人の名残 記憶の残滓ヨーロッパ

種類 ショート
担当 風華弓弦
芸能 1Lv以上
獣人 3Lv以上
難度 普通
報酬 6.7万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 07/18〜07/21

●本文

●一つの情報
「ルーペルトの情報?」
『左様でございます』
 聞き返して確認するフィルゲン・バッハに、受話器の向こう側から『古き竜』の長ダーラントの老執事が答えた。
『あの者が、一時住居としていた場所が判明致しましたので、ご連絡をと思いまして』
「それで、場所は?」
『フランクフルトの郊外でございます』
「う〜ん‥‥」
 その言葉に、フィルゲンは唸る。彼がいま仕事できているのは、フランスでもスイスの国境に近い位置だが、フランクフルトは「ちょっとそこまで」と足を伸ばせる距離ではない。
「フランクフルトは‥‥ちょっと、遠いな。今は仕事にかかってるし」
『ご友人に任せて。という訳には、まいりませんか』
「うん。さすがに‥‥ね」
 がしがしと髪を掻きながら、フィルゲンはしばらく考え込み。考えた末に、大きな溜め息をついた。
「僕がいかなきゃだめだとか、大叔父さんは言ってるのかな」
『いえ。まだ旦那様に、この事はお伝えしておりませんので』
「つまり、僕の判断でどうこうしても構わないって事?」
 彼が重ねて問えば、老執事はいつもと変わりない口調で淡々と返事をした。
『最終的にはお伝えしますが、それまでの時間についてはフィルゲン様がどうされようとも私の範疇外ですので』
「判った。じゃあ‥‥僕の代わりに情報を集めるだけの興味のある人がいるか、聞いてみるよ。詳しい事を、教えてくれるかな」
『はい。先程も申しましたとおり、フランクフルト郊外のアパートメントがその部屋でございます。あの方が『絶縁』となってから数年ほど、部屋には戻られておりませんが‥‥あの方が住んでいた当時、そのままの状態になっております。今なお、部屋を引き払われる事もなく、そのままだそうですので‥‥『何か』が、残されている可能性もございますので』
「判った。ありがとう‥‥後は、こっちで調べてみるよ」
 礼を告げて、フィルゲンは電話を切り。思案の末に携帯を取り出すと、電話番号を確かめ始めた。
 再び受話器を取って、国際電話のダイヤルを押す。
 かける先は、フィンランド。不本意ながら自身が動けない状況では、先の『黒森遺跡』の一件に巻き込んだ相手とコンタクトを取るのが、最適だろうと判断しての事だ。
 やがて相手が電話に出ると、フィルゲンは手短に先の執事の会話と用件を伝えた。

 フィルゲンが執事より連絡を受けた日のうちに、WEAから『裏の仕事』が一件、募集された。
 それは『危険度はさほど高くはないと思われるが、あるNWの調査に向かう「イルマタル・アールト」という少女を補助して欲しい』という内容だった。

●参照:簡単なまとめ
 『黒森遺跡』‥‥ドイツ南西部に広がるシュヴァルツヴァルド(黒森)の地下にある、広大な遺跡。ニーベルンゲン伝説と関わりがあり、『古き竜』が1000年近く見守っている。
 『古き竜(アルター・ドラッヘン)』‥‥バッハ家の別名。竜獣人のみで構成された、ドイツの古い家柄。

 フィルゲン・バッハ‥‥『古き竜』の一人。アライグマ獣人だが、バッハ家の末席にいる。
 ダーラント・バッハ‥‥『古き竜』の長。老竜獣人。
 ルーペルト・バッハ‥‥元『古き竜』の一人。現在は一族から放逐されている。『堕落者』。
 グードルーン‥‥獣人ではなく、人間の女性。ルーペルトの恋人らしい。

