Nervous Breakdownヨーロッパ
種類 |
ショート
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担当 |
風華弓弦
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芸能 |
フリー
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獣人 |
3Lv以上
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難度 |
やや難
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報酬 |
6.9万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
02/17〜02/19
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●本文
●不意の報せ
「何だと‥‥燃えたぁ!?」
突然トーンの上がったマネージャーの声に、イルマタル・アールトは弦を弾く手を止める。
音が途切れたのに気付き、中年男は何でもないという風に身振りで示してから、携帯を片手に部屋を出て行った。それを不思議そうに見送ってから、イルマタルは再び大型のコンサート・カンテレへと向き直る。
僅かに開いた扉の隙間からその音を確認し、マネージャーは扉を閉めた。
マネージャーが部屋に戻ると、イルマタルはまた練習を中断する。
「何の電話だったんですか?」
不安げに見つめてくる相手に暫し思案をした末、意を決したように男は一つ溜め息をついた。
「いいか、落ち着いて聞けよ。イナリの世話人から、連絡があったんだが‥‥イナリの家が、燃えたそうだ」
「‥‥え?」
「家の様子を見に行った時には、既に消失して焼け跡も雪に埋まっていたんだと。だから時期や、詳しい原因はまだ判らん。ただ、周囲の木は燃えていない事から、出火元が家なのは確からしい」
「でも‥‥戸締りと火の始末は、気をつけていた‥‥つもりなんですけど‥‥」
震える声で答えながら、イルマタルは膝の上でぎゅっと両手を握り締める。
「待て待て。原因が判らない以上はそうかもしれないし、違うかもしれない。ただ、それを調べるのは俺の仕事でも、お前の仕事でもねぇんだから、まず落ち着け。そうだな、紅茶でも飲むか?」
青ざめた表情の少女の肩を叩き、マネージャーは隅のテーブルへ向かった。
「で。どうだ、そっちの調子は」
微妙な沈黙の中でパック式の紅茶淹れると、カップを差し出しながらマネージャーは話題を変える。
「はい。やっぱり大型カンテレだといろいろ出来ますけど、それだけ難しいです」
「そうだな。だが表現の幅を考えると、どっちも出来た方がいいしな」
「頑張ります‥‥ありがとうございます」
恐縮しながらカップを受け取り、イルマタルは暖かい湯気を吹いた。
「ま、根を詰めすぎるのもナンだしな。今日はそろそろ終わりにしとけ。俺も少しばかり用ができたんで、家までは送れんが」
「いえ。いつも申し訳ないですし、大丈夫ですから」
ようやく微かな笑みを浮かべて、彼女は紅茶を口へ運ぶ。
そして、翌日。
少女は練習場へ、姿を現さなかった。
●反復衝動
『イルマが、いなくなったの?』
携帯の向こうから、困惑気味の反応が返ってくる。
「ああ。そっちへは、行ってないのか?」
『来てないわよ。彼女のカウンセラーだからって、患者と医者以上の付き合いはないもの』
