MusicFesta/Unit Debutアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 風華弓弦
芸能 3Lv以上
獣人 2Lv以上
難度 普通
報酬 6.6万円
参加人数 8人
サポート 1人
期間 08/20〜08/22

●本文

●ミュージック・フェスタ開催
 夏空の下で、心行くまで音楽を楽しもう−−。
 そんな主旨で、今年も『ミュージック・フェスタ』が開催される。
 J−popの大手プロダクション、アイベックスが主催とあって、この野外ライブでは大物アーティストが登場し、またシークレット・ゲストが飛び入りライブを行うというハプニングも用意された、話題の野外イベントだ。
 今年も、夏がやってきた。
 そして真夏一夜の音楽の祭が、いま始まる。

●デビュー・ライブ
『予告』通り、その知らせはレコーディング直前にユニット・メンバー達へと届けられた。
 −−ミュージック・フェスタにて、シークレット・ゲストとしてライブを行う。
 これが新ユニットのお披露目であり、デビュー曲発表の場であり、デビュー・ライブであるという。
「なんだか、胃が痛くなってきたなぁ‥‥」
 知らせを聞いた高原 瞬は、表情を歪めて苦笑いを浮かべる。
 タレントや役者として人の前に立つ事はあっても、音楽ライブで舞台に上がるのは初めての事だ。
 それでも、走り始めた以上は後戻りもできない。
 それが、芸能界という世界である。
「皆は‥‥聞いたら、どんな顔するだろうな」
 デビュー・ライブが正式に決まったのならば、メンバーとライブの構成や演出も考えなければならないだろう。
 やがて瞬は重い腰を上げて、席を立った。

●今回の参加者

 fa0213 一角 砂凪(17歳・♀・一角獣)
 fa0634 姫乃 舞(15歳・♀・小鳥)
 fa0868 槇島色(17歳・♀・猫)
 fa1744 雛姫(17歳・♀・小鳥)
 fa2778 豊城 胡都(18歳・♂・蝙蝠)
 fa2847 柊ラキア(25歳・♂・鴉)
 fa2899 文月 舵(26歳・♀・狸)
 fa3661 EUREKA(24歳・♀・小鳥)

●リプレイ本文

●『本番』直前の風景
 控えの車にまで、歓声や拍手が聞こえてきた。
 低音が、音ではなく振動となって、リズムを伝えてくる。
「ライヴだライヴだ、がんばろー!」
 首にかけたゴーグルを躍らせて、柊ラキア(fa2847)がぴょんぴょんと跳ねた。緊張を鎮めるように、目を閉じて姫乃 舞(fa0634)が一つ深呼吸する。
「いよいよですね‥‥お客様に楽しんでいただけると、いいのですが」
「大丈夫だよー! 前ステージに負けないように、がんばろーっ!」
 励ますラキアは、えいえいおーと拳を空へ高く突き出した。
「いつでも元気ですね、ラキア様」
 ころころと笑う雛姫(fa1744)の背中には、ぺったりと槇島色(fa0868)が張り付く。バックコーラスとしてライブのサポートに参加したもの、要領を得ない為にすっかり雛姫のオプションと化していた。なお色が持ち歩いていたドスは、音楽プロデユーサーが一時没収済である。
「そういえば、瞬君は‥‥どこに行ったのかしら?」
 気付いたEUREKA(fa3661)が、きょろきょろと周囲を見やる。
「あ。瞬君なら、砂凪さんと一緒にダンスの練習してましたよ」
 何処へ行っていたのか、今まで姿を消していた豊城 胡都(fa2778)が小さな紙袋を手に戻ってきた。
「砂凪さんと?」
「うちが、見てきましょか」
 席を外す文月 舵(fa2899)を、やや緊張した面持ちで舞が見送り。
「それで、胡都はドコ行ってたの?」
 尋ねるラキアに、『手土産』を貰った彼はにっこりと笑う。
「佐伯さんへ、挨拶に。頑張れよって、言ってました」
「あ〜っ、ずるい! それなら僕も行きたかったのにぃ〜っ!」
 一足先にステージへ上がる『知り合い』を気にしていたラキアは、地団駄を踏んで悔しがった。

