幻想寓話〜フロイラインヨーロッパ
種類 |
ショート
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担当 |
風華弓弦
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
2Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
4.6万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
02/20〜02/26
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●本文
●難題現る?
本や写真やビデオやDVDやフィギュアなどがごちゃ混ぜになった部屋の真ん中で、レオン・ローズは腕組みをし、唸りながらPCのディスプレイを睨んでいた。
「これは‥‥この間の、企画会議の案件かな?」
「うむ。て、ちょっ‥‥いつの間に侵入したっ!」
ひょいと横から画面を覗き込んだ同居人に、レオンは驚いて身を引き−−引いた結果、椅子のコマで相方の足を轢き。
足の指を轢かれたフィルゲン・バッハは涙目でしゃがみ込み、バンバンと床を叩いていた。
「‥‥それは、新手の降霊儀式か何かか?」
「誰のせいだよ、誰のっ!」
フィルゲンに訴えられて、はてと首を捻るレオン。
「ノックなしで勝手に入ってきたのもどうかと思うぞ」
「したよ。返事をしなかったじゃないか」
「そうか? すまん。気を取られて、聞こえていなかったようだ」
「まったく‥‥」
ようやく立ち上がると、まだ片足をぷらぷら振りながら、フィルゲンは手にした紙の束をレオンへ押し付けた。
「次の仮本か。感謝する」
ぱらぱらと紙をめくって、中身を確認するレオン。読み終わるのを待ちながら、フィルゲンはもう一度ディスプレイの画面を見る。
「で、250年記念の件だね。やるとしたら、切り口が難しいと思うけど‥‥」
「ああ。だが今は、こちらに集中すべきであろう」
ぽんと、監督は脚本家が渡した紙の束を叩いた。
「‥‥レオン。君、何か悪いモノでも食べた?」
「何だとーっ!?」
●幻想寓話〜フロイライン
『森のフロイラインは、乙女の姿をした樹木の精霊である。
真っ白な服を着て、時に古い松の木の下に腰掛けて語らい、時に森の中に優しい歌声を響かせる−−彼女達は悪さをするわけでも人を惑わすわけでもなく、唄って草木を慈しみ、育てるのだという。
山の中に迷い込んだ若い旅人は、冬枯れの森で美しい乙女と出会った。
白い服を着た乙女は、森を歩きながら優しい歌を唄う。佇んで歌を聞く若者に気付き、乙女は歌を止めた。
森のフロイラインの事を知らぬ若者は、道に迷った事を話し、彼女は麓の街まで彼を案内する。
ようやく森が切れ、街が見えた時。乙女の美しさに心が揺らいだ若者は、彼女の手を取り、森から連れ出してしまった。
若者が連れ帰った乙女に、家族は戸惑う。清涼な水しか受け付けない不思議な乙女が唄うと、枯れた植物でも緑を取り戻した。それを見て家族は驚き、歓迎する。
周りの人間の思惑に戸惑いつつも、乙女は自分の有りようで在るしかなく。そして、森から離れた乙女は、どんどんと弱っていく。
精霊である乙女に人の治療が効く訳もなく、誰もが手をこまねいて見守るしかなかった。
そんな中、若者は夢を見る。
−−乙女の姉妹が、妹を帰して欲しいと泣く夢を。
周りの反対を押し切って、若者は弱りきった乙女を出会った森へと連れて行く。
森では、夢で見た森のフロイラインが姉妹を待っていた。
帰ってきた姉妹のやつれた姿に嘆きつつ、フロイライン達は森の奥へと帰り、若者はただそれを見送るばかり。
その後、若者は森の傍らに小屋を立て、いつまでもそこで暮らしたという』
「フロイライン」をテーマとしたファンタジー・ドラマの出演者・撮影スタッフ募集。
俳優は人種国籍問わず。森のフロイライン役、旅の若者役、若者の家族役、ドラマを語る吟遊詩人役などを募集(フロイライン役は、ある程度の歌唱力があること)。
脚本はアレンジ可能。また、アレンジ如何によっては配役の追加も検討。
ロケ地はオーストリアのチロル地方キッツビュール。冬場はウィンタースポーツのリゾート地としても有名な場所である。
●リプレイ本文
●緊急事態
