Caught in the trapヨーロッパ

種類 ショート
担当 風華弓弦
芸能 フリー
獣人 4Lv以上
難度 普通
報酬 16.8万円
参加人数 10人
サポート 0人
期間 04/24〜04/27

●本文

●少女の計画
 カーテン越しに差し込む光で薄明るい部屋に、携帯の着信音が煩く鳴り響く。
 手を伸ばし、空気を掻いた末に、ようやく机の上の携帯を探し当て。
 眠そうな欠伸をしながら、中年男はボタンを押した。
 液晶ディスプレイには、短いメールが表示される。
 −−風邪をひいたのかちょっと熱があるので、今日のスケジュールはお休みさせてください−−
 眠そうに、文字を追い。
 寝ぼけた頭に内容を理解させてから、携帯のアドレスを呼び出す。
 単調な呼び出し音が何度も続き、少し不安になった頃、ふっつりと途切れて控えめな少女の声が答えた。
『‥‥おはようございます、イルマタルです』
「ああ、俺だ。メール見た。熱があるんなら、病院連れてってやろうか」
『いえ‥‥あの、大丈夫です。薬を飲んで寝たら、よくなると思いますので‥‥』
「旅行の疲れが、今になって出たんかねぇ。ま、暖かくして、大人しく寝てるんだぞ」
 弱く細い声が返事をし、マネージャーは通話を切った。

 バスを降りた少女は、落ち着いた外観の建物を見上げる。
 きょろきょろと周囲を見回し、意を決したように足早に通りを渡り、白い息を吐きながらビルへと駆け込んだ。
 そこからは平静を装って、人の少ないロビーをゆっくりと横断し、カウンターの女性へ声をかける。
「すみません。あの、祖父が遺した物を、私のマネージャーさんがこちらへ預けたって聞いて。必要な事があって、取りに来たんですけど‥‥」
「では、お名前をお願いします。念のため、身分証などはお持ちですか?」
「はい、イルマタル・アールトです。マネージャーさんの名前は‥‥」

 ボックス型の待合室のような場所に通されたイルマタル・アールトの前に、長さ50cmほどの黒いハードケースが運ばれてくる。
 緊張した面持ちでそれを眺めるイルマタルへ、係員が紙とペンを差し出した。
「保管品受け取りのサインを、お願いします」
「あ、はい‥‥」
 示された場所に、自分の名前を綴って。
 イルマタルは、ケースを手にWEAフィンランド支部を出た。
 ロビーから出る間際に、ちらと時計を見。
 外へ出てから上着のポケットに入れた航空券のチケットを取り出して、時間の猶予を確かめる。
 そして彼女は、ヘルシンキ空港行きのバス停へと向かった。
 行き先は、フランクフルト。
 そこは黒森に一番近い、国際空港−−。

●後手
「くそ‥‥何でだっ!」
 携帯を握り締めて中年男は毒づくも、人の部屋では八つ当たりをする先も見つからず、ギリギリと歯噛みをする。
 見舞いにと足を運んだ部屋に、風邪をひいて寝込んでいるはずの少女の姿はなく。
 ただ、テーブルの上に書き置きが残されているのみだった。

 −−ある人に「助けてほしい」とお願いされたので、行ってきます。
 誰にも言わずに内密でというお話なので、詳しい説明はできません。ごめんなさい。
 でも、終わったらすぐに戻ってきますので、心配しないで下さい−−

 走り書きではなく、落ち着いて書かれた字である事を考えると、誰かに強要されたとは考え辛く。
 嫌な予感を覚えてすぐさまWEAへ連絡をすれば、彼が預けた『楽器』は3時間ほど前にイルマタルが引き取り、持ち去ったという。
 しばし書き置きを睨んだマネージャーは、狭い部屋で手がかりを探し始めた。
 電話の傍のメモ用紙や、壁にかかったカレンダー、テーブルの卓上スケジュール。
 ひとしきり部屋を探して、ふと屑入れが目に止まる。
 その中を覗き込めば、一通のエアメールの封筒が落ちていた。
 拾い上げてみても差出人の名はなく、中身もない。
 ただ『ドイツ ハイデルベルク郵便局』の消印は、はっきりと記されている。
 封筒を握りしめたマネージャーは、急ぎ携帯の番号を押した。

