MusicFesta−Go Music!アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
風華弓弦
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芸能 |
11Lv以上
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獣人 |
フリー
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難度 |
やや難
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報酬 |
154.7万円
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参加人数 |
10人
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サポート |
0人
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期間 |
08/22〜08/24
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●本文
●ミュージック・フェスタ開催
夏空の下で、心行くまで音楽を楽しもう−−。
そんな主旨で、今年も『ミュージック・フェスタ』が開催される。
J−popの大手プロダクション、アイベックスが主催とあって大物アーティストが登場する、話題の野外イベントだ。
今年も夏がやってきた。
そして、真夏の音楽の祭典が始まる。
●Go Music!
今年のミュージック・フェスタは、海辺でライブを行う事に決まった。
ビーチサイドで大々的に、しかも今回は音楽業界だけに留まらず、様々なイベントでライブを盛り上げる。
例えば、人気バラエティ番組『とにかく捕まえろっ!』の出張版。一風変わった趣向のライブに、砂浜でのビーチ・スポーツなどなど。
夏の太陽の下でバカ騒ぎをしよう−−そんな趣旨の裏では、先日から起きている始皇帝陵を騒動を巡っての緊迫した空気の一掃、あるいは獣人達へのねぎらいといった意図も、込められていた。
「ミュージック・フェスタのオープニングか‥‥相変わらず、大役だな」
いつものやたらと熱くて濃いブラックコーヒーを淹れると、ライブハウス『Limelight』オーナー佐伯 炎(さえき・えん)はコーヒーカップを友人に前に置いた。カップを手にした音楽プロデューサー川沢一二三(かわさわ・ひふみ)は、立ち上る湯気を吹く。
「ライブ自体は去年もやったけど、今年は規模が違うからね。だから、開幕のライブも名の通ったミュージシャンを使って、盛大にやるって事になった」
「そりゃあ、大変そうだな。舞台を整える連中も、出る連中も」
他人事のように言いながら、佐伯は煙草に火を点けた。
カップを傾けた川沢は、しみじみと息を吐く。
「まぁ、やりがいのある仕事だし、やるだけの事はやるけどね。佐伯の方だって今回も、『仕事』があるんだろ?」
「ああ。お前と較べれば気楽な仕事だが‥‥仕事である事に、変わりもねぇしな。せいぜい、互いに頑張るってとこか」
笑いながら、佐伯は灰皿に煙草の灰を落とした。
数日後、ミュージシャン達にスケジュールの『打診』が届いた。
アイベックスが主催する『ミュージック・フェスタ』の、オープニング・ライブの出演者を募るという話である。
海辺に特設会場を用意して行われる、音楽の祭典。
その開幕を飾るライブだという主旨さえ踏まえれば、演出などはある程度自由にして構わないとの事だ。
●リプレイ本文
●Standby
「おはようございまーす」
機材用のテントが張られたステージ裏に入れば、いつもの挨拶が次々と返ってきた。
スチールの骨組みで組み上げられたステージは、背面に黒い幕が張られ、上部や左右では照明設備やスピーカーの設置が進む。
広い『客席』スペースには、椅子代わりに『座席』を示すテープが砂の上に渡され。左右両脇には、音のズレが生じぬよう計算された位置にやぐらが立ち、スピーカーがセットされる。