 イルマタル・アールト‥‥フィンランドに住む少女。家族はいない。『黒森遺跡』を巡って、ルーペルトに利用されたという経緯がある。

●今回の参加者

 fa0124 早河恭司(21歳・♂・狼)
 fa0877 ベス(16歳・♀・鷹)
 fa0898 シヴェル・マクスウェル(22歳・♀・熊)
 fa1412 シャノー・アヴェリン(26歳・♀・鷹)
 fa2010 Cardinal(27歳・♂・獅子)
 fa2141 御堂 葵(20歳・♀・狐)
 fa2478 相沢 セナ(21歳・♂・鴉)
 fa3736 深森風音(22歳・♀・一角獣)

●リプレイ本文

●待機
 フランクフルトはドイツの経済・金融の中心地であり、文豪ゲーテの故郷でもある。
 その二つの顔が示す通り、街には近代的な高層ビルが立ち並ぶ一方で、中世の面影を残した街角も多く残されていた。
 そんな町並みの片隅に、ルーペルト・バッハが住んだアパートメントがあるという。
「ごく、普通の場所‥‥だな」
 オープンテラスのカフェでテーブルに頬杖をつき、シヴェル・マクスウェル(fa0898)は道行く人の流れを眺める。
「奇をてらって城などに住んでいたら、それはそれで‥‥だが。ところでフィルゲンへの『罰ゲーム』は、100もふりとダーラント老と同室1時間の、どちらがいいだろうか?」
「目、マジだな」
 真剣な表情で尋ねるCardinal(fa2010)に、思わずシヴェルは苦笑した。
「‥‥仕事とはいえ‥‥肝心の本人が来ていませんから‥‥仕方ないです‥‥」
 淡々と呟きながら、シャノー・アヴェリン(fa1412)は両手で包んだコーヒーカップを傾ける。
「ぴ。フィルゲンさんなら、ダーラントさんと1時間の方が大変そう?」
 人差し指を口元に当て、小首を傾げるベス(fa0877)の予想に、ダーラント・バッハへ『報告』に赴いた時の事を思い出した早河恭司(fa0124)が、くっくと小さく笑った。
「確かにそうだね。あの硬直具合からすると‥‥イルマ?」
 傍らの少女がぼんやり思考に沈んでいる事に気付き、サングラスをずらした恭司は顔を覗き込んで様子を窺う。
「あ、はい!?」
 不意に名を呼ばれ、眼を瞬かせたイルマタル・アールトは、驚いて身を引く。そんな様子に苦笑しながら、彼は洒落たデザインのサングラスをかけ直した。
「気分が悪いとか、ない?」
「はい、すみません‥‥」
 その必要もないのに謝るイルマの頭を撫でながら、用心深く恭司は気にかかっていた話を切り出す。
「ところで、サッケさんの容態は?」
「お医者様の話では、順調に快方へ向かっているそうです。あの人を、『だぁくさいど』‥‥って、言うんですか? ルーペルトさんに‥‥襲われたので、病院でも厳重に警備を、してくれるそうです。それからマネージャーさんに、皆さんへご迷惑をかけないよう‥‥何度も注意されました」
 よっぽど念を押されたのか、ややしゅんとして話すイルマに笑いながら、恭司は安堵の息をついた。
 ヘルシンキでの一件の後、『古き竜』より欧州一円のWEAへ宛てて、ルーペルトが『堕落者』、すなわちDSであるという告発がなされた。
 ドイツ国内で、一族に向けての敵対的行動ならばドイツ支部内へ注意喚起のみで済むだろうが、国境を越えた上で第三者に、しかも公衆に獣人の所在を明かすような行為に及んだとあれば、見過ごす事も出来ない。
「ダーラント老は、本気なんだな‥‥」
 会話の端に出たDSという言葉に、シヴェルが低く呻く。
 先日、ルーペルトと直接対峙した彼女は、今まで相手になかった『明らかな悪意』を感じ取っていた。
 そんな思考を不意に遮って、軽快な電子音が鳴り始める。携帯を取り出したシヴェルは、通話ボタンを押して電話に出ると、仲間達に見守られつつ二言三言、短い言葉を交す。
「風音からだ。大家と、話がついたそうだ」
 通話を切ったシヴェルは、用件を五人へ伝えた。

