New Unit Audition!アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 風華弓弦
芸能 3Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 5.5万円
参加人数 10人
サポート 2人
期間 07/20〜07/22

●本文

●新プロジェクトの知らせ
 アイベックス。それは、jpopミュージックの大手プロダクションである。
 日本のミュージック・シーンを支えるミュージシャン達を開拓し、輩出してきた。
 そのアイベックスが新たにミュージック・ユニットを企画し、ユニット・メンバーのオーディションを告知した。
 募集ジャンルは「歌手」「バンドメンバー」「ダンサー」。
 無論、提示されたジャンル以外でも、メイクアップ・アーティスト、衣装デザイナーなどのバックアップメンバーとして、ユニットに参加するチャンスはあるだろう。
 ただ、オーディションに当たって、一つの注意点があった。
 それは、「中心メンバーの一人が既に決まっている」という事である。

●誰が為の
 オーディションの告知が出るよりも、少し前。
 アイベックスの担当者は、『大物』と顔を合わせていた。
「オンガクったって、俺、楽器は全然ダメなんだよね。歌とか踊りは、一通りやってるけど‥‥それでも、いいのかな」
 戸惑うような彼の反応に、担当者は大きく頷いた。
「新しい音楽プロジェクトとして、ユニットを作る話が上がってるんですよ。貴方が音楽界にも興味あるという話を伺って、それなら是非にと思いまして」
「‥‥まぁ。そういう話なら、乗っかってみるけど。音楽、やってみたいのはホントだしね」
 キッカケはたいした問題じゃないし−−と、小さく呟き。
「でも。俺、審査員席は、ヤだからね」
 一言付け加えて、高原 瞬(たかはら・しゅん)はにっこりと笑った。

 そうして、新ユニットのオーディション開催の運びとなる。
 ただの立役者と引き立て役の集団となるか、一つのムーブメントを起こす新たなユニットとなるか。
 それは、オーディションの結果が一つの道標となるだろう。

●今回の参加者

 fa0074 大海 結(14歳・♂・兎)
 fa0213 一角 砂凪(17歳・♀・一角獣)
 fa0494 エリア・スチール(16歳・♀・兎)
 fa0634 姫乃 舞(15歳・♀・小鳥)
 fa2772 仙道 愛歌(16歳・♀・狐)
 fa2778 豊城 胡都(18歳・♂・蝙蝠)
 fa2847 柊ラキア(25歳・♂・鴉)
 fa2899 文月 舵(26歳・♀・狸)
 fa2993 冬織(22歳・♀・狼)
 fa3608 黒羽 上総(23歳・♂・蝙蝠)

●リプレイ本文

●競う者達
 応募者達は、四方の壁のうち一面だけが鏡張りのレッスンルームのような部屋に、案内されていた。
 鏡の前にはスピーカーが、別の壁際にはドラムセットなどの楽器が置かれている。
「なんだか、緊張するな‥‥」
 小さく呟いた大海 結(fa0074)は胸に手を当て、大きく深呼吸した。
 集まった者達をざっと見渡せば、年齢やキャリア、活動するジャンルも様々である。
 結から見て同じ位の歳の子もいれば、ずっと年上の人達は顔見知り同士なのか、リラックスした様子で親しげに言葉を交わしていた。

「舵も一緒に、頑張ろうね!」
 屈託ない笑みで柊ラキア(fa2847)が告げれば、文月 舵(fa2899)もまた微笑む。
「そうやね。一緒に、いい仕事ができるようになったらええね」
「でも、二人は部門は違うだろう」
 苦笑で黒羽 上総(fa3608)が指摘すれば、ぶんぶんとラキアは腕を振り。
「判ってるけど、気持ちは一緒にって事だよ!」
「舵さんとは‥‥ライバルになるかもしれませんね」
 にっこりと笑う豊城 胡都(fa2778)の一言に、彼は困ったように考え込んだ。
「舵は応援したいし、でも胡都にもガンバレって言いたいし‥‥」
「まあ、平常心で頑張るさ。いつも通りに演奏すれば、おのずと結果はついてくる、ってな。このメンバーでセッションが出来れば、それはそれで面白そうだが」
 上総の言葉に、落ち着いた様相の冬織(fa2993)が小さく笑む。
「そうじゃな‥‥決めるのは向こうである故に、今は己の最善を尽くすだけじゃの」