イベント会場各所には、アイベックスのロゴ。もっとも、オープニング出演者は、誰一人アイベックスに所属していないが‥‥。
「リハの準備、お願いします!」
スタッフが、声を張り上げて呼んだ。
時計の針が12時を差す頃には、無人の砂地は人でひしめき。
開演を待つ熱気の中、最初のミュージシャンがステージへ上がった。
●マリーカ・フォルケン(fa2457)〜ShinyDays
ハイビスカスのコサージュを飾り、豊かな胸の胸元を強調するように、襟ぐりの大きく開いた白いノースリーブドレスをまとったマリーカが、ステージにセットされたキーボードの前に立つ。
「皆さん、いい恋をしましたか? 夏は恋の季節ですものね。だから恋した人も、これからの人も聞いて下さい。『ShinyDays』」
最近すっかり上達した日本語でタイトルを紹介し、キーボードに指を落とす。
軽いタッチの明るいメロディから、ゆっくりとマイクへ語りかける。
「 SummerDays
夏の日は終わらない この輝く日々をあなたと
あなたと出会ったのは 運命のいたずら
夏の陽が見せた幻ね もう恋なんて忘れていたのに
あなたと出会って まるで少女のようね わたし
ShinyDays
まだ夏は終わらない この輝く日々をあなたと
あなたと過ごした日々は 輝く夏の想い出
夏の陽がくれた贈り物 恋する気持ちって素敵ね
あなたと過ごして 生まれ変わったみたいよ わたし
だから ShinyDream この日々を終わらせないで
ずっとあなたと二人で 」
恋人との思いを、情感を込めて歌い上げ。
「ありがとう、皆さん。残り少ない夏の日々を思い切り楽しんで下さい」
演奏を終えたマリーカは、軽く手を振ってステージを降りた。
●『Little Bird』〜青空花火&Change World
「申し訳ありませんが、曲の構成変更をお願いします」
最初のリハが終わった後、川沢一二三は厳しい表情で『Little Bird』の三人−−椿(fa2495)と七瀬紫音(fa5302)、祥月 暁緒(fa5939)へ告げた。
「紫音さんと暁緒さんのユニットなら、まだいいんですが‥‥椿さんのネームバリューが下手に大きい上、実力差もありますから、このままでは暁緒さんを食いかねない。ここははライブハウスでもなければ、彼女も場数を踏んでいませんからね」
「じゃあ、どうなるんですか? 本番まで、時間もないですし」
不安げな表情で、暁緒が川沢へ尋ねる。
本来の進行では曲の前半を椿が、後半を椿と暁緒がツインボーカルを取る形だったが。
「メインは椿さん、暁緒さんはコーラスに専念する形でお願いします。暁緒さんのパートは本来、椿さんのユニットの曲ですから、合わせられるでしょう。それから」
視線を向けられた紫音は、やや表情を強張らせる。
「私も、何か?」
「プロジェクターを使っての映像演出ですが、少し難しいですね。スクリーンの問題もありますし‥‥潮風と砂、それに真昼間の野外ですから。映像に頼るのも手ですが、紫音さん達の音で、お客さんと『勝負』してみて下さい」
次のリハはそれで合わせますからと、川沢は締め括った。
イントロは、軽く叩かれるドラムから。
全体的にリズミカルかつ、ミドルテンポの明るく軽やかで。
「 次に生まれてくる時も (La la)
僕は僕で 君は君だったらいいな 」
『 誰にも似てない僕らで行こう 』
「 他人の真似なんて必要Nothing
夜空を彩る華じゃなくても
ちゃんと音(こえ)は聴こえるよね 」
『 青空の真ん中で自己主張する花火 』
「 カタチは目に映らなくても 僕はいつも傍にいるから 」
『 Always wishing you a good luck and happy days! 』
青と白のライトが、客席に向けて明滅する。
ステージの前面に出て大きく手を振って声援に応える椿は、パステルブルーのチャイナ風シャツに、青い石がはまったブローチをつけ。
髪に白い花を編込んだ暁緒は、胸に白い花のコサージュをあしらったパステルグリーンのフレアーサマードレスを纏って、スタンドマイクの前に立つ。
白いオフショルダージャケットに、パステルイエローのミニ丈のワンピースを着た紫音は、ショルダーキーボードを弾く。
「 「変えられる」んじゃなく 「変えて」生きたい
そこら中溢れる小さな幸せ 気づける人になりたいよ 」
