Limelight:新春早々アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 風華弓弦
芸能 3Lv以上
獣人 2Lv以上
難度 普通
報酬 なし
参加人数 10人
サポート 0人
期間 01/03〜01/05

●本文

●正月を過ごす場所
「去年はカウントダウン・パーティだったが、今年は無理だよなぁ」
 床にモップがけをしながら、『Limelight』オーナー佐伯 炎(さえき・えん)が呟いた。
 年末の大型イベント『WSA』もあり、佐伯や友人の音楽プロデューサー川沢一二三(かわさわ・ひふみ)も何かと慌しく、去年のようにのんびりと‥‥という訳にもいかないらしい。
 掃除をする友人を眺めていた川沢も、苦笑しながらコーヒーカップを傾けた。
「なかなか、大掃除すらままならない状態だしね。正月くらいはゆっくりと過ごせればいいんだけど」
「ああ‥‥その話だが」
 背を伸ばした佐伯は、腰を叩いてモップへ寄りかかる。
「折角だから、お前んちでのんびりしねぇ?」
「‥‥っ、げふげふっ」
 飲みかけた珈琲にむせる川沢の様子を、面白そうに佐伯は見物し。
「‥‥さも、当然のように言うんだね」
 ようやく、ダメージから立ち直った川沢が嘆息した。
「そりゃあ、なぁ。ここでやるには、ちっと雑魚寝とかきついし」
「雑魚寝が前提なのか‥‥」
 眉間をおさえる友人へ、佐伯がからからと笑う。
「大した『もてなし』もできないが、いいのか?」
「ああ。餅と御節の用意ぐらいはコッチからしていってやるから、安心しとけ」
 そして、佐伯は楽しげにモップがけの作業へと戻った。

●今回の参加者

 fa0441 篠田裕貴(29歳・♂・竜)
 fa1359 星野・巽(23歳・♂・竜)
 fa1376 ラシア・エルミナール(17歳・♀・蝙蝠)
 fa1851 紗綾(18歳・♀・兎)
 fa2122 月見里 神楽(12歳・♀・猫)
 fa2172 駒沢ロビン(23歳・♂・小鳥)
 fa2521 明星静香(21歳・♀・蝙蝠)
 fa2726 悠奈(18歳・♀・竜)
 fa3487 ラリー・タウンゼント(28歳・♂・一角獣)
 fa4790 (18歳・♂・小鳥)

●リプレイ本文

●『Limelight』集合
 年始休業中の『Limelight』は、賑やかだった。
「うわ〜、お酒がいっぱ〜いっ。あのグラス可愛い〜!」
「手伝いに来たのか、遊びに来たのか、ドッチだよ」
 店内を見物する紗綾(fa1851)がはしゃぎ、ラシア・エルミナール(fa1376)は苦笑交じりの笑顔で頭を振る。
「その気持ち、判りますよ。落ち着いた雰囲気で、いいですよね」
 フォローする駒沢ロビン(fa2172)は初めて店の『裏側』へ足を踏み入れた為か、やや緊張気味だ。
「だよね。炎さん、ピアノ弾いていい?」
「構わんぞ」
 佐伯 炎から許可が出れば「やったーっ」と諸手を挙げ、紗綾はステージへと駆け寄る。そんな紗綾の様子に、月見里 神楽(fa2122)も佐伯をじーっと見上げた。
「ドラム、叩いてもいいです?」
「揃って弾き始めか? ま、久し振りだしな」
 佐伯が頷くのを確認した神楽は、紗綾の後を追いかける。
「いいなぁ」
 無邪気に即興演奏を始める二人を眺めて、羨ましそうに慧(fa4790)が呟き。
「ね。一緒に唄わない?」
 青い瞳で、悠奈(fa2726)が下から慧の表情を窺った。
「でも、料理の手伝いは?」
「お兄ちゃん、厨房から追い出すんだもん。きっと、クリスマスで一緒じゃなかったから、拗ねてるんだよ。大人げないよね」
 ぷっと頬を膨らませる妹の声を聞きつけて、厨房から星野・巽(fa1359)が顔を出す。
「悠奈が料理をすると、後がいろいろ大変だろ‥‥それに、拗ねてないからね?」
 困惑顔な兄の釈明に、慧はくすくす笑い。
「じゃあ、唄える曲弾くね〜」
 紗綾がメロディを変え、悠奈はマラカス片手にリズムを取る慧と、声を合わせる。
「僕も何か‥‥持ってくればよかったですね」
「それなら、連弾しようよ」
 残念そうなロビンを紗綾が誘い、彼は困った風に背後の佐伯を振り返った。
「ああ、初見だからって気兼ね無用な。料理の方は、腕のいいのが揃ってるから」
「え? 佐伯さん、褒めてくれてる?」
「『揃ってる』って事は、私も含まれているのかしら」
 篠田裕貴(fa0441)が顔を覗かせ、明星静香(fa2521)も彼の後ろから期待の眼差しを向けた。
 そんな二人へ、「お前ら、手元狂うぞ」と笑いながら佐伯は手を振る。
「そうそう。人を引っ張り込んで、俺より下手な出来だったら、炎に格下げしてもらうから」
 従兄をからかいながら、ラリー・タウンゼント(fa3487)は料理の出来具合を確認し。
 楽しげな歌と演奏が響くフロアに、美味しそうな香りが加わった。