 そんな会話をぼんやりと聞いていると、結よりも少し年上の少女−−一角 砂凪(fa0213)が話しかけてきた。
「こうして待っていると、緊張、するね」
 戸惑う表情の彼に、砂凪は笑顔をみせる。
「アイベックスといえば、音楽業界の中でも大手ですから‥‥緊張して、当然ですよ」
 言葉を加える姫乃 舞(fa0634)は、言葉とは裏腹に落ち着いた様子だ。
 そこへ最後のオーディション参加者、エリア・スチール(fa0494)と仙道 愛歌(fa2772)が扉を開けて現れた。
「あ、おはようございま〜す」
「おはようございます!」
 どこか「ほぇん」とした調子のエリアの後ろから、愛歌が体育会系の大声と勢いで挨拶をする。
 二人が来たのを確認し、そして時計を見やってから、案内係と思しき帽子に眼鏡をかけた青年が、おもむろに一同の前に進み出た。
「では、アイベックスより新しくプロデュースする音楽ユニットの、オーディションを始めます。審査の順番はダンサー、歌手、バンド部門で、年齢順となります」
 説明が終われば、入ってきた五人のアイベックス社員が『審査席』についた。そして一番端の『特別審査 高原 瞬』と書かれた席には、帽子にサングラスの青年が頬杖をついて座る。
(「サングラスで、見えるのかな?」)
 そんな疑問の間に結の名が呼ばれ、オーディションは始まった。

●ダンサー部門
「普段はアイドルをやってるけど、今回はダンサー希望の大海 結です。よろしくお願いします」
 一番手の結は、ぺこりと頭を下げる。白いロップイヤーの耳が、ゆらゆらと揺れた。
 やがて、部屋のスピーカーからアップテンポで明るい曲が流れ出す。
 曲に合わせてまずは最初のフレーズを唄い、それから彼は身体全体でリズムを刻み始めた。
 兎種らしく、小柄な身体で限られたスペースいっぱいに跳ね、アクセントにアクロバットを加える。
 数分の間の『演技』を終えた結は、音楽が終わった後に再び一礼した。

「一角 砂凪、ダンサーです。色んな事に挑戦して経験を積みたくて、参加します。特にスタイルにこだわらず、踊ってます。将来はミュージカルの舞台に立ちたいので、大好きなダンスは勿論、発声や音感なんかも鍛えていけたら良いなって思ってます。
 精一杯やりますので、宜しくお願いします!」
 笑顔で審査員と向き合った砂凪は、深く呼吸をしてからステップを踏んだ。
 軽やかに右へ左へと動き、ターンを挟んで、半獣化する。
 ダンサーとしての基礎は十分だが、先の結と比べると半獣化しても及ばない感がある。
 それでも彼女は、笑顔を崩さずに力いっぱい踊り切った。

●歌手部門
「姫乃 舞と申します、宜しくお願い致します!」
 元気よく礼をした舞は、新ユニットへの熱意を審査員へ語る。
「アイベックスさんは私が歌を始めてからの憧れのプロダクションで‥‥ずっとアイベックスさんから曲を出す事を目標にして来ました。私は歌手としては未熟かもしれませんが、歌う事が好きな気持ちは誰にも負けません!
 どうぞ、宜しくお願い致します」
 舞が意気込みを語り終えると、少しの静寂の後に用意したオケが流れ始めた。
 唄うはアイベックスでもトップシンガーである、西条ゆかなの新曲『真夏のライオン』。
 プロモーションビデオでコーラスにも参加し、個人的にも聞き込んで覚えた曲を、舞は獣化せず、本来の声のままで伸びやかに唄った。