『 傷つく事を恐れずに
分かり合おう 変えていこう 世界を
Keep on singing
It’s my goal in life
I want make change world melody 』
投げられる声援や名前のコールは、『有名人』たる椿へ向けられたものばかりで。
メドレーで二曲を連続して演奏した『Little Bird』だったが、観客から見れば『椿 & Little Bird』のステージで終わる。
「やっぱり‥‥ネームバリューも技術も、私達とは全然違いますね」
呟く暁緒に、紫音はぎゅっと拳を握った。
「うん。でも私も実力をつけて、いつか‥‥」
中東で行われたアイドル選抜に通過した紫音と暁緒だが、『ビッグネーム』の前ではまだまだ力不足だと実感し‥‥二人にとっては、辛いながらも一つのステップを踏んだステージとなった。
「さて、次のステージのお手伝い、頑張ってくるかな」
「頑張って下さい」
改めて気合を入れ、再びステージへと向かう紫音の背中に、暁緒がエールを送った。
●あずさ&お兄さん(fa2132)〜Enjoy! Summertime
ステージへ現れた可憐な『少女』の姿に、歓声が上がった。
水色を基調とする涼しげなワンピース、シャスゲインの裾を揺らし。
長さ5m、幅30cmはあるレインボーリボンを身体に巻いたあずさが、その両端をひらひらと振って遊ぶ。
あずさの後ろでは、アレクサンドル(fa4557)が巧みにリードするリズムに、紫音がキーボードを合わせる。
曲は特殊な技巧も突飛な転調もない、スタンダードでシンプルな構成のアイドル風のポップソング。
歌唱力が足らない分、自分のペースにあわせた選曲だ。
歩くような速さのテンポで演奏する二人のバックアップを受け、彼女は広いステージを右へ左へと歩き。
「夏を最後まで楽しもうという女の子の気持ち」をイメージして、おおらかに楽しげに、そして底抜けに脳天気に歌い上げる。
唯一、歌の所々に彼女の『芸風』−−片手にはめたマッチョでオカマな人形『お兄さん』による腹話術での突込み−−を、織り交ぜながら。
ウィンドチャイムが、シャラリと響く。
「 今年の夏は 一度きりだから
最後の最後まで 楽しまなきゃ損でしょ
宿題とか 嫌なことなんか
全部忘れちゃえ 思い出すのは秋でいい 」
『 いや、よくないから! 』
そのリズムとコミカルなやり取りで、会場のテンポを掴み取る。
「聞いてくれて、ありがとう! それからお二人も、ありがとうございました!」
歓声の中であずさは聴衆へ、それからアレクサンドルと紫音へも礼を述べ、ステージを降りた。
●『BLUE−M』〜羅針盤〜future
「よろしくお願いしますわね」
出番を前にして、星野 宇海(fa0379)がエレキギターとキーボードのサポートをする椿とマリーカに一礼し、アレクサンドルもまた恭しくシルクハットを取る。
それから『BLUE−M』の二人は、ステージへ駆け上がり。
「BLUE−Mから皆に愛を込めて! 『羅針盤』、行くわよ!」
宇海の呼びかけに、聴衆は歓声で応えた。
白のドレスシャツの上に、青いブローチを留めた藍のベストを着てドラムの前に座ったアレクサンドルが、スティックを叩いてカウントし。
一斉に、全ての楽器が鳴り響いた。
アップテンポなメロディに、白い袖無しのカジュアルな膝下丈のサマーワンピースに、青いレースショールを羽織った宇海が、ステージの中央でリズムを取り。
そして、言葉を切り出す。
「 両手広げて 勇気を出して 扉を開けてごらん!
夏の空見上げ ほら! 希望が輝いている
僕達はまだまだ行ける 諦めないで進め(Don’t give it up!)
そこに仲間がいるから 笑顔があるから(Do be brave!)
未知の世界に向かう船 滑り出したらノンストップ止まらない
面舵いっぱい 目指すは彼方 希望の大地
怖いものなんて何もないさ 」
ドラムの連打にキーボードのグリッサンドの、音の連続。
煽るように、宇海はスカートを翻して右に左に駆け回り。
ステージ中央に戻ると、夏雲の浮かぶ青空を指差す。
『 進め! 心の羅針盤の示すまま 』
「 嵐も灼熱の太陽も いっきに越えて駆け抜けろ!
夢を乗せて真っ直ぐに 明日に向かって突き進め!