「そうか‥‥そうだよな。すまん」
期待外れの返事にマネージャーはがっくりと肩を落とし、イルマタルのカウンセラーが状況を聞こうとするのにも構わず、携帯を切った。
彼がぐるりと室内を見回せば、質素な少女の部屋には特に争った痕跡は見当たらない。
携帯は、机の上の充電器に差したまま。
その隣には、鞄も置かれていた。
しかし床にはベリージュースの瓶が転がり、その傍で落ちたグラスが割れている。そしてほとんど乾いたジュースが、シミを作っていた。
コート掛けにはコートがなく、おそらく何らかの理由でコートだけを引っ掛けて出て行ったらしい。
−−ドアに鍵もかけず。
逡巡したマネージャーは、WEAのフィンランド支部へと繋がる番号を押した。
姿を消した少女を、探し出す為に。
弱々しい太陽の光を受けて、雪が眩しく輝く。
夜行バスから降りた少女は、雪原を貫く一本の道をふらふらと歩いていた。
時おり、思い出したように車が行き過ぎる程度の道に、転々と残る痕跡。
それを、辿るように踏んで。
背中を丸めたもう一つの影が、ゆらゆらと小さな足跡を追っていた。
●リプレイ本文
●少女は何処に
搭乗アナウンスが流れ、電光の案内掲示板が切り替わる。
「チケット‥‥取れるといいんですが」
サングラス越しに掲示板を眺めていた相沢 セナ(fa2478)が振り返れば、『顔見知り』達−−彼同様、一部『変装』済み−−がいた。
「大丈夫よ。そんなの、いざとなればベスさんがお願いするか、Cardinalさんが拳を見せれば一発OK‥‥コホン。も、もちろん冗談よ?」
「それは、一発OKってより一発KOな気がするね」
場を明るくしようと試みるアイリーン(fa1814)へ、笑いながら深森風音(fa3736)が合わせる。
「止むを得ない状況で、必要があれば致し方ないだろうが‥‥」
腕を組み、唸って悩むCardinal(fa2010)に、早河恭司(fa0124)の表情が自然と強張った。
「もしかして‥‥本気で殴る気が?」
「当然、ちょっとした冗談だ」
真顔で答えるCardinalに、ふっとシャノー・アヴェリン(fa1412)が遠い目をして。
「‥‥目は‥‥真剣ですが‥‥。ところで‥‥こんな所で寝て‥‥いいんですか‥‥?」
サーチペンデュラム片手に舟を漕ぐ早切 氷(fa3126)に、シャノーが尋ねる。いいも悪いも、彼女の忠告は耳に届いていないだろうが。
「ぴ? 氷さん、また寝てるの?」
公衆電話から戻ってきたベス(fa0877)が、氷の様子をじーっと観察し。どこから取り出したか、おもむろに油性マジックの蓋を外す。暢気に居眠りをぶっこいている人物を前にして、やる事は一つしかない。たぶん。
しかし、本能的に危険を察したのか。氷はカッと目を開き。
「ベスちゃん‥‥」
「ぴよ?」
マジックを凝視する氷へ、ベスは無邪気に小首を傾げた。
交わす会話はのどかだが、ふと落ちる沈黙には緊張が漂っている。
そこへ、中年男が足早に近づいてきた。
「待たせた、イヴァロ行きのチケットだ。レンタカーは、WEA経由で手配中だ」
一人一人の名を確認し、イルマタル・アールトのマネージャーは航空券を渡していく。
「で、場所は違いねぇんだな?」
「皆で何度か試してみたけど、やっぱりサーリセルカとイナリの間くらいが多いね。氷さんは‥‥振り子が揺れてる間に、寝てたけど」
風音がマネージャーに説明し、バツが悪そうに氷が頭を掻く。
「その‥‥イルマルタルルちゃん? は、飛行機チケットとか手配できるクチかい?」
「イルマちゃんだよ、氷さん」
ベスに指摘されて、氷は眉を顰め。
「‥‥アルマちゃん?」
「じゃなくて〜」