●今回の参加者

 fa0124 早河恭司(21歳・♂・狼)
 fa0877 ベス(16歳・♀・鷹)
 fa0898 シヴェル・マクスウェル(22歳・♀・熊)
 fa1412 シャノー・アヴェリン(26歳・♀・鷹)
 fa1814 アイリーン(18歳・♀・ハムスター)
 fa2010 Cardinal(27歳・♂・獅子)
 fa2141 御堂 葵(20歳・♀・狐)
 fa2478 相沢 セナ(21歳・♂・鴉)
 fa3736 深森風音(22歳・♀・一角獣)
 fa4421 工口本屋(30歳・♂・パンダ)

●リプレイ本文

●繋げる糸
「本当に、イルマさんはドイツへ行ったんだろうか」
 呟く工口本屋(fa4421)は、イルマタル・アールトのマネージャーと共にWEAのコネを有効活用し、搭乗者名簿を調べていた。
「そりゃあ俺にも判らねぇが、可能性が高いってんなら賭けてみるしかねぇだろう」
「‥‥ですか」
 短く答えた本屋は、PCを操作するオペレーターの指先を見守る。

 金属の先端は、彼らがいる場所から遥か南西の方向で円を描く様に揺れていた。
「ドイツの南西部‥‥の、細かい地図はある?」
「ああ、ちょっと待ってくれ」
 尋ねるベス(fa0877)に、シヴェル・マクスウェル(fa0898)がサーチペンデュラムをいったん置いて、荷物から先日のバイク移動の際に使ったロードマップを引っ張り出す。

 −−今、どこにいるの? 会いにきたら、マネージャーから書き置きしてどこかへ行ったって聞いて、心配してる。連絡、待ってるから−−
「これでよし‥‥と。ちゃんと返事、寄越しなさいよ」
 携帯の送信ボタンを押したアイリーン(fa1814)は、言い聞かせるように携帯へ唇を尖らせた。それから、公衆電話をかける友人の傍へ移動する。
「そっちはどう?」
「うん。一番早い移動方法を、手配してくれるそうだよ」
 小さな『朗報』を伝えた深森風音(fa3736)は、彼女と代わって国際電話の受話器を握るCardinal(fa2010)をちらりと見やる。
「念のため、レオンには詳しい事を知らせないよう‥‥ああ。万が一が、あるかもしれないからな」
 用件を伝え終わると、Cardinalは受話器をフックにかけ。
 すぐに再び取り上げて、別の場所へと番号を押し始めた。

「みんな、手馴れてるって言うか‥‥早いわね」
 待合の椅子に腰を下ろし、アイリーンはぎゅっと手に持ったままの携帯を握り締める。
 いつ送信メールの返事が来てもいいように待機しているが、今のところ様子はなく。
「‥‥状況が状況だと‥‥承知していますから‥‥」
 いつもの様に、間延びしたテンポで答えるシャノー・アヴェリン(fa1412)も、声色はやや硬い。彼女は、マネージャーが持ってきたくしゃくしゃの封筒を、穴が開きそうな程に凝視していた。まるで、そうする事によって、相手を追い詰める事が出来るかのように。
「それにしても‥‥気になりますね。まるでこちらの動きが、向こうに筒抜けになっているようで」
 思案する相沢 セナ(fa2478)の言葉に、早河恭司(fa0124)が眉根を顰める。
「それは、関わってる者の中に『あっち側』の者がいるって事か?」
「もしくは、よほど情報収集に長けているか‥‥何か、コネがあるのかもしれませんが」
「なら、俺達の動きも読まれているかもな」
 指をきつく組んだ恭司は、不意に立ち上がり。
「ちょっと、マネージャーさんと話してくる。あと、名簿の結果も気になるしな」
 急ぎ足で向かう恭司を見送ったアイリーンは、ただ一人、身軽な御堂 葵(fa2141)へと視線を移す。
「葵さん、ホントに残るんですか?」
「はい。今回は‥‥いえ、今回も完全に出し抜かれた形となりましたし、『歌う木』について調べようと思います」
「そっか。気をつけてね」
 携帯を持ったまま、ぎゅっと手を握るアイリーンへ、葵は柔らかな笑顔をみせた。
「そちらこそ、気をつけて下さい。危険な場所、危険な相手と聞いていますから」
 やがて『裏づけ』を取った者達が戻ると、葵とマネージャーを除く九人はドイツへ飛ぶ。

