氷雪上のスピード狂想曲ヨーロッパ
種類 |
ショート
|
担当 |
風華弓弦
|
芸能 |
6Lv以上
|
獣人 |
フリー
|
難度 |
やや難
|
報酬 |
33.2万円
|
参加人数 |
8人
|
サポート |
0人
|
期間 |
02/05〜02/08
|
●本文
●北極圏を走れ!
アークティック・ラリーは、世界に数あるラリーの中でもっとも極寒で行われる過酷なラリーである。
フィンランドのロヴァニエミから、東のケミルヤヴィに至るコースは、二日間で約2000km。
氷点下20度という気温の中、スピードとテクニックを競いながら、雪煙を上げて数十台のラリーカーが疾走する−−。
本来の公式ラリーには、国際ライセンスがなければ参加できない。
しかし各自動車メーカーの協賛で、芸能人達による特別な非公式のラリーが開催される事となった。
日程は、本来のアークティック・ラリーと同じく二日間。コースは変更されて走行距離が2/3に減っているものの、環境の過酷さに変わりはない。
優勝したチームのドライバーには、賞品として丸菱自動車からRVミニバン「デリカッセンSM」を。コ・ドライバーには、賞金60万円が贈呈される。
●参加手順
1)ドライバーとナビゲーターで、二人一組を作る。
2)使用する車を決め、チューニングポイントを耐久・加速・減速・旋回に割り振る。
例)車:ハウンド/耐久:50、加速能力:1、減速能力:−1、旋回能力:2
3)タイヤをセレクトする。
4)ラリー中の注意点など、ポイントをまとめる。
●参加について
ドライバーは、性別不問。年齢21歳以上を推奨。
コ・ドライバー(ナビゲーター)は、年齢性別ともに参加制限なし。役割は、ペースノートを元にドライバーへ道順や速度などの注意点を伝え、運転をサポートする。
●車について
次の用意された車種より一台を選択し、チューニングを行う(CP=チューニングポイント)。
チューニングは第一日目スタート時に決定され、以後はセッティングを変更できない。
なお、車種の重複は可とする。耐久力は、車体のタフさ。加速能力と減速能力は、それぞれ加速や減速のしやすさ。旋回能力は、コーナリングでの安定度である。
1)ハウンド300GL4WD(富田自動車)
時速:105km、耐久力:49、加速能力:0、減速能力:−1、旋回能力:−1、CP:5
2)CR−VViG(北海技研)
時速:95km、耐久力:45、加速能力:−1、減速能力:−1、旋回能力:0、CP:5
3)グジェロSE(丸菱自動車)
時速:110km、耐久力:52、加速能力:0、減速能力:−1、旋回能力:−1、CP:5
4)ランプレッサWRX(谷村重工)
時速:125km、耐久力:43、加速能力:3、減速能力:2、旋回能力:1、CP:2
5)ランドクローバー(クローバー)
時速:100km、耐久力:55、加速能力:0、減速能力:−1、旋回能力:−1、CP:5
●タイヤについて
タイヤは第一日目スタート時と第二日目スタート時に、それぞれ一回のみ選択。その日一日をそのタイヤで走行する事となる。
・ノーマルスタッド‥‥雪に有効な、一般的なスタッド・タイヤ。
・シャープスタッド‥‥氷に合わせた特別性の、尖ったスタッドを持つタイヤ。
●天候予報
レースは6日が第一日目、7日が第二日目となる。
2月5日:晴れ・最高気温−12、最低気温−23
2月6日:曇り・最高気温−10、最低気温−21
2月7日:晴れ・最高気温−15、最低気温−28
●コース
