【NiA】Scene Music!アジア・オセアニア
種類 |
ショート
|
担当 |
風華弓弦
|
芸能 |
3Lv以上
|
獣人 |
3Lv以上
|
難度 |
普通
|
報酬 |
6.6万円
|
参加人数 |
8人
|
サポート |
0人
|
期間 |
11/27〜11/29
|
●本文
●今度は『技』で勝負です
この秋の芸能大会は、『AoS』や『PFS』とは一味違う。
俳優ならば、ドラマなどの演技力で。
ミュージシャンならば、その歌唱力や演奏で。
芸人ならば、見ていた観客の採点で。
格闘家ならば、格闘技での勝敗で。
それぞれの得意分野や専門分野で、芸能人達が技を競い合うのだ。
●Scene Music
「そんな訳で、こちらの『競技』は一般の素人さんを相手にした、ある意味では音楽モノで、ある意味ではビックリ系な企画です」
TOMI−TVのディレクターの説明に、マルチタレントの高原 瞬(たかはら・しゅん)は珍妙な表情を浮かべた。
「ビックリ系‥‥なんだね」
「期限は、朝の10時から夜の10時まで。例えば待ち合わせとか、ショッピング中とか、公園で遊ぶひと時とか。そんな町で見かけるよくある『シーン』に、その場で『音楽をつける』んです」
「怒られないのかな、それ」
ゲリラ・ライブと似たようなものじゃないかと尋ねる瞬に、ディレクターは胸を張り。
「スタッフも同行しますし、そこら辺は警察の方にもちゃんと許可を取っておきますから」
「許可、ね」
そんなアバウトな許可が取れるのか‥‥いささか心配ではあるが、撮影側が大丈夫だというのなら、大丈夫なのだろう。多分。それに、今回もまた大掛かりな芸能イベントとなっているのだから、WEAからも手を回してくれるのかもしれない。
「形は、皆でマイクロバスで移動して、ターゲットを見つけたら『競技者』が車から降りて、BGMを仕掛けることになります」
「で‥‥俺は、何を? 出て行ったら、騒ぎになっちゃいそうだけど」
「ええ。なので、車に控えていてもらって『競技』が終わった時に、ネタばらし役をお願いしようかと」
「それで、採点はしないんだよね」
「ええ。最終的に、素人さんの反応が採点対象ですので」
ふむと考え込みつつ、瞬は手にした企画書へ視線を落とした。
なお、紅白の組分けは、「奇数月生まれ=赤組」「偶数月生まれ=白組」となる。
チーム(バンド)を組む場合は同じ組でなければならない為、注意が必要である。
●リプレイ本文
●思わぬ緊急事態
収録前の打ち合わせの場に、番組ディレクターの叫び声が響き渡った。
「えぇ!? それじゃあ、NiAは中止に!?」
素っ頓狂な声に、収録のために集まった出演者やスタッフの注目が集まる。
「判りました。はい、収録の方は。はい!」
ぺこぺこ頭を下げて話を終えると、番組ディレクターは携帯を切った。
「あの、今の電話‥‥」
不安そうに橘川 円(fa4980)が尋ね、集まった全員の視線がディレクターに注がれていた。
「プロデューサーからでした。例の華清池ですよ‥‥NWが現れたって大騒ぎになったアレ。どうにも、イベントどころではなくなったそうで」
「じゃあ、もしかしてNiAは中止っ? 中止になるのかなっ!?」
「ちょっ‥‥のもじさん、待ぁぁぁがが‥‥っ」
詰め寄った阿野次 のもじ(fa3092)はディレクターの襟元を掴み、ブンブンと左右に振って詰問し。
「緩めてあげないと、昇天するよ‥‥ディレクター」
「だいじょ〜ぶですか〜?」
見かねてスモーキー巻(fa3211)が間に入り、アリエラ(fa3867)はノビたディレクターを突付いてみるが、動かない。
「あ〜あ。オトしちまったら、いよいよ番組ヤバいんじゃねぇか?」
大きく脚を組んで座るTyrantess(fa3596)が、椅子を揺らしながらカラカラと笑った。
彼女の指摘に、のもじはハッと我に返り。
「あぁぁ、そうだったよ〜っ! 起きて起きて、起きろ〜っ!」
掴んだままの襟を、今度は前後へシェイクする。
「それ、逆効果じゃないかしら」