 持てる情報から導き出した結論は、ドイツ南西部に広がる『黒森』行きだった。
 過去、ルーペルト・バッハがイルマを訪ね、『歌う木』について聞いた事。
 ルーペルトは黒森の地下に広がる遺跡へ、強い関心を示している事。
 そして今回、イルマが『歌う木』を持ち出して単独行動を取った事。
 それらを繋ぎ合わせれば、おのずとイルマを呼び出した相手と向かった先も、絞られてくる。
「‥‥そもそも‥‥彼女へ『内密で頼み事』をする者など‥‥限られています‥‥この状況で、ルーペルトを疑わない方が‥‥どうかしています‥‥」
 いつになく険しい表情で、シャノーが搭乗ゲートを見つめる。
 その緊張にただならぬ雰囲気を感じ取りつつ、アイリーンは未だ返信のない携帯の電源を、切った。

●黒き森
 −−せっかく来てくれたのに、会えなくてすみません。いま知り合いの方と一緒にいます。マネージャーさんにも、心配ないって伝えて下さい−−
「も〜ぅ、心配ないじゃ、ないでしょっ」
 液晶画面へ文句を言うアイリーンの仕草に、思わず風音が笑う。
 フランクフルトへ着いた一行は、風音とCardinalの連絡に応じたフィルゲン・バッハのアドバイスで国内線を使い、シュットゥットガルド空港へ移動した。そこで用意されたレンタカーへと乗り換え、一路、黒森の中心へとひた走る。
「電話の方は、まだ通じないのかな?」
「うん。電波が通じないか、電源切ってるみたい」
 風音の問いに携帯を操作するベスが答えれば、シャノーの表情が曇った。
「‥‥電源を入れた携帯が‥‥今は通じないという事は‥‥既に、地下にいるのかも‥‥しれません‥‥」
「少し、スピードを上げますね」
 ハンドルを握るセナは、アクセルを踏み込んだ。
 ルームミラーを確認すれば、恭司の運転する車も速度を上げて追走する。

 鍵のかかっていない『扉』の周囲には、車の影はなかった。
 だが腰を落としたCardinalは、じっと下草や土を見つめ‥‥やがて、立ち上がる。
「つい最近、誰かがきた痕跡がある。先日調べた時にはなかった跡だから、間違いない」
 彼の言葉に、仲間達は緊張した表情を見せた。
「相手は、ここの最深部の鍵を持っていない筈‥‥何をする気なんだ?」
 シヴェルが眉根を顰める一方で、この場所を知らぬ本屋、アイリーンは戸惑いを隠せない。
「ここは、何なんだ?」
「えーっと‥‥話せば長いから、中で説明するよ。今は急がないと」
 苦笑いを浮かべつつ、風音は準備を促した。
「すみません。少し、待ってもらえますか。WEAに調査をお願いした案件を、確認しておきたいので」
 携帯を取り出したセナは、フィンランドとドイツの両WEA支部へと連絡を取り、イルマへ接触した相手や、DSに関する情報を尋ねる。
 だがフィンランド支部からは、『個人の交友関係について、監視は行っていない』という、至極真っ当な答えが返ってきた。
 またドイツ支部の返答は、『WEAは、DSの実態を把握に到っておらず。また、黒森遺跡は『古き竜』が伝統的に監視下においている為、WEA側としては存在以上の事は判りかねる』という内容だった。
「では、ドイツでDSが動いている情報などはありませんか?」
『獣人の誰がDSかを知る方法はないんです。判るようになれば、苦労もしないんですが‥‥向こうが正体を現すか、もしくは結果からDSだったと推測するケースがほとんどで』
 WEAが「おそらくDSであろう」と掴んでいる者の数は、片手か、頑張っても両手で足りる程度。
 それ以外は実態も実数も不明−−それが、現状だった。