第一日目‥‥ロヴァニエミを中心に走る、カーブが多いアイス(凍結路)中心のコース。細かい4箇所のSSが、長いリエゾンを区切る。また、ギャラリー(観覧客)も多い。
第二日目‥‥ロヴァニエミとケミルヤヴィを往復する、スノー(積雪路)中心のコース。広大な雪原や林を抜ける長距離コースで、3箇所の長いSSと短いリエゾンが特徴。
●用語
ラリーカー‥‥市販車をベースに改造した、レース用の車両。
SS‥‥スペシャル・ステージの略。公道を閉鎖してつくられたスペシャルコースで、ここでは速度制限などの交通法規が解除される。
リエゾン‥‥SSとSSの間の区間。一般道で、交通法規(制限スピード、一時停止等)を守って走らなければならない。交通法規を破れば、ペナルティを受ける。
ペースノート‥‥道路のカーブ状況などを記載したノート。ナビはペースノートを元に、ドライバーをナビゲートする。
●リプレイ本文
●下準備
「うへぁ〜っ、さっみぃ〜っ!」
ロヴァニエミの土を踏んだ早切 氷(fa3126)は、皮膚を刺す冷気に思わずその場で足踏みを始める。
「さすが、北極圏間近だけあって冷えるわね」
マフラーを顎まで下げ、ほぅと宙に白い息を吐いてみる羽曳野ハツ子(fa1032)に、思わず相沢 セナ(fa2478)が苦笑した。
「『冷える』というレベルじゃないと、思いますけど‥‥ところでそれ、暖まります?」
「全然」
セナの素朴な質問に、足踏みを続けながら氷は頭を振る。
その一方で寒さも意に介さないのか、角倉・雪恋(fa5003)は雪化粧した街並みを楽しげに観察していた。
「ねぇ、あの雪だるま! 大きいわね〜」
彼女が指差した三段の雪だるまは何かのモニュメントのように建物の脇に立ち、高さは4m近い。見上げる天音(fa0204)も、「ほぅ」と感心した声を上げた。
「誰が積んだのか、巨大な雪だるまじゃのう。昼間でも氷点下じゃというし、春までこのままなんじゃろうか」
「それって‥‥凄く当たり前だけど、水も外に置くだけで凍るんだよね?」
おおよそ今更な事を、不意に豊浦 まつり(fa4123)が呟く。
「うむ。日向だからと昼寝でもしようものなら、命に関わるからな」
腕組みをしたマサイアス・アドゥーベ(fa3957)が、局所的に釘を刺した。
「‥‥車内は、氷点下にならない筈」
「居眠り運転上等とか?」
ほのかに『抵抗』を試みる氷へ、早河恭司(fa0124)が肩を竦める。
街外れへ出た八人を、一台と二人の追加メンバー−−高原 瞬とイルマタル・アールトが待っていた。
本来のラリーでは、競技前にレッキ(一般車での事前コース走行)を行って、ペースノートを作成する。
だが今回は時間が限られており、ラリー自体も公式なものではない。本番のレースに備えて、出場者達の体力を温存する為にも−−少々乱暴な方法ではあるが−−ある程度の道路状況をルートマップに加えた物へ下見で補完をし、ペースノートとして使用する事となっていた。
コース下見を終えた者達は、翌日の午前中に使用するラリーカーの『慣らし』を行う。初めて乗る競技車の感触と、車に異常がない事、ドライバーとコ・ドライバーの意思疎通などを確認が主だ。
また、ラリーは1〜2分の間隔を取って一台づつスタートする為、事前にドライバーは順番を決めるクジを引き。
1番)ハウンド300GL4WD
ドライバー:相沢
コ・ドライバー:羽曳野
2番)CR−VViG
ドライバー:早切
コ・ドライバー:豊浦
3番)グジェロSE
ドライバー:天音
コ・ドライバー:高原
4番)ランプレッサWRX
ドライバー:角倉
コ・ドライバー:アドゥーベ
5番)ランプレッサWRX
