MusicFesta/VivaEstateアジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
風華弓弦
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芸能 |
4Lv以上
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獣人 |
フリー
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難度 |
普通
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報酬 |
13.8万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
08/22〜08/24
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●本文
●ミュージック・フェスタ開催
夏空の下で、心行くまで音楽を楽しもう−−。
そんな主旨で、今年も『ミュージック・フェスタ』が開催される。
J−popの大手プロダクション、アイベックスが主催とあって大物アーティストが登場する、話題の野外イベントだ。
今年も夏がやってきた。
そして、真夏の音楽の祭典が始まる。
●砂浜で運動会!?
今年のミュージック・フェスタは、海辺でライブを行う事に決まった。
ビーチサイドで大々的に、しかも今回は音楽業界だけに留まらず、様々なイベントでライブを盛り上げる。
例えば、人気バラエティ番組『とにかく捕まえろっ!』の出張版。一風変わった趣向のライブに、砂浜でのビーチ・スポーツなどなど。
夏の太陽の下でバカ騒ぎをしよう−−そんな趣旨の裏では、先日から起きている始皇帝陵を騒動を巡っての緊迫した空気の一掃、あるいは獣人達へのねぎらいといった意図も、込められていた。
「アイベックス中心になってるイベントだけど、この夏は大々的にやるって事で、他にもいろいろと声をかけてるんです」
イベント・プロデューサーの説明に、高原 瞬(たかはら・しゅん)は納得した表情をした。
「それで、俺も呼ばれたんだね」
「はい。ビーチ・スポーツのコーナーで、司会をお願いしようと思いまして」
プロデューサーの差し出した企画書には、三つの競技の説明が書かれていた。
基本的に競技は二人一組で行われ、最終決戦で勝者が一名に決定する。
1)熱闘! ビーチバレー
ビーチバレー対戦。砂の上で、華麗なる空中戦!
・ルール
1チーム2名の選手で対戦、コート内でのポジションは自由。
ボールへの接触は3回まで(ブロックも含める)。この回数以内で、相手コートにボールを返し、相手がボールを戻せなければ得点となるラリーポイント制をとる。
先に7点を先取する3セットマッチで、2セット先取したチームが勝者となる。
2)暑さ熱さも我慢大会!
どてらを着てコタツに入り、熱々の鍋をつつく。熱い時こそ、汗を流せ!
・ルール
脱落した順番に敗者となる。最後まで残った者が、勝者。
敗者はまだ競技に残っている者へ、直接接触する以外の妨害的行為を行っても構わない。
例えば競技者を団扇で扇いだり、携帯カイロを貼るのはアウト。しかし、目の前で海に入ったり、水を飲んだりするのはセーフ。
3)決戦! ビーチフラッグス
最終決戦は、ビーチフラッグス。砂に突き立つ勝利の旗を奪うのは、誰だ!?
・ルール
砂に差したフラッグから20m程はなれ、背を向けてうつぶせに伏せる。両手はあごの下に置く。
号砲の後、フラッグに向けて走り、フラッグを掴んだ者が勝者。椅子取りゲームの要領で、取る事ができるフラッグは人数に合わせて減らされ、最後は二人が一本のフラッグを争う。フラッグの本数は、8人:6本−6人:4本−4人:2本−2人:1本。
「‥‥暑そうだね」
「はい、暑苦しいです」
にこやかに答えるプロデューサーに、自分が競技する側でなくてよかったと、表情をこわばらせる瞬だった。
●リプレイ本文
●汗を流そう、夏だから!