(「‥‥イルマ‥‥どうか、答えて下さい‥‥」)
 歩きながら、シャノーは意識を凝らす。受け取る相手の戸惑いのようなものは感じるが、答えはなく。
「連絡、つきそうか?」
 心配そうな恭司へ、彼女は銀の髪を揺らした。
「‥‥呼びかけてはいますが‥‥まだ返事は‥‥」
「そうか。すまない」
 中断させた事を恭司が詫びれば、シャノーは再び首を横に振った。
 懐中電灯の光の輪が、朽ちた石造りの通路を照らす。
 足を踏み入れた者達は、Cardinalが先に進むものの痕跡を辿り、その間に風音は黒森遺跡の状況と注意を簡単に説明していた。
「特に乳白色の物体を見かけたら、絶対に触らないように。できれば、近寄らない方がいいかもしれないね」
「随分と、厄介な場所ですね。でも、こんな場所で何をしようと?」
「それは、判らない。固執するだけの、何かがあるんだろうが‥‥?」
 注意深く周囲を見回す本屋に答えるシヴェルは、ふと辿る道の違和感に気付いた。
「道を間違えていないか? 前にきた時と、違うようだが」
 先頭を歩く広い背に問えば、Cardinalは首を横に振る。
「いや。俺達が通ったルートとは、違う道を進んでいるようだ」
 彼が懐中電灯で足元を示せば、埃の積もった通路に薄く二つの足跡が続く。
 一行が進む、その先に。
 のそりと、人の身長ほどある奇怪な蟲が現れた。

「どうやら『追っ手』がきたようだ。予想より些か早いが」
 外套の上から腕を軽く抑えた相手に、ケースを抱えたイルマは不安げな表情を向ける。
「でも、私の友達もきてるようなんです。事情を話して、協力してもらうのは‥‥」
「難しいな。俺達を追う者に頼まれたなら、上手く丸め込まれているだろう。見つけ次第、殺すように言われているかもしれない」
「だけど‥‥」
「君の力が必要な場所は、すぐそこだ。急ごう。邪魔をされては困るからな」
 戸惑う腕を掴んで、ルーペルト・バッハはイルマを急がせる。
 崩れ落ちた床の穴を滑り降り、道なき道を奥へと進み。
 やがて行く手には、立ち塞がるような巨大な乳白色の壁が−−。