ドライバー:早河
コ・ドライバー:アールト
以上のスタート順に、決まった。
●Leg 1
「ランプレッサを選んだ人達が、後ろへ集中しましたね」
先陣を切る事となったセナは、身体の安定具合を確認しながら呟く。
「そうね。でも誰の足跡もない雪に飛び出すの、私は好きよ」
ヘルメットのマイク越しに聞こえるハツ子の声は、彼とは逆に状況を楽しんでいた。
「そもそも私達は魅せるのが仕事な訳だし、本場のギャラリーを唸らせましょ。だから失敗を気にせず、攻めっ気を出して走っちゃってね。どの車も相手にとって不足はないし、勝負よ!」
彼女の言葉にセナはふっと表情を和らげ、ハンドルを軽く撫でる。
「判りました。今回は‥‥よろしくお願いしますね」
そして、スタートの旗が振られた。
「追い付かれないよう、頑張って走らないとな」
そう言いながらも、暢気に氷は欠伸を一つ。
「まぁね。勝負なんてのは、時の運次第。ラリーはスピードだけじゃなく‥‥いかに運を味方につけるかも大事、なんてね」
五台のうちCR−VViGは最高速度が一番遅いが、まつりは自信ありげに手の内で水晶のサイコロを転がしていた。
「急がば回れとも言うしな。つー訳で、よろしく。豊田くん」
「豊浦だって」
「ああ、ゴメン。豊川くん」
「あんた‥‥覚える気ないね」
棘のあるまつりの指摘を誤魔化すように、氷はアクセルを踏む。
「やるからには、悔いの残らぬ走りにしたいものじゃな」
控えめな言葉とは裏腹に、天音はハンドルのグリップを何度も確かめ、エンジンを吹かす。
「もしかして、勝ちに出る気まんまん?」
直前まで地図とペースノートを見比べていた瞬が聞けば、「当然」と彼女は胸を張る。
「故にしっかりナビを頼むのう、高原殿」
「責任重大だね」と、瞬は苦笑で嘆息し。
合図を受けて、スタートラインからグジェロが飛び出した。
「ん〜。やっぱり愛車と同じ車だと、しっくり来るわね」
行楽のドライブにでも出かける様な雰囲気で、雪恋はハンドルを握っていた。
「スピード勝負は明日のお楽しみとして、初日は手堅くいかねばな」
「安全運転、第一でね。亀の甲より年の功‥‥ってトコを見せなきゃ。自分で言っててちょっと凹むけどぉ〜!」
雪恋の嘆きと共に、『子持ちペア』を乗せたランプレッサは雪の上を軽快に走り出す。
眉根を寄せたイルマは、ペースノートと睨めっこをしていた。
そんな少女のヘルメットを、軽く恭司がノックする。
「大丈夫。順位より、完走を目指して頑張ろう。ウチのオカメインコにも注意されたし、イルマが怪我なんかしないように走るよ。その‥‥女性は、守らなきゃね」
微妙な間に首を傾げつつも、イルマは一つ深呼吸した。
「ありがとうございます」
「うん。その代わり‥‥走りが危なくなったら、注意してくれるかな」
「‥‥はい?」
「前の車を極度に煽ったり、とか」
何やら怪しい性癖を打ち明ける恭司に、少しイルマは考え込み。
「えっと‥‥きっと大丈夫ですよ。キョージなら」
根拠のよく判らない励ましに笑いながら、恭司はギアを入れ、クラッチを繋いだ。
順当に滑り出した五台の車は、エグゾーストノートを響かせて白い世界を駆け抜ける。
道行く人々は、ペイントされたラリーカーを見つけると帽子やマフラーを振り回し、歓声を上げて見送り。
「少し早いわ。次の区間はペース抑え目で」
「判りました」
コースの上ではトップを走るセナは、ハツ子の指示を受けてスピードをセーブする。
「この風景と前がいないだけに、ついスピードが上がりますね」
「そうね。じきにSS1に入るから、その時は飛ばしちゃって」
