New Unit−Debut Song!アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 風華弓弦
芸能 2Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 2万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 08/06〜08/08

●本文

●新ユニットのデビュー曲
 アイベックスのプロデュースで、新しく企画・結成されるユニットのオーディションがあったのは、先日の事である。
 歌手2名、ダンサー1名に、奏者3名が決定し、高原 瞬−−CET大河ドラマ『毘沙門天』の主役に抜擢され、国民的にも有名なマルチタレントである−−を加えた7名のユニットが、ひとまず『完成』した。
 とはいっても、現状は頭数が揃っただけで、まだ『産声』すら上げていないユニット。
「早く、デビュー曲を作らねばならない」
 それが、アイベックスからの最優先事項であった。
 そして、デビュー曲の公募告知が各プロダクションへと伝えられる。

『‥‥という訳で、デビュー曲の公募と選考会をやるらしいんだけどね』
 留守録に吹き込まれた瞬の声は、どこか悪戯っ子のような調子で。
『どうせCDは一曲だけじゃできないし、デビューのミニコンとかも考えてるらしいから、僕らが曲を作っちゃダメって事はないと思うんだ』
 撮影現場にいるのか、僅かに切れた言葉の向こうで『休憩終わりますよー』とかいう呼びかけ聞こえる。
『選考会は、僕もスケジュール合わせて行くから。でも、曲とか詩とかアレなんだけ‥‥』
 録音の短い制限時間がきたのか、そこで用件は切れていた。

●今回の参加者

 fa0213 一角 砂凪(17歳・♀・一角獣)
 fa2228 当摩 晶(19歳・♀・狼)
 fa2778 豊城 胡都(18歳・♂・蝙蝠)
 fa2847 柊ラキア(25歳・♂・鴉)
 fa2899 文月 舵(26歳・♀・狸)
 fa3060 ラム・クレイグ(20歳・♀・蝙蝠)
 fa3608 黒羽 上総(23歳・♂・蝙蝠)
 fa3861 蓮 圭都(22歳・♀・猫)

●リプレイ本文

●最初の第一歩
「え〜っとね。お土産に、生八つ橋買ってきたよ」
 にこやかな笑顔で高原 瞬が薄い箱を取り出せば、黒羽 上総(fa3608)からギターを教わっていた柊ラキア(fa2847)は、ハテと小首を傾げる。
「暑いのに、生菓子ダイジョブ?」
「大丈夫。生八つ橋は生っていっても、生じゃないから」
「堅い八つ橋と区別して、生八つ橋って言うんよ。なんや、懐かしいわぁ」
 京女であるところの文月 舵(fa2899)が、嬉しそうに顔を綻ばせる。有名銘菓となれば現地へ行かずとも手に入る時代ではあるが、やはり「土産は土産」で。
 舵の説明に、ラキアはキラキラとした目で彼女を見ていた。
「さすが舵だね!」
「京都のお菓子ですか‥‥あ、瞬くんと呼ばせてもらっても、いいですか?」
 興味深げな豊城 胡都(fa2778)が、改めて瞬に聞く。包装紙を丁寧に剥がしながら、彼は「いいよ」と笑って答えた。
「今は撮影現場、京都だしね。お茶、淹れよか」
「ああ。それなら、俺がやるから」
 やれやれといった風に、上総が席を立つ。彼を追って、一角 砂凪(fa0213)もぴょんと立ち上がった。
「黒羽さん、さなぎも手伝います」
「上総でいいし、畏まる事もない。これから、同じメンバーとして活動するんだからな」
 先日のオーディションで決まったユニット・メンバーは、この場にいる六人と、スケジュールの都合で不参加の姫乃 舞を加えた七人。そのうち、ラキアと舵、胡都、上総の四人は、音楽活動の場で少なからず面識がある。だが、残る三人は初対面も同然だった。
「そっか‥‥えと、よろしくです。上総さん」
 笑って上総へ会釈してから、砂凪は紙コップを並べ始めた。