「右、左、右で、トントントン‥‥うん、そう。オッケーだよ」
 弾んだ一角 砂凪(fa0213)の声がして、舵は足をバックヤードの外れに向ける。
 探す二人は、ライブでのステップを熱心に復習していた。高原 瞬のステップを、砂凪がチェックしてアドバイスをしている。
「お二人さん。そろそろ時間ですよ」
 舵が声をかければ、二人は足を止めて振り返った。
「あ、舵さん。すいませんっ!」
「いや、僕が砂凪さんにお願いしたんだよ。身体動かしてたら、少しはリラックスできるかなって‥‥ごめんね」
 口々に謝る砂凪と瞬に、「だぁれも怒ってません」と彼女は笑う。
 戻る三人の耳に、自分の失敗談を語る色の声が聞こえてくる。
「それで、マイクのコードに足を引っ掛けて転んだり‥‥」
「あ! それ、僕やりそーっ!」
「転ばないで下さいね、ラキアさん」
「こっ、転んだら、舞フォローお願いっ!」
「私ですかっ!?」
 和やかな空気に、瞬は目を細める。彼の背を、励ます様に舵がぽんと軽く叩いた。
「緊張も怖い気持ちも、あるのは当然です。けれど、ここにきたからには何よりも、会場の皆で楽しみましょうね。気張りましょ」
「うん‥‥そうだね」
 視線を手元に落とせば、瞬の手首にはミサンガが巻かれている。
 舵に砂凪、そして他のメンバー達にも、同じミサンガが巻かれていた。
 −−俺は今回のライブへは出れないが、皆と思いは同じ。心はひとつ‥‥だからな。
 昨日。リハーサルの途中に顔を出した黒羽 上総はそう告げて、自分が着けた物と同じのミサンガをメンバー全員に手渡した。
「上総さんに笑われないよう、頑張らないと」
「笑わない、と思いますよ。一生懸命頑張ってるの、知ってますから」
 自分のミサンガに手を添えた砂凪が、瞬を見上げてにっこりと笑顔をみせた。
「きたきた! みんなでアレやろー、アレ!」
 三人を見つけたラキアがブンブンと手を振れば、またぶら下げたゴーグルが躍る。
「アレ?」
「皆さんでこう‥‥やろうって、話になったんです」
 尋ねる砂凪へ、身振り手振りを加えて舞が説明した。

「スタンバイお願いしまーす!」
 ライブのスタッフが、バックヤードを回りながら声をかける。
「それじゃー!」
 両手を挙げたラキアが音頭を取り。
「『colorFull』デビューライブ、がんばろーっ!」
『『おー!』』
 グラウンドに出る野球選手達の如く円陣を作った一同は声を上げ、気合を入れた。

●Debut
 先ずバンドメンバー達がステージに上がると、何も知らない客から歓声が飛ぶ。
 男性ながらも何故かチャイナドレス姿の胡都は、ドラムへ。
 キーボードの前に立つ舵は髪はアップに纏め、水色のティーシャツとデニムのスカート、そして首には水色のバンダナをゆるく巻いている。
 不在の上総に代わってエレキギターを手にしたEUREKAは、舵と同様に髪をラフにアップにし。落ち着いた藍系のアオザイ風の衣装の袖上から、水色バンダナを右の二の腕に結んでいた。
 コーラス用のスタンドマイクで控えるのは、短めの丈の白いアオザイ風ブラウスに紺のミニスカート、髪はポニーテールにして水色のバンダナをリボンの様に結び、活動的なイメージに纏めた雛姫と。
 水色のバンダナを頭に軽く巻き、キャミソールの上に袖なしのデニムのジャケットを羽織り、デニムのショートパンツを履いた、色。
 各自の準備が終われば、胡都が軽くリズムを刻み始め。
 キーボードにギターが加わって、ステージへの期待感を煽る。

 その盛り上がりが、はちきれんばかりに膨れ上がった瞬間。
 ステージの左右から、二人ずつの組になって新たなメンバーがステージへと飛び出した。

 右手からは、動きやすい白のタンクトップと水色のショートジーンズ姿の砂凪と、白のカジュアルワンピースを纏った舞。
 二人は揃って、水色のバンダナを襟元に巻いている。
 左手からは黒いタンクトップにダメージジーンズのラキアと、そしてグレーのポロシャツにカーゴパンツの瞬。
 二人も揃って、頭に水色バンダナを結んでいた。
 ステージ中央で交差した四人は手を打ち合わせ、ステージ前面の4つのポジションについた。
 スタンドマイクに手をかけると、歓声の渦でキィンと軽くハウリングを起こす。
 ステージ袖のスタッフを見やって補正OKを確認すると、瞬は改めてマイクを握り。
「みんな、初めまして! 僕らは、『colorFull』ですっ!」
 第一声を放った。