緊張気味に、セナはハンドルをキープする。
「むしろSS2かSS3を越えた後のリエゾンが、分かれ目になるだろうな」
「そうなの?」
マサイアスの言に、真直ぐ前を見据えたまま雪恋が答える。
「簡単に言えば、高速を降りた後と同じだ。スイッチの切り替えが出来なければ、踏み過ぎる」
「あ、そういう事ね」
納得しながら、雪恋は緩やかなカーブの指示にハンドルを合わせた。
雪煙を上げ、尻を左右に振りながらランプレッサがカーブを抜ける。
最初のSS(SS1)に突入すると、コースは急にカーブが多くなった。
ただでさえ凍結した状態に加えて、四台の車が通過した路面のコンディションは悪く。凍結路を良く掴むシャープスタッドでも、後輪が予想以上に流される。
だが恭司は嬉々として、次のカーブへ突っ込み。
イルマは、半分目を回していた。
タイヤが雪を舞い上げ、車体が雪壁を掠めて通り過ぎれば、危険防止ネットの向こうでギャラリーがやんやと騒ぐ。
「次、出口下がり気味」
「うむ」
迫るカーブに瞬はタイミングを告げ、天音がハンドルを回す。
初日は様子見が多い中で、天音はグジェロの旋回性能を活かし、積極的にカーブを攻めていた。
二人の間に交わされる言葉は、必要最低限のみで。
それを埋めるように、タイヤとエグゾーストノートが唸りを上げる。
「あと30秒で、リエゾン。15、10」
時計と速度計を見ながら、まつりはコースを読んでいた。
ゥォン! と大きく空ぶかしをし、トップギアからシフトダウンすれば、車に制動がかかり。
速度を下げ過ぎる事もなく、カウント通りにぴったりとCR−VViGは予定速度まで減速した。
「‥‥連続カーブって、欠伸する暇もないのがなぁ」
「あんたねぇ‥‥」
あくまでもマイペースな氷に、まつりはふぅと息を吐く。
やがて白樺の林が暗闇に包まれ、雪が降り出す頃。
全ての車が、初日のゴールを無事にくぐった。
●Leg 2
初日の結果を受けた二日目のスタートは、天音&瞬、氷&まつり、雪恋&マサイアス、セナ&ハツ子、恭司&イルマの順となった。
積雪路のコースに合わせて四組がノーマルスタッドを選択し、恭司はあえて初日同様のシャープスタッドを選び。
ケミルヤヴィで折り返す、長い二日目が幕を開けた。
「天気と路面、イルマはどう思う?」
長い直線を飛ばしながら恭司が聞けば、助手席の少女は眩しそうに正面の太陽に目を細める。
「えっと、皆さんの後から続く事になりますから、道が凍ってくると思います。でも、それより一つ気になるのが」
「気になる?」
問い返す恭司に、少し考えてからイルマは話を続けた。
「ケミルヤヴィの周辺は、ロヴァニエミよりもトナカイが多いんです。時々、競技車とトナカイが接触する事故があるって‥‥聞いてます」
「トナカイ‥‥ね」
飛ぶように、白樺の木々が行き過ぎる。
コースは一路、東へ向かっていた。
それは、不意の出来事だった。
降り積もり、反射する一面の白の中へ、ぽんと黒い影が飛び出し−−。
「避けて、天音さん!」
「く‥‥っ!」
声を聞くまでもなくブレーキを踏み込み、天音はハンドルを切る。
スピードを殺しきれないまま、グジェロの後輪が滑った。
路面との摩擦でタイヤが悲鳴をあげ、白い世界がぐるぐると回り。
道路脇の雪溜まりに激突して、漸く車は止まる。
数秒か、数十秒後。
衝撃から立ち直った天音は、深く息を吐いて身体を起こした。
「大丈夫か、高原殿」
「俺は平気。天音さんこそ、怪我とかない?」
「拙者はなんともないが、ちと様子を見てくるかのう」
ドアを開け、天音は車外へ出る。