『準備』が整った者達は、佐伯のワゴンや各自の愛車に分乗し、川沢一二三のマンションへと移動した。

●正月本番
「明けまして、おめでとうございます」
「お久し振りです。今年もよろしくお願いしま〜すっ」
 口々に、新年の挨拶が交わされる中。
「Bliain nua fe mhaise dhuit!」
「じゃああたしは、Bonne annee」
 ラリーとラシアが、それぞれの血を引く国の言葉で新年の挨拶を述べた。
「お二人は‥‥何語?」
「宇宙語」
 小首を傾げる神楽にしれっと答える佐伯を、ラシアが横目で見やる。
「あたしら、宇宙人かい」
「佐伯はサッパリだからね、外国語」
 面白そうに笑う川沢へ、慧は笑顔で南天を差し出す。
「これ、お土産。玄関先にでも飾ってね」
「ありがとう。ぜひ、飾らせてもらうよ」
 川沢は恭しく赤い実のなった枝を受け取り、一行はリビングへと通された。

「それじゃ、キッチンを借りて料理の『仕上げ』をするね」
 早速、裕貴らがリビングと一間続きのキッチンを占拠する。
「なんだか、随分といろいろ作ってきたんだね」
「うん。パレヤダ(パエリヤ)にエスカリバーダ(カタルーニャ風焼き野菜)、サルスエラ(魚貝のトマト煮)にブニュエロス・デ・バカラオ(鱈のすり身のフライ)。大人数で食べられる料理がいいと思ってね。デザートのクレマ・カタラナ(クレームブリュレに似た菓子)は、持ち帰りもできるようにしておいたから」
「名前を聞いただけだと、どんな料理か予想つかないね」
 考え込む神楽の目の前に、ひらひらと白いファーが振られ。
「う、うぅ〜?」
 むずむずと飛び掛りたくなる猫の衝動を抑えつつ少女が視線を上げれば、悠奈がファーのマフラーで神楽を「釣ろう」としていた。
「こら、悠奈。神楽さんで遊ばない‥‥え〜と、俺はおせちを持って来ました。元旦まで仕事だったので、急ごしらえですけど」
 妹を注意しながら、巽は重箱を川沢に差し出す。
「後で、抹茶汁粉も作りますので」
「抹茶汁粉!」
 興味深げに部屋の楽器や機器類を眺めていた紗綾が、目を輝かせた。
「俺は子羊のローストのハーブ風味と、アイリッシュシチュー。それから、糖蜜のタルトを作ってきたよ。それから、こっちはラシアの荷物?」
 ラリーがバイクに積むには不安定だった荷物を、ラシアへ返す。
「ありがと。中は、塩味のケーキなんだけどね。あと、あたし生まれは新年料理とか無いんで、家庭料理のギャルビール(豆や肉の入ったスープ)を作ろうと思ってね」
「私は煮梅と栗羊羹、それから甘い物以外のアクセントに歌舞伎揚げを持ってきたわ。それから奮発して、大吟醸も」
 静香がウィンクをして一升瓶を掲げれば、ロビンも重そうな紙袋を取り出した。
「僕も、お土産代わりに日本酒を持ってきたんですけど‥‥多かったかな?」
「佐伯はザルだから、大丈夫だよ。ありがとう」
 笑いながら礼を言う川沢に、佐伯は知らぬ顔を決め込み。
「でも、欧州本場の料理なんて‥‥懐かしいですね。僕はそっちの出身なので」
「そうなんだ。確かに、国際色豊かな正月になったねぇ」
 嬉しそうなロビンに、ラシアがしみじみと顔ぶれを見回して。
 和やかに、宴の準備が始まった。