●一音
「イルマ!」
 恭司が名を呼べば、少女は驚いて振り返った。
 その傍らには、もう一つの人影が立っている。
「まずいな。近付き過ぎると面倒だぞ」
 小さく呟くシヴェルは、二人の向こうにある『壁』に口唇を噛んだ。
「イルマ、離れて! その人は危ない人なんだよ!?」
 ベスの呼びかけに、困惑した表情のイルマが連れを見上げた。
 その相手の足元へ、鷹の羽が二本三本と突き刺さった。
 無言のシャノーはいつでも次の一投を放てるよう、羽根を構えて見据え。
(「イルマさん、よく聞いて。彼は‥‥ルーペルトさんは何らかの目的で身内を襲い、それを達しようとしている、危険なDSなんだよ」)
 声を出さずに風音が語りかければ、再度イルマは友人達とルーペルトを交互に視線を走らせる。
「時間を稼ぐから、続けて‥‥」
「続けるな!」
 ルーペルトの言葉を、Cardinalの鋭い声が遮る。
「そいつのやり方は、人を傷つけるようなやり方だ。それに利用されるのか? どんなものなのか、何が起こるかを解っているのか?」
「では、自分ならば判るというのか?」
 黒い長剣を携えて進み出る相手に、シヴェルは肩を竦めた。
「いいや。だから知っているなら、ぜひとも聞かせてもらいたいものだな。それに、おまえの目的と話の結末も」
「残念だが、語るべき口は持ち合わせていない。にしても‥‥荒事は、得意ではないのだが」
「ほざけ」
 ルーペルトの前にCardinalとシヴェルが立ち、シャノーはサーチボウの弦を引く。
 恭司とベスは、残る四人を背に庇い。そんな二人の頭へ本屋がパンダの黒い手をぽんと置き、『幸運付与』を施した。
「覆水盆に還らず。ひっくり返してしまう前に、止めてあげて下さい」
「‥‥ああ」
 背中を向けたイルマを、恭司はじっと見つめる。

 振るわれる黒い剣を、軽妙なフットワークで避け。
「せぇっ!」
 気合いと共に、シヴェルが拳を突き出す。
 相手が退くのを見越して身を捻り、左手を一閃すれば。
 柄から飛び出した刃が、布と肉を裂いた。
 切られた右腕を押さえ、ルーペルトは改めて両手で剣の柄を握る。
 いつでも動けるよう身構えたCardinalは、険しい表情で二人の動向を窺っていた。
「何故、半獣化すらしない」
 獣化を阻止する意思を持つ者がいても、半獣化には影響を受けない。だが半獣化したシヴェルに対し、あくまでもルーペルトは人の姿のままだった。
 当然、状況は圧倒的にシヴェルが優位である。
「あの人はDS‥‥なんだよね?」
 いい様にのされる相手に、思わずベスが風音に問う。
「ルーペルトさん!」
 駆け寄ろうとするイルマを手で制したルーペルトは、なおも剣を振りかざし。
 その手を掴んで受け止めたシヴェルは、その腹を蹴って吹き飛ばすが、同時に奇妙な『違和感』を感じた。
「おまえ‥‥?」
 ふらふらと立ち上がる相手を、凝視するシヴェル。
「おまえ、男じゃ‥‥ない?」
 その時。
 澄んだ一音が、空洞内に響いた。

「アールトの爺さんか? あの人は、何十年もあそこに住んでいたがな。人付き合いは良くない人だったから、詳しい事は‥‥なぁ」
 イナリの住人達は、訪ねてきた葵に同じような答えを返した。
『歌う木』を、誰が持ってきて‥‥いつ地下室に封印されたのか。それだけでも判れば取っ掛かりになりそうなのだが、人間相手では仔細を話す訳にもいかず。
 判ったのは、イルマの祖父は以前からあの家に住んでいた事、加えて娘が一人いたが、都会に出て結婚した後に死んでしまい、遺されたイルマを引き取って育てたという経緯のみ。
「それにしても‥‥皆さん、無事だといいのですが」
 白い息を吐いて、葵が呟く。
 北の地も雪と土の地面が入り混ざり、遅い春が近づいた事を知らせていた。

 その瞬間、意識は白に支配された。
 イルマが弾いたのは、たった一音。
 だが音は乳白色の塊と共振し、反復するように木製楽器も独りでに音を発し。
 突然、塊は砂の様に崩れ落ちた。
 我に返った者達が気付いた時には、塊があった場所に大きな穴が口をあけるのみだった。
 穴の近くで『歌う木』をしっかりと抱いたイルマが、倒れており。
 そしてルーペルトの姿は、その場から消え失せていた。