌詞とかに籠もってるはずだよね。参加出来なかった『colorFull』メンバーの皆の分まで、皆と一緒に精一杯頑張らないと‥‥だから、やるからには全力投球。だね」
「はい。皆で力を合わせて頑張りましょう」
舞も気合を入れるように、ガッツポーズをして。
「「よろしくお願いします!」」
サポートするメンバーへ、二人は揃って一礼した。
「『いくつもの出逢いと別れをくり返し すれ違う哀しさにも慣れたフリをして』‥‥か」
リハに入ったステージを眺めつつ、久万莉が呟く。
「『星数のスタート』のPV、瞬だけロクに映ってないな」
『GOING MY ROAD』のPVに似せた、ステージ・セット。そこにセットされたモニターへ映す映像を確認していた犬神が首を傾げ、後ろから久万莉が覗き込んだ。
「そうなんですか?」
「最初と最後、メンバーが揃ってる所にしか入ってないだろう。他のメンバーは、個別にシーンがあるんだが」
「この時、舵のスケジュールが合わなかったようですが‥‥瞬もそうだったのかな?」
「さぁな」
念のために久万莉は資料を確認するが、それ以上は判らず。
「仕方ないですね。舵と瞬の分は、別の映像から拾いましょう」
●Last Live
急ぎ打たれた告知にも関わらず、小ホールは立ち見券が出てる程の混雑ぶりだった。
演奏の間にも、遅れて会場へ飛び込んでくる客が、ちらほらといる。
「今日は『colorFull』のライブに来て下さって、有り難うございます! 一緒に楽しみましょう!」
一曲目の『星数のスタート』を唄い終え、水色のバンダナを結んだ手を振って呼びかける舞に、ホールを埋める歓声が応える。
黒のパーカーにジーンズといったラフな服装のジェンドが、ギターを唸らせて次の開幕を告げる。
キーボードの前に立った冬織は、持ち前の音楽感で何とか演奏に呼吸を合わせ。
ステージの前面では舞と砂凪、そして大地が立ち位置を入れ替えながら動き。
「 Door For World Is Opened 」
それらが途切れた一瞬に、加工されたボイスが入る。
パンチの効いた『GOING MY ROAD』を、舞は冬織のコーラスで一人唄う。
『 さぁ、一緒に飛び出せ 必要なのは
羽ばたくチカラ 夢見るキモチ 』
セット中央部の大きなモニターや周囲のモニターには、この場にいないメンバーの姿が次々と流れ。
たった二人の『colorFull』を励ますようにファンが手拍子をし、声を揃えて唄い、リズムを取り。
後奏のカットアウトと同時に、パンッと銀色の紙吹雪がステージから舞い上がった。
わっとあがる声と紙吹雪の中、テンポを一転させたメロディが続く。
何度も唄ったフレーズを、ゆったりと舞が切り出した。
「 ゆっくり時々は急ぎ足で歩く
坂上れば見下ろす景色は小さくなっていく 」
三曲目は『夢をつないで』。
緩やかに始まる序盤から、軽快に曲はテンポアップして。
映像は、PV収録の様子やレコーディングでのスナップ写真の映像など、短い『colorFull』の歩みを映し出していく。
『 この世界に生きる 貴方 貴方
転んだりつまづいたりしながら
誰の後ろにも夢の足跡 』
歌に込めた、メンバーの思いの分まで届くようにと。
丁寧に舞は最後まで、唄い上げ。
曲が終わるのを惜しむように、拍手が会場に響き渡った。
●Period
三曲を終え、ライトがステージと客席と明るく照らし出す。
拍手が鳴り止むのを待って、静かに舞は口を開いた。
「私達『colorFull』ですが、残念ながら今日のライブをもって、ユニットとしての活動を一旦休止する事になりました。
たくさんの方に支えて頂いてここまで来られました、本当に有り難うございます。
メンバーやお手伝いして下さった方達、そして応援して下さったファンの皆様の事は、絶対に忘れません。本当に有り難うございました!」
「みんな、ありがとう!」
一礼する舞に続き、手を振る砂凪へとまた拍手が起きる。
「最後に、もう一度‥‥」
ゆっくりと最後のタイトルをコールしようとした舞だったが、彼女の肩をジェンドがぽんと軽く叩き、言葉を遮った。
「すまねぇ。その前に、少しだけ‥‥いいか?」
「ジェンド‥‥さん?」
舞はもとより、砂凪も大地も不思議そうな顔をする。
マイクを借り受けたジェンドは、一つ大きく深呼吸して。
「高原 瞬っ! おまえ、きてんだろ!?」
突然の呼びかけに客席はざわめき、誰もがきょろきょろと辺りを見回した。
「ちょっと‥‥ジェンドさん」
不安げな表情で、大地がジェンドの袖を引くが、彼はにっと自信ありげな笑みで答える。
そして動揺が会場を包む中、背を押されるように帽子を被った立ち見客の一人が、通路へ押し出された。
「あ、あの!?」
「変装しても、本職の目は誤魔化せないよ? 観念しなさい、瞬」
久万莉は悪戯っぽい笑顔で、見つけた相手の背をぐいぐいと押す。
それを見たジェンドはステージの縁に立ち、身を屈めて手を差し出した。
「こいよ」
その手を、久万莉に促されていた瞬が呆然と見上げ。
どうして−−と、声にならぬ問いを口にする。
「いいから、早く。一曲唄うくらいの時間、あるだろ?」