●夢をつないで
 スローテンポな明るい旋律が、歓声をゆっくりと駆逐していく。
 心地よいドラムの振動。
 スウィングするようなキーボードとギターのメロディ。
 それらに身を委ねながら、舞は一番手を唄う。

「 ゆっくり時々は急ぎ足で歩く
  坂上れば見下ろす景色は小さくなっていく 」

 短い間奏を挟んで、瞬は注意深く声を音にのせ。

「 風も迷うビルの狭間
  見上げれば せまい空 」

 楽しげに、ラキアが後へと続く。

「 高い影から飛び出す羽はないけれど
  雨の日には傘をさして歩こう 」

 そして、息を合わせて最初のハーモニーを奏でる。

『 晴れたら水たまりが太陽を映して眩しいだろう 』

 演奏は、次の段階のスピードへ。
 夜を照らす柔らかいライトの下、三人の間を縫うように砂凪が軽やかにステップを踏む。

「 目隠しの毎日 」

 バトンを受け渡すように、ラキアは瞬を指差し。

「 幸せを丁寧に手探りして 」

 繋げるように、瞬は舞に手を伸ばし。

「 小さな光が一瞬一瞬 」

 伸ばした手を、ステージ前方に立つ四人は聴衆へと差し伸べ。

『 色とりどりに繋がっていく 』

 軽やかなギャロップとなったリズムを、ギターとドラムが誇張して。
 弾むような、キーボードの音が響く。
 パァッとライトが光量を増して、ステージの陰影を濃く浮かび上がらせる中。
 手を打ち、足を踏み、身体で拍を刻んで。

『 この世界に生きる 貴方 貴方
  転んだりつまづいたりしながら
  誰の後ろにも夢の足跡 』

 雛姫と色も、一つ一つの音を丁寧に重ね。
 歌い上げた曲に、拍手が応えた。

●GOING MY ROAD
 拍手が鳴り止まぬうち、胡都がスティックを打ち。
 たたみ掛けるように続くのは、軽快でポップなメロディ。
 だがダンサブルなアレンジは、不意に消え。

『 Door For World Is Opened 』

 囁くような声を挟んで、再び音が会場を包む。
 スタンドからマイクを外した三人のボーカルは、砂凪と共に右へ左へと動き回る。

「 ちょっとお遊び All night
  広い世界を watching
  ちょっと息抜き All right
  全ての時間をenjoy!! 」
『 さぁ、一緒に飛び出せ 必要なのは
  羽ばたくチカラ 夢見るキモチ 』

 リズムにノッた雛姫も、ボイスパーカッションを入れながら高く両手を上げて手拍子を送り。
 色も彼女に続き、扇情的にアプローチして盛り上げに一役買う。
 ステージ中部に吊るされたミラーボールが、目も眩む光を客席へ投げ。
 ピンスポがステージのメンバーを追いかける。

「 Let’s go! My way.」
『 ノリで乗り切るdance party 』
「 俺がいるとこ全てが舞台
  Let’s go! My rule. 」
『 誰も知らない Seacret Place 』
「 そう、いつでもどこでも俺が主役! 」
『 変わる必要なんてない そのまま進めばOK
  さぁ、想いを越えて Let’s go! 』

 入れ替わり立ち代わり位置を変えながら、キャッチボールをするように唄うパートを投げ合い。
 そしていつものように鮮やかに、ラストパートを揃えてカットダウンする。
 同時に目映いライトが落ちて、暗がりの中からまた歓声が上がった。