「仙道 愛歌です。私は女優なので皆さんのように巧くは無いかも知れません。でも、大好きな歌を歌いたいんです!
 曲は、『はじまりが歌えない』。友人のボーカリストさんから戴いた、大事な、そして大好きな歌です」
 半獣化してハキハキと告げる愛歌は、何故か空手着姿。更に鞭とドスを携えた姿は、パフォーマンスとしても場違いが過ぎるだろう。だが、彼女はそのまま唄う。
「 RAINY DAY 君の笑顔を忘れられなくて
  RAINY DAY 想い出はすべて幻に
  I LOVE YOU 今宵も踊るよ道化師のよに
  はじまりが歌えない俺が そこにいるから 」
 リズムはラップ調ながらも、曲は全く韻など踏んでおらず。
 熱意だけでぶつかった愛歌は、残念ながらその熱意に劣る『浅さ』を露呈するのみだった。

「柊ラキアです、よろしくお願いします!」
 元気よく頭を下げれば、肌身離さないゴーグルが胸元で跳ねる。
 ラキアは獣化を選ばず、この場に臨んでいた。
「今できる事、精一杯やろうと思ってます。根性は人並み以上あります! 歌は‥‥メドレーにして、こんな風に歌えますってしようと思ったけど、やっぱり頭から尻尾まで心込めて、一本きっちり唄います!」
 タイトルは『ターン×ターン』。スピーカーから流れてくるのは、明るく軽快なリズム。
「 遙か彼方 ミタ夢の痕
  空突き抜けて舞い上がる 可能性の限り
  こんな僕らは最高のキャパシティ
   そう この空の上
   どこでも
   輝く時間は 希望の果てに
  この夜を瞬く光に
  望むなら馬鹿になろうと駆け出して
  突き抜けていく
  駆け上がるために 」
 明快だが抑揚のある旋律を、やや音を外しそうになりつつも唄い。
 ラストは、ファルセットを限界まで引き上げて。
 音割れのしないSHOUTを持ち込んだラキアは、持ち前の音域の広さを存分に発揮した。

「わしは冬織と申す。好機には、喰らいつくべきじゃと想うての‥‥よしなに」
 物腰も穏やかに、冬織はゴシックなドレスの裾を揺らして軽く会釈をする。
 前日に、友人の四條キリエが作り込んだ音源が流れ、冬織はメドレー『狂戀情 〜 日々是戦−Never give up!−』を唄う。
「 水簾の瀬に 揺らめく真白き衣
  ゆらゆらと水面に漂うが如く 想ひも緩やかなら
  どんなに悠揚なことでせう 」
 ピアノを主体としたミドルテンポのバラード『狂戀情』を、しっとりと歌い上げ。
 一転して、アップテンポに変わった後半の『日々是戦』では、半獣化して白い狼の耳と尻尾を露出してパワフルに唄う。
「 Going my way 歩き出せ  踏み出す一歩が創る道
  強引に前へ体進めれば いつか辿り着く場所がある
  何かにつまづいた時は 空に手をかざしてみよう
  世界はいつも必ず 戦う君と繋がっているから
  Never give up,Let’s go! 」
 途中、ドレス姿ながらも蹴り一閃を交え。
 冬織の歌で、歌手部門は締め括られた。

●バンド部門
 極度の緊張で右手と右足が一緒に前に出たり、挙句の果てに転びそうになりながらも、エリアはキーボードの前に立つ。その傍らには、彼女が持参した高さ30cmを越えるWEFのベストAGトロフィーが、どんと置かれていた‥‥理由は、本人のみぞ知るだろう。
「エリア・スチールと言います。精一杯頑張りますので、宜しく御願いします!」
 白とピンクの衣装で纏めたエリアは元気良く挨拶をすると、半獣化せずに鍵盤に白い指を置く。
 微妙に半音階を交えたスローテンポな曲は、東南アジア風をイメージした『愛land』。
 ゆったりとしたメロディの盛り上がり部分に、歌を添えて。
「 私は今日旅立つ これからどんな困難が待ち受けていようと
  どんなに強い風が吹いても 嵐の後には何時もはれるから
  愛という心強い 見方を胸に抱いて楽園目指して歩きだすの 」
 大らかに演奏を終えたエリアは、最後に再び礼をした。