「では、ありきたりだけど。今年一年、皆さんの益々のご活躍と健康を祈って。乾杯」
 川沢が音頭を取ってグラスを掲げれば、ジュースや酒を手にした乾杯の声が唱和する。
 巽が持参したおせちはオーソドックスな金団や田作り、ローストビーフなどが丁寧に詰められ、欧州料理とテーブルを華やかに飾っていた。
「いろいろ沢山で、美味しい〜!」
「こっちの料理、取り分けようか」
 賑やかに皿と箸がテーブルを行き交い、美味い料理に会話も弾む。
「慧さん。元旦までお仕事、お疲れ様でした。一献、どうです?」
「あ。ありがとう、巽さん」
 ドラマで共演した巽に勧められ、慧はグラスを傾ける。
「美女でなくて、すみませんが」
「いえ。『美女』でなくても、『美人』だし」
 そんな会話をしながら、巽は控えめに冷酒を注ぐ。
「川沢さん、佐伯さん。折角だしお祝いのエプロン、着てよ」
 酒で僅かに頬を朱に染めた静香が、二人へ要求した。
「残念だが、アレは店に置いて‥‥」
「これですよね?」
 回避しようとする佐伯にえへ〜っと笑い、紗綾がフリルの付いた二着のエプロンを取り出す。
「お店探検中に見つけて、忘れてると思って持ってきたの〜」
「紗綾、よくやった」
 ラシアがビッと親指を立て、慧がうんうんと頷く。
「じゃあ、こうしない? 双六を持ってきたから、負けた人は罰ゲームで何か一曲か一芸披露する。二人の場合は、エプロンを着る‥‥と」
「双六って小学生以来かも。うわ、凄いノスタルジック‥‥」
 慧が取り出す双六を、感慨深げにロビンが眺めて。
「いいわね」
「賛成〜!」
 当の二人に拒否する隙も与えず静香や紗綾達が次々と賛同し、トントン拍子で話は進んだ。

「何が哀しゅうて、38にもなってサイコロ振らなきゃならんのだ」
 嘆息しつつ、佐伯がサイコロを振る。
「そういえば、佐伯さんの誕生パーティはしたんですか?」
 神楽が問えば、佐伯は「いいや」と首を振った。
「丁度、店の一周年と時期が重なったからな」
「じゃあ、剣山ケーキはまだなんですね」
「ナニ嬉しそうに言うかね。このちっこいのは」
 佐伯からがしがしと乱暴に頭を撫でられ、神楽は思わず首を竦める。
「だって、見れなくて残念だと思ってたし‥‥」
「そういえば、神楽さんも12月だっけ。二人で足して、54本差しするかい?」
 笑いながら、川沢が次のサイコロを振る。
「また、凄い数だね‥‥あ。川沢さん、一回休み」
 代わりに駒を進めた裕貴が、盤の目を告げた。
「次、いっきまーすっ!」
「どー見ても、圧倒的不利だと思うんだがなぁ」
 嬉々としてサイコロを投じる紗綾を見ながら、佐伯は禁煙煙草を咥えて。
 やや真剣風味の勝負の結果、神楽が一番でゴールへ辿り着いた。

「はい。二人とも、笑って〜」
 慧が楽しそうにデジカメを構え、『被写体』へ指示を飛ばす。
「お前、ナンでそんな嬉しそうなんだ‥‥つーかそこ、携帯カメラ禁止っ」
『最後の足掻き』を佐伯が試みつつ、40と38の男二人は一周年ライブ参加者のサインが入ったフリフリのエプロンを着て、ファインダーに収まる事となった。
「その代わり‥‥と言うのも何だけど、皆にもイイモノを用意してあるからね」
 笑顔で告げる川沢に危機を察知したか、紗綾がラシアの後ろへ隠れて。
「イイモノ?」
 不思議そうにラリーが首を傾げていると、『罰ゲーム』から開放された川沢は大きな袋を持ってきた。
「全員分、あるから」
「これ‥‥」
 眼を瞬かせたラリーが広げれば、それは胸元に可愛らしい白ヤギのアップリケがついた白いパジャマで。シニカルな黒ヤギのアップリケの黒いパジャマを手にした裕貴は、激しい脱力感に襲われる。
「可愛い〜!」
 その一方で、神楽や悠奈は無邪気に喜び。
「お前‥‥そういう『報復』は、アリなのか?」
 友人の『本性』を知る佐伯は、目眩を覚えた。