「聞こえてねぇな」
止める蓮 圭都(fa3861)の声も届かず、苦笑する珂鴇大河(fa4406)はのもじの肩を叩く。
「その辺にしとけ。生き返らなくなっちまうぞ」
猫耳を伏せたのもじは上目遣いで大河を見上げ、ディレクターは泡を吹いていた。
「とりあえず、蘇生してくるね」
半死半生のディレクターを、高原 瞬がホワイトボードの陰へと引き摺っていき、待つこと数分。
「お騒がせ‥‥しました」
よろよろと、何とか再起したディレクターが現れた。
「それで、番組はどうなるんだ」
それまで我関せずだった笙(fa4559)が、何事も無かったように聞く。
「あ、はい。NiA自体は規模を縮小し、当初の競技形式は難しくなりましたが‥‥収録自体は、中止しません。むしろ、続行して欲しいとの話で」
ブン回された後遺症か、左右にヘレヘレと揺れながら説明するディレクター。
「予定通り赤白形式で進めますが、『勝者』は番組単独で認定します。どうか皆さん、当日はよろしくお願い‥‥」
頭を下げたディレクターは、そのままガンッと会議机に激突し‥‥動かなくなった。
●それでも収録は続く
収録当日は、秋空晴れ渡る絶好の日和となった。
「それでは、開始前に皆さんに『Scene Music!』のルールを説明するよ」
視聴者への前説も兼ねて、瞬が段取りを手短に説明する。
街角の風景にあわせたBGMを、その場で生演奏。
そして、BGMへの反応がそのまま点数となる。
ウケがいいほど高得点となり、もっとも好評だったBGMが優勝−−という訳だ。
「それでは、各選手を紹介しましょう。まずは赤組。いっちゃんこと、阿野次のもじさん!」
「恋人達に揺り籠を! 夫婦愛に花束を! そして生まれ来る場所に炸裂せよ、恋のせつなさみだれ撃ち! 赤い糸きりいっちゃんの名にかけて、街行く人に素敵な曲プレゼントするよ〜!」
瞬のフリに、のもじが『いい笑顔』をカメラに向ける。
「赤い糸、切らないようにね。二組目は、Tyrantessさんと橘川 円さんのコンビです!」
「ちょっと変わったオーディエンスを、ターゲットにしてみたわ」
「後は、聞いてのお楽しみってヤツだ。優勝は、譲らねぇからな」
落ち着いた笑みの円に、Tyrantessはいつもの過激な『エロカッコイイ』路線ではなく、大人しめの衣装をチョイスしている。とはいえ、ミニスカと黒ニーソで作り出す『絶対領域』なんかは、しっかり演出していたりするが。
「三組目は、アリエラさんと笙さんのお二人!」
「は〜い! 私達も、ノリのいい『お客さん』を選んだからね。負けないから!」
「俺達は後半に勝負をかける‥‥ので、前半はアリエラさんとの交流に勤しむ予定だ」
意欲満々で手を振るアリエラに対し、淡々と笙が繋げる。
「アリエラさん、襲われそうになったら逃げてね! では、四組目。蓮 圭都さんと珂鴇大河さんは、ユニット『朧月読』から参戦!」
「ターゲットさん達にも楽しんでもらえるよう、頑張るわ。ね、大河さん」
「ああ。張り切って、しっかりと圭についていくぜ!」
にこやかな圭都に、握り拳の大河はいつになく気合十分だった。
「そして五組目。白組からは、ただ一人のチャレンジャーになる、スモーキー巻さん!」
「まさか、こういう事になるとは思わなかったよ。でも、逆境に負けず勝負させてもらうからね」
最後に紹介された巻が、人当たりのいい笑顔で答える。
「今回は特別ルールとして、スモーキーさんのサポートにはTyrantessさん、円さん、笙さん、アリエラさんの四名がサポートに入ります」
名前を呼ばれた一人一人を、再度カメラが捕らえた。
「さて、バスは既にお台場から都心部へと入ってきました。時刻は間もなく10時。そして、12時間後の夜10時がタイムリミットになっています」
瞬が持つ、大き目の時計が映され。
「よーい、スタート!」
10時になると同時にピーッとホイッスルが吹かれ、『競技』が始まった。
●前哨戦