●交渉
「まぁ、ご家族が心配してって事なら、致し方ないけどねぇ。確かに、なかなか帰ってこないっていう変わった人ではあるけど、それだけで。家賃は毎月ちゃんと払ってもらってるから、こっちとしては‥‥ねぇ」
 フィルゲンへ連絡して寄越してもらった『委任状』代わりのファックスと、自身の身分証を示すと、ふっくらとした体型の夫人はスペアキーを探しながら、とうとうと喋り続ける。
「もし不在の間に預かっている物があれば、確認してもいいかな」
『親戚』に扮した深森風音(fa3736)が問えば、大家夫人は首を左右に振った。
「特には、ないねぇ。同室だった子も、人付き合いは少なかったんじゃなかったないかねぇ」
「同室‥‥?」
「ああ‥‥あったあった。これが、部屋の鍵。それから、聞いてなかったのかい? あの子は一人じゃなく、友達と住んでたんだよ」
 思わぬ言葉に相沢 セナ(fa2478)が聞き返せば、鍵を探し出した大家夫人がそれを風音に手渡しながら頷いた。
「友達、ですか」
「別に珍しい事でも、なんでもないけどねぇ。一人で暮らすより、二人の方が経済的にも生活的にも楽だったりする事が多いから」
「それで、帰らなくなる前はどうだったんでしょうか? 帰らなくなる直前に、何か変わった事があったとか‥‥」
 重ねて尋ねる御堂 葵(fa2141)へ、首を捻って夫人は考え込む。
「さぁ‥‥何せ、随分前の事だしねぇ。あ、鍵はしばらく貸してあげるから、用が済んだら返しにきておくれ」
「ありがとう」
「あと、それから‥‥ちょっと、待っててもらえる?」
 礼を述べた風音の言葉が終わらぬうちに、ばたばたと夫人は奥へ引っ込んだ。怪訝な表情で、待つ事しばし。彼女は何枚かの色紙とサインペンを持って、戻ってくる。
「よかったら、サインを貰えないかねぇ。ほら、あんた達、ナントカってテレビによく出てるだろ?」
 喜色満面な夫人の頼みを断る理由も、特になく。
 困ったように顔を見合わせた三人は、リクエストに応じて紙とペンを受け取った。

●時間の止まった部屋
「それで、私達が来るまで暢気にサイン会をしていた‥‥と」
 くつくつと面白そうに笑うシヴェルに、力なく笑ってセナは黒髪を左右に揺らす。
「こういう時は、顔が売れているのも困り者ですね。かといって、サングラスや帽子をしたままでは、逆に怪しまれて詮索されますし」
「無用な好奇心は、煽らぬ方がいいからな」
 重々しく首を縦に振って、Cardinalが同意した。
 そんな会話の間に、風音は借りたスペアキーでアパートメントの最上階にある部屋の鍵を開けた。
 扉を開ければ、暗い室内から湿気たような、カビっぽいような、澱んだ空気が流れ出す。
 床やテーブルや調度などには、白い埃が均等に積もっていた。
「特に‥‥NWとか、いないみたいだね」
 NWが近くに居れば淡く光るという腕時計、Night−Warを見つめていたベスだが、反応はない。
「どうやら本当に‥‥長い間、誰も入っていないみたいですね。窓を開けて、風を通しましょうか」
 ハンカチを口元に当てた葵が、足元に気をつけながら窓へと向かう。
 ギシギシと音を立てて鎧戸が開け放たれ、差し込んだ光にイルマは思わず目を背けた。