「でさ。デビュー曲の選考の前に、皆がユニットでどんな音楽をやりたいか、聞きたいんだけどな‥‥後は『宿題』の、ユニット名も」
 生八つ橋をつまみながら切り出す瞬へ、「はいっ!」と元気よく砂凪が手を上げる。
「ユニット名は、『Future Eggs』。これから成長していくっていう願いと、目標を込めてみました。
 それで、とにかく親しみやすさ重視! 前向きで元気が出る音楽を中心に、なるべく人前に出て何か出来たら良いなって思ってます」
 砂凪の意見に、舵が「そうやね」と頷く。
「うちも、ライブ中心で活動していきたいです。作品を通して、直に聞き手の反応を感じられるのが好きなので。ジャンルも括らずに、色々チャレンジしたいわ。
 ユニット名は、『colorFull(カラフル)』。『カラフル』と『フル』をかけまして、数え切れない色のように、それぞれのカラーと、皆の気持ちがいっぱいつまった、という意味です」
「カラフル‥‥綺麗ですね」
「だねーっ」
 胡都の感想に、こくこくと首を縦に振るラキア。
「それで、胡都は?」
「僕はユニット名は、ちょっと‥‥でも、多ジャンルでいろんなテーマをっていうのは、舵さんと同じですね。いろんな方面からメンバーが集まってますし、瞬くんも音楽に関してはこれからみたいだし‥‥模索しながらも、いいんじゃないかと思います。自分の音楽のカラーを見つけるのもね。後は個人のカラーが出せるように、敢えて服装はバラバラ、とか」
「服とかは、自然体が一番だよね。けど、バラバラでもどこかお揃いもカッコよくない?」
 同意を求める様にラキアから視線を投げられ、舵はくすりと笑う。
「アドリバティレイアも、そんな感じやね」
「うん、そんな感じー! ユニットは、明るく楽しく仲良くアットホームな雰囲気目指したいなぁ。で、足りないとこは補っていく感じ。曲の方向性は、その時伝えたい事を形にしたいかな?
 あ、進化ってことで『Progress(プログレス)』とか、ユニット名にどうだろー!」
「進化か‥‥俺が考えたのは、『white&BLACK』だな」
 最後となった上総が、僅かに苦笑混じりで続ける。
「由来というか、意味は『何色にでも染めることの出来る白』と『何ものにも染まらない、染められない黒』。他の言い方をすれば、前者は『協調性や社会性』。後者は『個性やオリジナリティ』といったところか。
『それぞれの個性を活かしつつ、様々なことを吸収して成長していく』。そんなバンドになっていければという思いも込めて、な」
 五人の意見に、瞬は相槌を打ちながら耳を傾けていたが。
「やっぱり皆、個性を重視してって感じだねぇ‥‥うん。僕も胡都さんが言ったとおり、これから音楽の勉強だからさ。楽しみだけど、ぶっちゃけ不安もあるかなぁ」
 初めて少し顔を曇らせた瞬は、すぐに表情を切り替える。
「皆と並んで恥ずかしくないよう、頑張らないとね」
「うちも、少しだけ怖い気持ちもあって、ドキドキしてます。お互いに判らへん事も多いですけど、これから少しずつ皆で進んでいくんですね」
 しみじみと呟く舵に、上総は冷茶の紙コップを干した。
「皆で、いいものを作り上げたいな」
「今回の選考会で、皆で一緒に曲作りが出来なかったのは、ちょっと残念だけどね」
「うん‥‥でも、これからも機会があるよ!」
 笑みの中にも寂しさを滲ませる砂凪に、ラキアが明るくフォローする。
「さて。そろそろ時間だし、行こうか」
 時計を確認した瞬が、メンバーを促した。

●候補1〜行き道
 アイベックスの社内にあるスタジオには、新ユニットのデビュー曲に応募した三人の女性が揃っていた。

「公募だけど、『私自身』のパフォーマンスは要らないわよね」
 そう言って、まず最初に当摩 晶(fa2228)が一枚のCDを審査員に提出した。
 審査する側は、アイベックスの社員−−ユニットメンバーのオーディションにも顔を見せた−−五人。そしてユニットのメンバー達も、意見を聞く為にスタジオに入っていた。
「思いを馳せるような感じの曲に、したつもりよ」
 晶が簡単な説明を加える間に、音源の準備が整えられた。
 やがて、スピーカーから無伴奏のアカペラが流れ始める。