一瞬表情を歪めてから、瞬は彼の手を取った。
ステージへとよじ登った彼のもう片方の手へ、大地が手を差し伸べる。
「あ‥‥ありがと。それから‥‥」
二人に礼を告げた瞬は、言葉を失っている少女二人へ頭を下げた。
「‥‥ごめん。お願いできる立場じゃないのは、十分に承知している。だけど‥‥最後の一曲を、唄わせて下さい」
客もスタッフも、固唾を飲んで沈黙を見守り。
やがて僅かに舞が頷き、砂凪は大地が掴んだ手の上から瞬の手を握った。
それを待っていたように、舞台袖で様子を窺っていた犬神が中継器とヘッドセットを持って進み出る。
「ほら、付けてやる」
一方、仕掛けたジェンドは満足そうに久万莉と親指を立て、サインを交換した。
準備の間に、舞は改めて客席へと向き直る。
「お騒がせしました。そして最後にもう一度‥‥三人で『星数のスタート』を歌いたいと思います。宜しければ、皆様も一緒に歌って下さい」
割れんばかりの拍手が彼女の言葉に応え、客席のライトが消えていく。
待機していた冬織が、キーボードの鍵盤に指を落とした。
元のポジションに戻ったジェンドが、柔らかな電子音を奏で。
本来ならソロから入るパートに、舞と砂凪は一緒に入る。
『 いくつもの出逢いと別れをくり返し
すれ違う哀しさにも慣れたフリをして
失ってはじめて気付くと言うけれど
なくさぬように しがみつくので精一杯 』
いつもはダンス主体の砂凪も、舞と思いっきりメインを唄い。
そこへ、控えめに‥‥そして言葉を噛み締めるように、瞬の声が加わり。
手拍子をする大地も、唄いながらファンを促し、アピールする。
『 今も臆病な痛みがどこかに隠れている
シリアスになりきれず じゃれあっていた幼さは
強さを偽る誰の中にもあるのでしょう 』
そして、ジェンドの合図でバックの演奏が息を潜め。
『 笑うのも涙するのも ただ一生懸命に
願うのも託していくのも 愛すればこそ 』
ステージや客席を問わず、全員での大きな一つの合唱が、ホールに響く。
「最後、もういっか〜いっ!」と、大声で大地が立てた人差し指を振って。
半獣化した冬織は、その場で。ジェンドは砂凪に引っ張られて、四人と並んで。
『 笑うのも涙するのも ただ一生懸命に
願うのも託していくのも 愛すればこそ 』
朗々としたコーラスが消えると、拍手が沸きあがる。
「今日は、本当に有り難うございました! またいつか、お会い致しましょう!」
「みんな、またねー!」
「ありがとう!」
手を振る者達に、舞台袖に戻った久万莉は安堵の息をはいた。
「結局‥‥待ってたんじゃないのかな。お互いに」
「細かい事は判らんが、若い頃は意地の張り合いもあるもんだ」
腕組みをして、犬神も別れを惜しむステージを眺める。
「だけど‥‥終わり、なんですよね」
久万莉が視線を投げれば、アイベックスの担当者は重い口を開いた。
「そうですね。誰もが『要求される自分の仕事』は、上手くこなしましたが‥‥要求される以上となると、難しかったようです。
もしもジェンドさんや貴女の様に、彼らが彼らの『枠』を飛び越える事が出来れば、これほど早くユニットを終える事もなかったでしょうが」
畑違いの分野と、実力不足。価値観の違い。
積極的に馴染もうとしても溶け込めず、必要とされる実感もなく−−結果、抱えた不安に潰された瞬は離れる事を選択し、メンバーはそれに気付くのが遅すぎた。
「もし‥‥もう一度、とか言ったら‥‥」
言い辛そうに、久万莉が尋ねる。
「それだけの気概があれば、話は別ですよ‥‥『上』を目指すなら、自ら切り開く力がなくては」
そして仕事を終えた担当者は、ステージに背を向けた。
「正直、わしは不合格で感謝が本音じゃな。お陰で新たな道も開けた故」
喫煙場所で担当者を見つけ、帰り支度をした冬織が告げる。
「それは、よかったですね」
特に表情も変えず興味も示さず、淡々と答える担当者に彼女は辞去した。
●Start
「みんな、歌を覚えておいてくれるといいね」
「はい。きっと、大丈夫です」
楽屋に戻って一息つく大地に、舞が笑顔で答える。
「見にきてくれた子達、楽しそうでよかったな」
「うん!」
ジェンドの言葉に頷いた砂凪は、不意に思い出したように携帯を取り出した。
「どうした、メールか?」
「送る方。ラキアさんと舵さんと胡都さんと上総さんに、『短い間だけど一緒にお仕事できて楽しかったです。ありがとうございました!』って‥‥あ。瞬さん、メアド教えてっ!」
急に砂凪がテーブルへ身を乗り出し、反射的に瞬が身を引く。
「いいけど‥‥いつもマネージャーさんに預けてるから、送ってもすぐ見ないよ?」
「それでもいいよ!」
瞬が鞄から取り出した携帯電話のストラップを、急に舞が指差した。
「それ、上総さんのミサンガですよね」
「うん。常時は着けられないし、なくしちゃいけないと思って」
メアドを入力した砂凪は、明るい表情で画面から顔を上げる。
「さなぎ、『colorFull』での経験を活かして、もっと成長出来るように努力するね」
「俺も‥‥応援してるよ」
前を見る少女の表情に、瞬は眩しそうに目を細めた。