MusicFesta−code LLLアジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
風華弓弦
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芸能 |
3Lv以上
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獣人 |
2Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
6.6万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
08/20〜08/22
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●本文
●ミュージック・フェスタ開催
夏空の下で、心行くまで音楽を楽しもう−−。
そんな主旨で、今年も『ミュージック・フェスタ』が開催される。
J−popの大手プロダクション、アイベックスが主催とあって、この野外ライブでは大物アーティストが登場し、またシークレット・ゲストが飛び入りライブを行うというハプニングも用意された、話題の野外イベントだ。
今年も、夏がやってきた。
そして真夏一夜の音楽の祭が、いま始まる。
●『code LLL』
「という訳で、ライブ続きなんだけどね」
「大変そうだな‥‥まぁ、忙しいのはいい事だろうが」
カウンターへ頬杖をつく音楽プロデューサー川沢一二三(かわさわ・ひふみ)へ、ライブハウス『Limelight』オーナー佐伯 炎(さえき・えん)が、苦笑と共にぷかりと紫煙を吐いた。
「一部とはいえ、アイベックスの『ミュージック・フェスタ』のプロデューサー。大したモンじゃねぇか」
「心なしか冷やかしに聞こえるのは、私の気のせいか」
肩を落として川沢は嘆息し、佐伯はからからと笑う。
「応援してんだがな、一応」
「判ってるよ」
目を伏せて答え、暫し思案した末に川沢は上目遣いに友人を見上げた。
「ただ単に、普通にライブをやるっていうのも‥‥勿論、できるけど。それだけじゃ『私』でなくても、できるよね」
「うわ‥‥何か、よからぬ事を考えてやがるな」
眉間に皺を寄せ、露骨に嫌そうな顔をして、「やめとけ」と佐伯が首を振る−−内容も聞かぬうちに。だが、構わず川沢は言葉を続けた。
「ライブ会場で、『Limelight』をやらないかい。佐伯オーナー?」
やれやれと‥‥佐伯は、盛大な溜め息をついた。
−−ライブで、『Limelight』をやる。
無論、店と同じ様に野外ステージが組めるわけではない為、あくまでもイメージだ。要は『Limelight』の‥‥川沢や佐伯の、『音を楽しめ』という音楽流儀に尽きる。
当日は、佐伯もライブ会場へ顔を出す事となった。
果たして、ライブ会場でどんな『Limelight』が出来上がるのだろうか−−。
●リプレイ本文
●Get ready?
「音を楽しむのは、勿論。グループを越えて、皆で音を作ってくのも『Limelight』流。なので今回は『バックバンド固定ボーカル・チェンジ作戦』でいきたいと思いマス!」
リハーサルを終えた椿(fa2495)が、揃った六人のメンバーと共に高らかに宣言した。
佐伯 炎は、二度三度と目を瞬かせ。
「作戦なのか」
「うん、作戦!」
明るく返ってきた答えに、やれやれと頭を振る。
「後で大物アーティストが出るって話だけど、こっちだって負けないわよ」
アイリーン(fa1814)が明るく気合を入れれば、明星静香(fa2521)もにっこり頷いた。
「ええ。気合十分で、いつも通りに。ね」