抜けるような青い空に、白い夏雲が浮かぶ。
視線を下ろせば広い海に、砂浜。そして‥‥。
『夏の祭典Music Festa、みんな楽しんでますかー!』
マイクを通して呼びかける高原 瞬に、浜辺に設置された『雛壇』に座ったギャラリーが声を上げる。
『それじゃあ、浜辺の運動会。選手の入場です!』
高らかにファンファーレが鳴り、スピーカーから流れるマーチに合わせて元気よく、あるいはダラダラと、8人の選手が雛壇に挟まれた中央のスペースに『入場』してきた。
『まず最初に現れたのは片倉神無&パトリシアチーム。燻し銀の演技派俳優と、多方面に渡って活動する若手ボーカリストのコンビです!』
健康的なワンピース水着姿で笑顔で大きくギャラリーに手を振るパトリシア(fa3800)に対し、トランクス水着の片倉 神無(fa3678)は面倒そうに片手を挙げる。
「嬢ちゃんにとっては、『あの野郎』程の相方じゃないと思うが‥‥宜しく頼まぁな」
「こちらこそ、組んでいただいてありがとうございます。できれば祝杯といきたいところですけどね」
にやりと意味深に笑う男を、満面の笑顔で少女が見上げた。
『次にSIGMA&角倉雪恋チーム。プロレスラーと探検リポーターという、身体が資本っぽい2人のチームです!』
慣れたボクサータイプの水着を履いたSIGMA(fa0728)と、白が基調のホルタービキニ、シェイプガールを着た角倉・雪恋(fa5003)は、揃って笑顔で手を振り、ギャラリーの声援に応える。
「角倉さんと俺なら、スピードでは引けを取らないだろうな。その速さを生かして、優勝を狙おうぜ」
「ええ。よろしくね」
にっと笑顔を交わし、2人は握った拳を打ち付け合った。
『三番手の入場は、ブリッツ・アスカ&モヒカン。女優としての才能をみせる格闘アイドルと、個性派悪役俳優の取り合わせは、さながら『美女と野獣』といった感じでしょうか!』
ビーチバレー風のセパレート水着に身を包むブリッツ・アスカ(fa2321)は、ひときわ大きくなったギャラリーの声に両手を挙げ。男性用の黒ビキニ水着という、別の意味でインパクトの強いモヒカン(fa2944)が、面倒そうにその後ろから続く。
「やる以上は、勝ちに行かなきゃな!」
出来るだけ視線を下げないようにしながら、アスカがモヒカンへ握った拳の親指を立て。
「ま‥‥俺としては、ヅラが取れなきゃいい」
スキンヘッドの上にモヒカンカットのカツラを被るモヒカンは、巨躯を揺らしながら暑そうに太陽を睨んだ。
『そして最後は、ジョニー・マッスルマン&高柳徹平チーム。体当たりの演技や番組の多い男2人のコンビですが、果たして浜辺のダークホースとなるんでしょうか!』
「無理せず無茶せず、楽しんで夏を満喫しましょう。ムチャキングとか、あの辺のTOMIテレビのお笑い番組じゃないんですから」
ロングトランクス水着の高柳 徹平(fa5394)が、おもむろに『相方』を見やれば。
「ミーのこのマッスル・ボディを、アピールしに来たZE〜〜〜! HAHAHAHA〜〜〜!」
ラメ憑きホワイトパールのブーメランビキニ着用のジョニー・マッスルマン(fa3014)が、憑かれたテンションの高さでギャラリーにアピールしている。
「‥‥もう、満喫してるみたいですね‥‥」
そのテンションの高さに、徹平は思わず目眩を覚えた。
『最初の二競技はチーム戦で行われ、最終競技が個人戦になります。
さぁ、優勝するのは誰でしょう! なお実況は俺、高原瞬がお送りしまーす!』
砂上の戦場に並んだ8人へ、一斉に拍手が送られた。
●第一回戦:ビーチバレー
くじ引きで、初戦はSIGMA&雪恋 vs 神無&パトリシア、そしてアスカ&モヒカン vs ジョニー&徹平となった。
雛壇に挟まれた二面のコートに、それぞれのチームがスタンバイする。
『第一回戦ビーチバレー、いよいよホイッスルが鳴ります!』
ネット越しに各チームが威嚇しあう中、笛の音が響いた。
「さて、と。年長者を労わって、少しは手加減してくれよ」
「そうだな。手早く終わらせて、煙草でも吸いながら俺達の試合を見物してもらおうか」
コートでは、『前衛』に立った神無とSIGMAがネット越しに牽制しあう。
先行のサーブ権を得た雪恋が、ビーチバレー用のボールを不敵に掲げた。
「ふふふ〜、アレで鍛えた腕を見せる時が来たわね。ご近所でのママさんバ‥‥って、げふんげふんっ。今のカットね! あたし、永遠のハタチだからっ」
「角倉さ〜ん。収録じゃないから、編集できないですよ〜?」
取り繕う雪恋に、ネット向こうからパトリシアが突っ込んだ。
「え!? あ、じゃあ、聞かなかった事で、その‥‥えぇーい、ボールに頭ぶつけて忘れてーっ!」
無体な注文と共に、雪恋がサーブする。
風切るボールは、相手陣営の真ん中へ一直線に飛び。
素早く落下点へ駆け込んだパトリシアが、タイミングを合わせる。
膝を曲げ、勢いを殺して打ち返したボールは、ネット際の神無に向かってふわりと上がり。
2タッチ目で、神無が軽くネットの向こうへ送る。
パトリシアのアタックを警戒していたSIGMAは、ブロックのタイミングをずらされ。
それでも持ち前の反射神経でとっさに手を伸ばし、ボールを拾った。
「SIGMAさん!」
生き残ったボールに追い付いた雪恋が、トスを上げ。
「でぇいっ!」
合わせて跳んだSIGMAの右肩から上腕の筋肉が隆起し、強烈なアタックを叩き出す!