「豊城胡都です。音楽のあり方は人の数だけあると思いますが、自分が楽しめる音楽、そして人が楽しめる音楽を作る事を目指しています。いろいろな音楽に携わりたいと思っていましたので、応募させて頂きました。どうぞ、宜しくお願いします」
 お辞儀をした胡都の視界の隅に、ちらと青年の姿が入った。タレントや役者として、彼も聞き覚えがある名前だ。
(「『立役者』になるつもり‥‥は、ないなぁ」)
 フットペダルやタム類の配置を確認しながら考える彼もまた、人の姿でオーディションに挑む。
 スティックに視線を落とせば、ドラムセットを搬送した際に書いたのか、「頑張れ」と兄の嶺雅の字がうねっていた。
(「余計に、気が散りそうかも」)
 嘆息して目を閉じ、呼吸を整える。
 気持ちを切り替えて、彼はリズムを刻み始めた。
 他に音はなく、太鼓とシンバルの音だけが響く。
 まずは、基本的な8ビート。
 タム回しから16ビートにテンポを上げ、アレンジを加えていく。
 最後はジャズを思わせるスローなシャッフルで、速さだけではない面もみせながら、胡都は『演奏』を終えた。

「黒羽 上総。『flicker』所属。今回はバンドメンバーとして、このオーディションに応募させてもらった」
 落ち着いたダークカラーのスーツで身を包み、きっちりとネクタイを締めた上総は、僅かに頭を審査員達へと傾げた。
「普段はドラムにギター、ピアノまで、オールマイティーに楽器を担当しているんだが、今回は「ギター」でメンバー入りを狙わせてもらう」
 口火を切るように、提げたベースギターの弦をジャラリと鳴らす。
 今の自身が評価されるならば、過去の曲でなくオリジナルだろうと、奏でるイメージは、『夏休み』。
 低音ながらもポップなメロディが、時折はやる鼓動のように加速する。
 人の姿のままで、上総は短くも荒削りな演奏を披露した。

「文月舵です。どうぞ、宜しゅうおたの申します。
 既に形になっているバンドの欠員募集ではなく、新しいユニットのメンバー募集である事。新しいユニットのこれからを、一緒に作っていける事に魅力を感じました。是非、うちもそこに参加したいと思って、オーディションを受けた次第です」
 オーディションのラストを『飾る』舵は、京都弁で自己紹介をして、ドラムセットの椅子に座った。
 一つ二つと深呼吸を繰り返すと、獣化をせずにスティックを握る。
 8ビートから、16ビート。かつて演奏した曲のドラムワークを交えつつ、スピード感溢れるスラッシュに変わり、リムショットをアクセントに入れて。
 女性だが力強いアクションで締めた舵は、キーボードへと移動する。
 ドラムスと同様にスピード感があるコミカルな一曲で、彼女は演奏の幅広さをアピールした。

「結果は、後で連絡しますので‥‥皆さん、お疲れ様でした」
 引き上げる十人を、説明役の青年が妙に神妙な顔で見送った。

●顔合わせ
 オーディションの翌日。
『連絡』を受けた者達は、再び『オーディション会場』へと足を運んだ。
 新たなユニットのメンバーとして、顔合わせを行う為である。
 待ちきれないとばかりに真っ先に現れたのは、シンガー担当となった舞。
 続いて、ミニバンのヴォクサーを駆って着いたのは、キーボードで選出された舵と、舞と同じくシンガーに決まったラキア。
 足取りも軽やかに走ってきたのは、唯一のダンサー、砂凪。
 そして、奇しくも再び同じバンドのメンバーとなったギターの上総とドラムの胡都が、二人揃って到着した。
 これに『既に決まっているメンバー』を加えて、七名のバンドとなる。
「高原です。あ、気軽に瞬って呼んでね。俺、音楽あまり詳しくないから、皆と手探りしながらやっていけたらなーって、思ってます。これから、よろしく」
 メンバーを迎えた説明係の青年−−高原 瞬は人懐っこい笑顔で一礼し、そして遠慮がちに提案した。
「とりあえず結成記念で活動の第一歩として、バンド名を考えておくとか‥‥どうかな?」

 なお、バンドメンバーはアイベックス・サイドの要望により、演奏技術を重視して。シンガーとダンサーは、瞬の強い希望で「これから伸びる事」を期待して‥‥という結果となったが、それはまた応募者達のあずかり知らぬ話である。