「アツくなり過ぎて倒れても、レディ二人なら俺が優しく介抱するから、安心してくれ」
微笑と共に、LUCIFEL(fa0475)が女性二人へ気遣い(?)の言葉をかける。
「まぁ‥‥確かに日が沈んでもまだ暑いから、水分補給とか忘れないようにね。ステージ脇にも、スポーツドリンクとか用意してあるから」
川沢一二三が暑気への注意を促せば、『はーい』と元気な返事が揃った。
「で、珍しく大人しいンだな」
『今日の相方』を見やる佐伯に、明石 丹(fa2837)は首を傾げる。それから隣に目をやって、「ああ」と得心した。
「彼の、双子の弟でアキラです」
紹介され、柊アキラ(fa3956)は会釈をする。
「そりゃあすまん。仮装して混ざってるのかと思った‥‥リハ前に、賑やかな声も聞こえてたしな」
「いいえ。よくある事だし‥‥この後、出てくるみたいだから。兄貴」
慣れた風に、アキラは笑みを返した。
「今日は、よろしくお願いするね。司君」
アキラと佐伯が話す間に、丹は美日郷 司(fa3461)へ改まって声をかけ、彼は重く首を縦に振る。
「愛用のエレギが使えないのは、悲しくも残念だが‥‥仕方ない」
しみじみと呟く司の肩を、励ますように丹が軽く叩いた。
やがて、『前座』の演奏が終わり。
各自が各ポジションに立ち、開かれたステージの準備が完了すれば、勢いよく椿が飛び出した。
「今晩和! 玩具箱なライブハウス『Limelight』から飛び出して来た『code LLL』デス♪
LovelyでLibertyでLivelyな音楽で皆とLuckyに!」
茜色の空の下で、長い赤毛の三つ編みが跳ねる。そして、数拍の間をおいて。
「‥‥誰かL多いって、突っ込んで〜っ!」
訴える椿に、ステージ・メンバーからも客席からも笑いが起きた。
「それじゃあ一夜のお祭、始めるよーっ!」
スタートを告げる様に、ホイッスルが夕暮れ空に鋭く高く鳴り響いた。
●Aileen〜PARADE
笛の音を合図にして、演奏が始まる。
胸元でホイッスルを揺らし、手拍子を打ちながら、赤白のボーダーシャツにぶかぶかのハーフパンツを履いたAileen−−アイリーンがステージ中央に進み出た。
半獣化した彼女は、バンダナで髪ごと耳を包んで隠し、外れない様に結び目など数カ所をヘアピンで止めている。
アップテンポなリズムに合わせて、アイリーンは右へ左へとステージを移動し、最前列から後尾までアピールをする。
「 さあほら そんな隅に居ないで飛び込んじゃおうよ
周りの視線を気にしてばかりじゃ 楽しめないよ
私が手を引いてあげるから パレードに行こうよ 」
フレーズを息もつかせず、一気に唄い。
くぐり抜ける歓声の如く、電子楽器の音が賑やかに振る。
「 ねえほら こんなチャンスには滅多に巡り会えないよ
今日は少しだけハメを外して はしゃいでみようよ
私が背中押してあげるから パレードに行こうよ 」
イメージするは、祭りのパレード。
行軍のドラムと一緒に彼女からスタートした『隊列』が、会場全体を巻き込んで広がる様にと。
歌の合間にも演奏するメンバーの間を、身軽に駆け抜ける。
「 パレードには主役も脇役も居ないから
手を取り輪になり朝まで踊ろうよ
期待のロマンス最後まで取っておくから
手を振り足踏み朝まで騒ごうよ 」
旗手となるアイリーンは、旗の代わりに大きく手を振って。
賑やかに、ライブの幕開けを飾った。
●明星静香〜夏休み
「それじゃ、『code LLL』のメンバーを紹介するね!」
ドラムセットに座った椿が、スタンドマイクへ声を投げる。
「いま唄ってくれたボーカルは、Aileenさん!
エレキギターが明星さんで、ベースギターは明石さん&柊さん!
キーボード、美日郷さん!
