恋の素描〜Last likeアジア・オセアニア
種類 |
シリーズ
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担当 |
風華弓弦
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
4.6万円
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参加人数 |
10人
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サポート |
0人
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期間 |
01/14〜01/20
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●本文
●『恋の素描〜Last like,First love』
それは、一通の電話から始まった。
−−家族を保護して欲しい。前金は振り込んだ。無事に保護したら、更に金を払おう。
次はファックス。そこには、ムン・ミエという女性のデータが記されている。
この女性を保護すればいいらしい。だが「いつまで」「どこに」保護すればいいのかは不明だ。相手の女性が知っているかもしれないが。
口座を調べれば、前金は確かに振り込まれていた。
ならば『依頼』をなすのみだ。
何故なら、それが俺−−便利屋サゴン・ジオの仕事なのだから。
●『Last like』アウトライン
『配役。
登場人物A:サゴン・ジオ。男。年齢20代後半〜30代前半。職業、便利屋。ナンという相手から、「家族であるムン・ミエを保護して欲しい」という依頼を受ける。
登場人物B:ムン・ミエ。女。年齢18〜22。職業、学生。両親は共に行方不明。
登場人物C:クォン・チャン。性別未定。年齢20代中盤。職業、刑事。「容疑者の家族」であるミエを、マークしている。
登場人物D:ナン。性別未定。年齢40代〜50代。職業、不明。「ミエの家族」を自称し、ジオにミエの保護を依頼する。
登場人物E:名前不明。性別不明。年齢不明。職業、不明。前編には姿を見せない
メインの役以外には「便利屋ジオの助手」「クォン刑事のパートナー」「ミエの親戚」等、役柄の追加が可能
クォン・チャン役とナン役は、希望者によって性別を決定する。
ナン役は「ミエの親」を名乗るが、該当する年齢の者がいない場合は「ミエの兄もしくは姉」を名乗る事とする』
『金さえ積めば、どんな依頼にも応える−−ただし、コロシとクスリ以外。そんな便利屋稼業を営むジオは、ナンと名乗る相手から依頼を受けた。
それは「自分の家族であるミエを保護して欲しい」との内容。報酬金額は、前金で五百万ウォン。決して儲かっている訳ではないジオには、有難い依頼だった‥‥』
『両親が行方不明となっているミエは、親戚筋の援助を受けつつ、学業に勤しんでいた。
しかし、突然「家族に頼まれた」見ず知らずの男が現れる。その「たった一人の家族」には、確かに心当たりがあるが‥‥』
『クォン・チャンは、とある事件の容疑者を追う為に、ミエを密かに監視していた。
容疑者は、いつか何らかの形で「たった一人の家族」と接触するだろう。そして、ミエの前に「奴」が現れる‥‥』
●最後の恋
オムニバス形式の短編ドラマ『恋の素描』は、全五回をもって最終回を迎える事となった。
当初は、残りの二回についても一話ずつ制作の予定が立っていたが、急遽プロデューサーから『前後編』のプランが持ち上がり、残り二回で『最終話』を構成する事となったのである。
『後編』の展開は監督と脚本家が知るのみで、二人以外のスタッフは誰も内容を知らされていない。
そして結末は、役者次第−−。
●リプレイ本文
●Staff Telop
Cast
サゴン・ジオ:蘇芳蒼緋(fa2044)
ムン・ミエ:小鳥遊真白(fa1170)
クォン・チャン:加賀谷 勇(fa2669)
ナン:風見・雅人(fa0363)
ファ・フェイシン:つぶらや左琴(fa1302)
『赤い死神』:ディノ・ストラーダ(fa0588)
パク・ファオン:七瀬・瀬名(fa1609)
ミエの母:星野 宇海(fa0379)
???:???