「 果てない鼓動を刻む道で
  何を想い何を糧に足跡を刻むのだろう?
  一歩一歩を踏み締めながら未来(さき)を仰ぎ見た
  振り返る道
  遠い記憶に想いを馳せつつ未来(さき)を見る
  想い叶える『行き道(ゆきみち)』を‥‥ 」

『行き道』と題された曲は、少し暗い曲調のバラードだった。

●候補2〜飛翔
「本当は、メンバーの顔や音を知ってから作りたかったんですけど‥‥」
 少し苦笑して、ラム・クレイグ(fa3060)はデジタルオーディオを取り出した。
「タイトルは『飛翔』です。男性ボーカルが二人、女性ボーカルが一人ですよね。その辺りを意識して、ハモリや掛け合いに重点を置いてみました」
 ラムの説明が終わるのを待って、慣れないサンプリングを繰り返して彼女自身が作った曲が始まる。
 ギターの明るい電子音が入り、キラキラと反射する光をイメージしてドラムのハイハットのような金属質の音が、軽やかに鳴った。
 曲はバラード調だが、リズムマシンがやけに強調されている。
 流れる旋律のキーボードが加わって、最初に男性二人のパート−−どのパートも、唄うのは音域を変えたラム一人−−から歌が始まる。

「 黄昏の空に憧れて
  風の音を聴いて飛び立つ
  オレンジ色の空は
  君の歌声にも似て (哀しくなった?) 」

 女性のパートが後を継ぎ、男性二人がコーラスに回る。

「 私を抱きしめて
  翅を休める貴方をの腕の中 (守りたくて)
  見上げる空は
  閉じた貴方の瞳色 (守られている) 」

 続いて、男女二人のデュエットパートに、残る一人がコーラスを続け。

「 朝の霧が邪魔しても (風が強くても)
  光溢れて眩しくても (闇に惑っても)
  帰りたい場所があるから (大切な)
  諦めずに飛んでいく 」

 次に、コーラスとボーカルのパートが入れ替わる。

「 希望失くさず飛んでいく

  声にだしては (照れくさくて)
  なかなか言えないけど (心から思うの)」

 一フレーズだけ、三人のパートが重なり。

「 君のことが大好きです 」

 そして、デュエットの男性がソロで唄い。

「 待ち合わせの場所で君を待つ時間は
  期待と不安で長く早く過ぎていく 」

 最後は、女性のパートで締め括る。

「 貴方のもとへ弾む足で辿り着くの 」

●候補3〜星数のスタート
「ユニット結成おめでとうございます。文月さんも入ってるのね、すごいわ!」
 友人の顔を見つけて、蓮 圭都(fa3861)は我が事のように喜んでみせた。
 だが審査員の一人が咳払いをし、慌てて圭都は居住まいを正す。
「皆さんの活躍を、楽しみにしてますね。楽曲は『星数のスタート』。デビュー曲ということを意識してみました。
 ミドルテンポの優しい感じと、少しテンポアップしたリズミカルで明るいポップス風の、2バージョンに編曲して持ってきましたので、聞き比べて下さい」
 ラムと同様に、圭都も自作のデモ・ミュージックのデータが入ったデジタルオーディオを提出する。
 キーボードの軽やかなメロディに、彼女の深みのある歌声が響く。

「 いくつもの出逢いと別れをくり返し
  すれ違う哀しさにも慣れたフリをして
  失ってはじめて気付くと言うけれど
  なくさぬように しがみつくので精一杯

  今も臆病な痛みがどこかに隠れている
  シリアスになりきれず じゃれあっていた幼さは
  強さを偽る誰の中にもあるのでしょう

  笑うのも涙するのも ただ一生懸命に
  願うのも託していくのも 愛すればこそ 」

●候補4〜Challenge
『外部』応募者の三名の後に、ユニットメンバー達も自分が持ってきた曲を披露した。
「兄さんに協力して貰って、さなぎも曲を考えてみました」
 砂凪の作った『Challenge』は、明るいメロディにポップなリズムの一曲。

「 平坦じゃない人生だから
  傷つく事を恐れたら たぶん前には進めない
  時にはそう、大胆にChallenge!