そしてLUCIFELさんと、ドラムの俺、椿でお送りしまーすっ!」
名を呼ばれると演奏のアドリブを入れたり手を振ったりして、椿の紹介にメンバーが応えた。
拍手を待って新たなリズムを椿が叩けば、ツインベースとキーボードのメロディが追従する。
ピンクのTシャツとデニムのハーフパンツといったラフな服装の静香が、硬質の金属弦をストロークして、スタンドマイクへと歩み出た。
「 もう夏が訪れている 長い休みも近付いている
君と会う予定を立てたけど 結局すれ違うだけだった
最近なかなか会えないね ずっと思ってるけれど
忙しいから仕方がない そう我慢してるわ 」
続く静香のメロディは、Aileenに同じくアップテンポで明快。
可愛らしい仕草を交えつつも、パワフルな歌声が聴衆を圧倒する。
「 君と会えない夏休み 寂しいけれど
ずっと待ち続けるわ あなたを信じて
君と会えない夏休み 悲しいけれど
きっとまた会えるはず その日を信じて 」
ジャランとエレキギターを掻き鳴らせば、一斉に他の楽器も止まる。
歓声が空気を震わせる中、目を閉じていた静香が悪戯っぽい笑みを浮かべ。
力強い音を繋げると、歓声を吹き飛ばすように旋律が蘇る。
「 でもね あまり放って置くと浮気をするかもよ
だから 少しはかまってね そうさせないように
もちろん 君が大好きだよ 他の誰よりも
だけど 油断をしてるとね どうなるかわからないから 」
フェイントを効かせ、ノリのいいメロディにチクリと本音を混ぜ込んで。
静香は歓声を聞きつつ身を翻し、再びポジションへと戻る。
●『ハルカ』〜夕暮れ下車
夕焼けも消えた薄闇に、柔らかい暖色の光がステージを照らした。
スポットライトの光を受けて、ベースを丁寧に弾く丹とアコースティックギターに持ち変えたアキラが、司と共にスローナンバーを奏でる。
二人は縁に黒のラインが入った白の半袖開襟シャツに、黒のネクタイを緩く締め。黒と赤のタータンチェック柄なタイトなベルトパンツに、ブーツといったお揃いの衣装だ。
「 揺れる電車 窓の外ひろがる景色は変わらずに
毎日眺める四角い枠の中に何がある 」
『 フラリ途中下車 』
「 僕を知らない世界は座って見るより随分大きい
手の平に収まった鉄塔を見上げては 」
『 夕暮れ繋がる先 想像してみる 』
「 身勝手くらいが丁度いいって
そう言うものか 運命
ならば天真爛漫お似合いな
ありのままの僕でいこう 」
伸びやかに二人はハーモニーを交え、感情はリズムの変化で例えて。
最後は司のキーボードによるゆったりとしたコードに、声を合わせて締め括る。
『 いつかどこか出会う知らない窓
僕を映しながら 』
静かに終わる曲の後を、拍手が追った。
●椿〜Special Dream
暗いステージが、明るいメロディと共に息を吹き返す。
元気良く弾む様な軽快なメロディーを、キーボードが紡ぎ。
ドラムの代わりに、ベースがアップテンポなリズムを刻む。
ドラムセットから離れた椿が、マイクを片手に客席へと駆け出す。
「 永遠に子供ではいられない そんなこと分かってる
だって僕達は毎日生まれ変わってる
今日の僕は 明日の僕とは違うよ 」
『 きっと毎日がSpecial 』
まだまだ発展途上の椿の歌声を、アイリーンと丹のコーラスが援護して。
黒いスーツにノーネクタイというシンプルな装いの椿は、黒いパンツとタンクトップに濃いグレーのジャケットを軽く羽織った司の隣へ移動する。
「 生きる意味なんて難しくて 言葉には出来ないけど
お利口じゃなくてもケセラセラ
夢をみよう この両手いっぱいに 」
『 きっと大きく花咲くSmile 』
「 ボタンかけ違えたら やり直せばOK!(Don’t Mind!)
輝く夢を全部 明日の糧にChange!(Let’s Go!) 」
『 さぁ 自由に羽ばたけ 』
強いメロディと三人の歌声と共に、ステージ後方から眩くライトが客席を照らし。
炸裂音と共に、ステージ前面からは銀色の紙吹雪が舞い上がる。
『 Special Dream
難しい話はいらない 隣を見てごらん
Special Night
ほら皆仲間さ 手を取り笑おう
やがて夜は明けるけど 夢はずっと君の胸で
いつまでも輝く Special Dream! 』
歓声の中、きらきらと降る銀の光を受けながら。
後奏も短く、曲は鮮やかに消え失せた。
●LUCIFEL〜The Silvery Sun
ドラムセットに戻った椿が、次々とタムを打ち。
タム回しを挟んで、一気にボルテージを上げる。
「お前らもうへばってたりしないよな〜? 祭りはこれからだぜ、いくぞっ!」
それまでステージに加わらなかったLUCIFELが、声をあげながら前に出た。
「 Run through! 思いのままに
Strike and break! 感じるままに
Run through the Night! 世界を廻る
Strike and break the Night! ココロの叫び
望むままに全てを曝け出して! 輝きを掴み取れ!