Staff
小道具・大道具・殺陣指導:重杖 狼(fa0708)
カメラ・車両:ウルフェッド(fa1733)
音楽:星野 宇海
・
・
・
●誰かによって繋がれた見知らぬ者達
「それで‥‥彼は?」
「知らん。そっちが知っていると思っていたんだが」
呆れた風に、ムン・ミエは大きく嘆息した。雑踏の中でも、ちゃんと相手に聞こえるように。
「何か言いたげだな」
「そうだな。おまえ、儲かってないだろう」
今度は、サゴン・ジオが深々と溜息を吐く。多少可愛げがあれば仕事も楽しかろうが、目の前の女は例えるなら鋼。隙がなく、冷たく、面白味がない。
「何か言いたそうだな」
「別に。ただ‥‥アレだな」
「え?」
急に彼女の手を掴み、信号の変わる横断歩道を突っ切って、反対車線のタクシーに飛び乗る。
「何を考えている!」
「それよりも、何かしたのか?」
ジオが示す方を見れば、歩いていた歩道で二人の男がこちらを見ていた。それが確認できたのは僅かな時間で、あっという間に風景は遠くなる。
「尾行‥‥?」
「理由は知らんが、厄介な事に巻き込まれているらしいな‥‥ったく、こういう時に助手の一人や二人居りゃあ、ウラが取れるってのに」
運転手に行き先を告げてジオはシートに背を預け、緊張した表情のミエはそれを隠すようにじっと車窓を見ていた。
「クォン。手配終わったさかい、どないする?」
走るクォン・チャンを追いながら、電話を終えたファ・フェイシンは携帯を仕舞う。
「これ以上、奴に遅れを取る訳にはいかない。俺はミエを連れ出した奴を追う。ファは‥‥」
「一人で行って、背中は誰が守るんや」
ちらと振り返れば、同僚はいつもの笑顔をしていた。どこか正体の掴めない、いつもの−−。
「急ぐぞ。彼女を助けなければ」
二人が乗り込んだ車は赤色燈を回転させ、甲高い音を鳴らしながら急発進した。
通りがかったカジュアルな服装の女性が、驚いて路肩に退く。
覆面パトカーが過ぎるのを見送り、女性は携帯を取り出した。
●理由
何度もタクシーを乗り継いで、二人は倉庫街に辿り着く。
その一角、倉庫と並んで建つプレハブ小屋が、ジオが幾つか所有している「隠れ家」の一つだった。
「で、詳しく話を聞かせてもらいたいんだが‥‥ナンっていう男の事と、尾行がつく心当たりってヤツをな」
「それは、私の方が聞きたい。本当に、ナンに頼まれたのか? 便利屋」
口を開けば、互いへの疑問しか話題はなく‥‥そちらが先に答えるべきだと、睨みあう事しばし。
やがて折れたのは、ジオの方だった。
「確かに、俺に依頼をしてきたのはナンという男だ。自分の家族を保護してほしいとな。
別に、俺をすぐ信用しろとは言わない。俺はただ、君の家族からの依頼通りに、君をしばらく保護するだけだ」
「彼の顔、は‥‥」
「いや、見ていない。電話で喋っただけだが‥‥君を気遣うような口ぶりは、していたな。それは聞き違いじゃあない」
「そうか」
髪をおさえるように頭に手をやって、ミエは息を吐いた。
「誰なんだ。そのナンって男は」
「兄だ、私の。それから‥‥」
言いかけて、ミエは顔を顰める。頭の中で鐘がガンガンと鳴っているようで、煩くて痛い−−。
「どうした、おい!」
薄く目を開ければ、心配そうに自分を覗き込む男の顔。それを押し退けて、鞄の中を探る。
「気にするな。よくある、頭痛だ」
彼女がタブレットを取り出したのを見て、ジオはコップに水を注ぐ。水で薬を飲んだミエへ、「ソファで横になってろ」と場所を空けた。
「君は、大学院でもトップクラスの成績らしいが‥‥頭がいいと、頭痛が酷くなるとかあるのか?」
「そんな訳ないだろう」
「でも、大学院を出た後の事は、まだ何も決めてないんだってな。友達が心配してたぞ」
「そこまで調べたのか」
嘆息する額に、ぽんと濡れたタオルが置かれる。
「少し、眠ってろ。悪戯しないから、安心してな」
「当たり前だ」
憤慨する様子もそこまでで、ミエの呼吸はやがて穏やかな寝息に変わった。
ミエの部屋のブザーを押し、反応がない事を確認してから鍵を開けた。
パトカーを見送ったカジュアルな服装の女性は、猫のようにするりと部屋へ入り、ドアを閉める。
その一部始終を、近くのビルの非常階段から一人の男が見ていた。
「すまない、ミエ。またキミを巻き込んでしまった‥‥どうか、無事でいてくれ‥‥」