「話を進めような、君達」
ベスと氷の肩に手を置いて漫才を遮る恭司の笑顔は、こめかみ辺りが軽く引きつっていた。
●雪に惑う
路肩に車を寄せて声をかけたドライバーは、反応がない相手に仕方なくアクセルを踏んだ。
サーリセルカから、北へ約70km。
そこに、彼女の家がある。
イナリへのバスを待つ事すらせず、彼女は雪の中を歩いていた。
暖かい暖炉の炎、優しい空気、柔らかな思い出。
−−厳しくも労わりに満ちた、深い祖父の声。
家にさえ帰れば、それらが待っていると。
彼女はすがる様に『家路』を辿る。
距離を取って続く、背後の影に気付かずに。
イヴァロへ到着した者達を、三つの知らせが待っていた。
一つは、レンタカーの手配が済んでいる事。二つ目は、搭乗者名簿にイルマの名前がない事。代わりに、ベスの依頼で夜行バスの運行会社へ問い合わせた結果、サーリセルカ行きのバスにそれらしき人物がいたと確認されたのが、三つ目である。
「‥‥マネージャーは‥‥イルマが狙われる理由‥‥ご存知ですか‥‥?」
二台の車で、イナリへ向かって雪道を走る中。
シャノーの問いに、中年男はハンドルを握りながら煙草をふかす。
「心当たりつってもなぁ。俺が若い頃、爺さんの世話になった縁で、関わってるだけだからな。彼女も、自分の事は進んで話すタイプじゃねぇし‥‥精神的に不安定な時期もあったんで、こちらも家の事はあんま聞かねぇし」
「‥‥そうですか‥‥」
難しい表情で考え込むシャノーに、風音が首を傾げた。
「何か、気になる事でも?」
「いえ‥‥。得体の知れない‥‥気配を感じた、クーヤルヴィへの‥‥『旅行』。‥‥イルマの祖父や両親を知り‥‥彼女に、『歌う木』の存在を‥‥尋ねる謎の人物。‥‥彼女の周りで‥‥不可解な事が、起こっているのは‥‥まず間違いないんです‥‥」
珍しく多弁のシャノーは、青い目を細めて思考を巡らせる。
「そこへきて‥‥今回の自宅の火事‥‥これを、イルマの過失と考えるのは‥‥おかしいです‥‥」
「不可解か‥‥もしかすると一番最初の襲撃事件も、実は繋がっていたりするのだろうか」
助手席に座るCardinalの呟きに、シャノーは眉を顰める。
「‥‥二体のNWの‥‥同時襲撃ですか‥‥」
通例、NWは単体で行動する例が非常に多い。ギリシャや中国で見つかった遺跡のような特殊な場合はともかく、このような場所で二体のNWが、単一の『獲物』を狙って出現する確率は、かなり低い。
加えれば、黒い『招待状』によって訪れたケルン大聖堂では、四人の獣人が忽然と消えている。WEAはNWによる襲撃との見解を出したが、状況的に単体のNWによる被害とは考え辛い。
助手席は多少ゆとりはあるが、窮屈そうにCardinalは後ろを振り返った。
「もしかすると‥‥おびき出す事、もしくは何か見つからない探し物があって。イルマに揺さぶりやカマをかける事で、それを探そうとしている可能性も考えられるな」
「それが、『歌う木』‥‥なのかな?」
シャノーに続いて、風音も眉間に皺を寄せ。
「その後、『歌う木』について尋ねた人は?」
「一度きたきりで、連絡はないな。ぶしつけな質問をする、30歳前後のヤツだったが‥‥確か、ルー何とかバッハとかいう‥‥」
マネージャーの答えに、風音の表情は一層険しくなる。
「ともあれ‥‥一刻も早く、イルマと合流して‥‥無事を確認したい‥‥ですね‥‥」
曇ったガラスを、シャノーは袖でぐぃと拭った。
「‥‥居眠り、してませんよね?」
笑顔で問うセナに「まだな」と氷は返事をし、一つ欠伸をした。
「飛行機でも寝てたのに、まだ眠いのね」