●Break time
 労う様に、緩やかな光がステージを優しく照らす。
 上がりそうな息を整えてから、瞬はメンバーをぐるりと見やり、オーディエンスと向き合った。
「改めて‥‥『colorFull』です! 今日、このライブ・デビューの日を、この場所で、みんなと迎えられて、嬉しいーーっ!」
 叫んだ瞬が客席へマイクを向けると、混ざり合って聞き取れない言葉が塊になって返ってくる。
 反応にやや目を丸くしつつも、負けじとラキアが後に続いた。
「瞬が下手だっつーから、僕がデビューしたばっかの『colorFull』メンバーを紹介するよ!
 歌い手組、一人目! 皆知ってるよね、高原 瞬! 音楽にもチャレンジ中ー!」
 ライトが受け、照れ笑いを浮かべる瞬が大きく手を振れば、明るいメロディで間を繋ぐ舵の演奏が消えそうな程の歓声が上がる。
「歌い手二人目は、控えめしっかり清純派の姫乃 舞!」
 舞の左右で雛姫と砂凪がひらひらと両手を振ってアピールし、舞は短く歌の一フレーズを披露する。
「三人目は、僕。自分で言っちゃう! ムードメーカー、柊 ラキア!」
 言い切るラキアに、笑い声が起きる。
「そして、ちっちゃいけれどもダンスでステージをおっきく盛り上げてくれる、一角 砂凪!」
 名前を呼ばれて照れながらも、砂凪はぺこりと頭を下げた。
「それから、僕らを支えてくれる演奏組っ。
 ドラムは、甘いもの大好きな豊城 胡都! キーボード、はんなり京美人の文月 舵!」
 手をかざすラキアから紹介された二人は、それぞれの演奏楽器を駆使して『挨拶』代わりの短いフレーズを披露する。
「で、今日はこれなかったユニットメンバー、ギターの黒羽 上総に代わってお手伝いにEUREKA!」
 アオザイの裾を翻し、ポーズをつけたEUREKAの指が、指板の低音から高音までを『駆け降り』た。
「まだ、この晴れ舞台にお手伝いに来てくれた人いるよー! コーラスで槇島 色さんと、雛姫さん!」
 何故か「さん」付けされた二人は、にこやかな笑みを投げて手を振った。
「これでメンバー紹介終わり! あと一曲、このメンバーで歌うよっ! 曲紹介は、舞にバトンターッチ!」
 役割を振るラキアに小さく頷いた舞は、マイクに両手を添え、顔もはっきり見えない遠い席の一人一人に語りかける様に、優しい声でMCを継ぐ。
「煌めく星に願いをかけて。色とりどりの想いを音に変え、今あなたに届けます。
 私達のデビュー曲になります‥‥『星数のスタート』、聴いて下さい」
 静かに打ち寄せる潮のように、拍手が沸き起こった。

●星数のスタート
 ミドルテンポの優しいメロディが流れ、スモークマシンが作り出す白い煙が、ゆっくりと足元を覆っていく。
 皆で一緒に唄いたいという瞬の希望で、今回はあえて細かいパート分けをせず。
 砂凪もマイクを持ち、ボーカルもコーラスも分け隔てなく六人が声を重ねる。

『 いくつもの出逢いと別れをくり返し
  すれ違う哀しさにも慣れたフリをして
  失ってはじめて気付くと言うけれど
  なくさぬように しがみつくので精一杯 』

 スモークを透かす様に、ステージ奥からライトが灯り。

『 今も臆病な痛みがどこかに隠れている
  シリアスになりきれず じゃれあっていた幼さは
  強さを偽る誰の中にもあるのでしょう 』

 力強いリズムと共に奏でる旋律も大きく膨らんで、光と音が幻想的な空間を作り出す。

『 笑うのも涙するのも ただ一生懸命に
  願うのも託していくのも 』

 誰もが言葉の一つ一つを愛しむ様に、丁寧に紡いで。

『 愛すればこそ 』

 高らかなハーモニーが、夜空へと消える。
 ワイヤー・ブラシで打つドラムが、柔らかいリズムを残し。
 ギターとキーボードもゆっくりと最後のコードを押さえて、静かに終焉を迎える。

 余韻を惜しむような静寂の後、続くのは拍手と歓声。
 歌い手達は聴衆に応えながらも互いに顔を見合わせ、視線を交わし。
 演奏を終えた奏者達も引っ張ってきて、ステージの縁まで進み出る。
 そして九人は晴れやかな笑顔で、ひときわ大きく手を振った。