この日は、折りしも平日。競技開始直後から午前中にかけて、街を歩く人々はビジネスマンが多く。互いの出方を伺っているかのように、選手達は動かない。
ビジネス街から観光客の多いエリアへと差し掛かれば、沈黙を破って最初に動いたのは、のもじだった。
「幸せ臭漂うカップル発見。止めて下さいっ!」
元気よく挙手し、ロケバスが止まると同時にアコースティックギターを抱えて、外へ飛び出す。
カメラやラフ板、マイク持ちが慌てて後を追いかければ、彼女は一組のカップルをピッタリと追尾し。
ギターの弦を、じゃら〜んと響かせた。
そこから軽快に刻むストロークをメインにして、リズミカルに歌を加える。
「 ふわふわ☆ドキドキKISSKISS
二人で一つ 素敵な夢を追いかけて踊りだす♪
今日は二人のハッピディズ
手を繋いだまま一緒に このまま明日へ踏み出そう♪ 」
突然始まった演奏と周囲の反応に、ターゲットとされたカップルは何事かと驚いてから、のもじとカメラに気付いて状況を把握したらしい。
足を止め、互いに顔を見合わせて、「これ、テレビ?」などと言い合っている。
「は〜い、気にせずとっとと、お買い物を続けてね〜」
聞き入られては『シーン』にならないので、演奏の合間にショッピングの続行を要求するのもじ。
戸惑い、笑い、注目を浴びて照れながらも、カップルは『二人の世界』へ回帰した。
曲が終わって一礼すると、のもじはダッシュでバスへと戻り、瞬が番組である事を明かして感想をインタビューする。
「もうびっくりしたけど、面白かったですっ。ね!」
賑やかに腕を引く女性に、同意する男性。
滑り出しは、概ね好評のようだった。
●激戦区
昼を過ぎ、行き来する人の種類が増えてくると各チームの『狙い目』も増えてくる。
人通りの多い駅前の広場には、ギターを中心としたメロディが広がっていた。
『午後の駅前』に狙いを定めた巻が、四人のサポートを受けながら自身もギターを奏でる。
緩やかなテンポから、電車がやってくる前には急ぐ人々の背を押すように、パートの一人がやや足早でスピーディに奏で。
また、電車から降りて街へ散っていく人々を送る時にも、別の旋律がテンポを上げる。
しかし、ベースとなるメロディは緩やかなままで、人通りが落ち着くと静かに曲は締めくくられる。
ある意味で大局的な流れを切り取った巻の演奏の『審査員』は、その場で待ち合わせをしていた人々。
「なんか、やけに上手いストリート・ミュージシャンがやってるなーって思ってたけど‥‥え? 違う?」
「待ち合わせの間に、退屈しなくていいかも」
反応は様々であったが、街の流れに溶け込んだ音楽だったようだ。
「これから音楽で盛り上げるわ、早く逃げないと捕まっちゃうわよ!」
ジャングルジムの前で宣言する円に、上に登ったTyrantessがハイテンポなアルペジオでギターを掻き鳴らす。
高らかにトランペットが響くと、好奇の瞳で待ち構えていた子供達はわっと蜘蛛の子を散らすように公園へ散った。
その後を追って、鬼ごっこの鬼が駆け出す。
曲調は運動会で流れる曲をイメージした、明るく軽快なアレグロで。
鬼の動向をTyrantessのギターが追いかけ、急降下して急上昇する円のトランペットは逃げる子供達。
ギターとトランペットの音自体も、短いフレーズを展開して追いかけっこのように接戦しながら、子供達の小さな『戦い』を盛り上げる。
「がんばれー!」
「にげろー!」
一人二人と捕まった子供は、ジャングルジムによじ登って鬼や掴まっていない子供を応援し、あるいは興味深げに二人の演奏を眺めている。
やがて追いかけっこも終盤に差し掛かれば、逃げる子供と追う子供の『一騎打ち』となり。
最後のタッチで盛り上がって、『tag』はフィニッシュを迎えた。
そして、肝心の結果は‥‥。
「もうおわり?」
「おねーちゃんたち、もーいっかいー!」
「もっかーい!」
『アンコール』をねだる子供達に、改めて感想を聞く必要はないだろう。
やがて通りや駅前に、学校帰りの学生達が増えてくる。
「あ、ごめん。ちょっとメール」