キッツビュールは標高760mに位置し、チロル地方でも住みやすい環境の町である。古くは銅山として栄えた町も、今は夏季や冬季のリゾート地として多くの人々が訪れる。
その一角にあるホテルに、朝から解読不能な奇声が響き渡った。
「今の、何かしら」
フロイラインの姉妹役キャロル・栗栖(fa2468)が訝しげに呟き、同じく姉妹役のクク・ルドゥ(fa0259)も「判んない」と首を傾げる。
「あれは監督、ですが‥‥見てきますね」
メンバーの中で唯一面識があり、今回ヒロインのフロイライン役を演じる小塚さえ(fa1715)が、席を立つ。衣装係を担当しつつ若者の妹役を兼ねる月舘 茨(fa0476)も、彼女の後に続いた。
「大丈夫だと思うけど、ついてくよ」
すぐ近くの客室の木製扉を、茨が強めにノックする。程なくドアは開き、彼女の見知った相手−−吟遊詩人役の仁和 環(fa0597)が顔を覗かせた。
「ばらさん‥‥に、さえさんも来たのか」
「はい。声が聞こえたので、心配になって」
「何かあったの? まき」
尋ねるさえと茨に、環は微妙な表情を浮かべる。
「アクシデントがあったらしい」
扉を開け放ち、環は二人を促した。疑問が解消されぬまま部屋に入った二人が見たモノは、備え付けの椅子に腰掛け、受話器を片手に、何故か真っ白に燃え尽きているレオンの姿。
遠巻きにしていた裏方の二人、ウルフェッド(fa1733)と重杖 狼(fa0708)が彼女達に気付いて肩を竦めた。
「あの‥‥?」
おずおずとさえが問うと、ノートパソコンを操作していたフィルゲン・バッハが気付き、顔を上げる。
「ああ、ごめん。皆と先に、食堂へ行ってくれるかい。10分で、コレを使えるようにするから」
コレ。と、フィルゲンは相方を指差した。
約10分後。フィルゲンの約束通り、厳しい表情のレオンがスタッフと俳優達の前に現れた。
「えー、既に気付いている者もいるだろう。急な事だが、主役がこられなくなった。かといって、撮影を中止はできん。契約商売であるからな。故に、急遽代役を立てねばならんのだが」
有志を募るように、一同の顔を見回す監督。ざわめくスタッフの中で、ウルフェッドは眩暈を覚えた。
「主役どころか、端役も遠慮したいな」
彼の呟きに、重杖も思わず苦笑する。結局、スタッフ達からの立候補はなく、深くレオンは息を吐いた。
「かといって、二役で俳優陣に負担はかけられん」
重々しく、監督は脚本家の肩を叩く。
「‥‥え?」
「台詞を完璧に把握し、撮影中に一番手が開いている人物。頑張ってくれたまえ」
「待て、何故そうなるっ!」
自分に御鉢が回ってくると予想してなかったのか、指名された側は抗議した。が、レオンは聞き入れる気配もなく。
「仕事は、時に非情なものなのだ。観念せよ」
今度はフィルゲンが、真っ白に呆ける番だった。
●冬枯れの森で
暗い森に、優しげで、どこか哀しげな音色が響く。
雲の切れ間から淡い光が差し込めば、木の枝に腰かけ、闇に溶ける深い藍色のローブを纏った、背に黒い翼を持つ弾き手の姿が浮かび上がった。
抱く様に奏でるは、ウクライナの民族楽器バンドゥーラ。一部が白鳥や鷺のように長いネックとなった、風変わりな板状ハープである。50以上ある弦を、白い指が流れるように弾いていく。
「古のキッツビュールの雪深き森が秘めたる物語。おや、お聞きになりたいと?
それではお話しましょうか。白き乙女の淡い恋の物語‥‥紡ぐは『蒼夜の詩い手』、見護るは皓々たる月‥‥」
音を紡ぐ手を止めて天へと伸ばし、誘うは雲間に見える欠けた月。
「無垢なる歌に誘われた旅人。その出逢いが齎すは悲劇か、それとも−−」
月明かりの下を、再び流れる弦の調べ。
それに、愛しむ様な歌声が重なる。
画面はスッと引いていき、木立が被り、どんどん月が遠くなる。その下を、足跡一つない雪の大地を踏みしめて、歩く男の影が一つ。白い息を吐きながら辺りを見回し、耳に手を当て、歌に導かれるように森の中を進んでいた。
歌は次第に近くなり、雪を踏む足どりも早くなり。
辿り着いた先は、森の少し開けた場所。
古く大きな木の根元に誰かが座り、言葉にならぬ歌を唄っている。
そこへ月の光が差し込み、歌い手を照らし出す−−艶やかな黒髪を飾る、白いヴェールとエーデルワイスを模した髪飾り。瑠璃色の翼。小柄で華奢な身体を包む純白のドレスは月光に輝いて、まるで幻のような光景。
近寄りがたい空気に、青年は時を忘れて佇んでいた。そこへ梢から雪塊が落ち、突然の音に少女ははっと息を飲む。