「明星、『泥酔しながらテルミンを演奏する人』をやるわ」
 程よく酒の回った静香が、しゅたっと手を挙げた。
 何もない空間でつまむ様に手を伸ばし、それを動かす。時折、無意味に手が小刻みに震えたり、ありえないほどフラフラ揺れたりして。
「テルミンっつーより、酔っ払った麻雀打ちになってるぞ」
 佐伯が突っ込み、悠奈がころころと笑う。
「え〜と、罰ゲーム‥‥デザートのデザートに、ラクレットを作りま〜す」
「それって、罰ゲーム?」
 ふらふらと席を立つ紗綾を、心配そうにラシアが見送る。
「じゃあ、ラクレットが出来るまでの間、一曲即興でやります」
 マスコット・キャラクターのついた玩具のキーボードをロビンが取り出し、軽い鍵盤に指を走らせる。
「なら、僕はそれに合わせてマラカス・マイクで唄うね」
 後に続く慧を、巽が視線で追い。
「何で、マラカスなんです?」
「うん。この前の仕事で貰ったから!」
 嬉しそうな慧に、ラシアが髪をかき上げる。
「あたしは、ハーモニカでサポートしようかね」
「俺は空手演舞でも披露しようかと思ったけど‥‥場所が狭いし、ギターでも」
 裕貴もまた、最近愛用しているサン・ライトを取り出して。
 瞬く間に即興ユニットが出来上がり、楽しげな歌と演奏に悠奈も立ち上がる。
「うみゃ♪ それなら私は、踊っちゃいま〜す♪」
「え‥‥悠奈!?」
 へろへろと怪しげな踊りを踊り始めた妹に、巽は急いで彼女のグラスを確認し。
「ああ‥‥飲んじゃ駄目だって、言ったのに‥‥」
『お兄ちゃん』は、頭痛を覚える。
「あーっ、あたしも唄って踊りた〜い! アツッ」
「余所見してると、火傷するよ」
 紗綾の様子に、苦笑しながら川沢が手伝いに行き。
「じゃあ、俺は皆の演奏が終わったら、ピアノでリストの超絶技巧練習曲でも。指が鈍ってるかもしれないけど‥‥」
 握ったり開いたりする手を、ラリーはじっと見つめた。
「うう‥‥楽しいお正月を過ごせて、俺は幸せだぁー!」
 酔って泣き上戸になったのか、涙を拭きつつロビンが主張して。
 賑やかな宴は、やがて騒ぎ疲れた者から、客間や寝室に用意された寝床へ『搬送』された。

●皆揃って
 翌朝。遅くに起きた者達は、巽の作った雑煮で朝食をとる。
 その途中で、佐伯がまた大きな紙袋を持ってリビングへ現れた。
「さて。お年玉をくれてやるから、有難く受け取れ」
 去年同様、全く有難みのない佐伯の言葉に、神楽はくすくす笑う。
 川沢と佐伯が見繕ったという『お年玉』の中身は、ある者はコートやドレス、ある者は装身具の類、ある者はヌイグルミで。
「で。飯喰ったら、皆で初詣な」
「ホント? 神楽、ばっちり着物も持って来たよ」
「あ、あたしも〜。着付けっ子しようね」
 笑顔の神楽に、紗綾も手を挙げた。
「後で、お兄さん達に独楽回しのやり方とか、教えてほしいな。あ、そうえば海外のお正月って、どんなの?」
「欧州だと、クリスマスを家族と静かに過ごして、新年は友達と賑やかにパーティですね」
 興味津々な神楽の質問に、箸を進めながらロビンが答える。
 その間に「ご馳走様」と手を合わせた慧は、用意を終えて寛ぐ川沢と佐伯の前で居住まいを正した。
「どうした、改まって」
「うん。年の初めだし、ちゃんと挨拶をしようと思って。
 去年もお世話になったけど、今年もたくさんお世話になります。僕はまだまだ未熟だけど、実力も認知度も兼ね備えたボーカリストになりたいと思ってるので、改めて、よろしくお願いします。見守ってやって下さい」
 そして慧は深々と、頭を下げた。

「久し振りに会うとつくづく思うんだけど‥‥炎って見上げないといけないから、視線がものすごーく新鮮なんだよね」
 羽織袴の佐伯を、ラリーがじっと見上げる。
「新鮮味はあっても、可愛げがないけどね」
「うるせぇ。行くぞ」
 玄関に鍵をかけながら茶化す川沢に、佐伯は苦笑しながら先に行く。

 初詣に繰り出した者達はお揃いの絵馬を購入し、新しい一年が幸多くあるよう、それぞれ祈った。

●ピンナップ


ラリー・タウンゼント(fa3487
PCツインピンナップ
桜依 綾