飛び出してきたトナカイが、仲間達と共に雪の上を駆けていく姿を見つけて、安堵の息をついた。
天音と瞬がダメージを調べる間に、氷達の車と雪恋達の車が減速しながらも通り過ぎる。
続いて接近してきたハウンドは、スピードを落とし、
「あの‥‥どうしたんですか、これ?」
窓から顔を出したセナが、助手席側から雪に突っ込んだグジェロを呆気に取られて眺め。
「二人とも、大丈夫?」
セナの向こうから、ハツ子が気遣いの言葉をかける。
「手が入りそうなら、貸すわよ?」
「いや。幸い、頑丈さでは劣らぬグジェロじゃったからな。この様子なら、リタイヤする事なく走れそうじゃて」
「そっか。よかった」
「二人とも、無理しないでね」
「そちらも、気をつけるのじゃぞ」
再びスピードを上げるハウンドを、二人は見送り。
最後尾となるまでタイムロスしながらも、グジェロはレースに復帰した。
初日と違い、変化の乏しい直線長距離コースは感覚が狂いがちになる。
そんなレースの中盤で、氷とまつりのCR−VViGに、雪恋とマサイアスのランプレッサが迫っていた。
「ん〜‥‥SSに入ったら、まずいな。この先、カーブあったっけ」
「2km先のSSに、ギャラリーポイントがあるね。それを抜けたら、サービスパークでリフュール(給油)かな」
「て事は、向こうも軽い、か」
制限速度ギリギリをキープしながら、ほぼ距離も変わらず二台の車はSS6へ突入する。
先行の利と腕を活かし、氷はなかなか前に出る隙を与えない。
明滅するブレーキランプを追いながら、雪恋は「う〜ん」と唸った。
「氷さん、なかなか開けてくれませんね」
「確かに、手強いな。だがあとカーブを3つ抜ければ、直線に入る」
「そこですね」
ラフをジャンプし、鮮やかなラインを描いて急カーブをクリアする車に、ギャラリー達は歓声を上げ。
カーブを抜ければ、直線が迫る。
単純な直線でのスピード競争なら、ランプレッサは強い。
ブロックする訳でもなく、氷は雪恋にスルーさせ。
その後を、追従してくる。
「そろそろ、リエゾンだ」
「でも‥‥」
マサイアスの指示にバックミラーへ視線を移せば、減速せずに迫るCR−VViGが映っていた。
追い立てられる形で、リエゾンとSSとの境界線へのちょっとした『チキン・ラン』となり。
リエゾンに入る直前で、氷は一気に減速する。
雪恋も急いでギアを落として減速するが、急激にエンジンの回転数が上がった車は跳ねて、一瞬制御を失い。
スピンしながら路上を滑り、雪壁にぶつかって止まった。
「あ〜‥‥平気か?」
気遣うマサイアスに、雪恋は笑みをみせる。
「ええ。でも、すみません。やっちゃったわ‥‥」
「仕方あるまい。恐らく車に問題はないと思うが、念のためサービスパークで確認だな」
遠ざかるCR−VViGの音を聞きながら、マサイアスは雪恋の肩を軽く叩いた。
●Finish
夜の帳の中、最後の一台がロヴァニエミに帰ってくる。
雪恋達は、ロスが響いて順位を落とし。
最終的な順位は氷&まつりがトップで、次に雪恋&マサイアス。二日目で確実なペースを取り戻したセナ&ハツ子、トラブルに見舞われた天音&瞬、初日リエゾンでの減点が響いた恭司&イルマとなった。
「氷さんってば、若いのにテクニシャンね」
「最後まで、暢気に欠伸してたけどね」
褒める雪恋に、呆れ顔のまつりは知らん顔の氷を振り返る。
「レースも無事に終わったし、せっかくだから夕食に行こうか。優勝した人の奢りで」
イルマの肩に手を置いて恭司が皆を誘えば、「いいわね、それ」とハツ子は目を輝かせ。
氷は一つ、盛大なクシャミをした。