苦笑で感心するアイリーンの言葉に、運転役の彼はさも聞こえないという風に肩を竦めて、話題をそらす。
「しかし‥‥失踪したってのは、この前のレースん時に居た娘かい。話の端々を聞いてると、色々と背負ってるみたいだねえ」
「‥‥ちゃんと、聞いてたのか?」
「ま、アレだ。ソコはソレってアレで」
疑わしそうな恭司の言葉を、氷は笑って誤魔化した。そんな彼の反応に嘆息する恭司は、同乗の少女が静かな事に気付く。
「ベス、気分でも悪いのか?」
「ううん。でも何か‥‥お爺さんの時を思い出して、胸騒ぎがざわざわする。イルマ、どうしたんだろ」
「そうね。生家が火事にあった上に、黙ってどこかに行っちゃうなんて‥‥見つけたらデコピンよ、デコピン。額磨いて、待ってなさいっての」
ヤル気十分で袖まくりをするアイリーンの様子に、セナはくすりと笑って。
それから、思い出したように携帯を取り出した。
「アイリーンさん、これ‥‥渡しておきますね。イルマさんの携帯です」
「あ、マネージャーさん、持って来てくれたのね」
セナから携帯を受け取ると、アイリーンは少し悩んだ末にボタンを押す。
車が走る音と電子音だけが、静かな車内に響き。
「残念ね‥‥手がかりになりそうなメールも着信も、ないわ」
「そうか。にしても、ロックしてないんだね。彼女」
告げられた結果とは別の事に気付いて、思わず恭司は小さく苦笑した。
「それにしても、火事ねぇ‥‥几帳面そうなイルマが火の不始末をするとは考えにくいよな」
「だよね! おかしいよね!」
恭司の呟きに、ベスが強く同意し。
やがて、車は『現場』へ到着する。
地元の警察が調べた後なのか。炭と化した木材の上に、雪がうっすらと積もっている。
到着した者達は変わり果てた光景に言葉を失い、暫し呆然と立ち竦んでいた。
●遭遇
陽光が消えれば、気温が急激に下がった。
一呼吸ごとに、体温が奪われていく。
除雪された道から外れて歩く足は、疲れて重く。
もつれて、雪の中へと倒れ伏す。
立ち上がろうとするが、身体は思う通りに動かない。
それでも雪を掴み、這う様にして、何かに憑かれたかの如く『家』を目指すが。
やがてそれすらも、できなくなる。
近づく足音が、動かなくなった少女の傍らで暫し佇み。
そして身を屈めて足を掴むと、更に深い雪の中へずるずると引き摺り。
−−遠のく意識の中で、誰かが彼女の名前を呼んだ−−。
「イールーマーっ!!」
雪原に、ベスの声が響く。
上空の空気は、地上のそれより冷たく。
刺すような大気を吸って、彼女は再び友人の名を呼ぶ。
青味の強い黒髪を風に煽られるセナもまた、ベスと共に翼を打って上空から人影を探す。
人家より離れていると判断した一行は、半獣化あるいは完全獣化し。サーチペンデュラムとイナリ近郊の仔細な地図でアタリをつけた近辺を、探し回っていた。
「‥‥あ‥‥」
「どうかしたの、シャノー?」
暗い雪の先を淡い光で照らしていたアイリーンが、小さく声を上げて足を止めた友人を振り返る。
「‥‥いま、一瞬‥‥イルマから反応が‥‥あったんですけど‥‥すぐ消えて‥‥」
「どっちだ?」
短く問う恭司へ、シャノーは緩やかに頭を振る。
「‥‥『知友心話』では‥‥場所までは‥‥」
「でもある程度近くにいて、まだ無事って事よね」
元気付けるようにアイリーンは明るい表情を仲間達に見せ、携帯を取り出した。
「‥‥これか?」
強くはないが体温を奪う風に、ふと氷が顔をしかめた。
「なんか、嫌な匂いがする」
「風上だね」
歩き始めた風音の視界を、壁のようなCardinalの広い背中が塞ぎ。
和らいだ冷気に、風音はその背を見上げる。
「‥‥ありがとう」
「気にするな。何かあった時に『治療』ができるのは、おまえだけだからな」