手を伸ばした神無のブロックが弾くも、押し返すに至らず高く上がるボール。
「くそ‥‥っ」
「私が!」
パトリシアが追いかけるも、あえなくボールはギャラリー席に落ち。
審判が、SIGMAと雪恋のチーム側の旗を揚げた。
「まだまだ、これからです!」
「ああ」
すぐに気持ちを切り替えるパトリシアに、神無が頷く。
二本目のサーブが、上がった。
そんな、いい勝負が展開されている一方で。
もう片方のコートでは、また別の戦い−−ある意味で精神戦−−が繰り広げられていた。
‥‥ネットの向こうに、『肉壁』が立ち塞がっている。
それが、徹平の第一印象だった。
身長2m、横幅不明のモヒカンが、ネットを挟んで彼と向かい合っていた。
正面に立たれると、後ろのアスカが完全に見えない。
「‥‥俺、出る仕事を間違えてない‥‥よな」
徹平は、別の意味で目眩を覚える。
それは、敵陣のアスカも同様だった。
サーブを行うジョニーが、くるりと背を向けたかと思うと。
何故か水着を引っ張り、尻と布に割り箸を挟む。
それを目にしたギャラリーの間にも、奇妙な白い沈黙空間が広がった。
「鍛え上げた大臀筋の尻圧(ケツアツ)で、割り箸へし折りサーブを決めるZE! HAHAHAーッ!」
「どこからでも、かかってこい!」
サムアップサインで高らかに笑うジョニーに、モヒカンのみが応える。
そして。
「いくZE! 大臀筋割り箸へし折りサーブ!」
ベキッ!
「アッー! 尻が、アッー!!」
「普通にやれーっ!」
コートは、文字で書けない惨状の場と化した‥‥。
結果。
SIGMAと雪恋は粘り勝ち、アスカとモヒカンは相手の反則負けで、決勝へ勝ち上がった。
SIGMA達は善戦したものの、最終的には一試合分のハンデもあり。
ビーチバレーはアスカとモヒカンのチームの勝利となった。
●第二回戦:我慢大会
『さて、第二戦となる我慢大会。夏のビーチでは、地獄の光景が繰り広げられています』
「し、死むぅ‥‥」
「なべ‥‥うま‥‥」
「あばばばばばーっ、何も見えない聞こえないーっ!」
砂浜の上に敷かれたマットの上では、夏場とは思えない状況が展開されていた。
コタツに入り、ドテラを着て、熱々のキムチ鍋をつつく。
周りには、電気ストーブが並び、辺り一体に蜃気楼が見えそうな光景。
それに加えて、早々にリタイヤして様々な『誘惑』を振りまく側に回った競技者が加わる。
「う〜ん、ひと汗かいた後に海に入るのって、気持ちいい〜」
ビキニ姿の雪恋が波と戯れ、男性陣に揺さぶりをかけた。
「‥‥そろそろ、俺もリタイアしようかなぁ‥‥」
その涼しげな様子を見ながら、徹平が呟く。
一方で。
「この鍛え上げられたミーの筋肉を、存分に鑑賞するんだZE!」
『負傷』をおして、ジョニーがポージングを決めていた。
「‥‥暑苦しい」
トレンチコートの上からドテラを着た神無が、シケモクを咥え、眉間に皺を寄せてジョニーを睨みながらぼやく。
「どこを見渡しても、マッチョマッチョマッチョマッチョ‥‥ああああ〜っ、萌〜え〜な〜い〜っ! こうなったら‥‥ふ、ふふふふふ‥‥」
コタツを叩いて(別の意味で)苦悶するパトリシアは、(更に別の意味で)『自家発電』を開始する。
「ビーチバレーは一位だし、次の競技を考えれば無駄に体力を使うのは‥‥得策じゃないな」
「ふむ‥‥そうだな」
周りの状況を見てアスカが判断し、モヒカンが同意した。
その判断をしたのは、彼女らだけでなく。
「見切りが早いな‥‥潮時か」
雪恋からの援護の『誤爆』を避けるため、ずっと目を閉じていたSIGMAが周囲の気配に目を開けた。
次の競技を考えて、我慢大会は早めにリタイアする者が続出し。
神無と、パトリシア、SIGMA、以下はアスカ、モヒカン、徹平、雪恋、ジョニー
いよいよ、最終競技へと勝負はなだれ込む。
●決戦:ビーチフラッグス
砂浜の上に、小さな小旗が6本立てられている。
そこから20m離れた位置に、選手達が並んでいた。
『砂上の運動会も、いよいよ最終戦となりました! 現在の順位はトップがアスカさん。後は接戦でSIGMAさん、モヒカンさん、片倉さん、パトリシアさん、角倉さん、高柳さん、引き離されて最下位のジョニーさんとなっています。最後の種目はビーチフラッグス。勝利の旗を掴み取るのは、一体誰でしょうか!?』
8人の並び順は、右端から紹介された順位に合わせている。
誰がどの旗を狙うか‥‥あるいは狙わせるかは、一種の賭けと駆け引きだ。
『では、位置についてー!』
瞬の掛け声に8人は旗に背を向け、うつぶせに伏せて両手はあごの下に置くという、独特のスタート姿勢につく。
緊迫した、数秒の空白の後。
パンッ!