「あの‥‥すまない、邪魔をして。この辺には不慣れで道に迷ったんだ。それで声が聞こえたら‥‥君がいて。よかったら、近くの村まで案内してもらえないか」
見つかったバツの悪さを隠すように、青年は慌てて弁解をした。だがあどけない少女は、首を傾げるばかり。
言葉が通じないのかと、身振り手振りや違う言葉を交えて青年が苦戦した末に、彼女は漸く意図を理解したように頷く。
先導するように歩き出す少女の後を、彼は急いで追いかけた。
「今年の冬は、寒かっただろう。畑が駄目になったんで、南の方まで種を買いに行ったんだ。それで急いで帰ろうと、近道をしたつもりが迷ってさ。また妹に文句を言われるんだろうな。この妹がまた、口が悪くて‥‥」
ヴァルターと名乗った青年は、あまりに寒々とした服装の少女を見かねて、自分のコートを羽織らせ、素足に厚いブーツを履かせた。そして闇と静寂を紛らわせる様に、自分の事や家族の事、住む町の事を楽しげに話す。
始めは言葉が理解できないのかと思われた少女も、興味を持った瞳で彼の話を聞いていた。
やがて少女の案内で、青年は人の住む灯りが見える場所までやってきたが。
「君は、村へ帰らないのか?」
問われて、きょとんと首を傾げる少女。ヴァルターは手を伸ばして、細く折れそうな腕を取る。
「もしも寄る辺がないなら、一緒に来るか?」
尋ねる青年に、少女は柔らかく微笑んだ。
「どうしよう、レオノーレ。あの子が、森から出てしまった‥‥」
木々を揺らす風に紛れて、か細い嘆きの声が森に響く。月明かりの中、朧に浮かぶ二つの白い影が唄うように呼びかける。
「どうか還ってきて‥‥フロイライン」
●小休止
「みんな、寒かったでしょ。暖かいモンで、暖まってよね」
準備された待機用のキャビンカーでは、茨が湯気の立ち上る皿を並べて待っていた。
立ち上る甘い香りに、特に女性達が顔を綻ばせる。
皿にはザク切りにした厚手のパンケーキのようなものに、パウダーシュガーを振って、アップルムースを添えてあった。
カイザーシュマルン−−「皇帝のパンケーキ」と呼ばれるそれは、小麦粉・砂糖・塩・卵黄・泡立てた卵白を混ぜた生地を干しぶどうを散らせて焼いた、お菓子のような軽食である。
「うわぁ、美味しそうだよ〜! 茨さんが作ったの?」
「まぁ、ちょーっと得意だからね」
喜ぶククの前で、茨が小皿にカイザーシュルマンを取り分ける。嬉しそうに、彼女は暖かい皿を受け取った。
「ね、後で作り方教えてもらっていいかな」
「いいよ。焦がさないようにすれば、感嘆だから」
「やった〜っ。あ、あともう一皿貰っていい?」
両手に皿を持って、ククはいそいそとキャビンカーを出て行く。それを見送り、皿を手にしたキャロルが簡易椅子に座った。
「そういえば、監督とフィルゲン様は? 姿が見えないんだけど‥‥どうしたのかしら」
尋ねるキャロルに、さえは首を横に振る。
「判りません。いつも、こういう場には率先して現れるんですけど」
「ああ。なんだか、役に入り込み過ぎるから人前に出せないんだって、監督が言ってたよ」
「人前に出せないって‥‥大丈夫かしら」
茨の説明に、キャロルは苦笑した。
雪の中を染み渡るように、三味の音が響く。
雪景色によく似合う弦を切々と唸らせた後、岩場に腰掛けていた環はしょぼんと背中を丸めた。
「初めてのヨーロッパか‥‥薫夜さんと来たかったなぁ」
呟きと共に、盛大に溜め息をつく。その彼へ、まだ暖かい皿が横合いから差し出された。
「環君、一緒に食べよう」
「ククさん‥‥ありがとう」
見上げる環ににっこりと笑って、ククは彼の隣に腰を下ろした。
●枯れゆく花に
「最初は兄さんに年下趣味があったのかって疑ったけど、あの子、いい子だね」
「イルゼ‥‥俺の事を、激しく誤解していないか」
からかう様な口調の妹に、ヴァルターは頭をおさえる。兄妹が賑やかに食事をする間も、少女は二人のやり取りを微笑んで眺めつつ、ただコップの水を少しずつ飲むのみ。
ヴァルターが連れ帰った少女が唄えば、寒さで枯れかけた畑が緑を取り戻し、冬だというのに実りを結ぶ。その不思議に驚きながら、イルゼも彼女を歓迎した。
「あんたが畑を蘇らせてくれたおかげで、生活がぐんと楽になるよ。ありがとう」
礼を言われ、言葉を話さない少女はただ嬉しそうに笑みを返す。戸惑っていたイルゼも、今では妹のように少女を可愛がっていた。