肩越しの答えに、小さく風音は頷いた。
『目』のいい者達は、暗い雪原の中で相対する二つの影を目にした。
片方は人の姿をしているが、もう片方は明らかに人の姿ではなく。
−−人はもとより、戦闘能力の高い獣人でも獣化せずにNWと一対一では、勝ち目はほぼない。
「離れろ!」
Cardinalが警告する。
と、声に気付いたのか、人ほどの大きさの蟲が彼らの方を見やり。
次の瞬間、その姿が掻き消えた。
「え‥‥消えた!?」
驚いて目を擦り、上空のベスが眼下に広がる雪原を見回す。
そこへ雪を蹴散らし、恭司達が遅れて駆け寄ってきた。
NWと対していた人影は、ソレが消えた付近の雪に跪き。
そのすぐ後ろで、『何か』が収束して『元の形』を成す。
「危ない!」
前肢を振り上げて再び現れた異形の姿に、アイリーンが声を上げ。
『動くな!』
力を持つ、鋭く短い『言葉』をセナが発した。
動きを止めた蟲へ、シャノーとベスの投げた羽根が、針と化して突き刺さる。
一足飛びに距離を詰めた恭司が、引き剥がすように動けぬ標的を蹴り飛ばし。
雪を舞い上げて落ちた蟲へ、Cardinalが速やかなる『幕引き』を下した。
手練の獣人達に、NW一匹では敵うべくもなく。
「いや〜‥‥働かなくて、済んだな」
その『瞬殺劇』に、氷が暢気な感想を口にした。
「‥‥あなたは? どうしてこんな所で?」
呆気に取られて一連の出来事を眺めていた人物に、風音が用心深く尋ねる。
「ああ。俺の事を詮索するより、先にする事があると思うが?」
顎をしゃくって示した先には、青白い顔の少女が雪に埋もれていた。
「イルマ!」
急いで恭司が雪の中から助け上げ、まだ息がある事を確認する間に。
「では、失礼する」
鷹揚な辞去の言葉と共に、竜の皮翼を広げた相手は、九人を残して飛び去る。
遠ざかる飛影を、シャノーはじっと睨んで見送った。
●我が家
一行は焼失した家の近辺を調べる一方、シーズンオフで客の少ないイナリのホテルで、イルマの回復を待った。
風音が手を尽くした甲斐もあって、翌日にイルマは意識を回復する。
後は友人達からの軽い『お説教』に、一連の状況を良く覚えていないというイルマは、口を開けば謝罪の一辺倒で。
一日様子を見て、ある程度の体力が回復した事を確認してから、一行はイルマの願いもあって、彼女の『家』へと向かった。
あるはずのものがない光景に、改めて彼女は茫然とし。
焼け残った玄関先の石像の煤を、ゴシゴシと服の袖で拭い始めた。
誰もが黙って見守る中、ようやく氷が口を開く。
「まぁ‥‥俺が言うのも、ナンだけどさ。なくなったモノはしょうがないモンで。覚えてたい事だけ、忘れなければ‥‥な」
「‥‥はい‥‥家はまた‥‥建て直せます‥‥。でも、イルマは‥‥命は、何かあったら‥‥取り戻しが‥‥きかないものです‥‥。だから‥‥」
シャノーは組んだ指が白くなるほど、ぎゅっと力を入れる。
−−帰りたい。
それは、彼女の思念での呼びかけに、少女が返した言葉。
「もう‥‥帰れないんですよね」
「イルマ‥‥!」
寂しげに呟くイルマを、ベスがぎゅっと抱き締め。
先を越された恭司は、行き場を失った手で少女の髪を撫でた。
「ほら‥‥忘れ物よ」
アイリーンはそっと手に携帯を握らせて、励ます笑みを向ける。
殺風景な光景を慰めようと、セナの作った赤い目の雪ウサギと狐耳の小さな雪だるまが、仲良く並んでいた。
「それで‥‥私達が見た男は、尋ねてきた男と特徴が同じなんだね」
離れて見守るマネージャーに、風音が問う。
黙したまま首が縦に振られるのを確認した風音は、難しい表情で焼け跡を眺めた。