響く号砲に、8人は一斉に立ち上がり、砂を蹴って踵を返す。
真っ先に飛び出したのは、以外にも雪恋。続いてアスカ、SIGMAが一歩リードする。
先んじられたモヒカンは、標的を左側の神無と競る事に決め。
既に競る体力を先の我慢大会で費やした神無は、無理に競らずパトリシアへ左の旗を譲る。
雪恋が先んじた為、徹平はジョニーと旗を争う事となる。
それは僅か20mの距離の、数秒の出来事で。
手を伸ばした8人は、砂を巻き上げた。
『さぁ、旗を掴んだのは‥‥まずは角倉さん、アスカさん。そしてSIGMAさん、モヒカンさん、パトリシアさん、高柳さんとなりました! 残念ながら、片倉さんとジョニーさんが脱落です!』
「NO〜〜〜ッ!」
「じゃあな、パトリシアの嬢ちゃん。後は頑張れよ」
砂に膝を突き、天を仰いで悔しがるジョニーとは対照的に、残念そうな素振りもなく砂を払った神無はひらりと片手を振った。
続いて6人で4本の旗を争い、スピードに負けたモヒカンと徹平が脱落。
更に、これまでの競技でスタミナと集中力の尽きたパトリシアと雪恋が、競り負けて。
最終戦は、アスカとSIGMAの一騎打ちとなった。
「手加減は、しないからな」
旗の右側に立つアスカに、左側に立つSIGMAが親指を立てる。
「無論、望むところだ。最後の勝負だしな」
『それでは、位置について‥‥』
二人は、並んでうつ伏せになり。
獲物を狙う肉食獣の如く、全身に緊張を行き渡らせて、合図をじっと待つ。
ギャラリーも、じっと息を潜め。
静寂を、最後の号砲が割った。
弾かれたバネの様に、身を起こす。
身を起こしたのは、アスカが先だ。
だがリーチやストライドなら、SIGMAが勝る。
腕を使った妨害や激しい接触行為は失格となるため、二人はただひたすら右手を伸ばし。
小旗が、砂の中に消える。
『さぁ、旗を握っているのはどっちだ!』
静まり返る場内。
砂に埋もれた手を引き抜き。
拳に握った旗を掲げ、5秒に満たない戦いを制したのは。
−−SIGMAだった。
「あああ、負けたーっ! 触ったのにーっ!」
ぺたんと座り込み、砂を叩いてアスカが悔しがる。
そんな彼女へ、SIGMAは左手を差し出した。
「俺の方が、利き腕側だったからな。スタート位置が逆なら、おまえの勝ちだったろう」
そのごつい手を、むーっとアスカは睨み。
渋々、手を借りて立ち上がる。
健闘を称えるように、浜辺に拍手が鳴り響いた。
『最終種目が終わったところで、総合結果の発表です。
総合第三位はパトリシアさんとモヒカンさん。
第二位が、アスカさん、
そして第一位は、SIGMAさんとなりました。
SIGMAさん、おめでとうございます。よければ一言、お願いします!』
瞬のフリに、SIGMAは雪恋を指差して。
「最高のパートナーと、最高の身体が導いた勝利ってところだな」
「あら。ありがと、SIGMAさん」
『パートナー』へ、雪恋はウィンクを投げる。
『ありがとうございました。皆さんっ、選手のみんなへ、最後に大きな拍手をっ!』
ひときわ大きな拍手が、波の音を掻き消して響いた。