 部屋はキッチンコーナーとひと続きになった広いリビングスペースに、寝室が二つ。後は納戸、バスルームといった、ごく一般的な設備が揃っていた。
「‥‥ここが‥‥そうですか‥‥」
 ゆっくりと、シャノーが辺りを見回す。
「ここに何か、残っているんでしょうか」
 不安げに呟くイルマへ、シャノーは険しい表情で首を横に振った。
「‥‥行動を、起こす前から‥‥自分の頭の中で‥‥勝手な決めつけを‥‥すべきでは、ないです‥‥。確かに、如才ない相手‥‥ですが、そう思う事が‥‥調査の甘さに繋がり‥‥引いては、見つかるはずだった‥‥手掛かりまで‥‥見失いかねません‥‥」
「あ、はい‥‥」
 真摯な表情で教えるシャノーへ、萎縮したようにイルマは項垂れて答える。
「‥‥言葉にする必要は‥‥ありません‥‥が、絶対に‥‥何かを見つけるという‥‥意気込みだけは‥‥常に、心に秘めておく様に‥‥」
 きゅっと口唇を固く結んで、少女はこっくりと頷く。
 そんな二人の様子をベスが心配そうに見守り‥‥だが、慌ててぷるぷると勢いよく頭を左右に振り。
「ぴ‥‥ぴゃ〜」
 ナンだかよろめいているベスの肩を、Cardinalが掴んで支えた。
「どうした」
「う、ううん。頭振り過ぎて、ちょっとクラクラしただけだから。ありがとう、レッドさん」
 えへと笑って、ベスは彼へ頭を下げた。

「男の部屋に無断で入るなんて、『乙女』としては恥じらうべきところなんだがな」
 そう言いながらもシヴェルはひょいひょいと二つの寝室を覗き込み、ずかずかと中へ足を踏み入れる。
「‥‥『乙女』?」
「そこは深く追求すると、後が怖い気がする」
 そんな彼女の背中に小首を傾げるセナに、視線を泳がせながら恭司が助言をした。
「とりあえず‥‥例の魔物に関する記述とか、ルーペルトが求めているモノが判るようなモノがあれば、いいんだけど。とはいえ、『女性の部屋』はやっぱり探し辛いよね」
 シヴェルの言葉から改めて意識したのか、ふっと恭司は嘆息する。
「そういえば、大家さんに聞いたのですが。やはり『ルーペルト・バッハ』の名で、ここを借りているようですね」
 思い出して説明するセナに、恭司は「そうなんだ」と苦笑した。
「この街でも、男性として振舞い続けていたんだろうか」
「でしょうね。それにしても‥‥」
 二人の会話を聞いていた葵は、肯定の言葉を挟むとぐるりと部屋を見回して。
「この部屋、こうも埃が溜まっていると、徹底的に掃除したくなりますね」
「ああ。葵さんも、そうなんだ。こう、掃き清めて、雑巾がけとかしたくなるよね」
 ‥‥日本人女性らしい、美徳の賜物だろうか。
 腕組みした風音もまた、ふつふつと不敵に笑っていた。