未来は僕らのために ある! 」
ラストは、アレクサンドル以外の全員がジャンプして。
着地と同時に、バスドラムの下にアレクサンドルが仕掛けた花火が炸裂し、シャワーのように紙吹雪を青空と砂浜へ降らせた。
「次も盛り上がって行きましょう! 『B.A.R』!」
紙吹雪の中で、宇海が最後のアーティストをコールした。
●『B.A.R』〜B.A.Rメドレー【SSS】
「結構な大舞台だけど、いつも通り気楽に皆が楽しめるよう、頑張るとしましょうか。歌えりゃ何処でもいいけど、大舞台だと更に燃えてくるのは、度し難い性かなー」
聴衆の数に、ラシア・エルミナール(fa1376)が密かに笑み。
「ラシアさんとユニット、かあ。またひとつ念願をクリア、ね。さあ、張り切って行くわよ♪」
小さく呟くアイリーン(fa1814)は、気合を入れていた。
「大舞台に立つには、歌も踊りもまだまだだけど‥‥感じている事、全力以上に表現して伝えたいな。ラシアさんとアイリーンさんも一緒だし、きっとできるよね☆」
両手を広げたベス(fa0877)が、共演する二人へぎゅっと抱き付く。
「‥‥ベス」
「ぴよ?」
「くっつくと‥‥暑い」
そこへ、宇海のコールが聞こえた。
軽快なアップテンポのBGMに乗せて、深く麦わら帽子を被った三人が姿を現す。
両翼と真ん中、それぞれの位置につき。
中央のオレンジのサマードレス姿の少女がスタンドマイクへと進み出て、帽子を取った。
陽光を反射する金の髪が現れると、わっと声が上がる。
手にした帽子をアイリーンが軽く振ると、それは大きくなった。
テンションの高いエレキギターのメロディに乗せ、アイリーンはマイクを握る。
「 冴えない顔した貴方の
心は空の見えない Cloudy Heart
無理した笑顔の台詞は
零れ落ちそうな Tears Rain
涙は見せない人だけれども
時には全部投げつけてよ
I’m a Shinig Girl!
強い雨がどれだけ降り続いたって
貴方の側で消せはしない輝く太陽になるから
I’m a Shinig Girl!
輝きが雲も雨も蹴散らして
私を映す澄み切った瞳を早く見たいから 」
左手で小柄な少女がステップを踏み、右手ではスレンダーな女性がコーラスを添える。
元気な歌声を披露したアイリーンは、歌い終えると右手を上げた。
「ユニット『B.A.R』、1曲目は私、アイリーンの『Shinig Girl』♪ 2曲目は‥‥ラシア・エルミナールで『Illusion』!」
紹介と共に、黒のサマードレスを纏ったコーラスの女性が、アイリーンと入れ替わりに進み出て、麦わら帽子を取る。
現れた黒髪と挑戦的な笑顔に、会場は大きなどよめきに包まれた。
それを他所に曲は、ビートの利いた重厚なメロディへと変わり。
揺さぶるようなパワフルな歌声を、ラシアが響かせる。
「 照りつける太陽の下で
揺れる幻(かげ)ただ追いかけてる
届かないことを 悲しむよりも
選んだこの道 後悔したくない
倒れるほど 早く強く
熱く駆けてみたいから
Burning Road
Burning Road
見上げれば
遠くかすむ地平線
いつか届くその日まで
胸に留めたこのDesireをUntie it! 」
抑えた序盤から、ラストは駆け抜けて、フェードアウトし。
「よーし。ヤマも越えたし、三曲目でクライマックス行こうか。ラストっ娘、ベスで『Go! Heat☆』」
弾かれた様に、赤のサマードレスのベスが麦わら帽子を取り。
声と拍手に応えるように、前へ飛び出す。
「 rise! 昇る太陽 shine! 輝く海
浜辺を駆け抜ける風に 負けないように走り出す
Go! Heat☆ 太陽よりも 熱くなれ!
8月の日差しを共感出来るのは この場所この時この瞬間だけ
so feel on summer 太陽の鼓動(ビート)
break! 殻を破って dash! 君も走ろう
凍て付いた君の心を とかす太陽になりたい
Go! Heat☆ 今よりもっと 熱くなる! 」
夏の太陽に向けて、明るく伸びやかに。
「まだまだ終わらないよ! 最後まで聞いてね☆SUN SHINE SINGERS!」
ベスの言葉と同時に、小気味良いリズムは落ち着いたピアノのスローメロディへと変わる。
「 胸に秘めた輝きが 空へ届くその日まで
この胸焦がすビートを ずっとずっと歌い続ける 」
クールダウンする様に、緩やかに言葉を紡ぎ。
最後に三人は、サインを入れた麦わら帽子を高々と聴衆の上の青空へと放り投げた。
「アイベックスMusic Festa、夏のお祭りを楽しんで下さい!」
最後は出演者が全員揃って一礼し、祭典は幕を開けた。