  諦めずにReady try 願い続ける
  負けない夢を高く高く
  落ち込んだ過去に別れ告げたら
  笑顔の明日に向かって行こう

  顔を上げて一歩踏み出すチカラ
  勇気はいつだってキミの中に 」

●候補5〜GOING MY ROAD
「『これからどんな出会いや遭遇があるかわからない、ドキドキ・ワクワク感』をイメージした曲になっている」
「これから自分達の道を歩んでいくという事で、歌詞にもそんな思いを乗せてみました」
 上総に続いて、胡都が詩について説明をし。
 そして、明快なリズムと旋律がスタジオに溢れた。

「 Door For World Is Opened

  ちょっとお遊び All night
  広い世界を watching
  ちょっと息抜き All right
  全ての時間をenjoy!!
  さぁ、一緒に飛び出せ 必要なのは
  羽ばたくチカラ 夢見るキモチ

  Let’s go!My way.
  ノリで乗り切るdance party
  俺がいるとこ全てが舞台
  Let’s go!My rule.
  誰も知らない Seacret Place
  そう、いつでもどこでも俺が主役!
  変わる必要なんてない そのまま進めばOK
  さぁ、想いを越えて Let’s go! 」

●候補6〜夢をつないで
「テーマは、それぞれの持つ夢です‥‥平凡なものでも、ビッグなものでも。そして、夢は一人のものではなくて、誰かや何かと繋がりながら広がっていくというイメージです」
 舵が持ってきた曲は、全体を通して明るいイメージで、スローテンポから徐々にテンポアップと、メリハリのある曲だった。

「 ゆっくり時々は急ぎ足で歩く
  坂上れば見下ろす景色は小さくなっていく

  風も迷うビルの狭間
  見上げれば せまい空
  高い影から飛び出す羽はないけれど
  雨の日には傘をさして歩こう
  晴れたら水たまりが太陽を映して眩しいだろう

  目隠しの毎日 幸せを丁寧に手探りして
  小さな光が一瞬一瞬
  色とりどりに繋がっていく

  この世界に生きる 貴方 貴方
  転んだりつまづいたりしながら
  誰の後ろにも夢の足跡 」

●候補7〜Hands Over Hands!
 音を飛ばしつつ走りがちなギターに、危うい音程ながらも奔放な歌声は、ラキアの『Hands Over Hands!』。
 未完成で勢い重視の曲は、ある意味で彼らしいとも言える。

「 Hands Over Hands!
  繋がっていく 言葉がなくてもわかるから
  伝わる熱と一緒に どこだって往ける

  振りほどいた視線の中で
  僕らは瞬間 手を取り合った
  ないものねだり お互いに
  それでも構わなかった 最初は

  Hands Over Hands!
  繋がっていく 手と手だけじゃなくて
  進む先にある 世界の中きっと

  真っ直ぐ感じた想い 君となら
  繋いだ手そのまま どこだっていいよ

  Hands Over Hands! Hands Over Hands! 」

 繰り返す歌声がフェードアウトして、全ての曲が終わった。

●選考結果
 暫しの選考時間を挟み、結果はその場で発表となった。
「デビュー曲は、蓮さんの『星数のスタート』を採用します。ただ、アレンジは必要になるけどね。
 残る二曲、『行き道』は、ユニットのデビュー曲としてのイメージが足らない点。『飛翔』はユニット構成を考えてくれているけど、見ての通りメンバーが必ずしも全員揃うわけではないし、その辺の余裕がないのが残念かな」
 更に、『GOING MY ROAD』と『夢をつないで』がデビュー・シングルの収録曲候補となった。とはいえ、『Challenge』と『Hands Over Hands!』もユニットの曲として、ひとまずスタックされる。
 そして、肝心のユニット名は。
「『colorFull』もしくは『Progress』かな。あとは、舞さんの意見だね」
 ふっと、瞬が考え込んだ。これも、レコーディングには決めなければならない。

 そして肝心のレコーディングは、16日からスタジオ入りに決まった。