様子を伺う男は、胸元のペンダントを強く握り締めた。
●捜索網
−−降り積‥‥白い‥‥景色‥‥。
どこかで聞いた歌が聞こえる。
−−‥‥佇む‥‥か‥‥ない‥‥。
(「おかあ‥‥さん?」)
目を開けば、そこは優しい風景。
暖かい陽だまりと、黒髪を撫でる細くたおやかな母の指。
「ミエ‥‥」
どこか寂しそうな微笑みを浮かべて、母は何かを言おうとする。だが、耳障りな音に遮られて、声が聞こえない
(「何を言ってるんだ、お母さん!」)
耳障りな音にいつもより激しい頭痛が重なり、世界はぐるぐると崩壊して−−。
気だるい頭を振って起き上がり、ミエはメロディを奏で続ける電話を取り出した。
『もしもし、ミエ?』
耳に飛び込んできたのは、明るい声。妹のような遠縁の従姉妹からの電話に、知らずと表情が和らぐ。
「ファオンか。久し振り‥‥」
『久し振りとか、暢気に言ってる場合じゃないよ! 遊びにきたのに電話しても出ないし、部屋は空だし、おまけに警察らしい人が、部屋の周りをウロウロしてるんだから』
「え‥‥」
『ねぇ、ミエさん。大丈夫? 今、ドコにいるの?』
心配そうな従姉妹の問いに、少し躊躇う。本当の事を言えば迷惑がかかるだろうし、第一ここがドコか、彼女にも正確には判らない。視線を彷徨わせると、ジオが人差し指を自分の口に当て、黙っていろとゼスチャーをしていた。
「あ‥‥あ。友人の、ところだ。同じ講義を取っている、友人‥‥」
『早く帰ってくるよね? 私、部屋で待ってていい?』
「いや、その、近いうちに試験があって‥‥遅くまで勉強するんだ。だから、今日はファオンを泊められない。ごめん」
『え〜っ!』
「本当に、ごめん。日を改めて、また遊びに来てくれ。それから、おじさんとおばさんによろしく」
何かを言いかけるファオンの声が聞こえるが、ボタンを押して通話を切る。後で詫びをしなければと考えつつ、ミエは手の中の携帯電話を見つめていた。
機械的なツーツーという音を、ボタンを押して止める。
そして、ファオンは再びナンバーキーを押した。今度は呼び出し音も短く、すぐに相手が出る。
「こちら、パク。ミエの部屋を探したが、『例のモノ』は見つからない。ミエは現在−−」
携帯を操作していたファは、クォンが戻ってくるのを見て、急いで電話をポケットに捻じ込んだ。
ちらりと彼の様子に視線を投げるものの、構わずにクォンは車へ乗り込む。
「二人の居場所、判らはった?」
むず痒そうに首の包帯を触る同僚へクォンは頷き、シートベルトを締めた。
「あの便利屋の隠れ家が、幾つか判った。女連れなら、繁華街や顔が割れる場所は避ける筈‥‥」
「けど、少し休みや。ろくに休んどらへんやろうし‥‥いざと言う時、倒れるさかい」
「いや、今は時間が惜しい。奴を捕まえる迄、休む訳にはいかないさ」
クォンが行き先を指示すると、ファの運転する車は街外れへと走り出した。
「貴方の仕事は好きになれそうもないが、その姿勢や信念は信用するに足ると思う。だから少しは、協力してもいい」
「それは有難い」
「だが‥‥常に食事がインスタントというのは、問題があると思うぞ」
「仕方ないだろ。緊急だし、男住まいだ。文句があるなら喰うな」
そんな軽口を叩きつつ、二人は向かい合って食事をする。
依頼者−−ナンからの連絡は、まだない。ミエが事情を知っているかと思いきや、彼女の様子からするとそうでもないらしい。
状況は必ずしも良くはないが、悪くもない。念を入れてタクシーを乗り継いだ為、そこら辺のチンピラ程度なら簡単に居場所は割れないだろう。あとはここで隠れたまま、ナンからの連絡を待つしかない。ミエを連れて歩くのは論外だし、一人にして勝手にどこかへ行かれても困る。ただ、もし何も連絡をしてこない場合は‥‥。
「とにかく、心配するな、君は俺が必ず家族の許に返すと約束する」
自身の不安を打ち消すように告げれば、彼女は「家族、か」と呟いて胸元のペンダントをなぞる。彷徨う思いを邪魔するべきではないと考え、ジオは立ち上がって食器を片付けた。
「ただ佇む事しかできないけれど 差伸べられた手を取ることが出来たなら〜♪ ‥‥って、うわっ!」
気を紛らわせるように鼻歌交じりの歌を口ずさめば、ミエがいきなり彼の腕を掴んだ。
●Hush−a−bye
「その歌‥‥どこで‥‥!」
「え?」
「どこで聞いた‥‥つっ!」