●不安定
 ひとまず部屋が『安全』と判ると、シャノーはバイクに積んだカメラを持ってきた。
「‥‥全員で、ここを探していても‥‥仕方ないですし‥‥私は、ルーペルトを知る人がいないか‥‥取材のフリをして、聞き込みを‥‥」
「気をつけて。彼なら、アパートごと焼き払う‥‥なんて事も、やりそうですしね」
 気遣うセナに、こくんと彼女は頷く。
「‥‥それから」
 物言いたげに、シャノーは恭司を見。
 イルマが葵やシヴェルと一緒に寝室で探し物をしている姿を確認すると、彼はシャノーへ近づいた。
「‥‥イルマが戦う決意をしたのは、良いのですが‥‥彼女の気質を考えると、その決意はどうしても‥‥危ういものに思えて‥‥」
 緩やかな彼女の言葉を聞いて、恭司も眉根を寄せる。
「俺も、別に反対はしないけど‥‥当然、賛成もできないな。こんな状況でなく普段の状況で言い出したんなら良かったんだけど」
「‥‥はい」
「イルマ‥‥居場所がないって、思ってるのかな?」
 恭司の後ろで話を聞いたベスが、しょんぼりと肩を落とした。
「どちらかというと、追い詰められている感があるのは気がかりだな。ここが、居場所だし‥‥もう少し力を抜く事が出来ればいいんだが」
 更に自分なりの見方を明かすCardinalもまた、長く見守っていた少女の情緒不安定さが気になっていた。静かな彼の言葉に、ベスはこくんと首を縦に振る。
「でもソレを口にしても、今のイルマには伝わらない気がするんだよね。だからあたしは、イルマが強くなろうとするなら応援しようって、決めたけど‥‥」
「‥‥彼女が漏らした‥‥カンテレが弾けない‥‥故に、戦いの場しかないとの言は‥‥当然、間違っています‥‥。ただ現段階で‥‥イルマの申し出を断れば‥‥不安定な彼女は、居場所がないと‥‥深く、思い悩むでしょう‥‥」
 目を伏せたシャノーに、ぎゅっと恭司は強く自分の拳を握り締める。
「ベスの言うとおり、俺達がここだって言っても、多分受け入れられないだろうね。居場所は‥‥『ここ』だっていう自信を、イルマが持てないと」
 その拳に、シャノーは急に顔を上げ、まじまじと恭司を見つめた。
「‥‥何?」
「‥‥いえ、そうですね‥‥イルマはきっと‥‥頼るだけでなく‥‥」
 自分自身が胸を張れる自信を、探している気がする、と。
 皆まで言わず、恭司の耳で揺れるハート型イヤリングを見ながら、彼女は思った。

●残された物
 生活感のない部屋から見つかった物は、少なかった。
 片方の部屋にはマットレスの下敷きになったり、隙間に落ちていた写真や走り書きのメモが数点。もう片方の部屋からはシヴェルがゴミ箱から拾い上げた、くしゃくしゃの紙が二枚。
 写真にはルーペルトと女性が写っており、Cardinalがそれをイルマに確認したところ、グードルーンと紹介された女性に似ていると判明し。
 風音はメモに書かれた電話番号を、聞き込みに出たシャノーへ伝えた。その結果、電話は近くのバーの番号であり、やはりグードルーンがそこで歌手として一時期バイトをしていた事。そして、ある日いきなり店にこなくなり、連絡も取れなくなって、それっきりだという話を突き止めた。
 そして、皺だらけの丸められた紙は。
「WEAの‥‥NW退治の依頼と、結果報告書ですね」
 ドイツ語表記の書面を視線で追い、セナはその内容を読み上げる。
 このアパート近くにNWの出現が確認され、WEAは対応を行ってNWを排除する者を募ったという−−獣人達には、ごく普通の話である。
 依頼には数名が応募者し、彼らは協力して任にあたった。
 捜索の結果、間もなく当該NWを発見して排除を試みたものの、何者かによって妨害を受けてNWを逃す。その後、捜索と警戒を続行したものの、再度NWを発見する事は出来ず、依頼は打ち切られたという。
「内容はともあれ、ごく普通の報告ですが‥‥でもその報告書が、どうしてここに?」
 思案する葵は、皺の伸ばされた紙をずっと黙読し直し、最後に目を止める。
「ぴ‥‥イルマちゃん。一緒に、大家さんへそろそろ終わりますって、知らせに行こうか」
 ただならぬ空気を察して、ベスがイルマの袖を引いた。
 二人の少女が席を外したところで、恭司もまた目にしたサインに息を飲んだ。
「報告者が‥‥J・アールト? これって‥‥」
 彼の言葉に思うところは同じなれど、答える者は‥‥なかった。