お喋りをしながら歩いていた女子学生の一人が、着信音に携帯を取り出した。
と同時に、背後からいきなり金管の力強い音が、ブォンっと吹き鳴らされる。
「え!?」
「な、なに?」
驚いて振り返った少女達の前には、サクソフォーンを吹く大河と、彼の隣でにっこりと微笑む圭都がいた。
「お邪魔でなかったら、そのまま携帯、続けて?」
「‥‥はぁ」
気の抜けた返事をしながらも、携帯を手にした少女が再び操作を始める。
それに合わせて、圭都もギターを弾く。
軽いテンポのメロディを聞きながら、女子学生はメールに目を通し。
それから、返信のボタンを押す。
その軽快なボタン音に合わせて、演奏がテンポアップして。
「 one push GAME one push MUSIC
one push SCHEDULE one push ADD
one push ‥‥FRIENDS? YEAH! 」
携帯操作の一挙一動に、ギターとサックスで掛け合う二人の意図を察したか。
ボタン操作をする少女や周りの友達が、くすくすと笑う。
その弾みで打ち間違えた様子も、サックスがガクッとテンポと音を外して表現し。
そんな演奏の様子に、また笑い声がおきた。
「 one push GAME one push MUSIC
one push SCHEDULE one push ADD
one push ‥‥FRIENDS? YEAH! 」
メールを打ち終え、送信ボタンにサックスの一音、オチをつけるように鳴って。
『ONE PUSH』を演奏し終えた圭都と大河が一緒にお辞儀をすれば、少女達は笑顔と拍手でそれに応えた。
「女子高生って謎の生き物だよな‥‥高校時代、女子というものは謎だったが、今もそうだ‥‥」
去っていく少女達に手を振る圭都の表情に、大河はふと物思う。
(「ん、まてよ? 圭にも女子高生時代ってあったんだよな。セーラー服、ブレザー‥‥何でも似合いそうだな‥‥」)
「大河さん、どうかした?」
悶々とした彼の思考を、圭都の声が遮った。
「い、いや、なんでもねぇよっ」
誤魔化しつつ、大河はロケバスへと戻る。
●最終局面
陽も落ちて電飾輝く飲み屋街に、明るい手拍子が響く。
どこか滑稽な悲哀に満ちたギターと三味線を、ほろ酔いの中年男性達が囃していた。
「 5時から男と呼ばないで 既に陽も落ち今何時?
上から下から板ばさみ 毎日頑張り胃も痛い 」
『 だから行くのさ いつものとこへ
同士とつるんで いつものとこへ 』
愛嬌を振りまきつつメインを唄うアリエラに、笙が三味線とコーラスで合わせ。
「 小遣い少なく厳しいけれど 息抜き必要 そうでしょう?
縮んだ背中しゃんとして 足取り軽く鼻歌まじり 」
『 そうさ行こうよ いつものとこへ
遅れても待つよ いつものとこで 』
「あまり遅いと家族が怖い〜」と、笙がほろりと嘆きを入れて。
『 だから程ほど いつものとこで
明日の糧に いつものとこで 乾杯! 』
ジャカジャカと弦を鳴らして、アリエラが中年男達を煽る。
「最後、ご一緒に♪ せーの!」
『 いつものとこで 乾杯! 』
かなり音の外れた野太い声が、多数混じる。
時代外れの「流し」と勘違いされたのか、二人は中々解放されなかった。
最後まで、勝負を諦めない−−と。
夜更けのホテル街で果敢に攻めに出るのもじを、必死に瞬が引き止めていた。
「あ。カップル発見〜!」
「待って、それは番組的にも不味いからっ。ストーップものじさん!」
「ええい。止めてくれるな〜、瞬さんっ。ここで引けば、乙女がすた‥‥って、ドコ触ってんのよーっ!」
鈍い打撲音が、夜空に響き。
そして、競技終了のタイマーが鳴った。
「さて、今回のScene Music! いかがだったでしょうか。日常の一コマに溢れる音楽、貴方も体感してくれたかな? それではSee you again!」
クリティカルヒットを喰らってノビてる瞬を尻目に、マイクをもぎ取ったのもじが、何事もなかった笑顔で締め括る。
そして肝心の優勝は、大いに子供ウケした円&Tyrantess組となった。