問いただしながらも、頭をおさえたミエは、がくりと膝をつく。
「おい、ミエ!?」
「頭‥‥いた‥‥っ」
爪を立てて強く腕を握られ、ジオは顔を顰める。が、構わずに苦痛に表情を歪めるミエを抱き上げてソファへ寝かせ、自分の上着をかけてやる。
「待ってろ。いま、薬を‥‥」
「動くな! 手を上げて、その子から離れろ!」
荒々しくドアが開く音と、怒声が響いた。
向けられた銃に何も出来ず、ジオは大人しく相手に従う。
銃を向ける男の後ろから二人目の男が中に入ってきて、真っ直ぐミエへと近づく。
「待て、その子は‥‥っ」
「動くなと言っている! 急いでくれ、ファ」
「判った、クォン」
銃で小突かれたジオは唇を噛んで相手を睨み、それからファと呼ばれた男に注意を戻した。ファはミエを助け起こし、支えながら部屋から連れ出していく。
何か言おうとするジオに、銃を構えたクォンが立ち塞がった。
「本来なら誘拐で引っ張ってもいいんだぞ」
「あんた達‥‥警察、か?」
「この件から手を引け。それがお前の身の為だ、便利屋」
カッと頭に血が上り、次の瞬間ジオは相手の胸倉を掴んでいた。
「俺は自分の意思で行動しているだけだ、あんたにとやかく言われる筋合いはない。俺の、仕事の、邪魔を、するな」
殺意を込めてギリギリと睨むが、クォンは開いた手で彼の腕を掴み、逆に捻り上げる。苦痛にジオは顔を歪め、歯を食い縛る。
「甘く見るなよ、小僧。お前こそ、邪魔をするな」
そのまま突き飛ばされて、床にひっくり返るジオ。
クォンは彼を一瞥し、足早に同僚の後を追う。
「ミエー!」
痛む身体を引き摺って後を追い、ジオは彼女の名を呼んだ。
振り返るミエは、しっかりとした表情で、彼の上着を投げてよこした。唇の形が、「返す」と告げている。
途中で落ちたソレを拾い上げ、クォンはジオの方へ投げやった。
受け止める上着のポケットから何か滑り落ちて、床に当たって硬質な音を立てる。
視線を落とすと、それはミエのペンダントだった。
「‥‥ミエ!?」
更に追い縋ろうとするジオとミエの間に、忽然と赤い人影が現れ、行く手を塞ぐ。
「−−ジオ君、私に狩られることを光栄に思いたまえ」
「何だと!?」
赤いスーツを纏った男は、薄っすらと笑みを浮かべた。
その尋常でない鬼気にクォンも一瞬足を止め、車のドアが閉まる音に我に返る。
「待て、ファ!」
名を呼ぶと、同僚はガラス越しに一度だけ彼を見た−−いつもの笑顔のままで。
そして車は急発進すると、猛スピードで走り去る。
「ファ・フェイシンー!」
叫ぶクォンに答えるのは、寒々しい風の音のみ。
「おい、刑事! 目の前で人が殺されそうなのに、黙ってんな!」
ジオに言われ、クォンは改めて新たに現れた男を見る。
白木の杖を携えたのみの男は、飢えた獣の眼でジオとの距離を詰めていったーー。
【To be continued】
●布石
「居合いってのは、抜刀の瞬間に全てが凝縮された剣技だから、斬った張ったには向かんのだが‥‥」
構えを解いて唸る重杖に、ウルフェッドは肩を竦めた。
「所長が居りゃぁ、演出的な助言ももらえるんだろうがな」
裏方の二人は、空き時間を見つけては協力し合って殺陣を組み立てていた。
二人の声を聞きながら、ノートパソコンのキーボードを叩いていた宇海は、ふと台本を片手にスタジオ内をぐるぐると歩き回っている男に気がついた。
「重杖さん。あの‥‥」
宇海に声をかけられて、重杖は殺陣を止めた。彼女が示す先の男へと、歩み寄る
「何か‥‥セットとかで、気に入らない点でもあるのか? ホンとイメージが違うとか」
「いや。君達のお陰で、ソッチはバッチリだ。ただ、肝心の世界の中身が問題でな」
「‥‥中身?」
重杖は、追ってきたウルフェッドと共に首を傾げる。
「今の流れでは、蓋を開けるとジオとミエ以外が全員が裏世界の怪しげな組織に属し、その中で抗争をしているだけだ。それではあまりにチープで現実味がなく、視野が狭すぎる。
かといって、複雑奇抜すぎるのも、尺に収まらなくなるし‥‥ところで、少しココを借りていていいか?」
「ああ」
セットの中で、男は世界を構築しては分解する作業を繰り返す。
融通が利くよう、何か希望があれば対応できるように控えつつ、重杖とウルフェッドは脚本家を見守り、宇海は再び何かを奏でる様にキーを叩き始めた。