だが、幸せで穏やかな日々も長くは続かず。
ある日、いつもの様に青年と畑へ出かけた少女は、そこで花が萎れるように倒れ伏した。
だらりと垂れた翼。顔色は血の気を失って白く。ヴァルターが抱えて家へ戻った時、少女は朦朧としていた。
「兄さん‥‥!?」
「医者を呼んできてくれ、イルゼ。早く!」
ランプを灯した部屋では、沈痛な面持ちで兄妹がベットに横たわった少女を見守っていた。
やがて目を開けた少女は、何時ぞやの様に自分の手を握る大きな手と、不安げな二人の表情に、視線で問うて首を傾げる。
「大丈夫だ。すぐに‥‥良くなるから」
答えの代わりに、少女は手をぎゅっと握り返した。
−−気がつけば、辺りは深い雪と闇に覆われている。風に紛れるように聞こえてくるのは、哀しげな弦の音と囁くような歌声。
「穢れなき白き乙女の歌声は奇蹟。されど奇蹟はその身を蝕む。
森を離れたフロイラインに、その恩寵は届かない−−」
木立の間で、桃色のアルペンローゼの髪飾りに、薄いピンクのヴェールをつけた白いドレスの乙女がぽろぽろと涙を零していた。
「私達は森から離れて生きてはいけないのに‥‥このままでは、フロイラインが‥‥消えてしまうわ」
寄り添うように、リンドウのような青いゲンチアナの髪飾りに、薄いブルーのベールで、同じく白いドレスの乙女が立っていた。嘆く姉の金髪を労わる様に撫でる黒髪の乙女は、顔を上げて真摯な赤い瞳で彼を見つめる。
「あの子の事を想うのなら‥‥お願いします。森へ、私達の元へ返していただけませんか‥‥」
駆け寄ろうにも雪に足を取られ、ヴァルターは雪の中へ倒れ込む。再び顔を上げた時には、二人の乙女の姿はなく。
「私達の妹を、返して下さい‥‥」
後には、唄うような懇願の声のみが残った−−。
飛び起きてから、青年はベットの傍らで看病の間にうたた寝をしていた事に気付いた。
今にも消えそうなランプの炎に照らされた少女の寝顔は苦しげで、細い指がぎゅっと彼の手を掴んでいる。そっと手を解いて上敷きをかけ、彼は部屋を出た。
「冗談じゃないわよ! 夢で見たからって、そんな‥‥」
突然、旅支度を始めた兄に、妹は猛反対をした。
「医者にも、彼女の病の原因が判らないんだぞ。夢でも何でも、頼るしかないだろ。俺が彼女を、あの森から連れてきてしまったんだから」
「だからって‥‥もう、あの子は家族同然なのに!」
しかし妹の反対を押し切り、ヴァルターは軽くなってしまった少女を背負い子に座らせ、家を出る。窓からそっと二人の姿を見送り、イルゼは指を組んで祈った。
「‥‥絶対、元気になってよ」
●眠りの森へ
森は以前と同じく、そして夢で見た時のように、暗く雪に覆われている。
その奥から、夢で見た二人の乙女の姿が幻のように現れると、ヴァルターは息を飲んだ。
黄色い翼を持った乙女イルマーレと、額から一本の白い角が伸びた乙女レオノーレは、青年の背から降ろされた妹を抱きしめる。
「‥‥ありがとう」
「いや。むしろ、こちらが謝らなければ‥‥」
そっと身を引く青年だが、服の袖を引かれて止められる。見れば、フロイラインがぎゅっと彼の服を掴んでいた。哀しげな表情に、口唇が微かに動く。
「ヴァル、ター‥‥」
鈴の様な声が呟く、初めて意味を持った言葉。青年は離れる事を躊躇い、姉達は顔を見合わせる。
何かを決意したように、レオノーレは頷くと立ち上がった。
「虫の良い話だとは存じております。けれどあなたと別れては、妹は心が疲弊して‥‥いずれ心を失うでしょう。それは私達にとっては、死そのもの」
ヴァルターはぎょっとして彼女を見上げ、イルマーレは目を伏せる。レオノーレは、なおも言葉を続けた。
「今は、力を取り戻すために、この子も休まねばなりません。フロイラインが目覚める春になれば‥‥森で暮らす事を、考えていただけませんか」
彼女の言葉に、青年は「判った」と即答する。
「必ず、迎えに来るから」
差し込む月光の下、木の枝に腰掛けた弾き手がバンドゥーラを奏でる。
「乙女と青年の淡き恋。あの夜、運命に誘われたは青年か−−それともフロイラインか。
森と‥‥月は優しく二人を見護る。物語は悲劇ではなく、幸福へと詩を紡ぐ。
ここは如何なる者にも優しい森ゆえに‥‥」
姉妹を見送るように、柔らかで暖かな旋律は森へと消え。
だが冬の森は、穏やかな眠りが支配するばかり。
「春、か」
森の奥を見つめていた青年はやがて踵を返し、来た道を戻り始めた。