The Silvery Sun! yeah!
Run through! 信じるままに
Strike and break! 気の向くままに
Run through the Night! 世界を廻る
Strike and break the Night! ココロの叫び 」
自慢の高音を響かせながら、彼はステージ中を駆け巡る。
「まだまだっ! ギアを上げろっ! レディは倒れても、この『愛の歌い手』LUCIFELが介抱してやるぜ?」
「 Run through the Night! The Silvery Sun!
Strike and break the Night! The Silvery Sun! 」
最後にライトがフラッシュし、残像をおいてステージは暗転する。
歓声と拍手の中で、柔らかな光がステージへと戻ってきた。
演奏を終えた者達は、ステージ前面で一列に並んで手を繋ぎ、手を掲げ、聴衆へと一礼をする。
そしてそれぞれ手を振りながら、ステージの端へとバラバラに引き上げていった。
●Disappointment
時間は、少々遡る。
ライブのリハーサルが終わったバックヤードで、渋面の佐伯は煙草をふかしていた。
「不味いだろう、これ」
「うん。一番不味いのは、本人が気付いていない事‥‥かな」
傍らで嘆息する川沢の携帯が、着信を告げる。電話の相手と数分ばかり話し込んだ末、再び深く息を吐きながら川沢はパチンと携帯を閉じた。
「当然、『お偉いさん』は不機嫌か‥‥で?」
「何とか『前座』で食い込ませるよ。幸い、上手い下手は置いて顔だけは売れてるからね、彼は」
それを聞いて、佐伯が薄い笑いを浮かべる。
「野外ライブじゃ、ウケるか謎だがな。そこまでしてやる義理、あんのか?」
「さて‥‥とりあえず、琢磨さんが『ユニット』から外れる事を、伝えてくるよ」
疲れた表情で出演者達の元に向かう川沢の背を、友人は心配そうに見送った。
夕暮れを迎える前のステージで、陸 琢磨(fa0760)は一人吠えていた。
バックバンドは、いない。
スピーカーから流れる、叩きつけるようなハイテンポなハードロックの−−オケ(カラオケ)に合わせて、唄うだけだ。
「 Hate noisy towns because you are not found.
Depressingly seeing the gray as far as the eye can reach.
It is possible to think of anything without can the grip if you are not.
Want you to be in by the side.
Want to be in by the side.
Thought that time only had to stop.
Let’s give all of me!
Thought feelings are too strong and the loved thing is forgotten.
Only your fantasy remained in me.
As for anything,it is already unnecessary.
It looks for only you and wandering.
Even you only have to be.
Keeps thinking only of you for a long time! 」
『本場のロック風』を狙った彼だが、会場からはおざなりな拍手が返っただけだった。
「ナンでライブ構成が変わったか、気にならんか?」
ステージから降りた琢磨へ、唐突に佐伯が問いを投げた。
「さぁ」
「アイベックスが主催するライブで、ハードロックってな‥‥前から気になってたんだが、お前『ポップス』ってジャンルを勘違いしてないか?」
「だが‥‥」
疑問の表情でステージを振り返る琢磨へ、佐伯は『舞台裏』を明かす。
「本来なら出さねぇところを、川沢が「せめて前座で」って頼み込んだんだよ。けどな。お前のステージ、盛り上がったか?」
琢磨は、口をつぐむ。
『ミュージック・フェスタ』での彼のライブは、不発に終わった。
白けた客が帰らなかったのは、『この後のライブを聞く為』なのだから−−。
●歓声の後で
「お腹減っター!」
バックヤードへと戻った椿が、清々しい笑顔で叫ぶ。
「お疲れさまでした。後のライブは、聞いてくかい? それなら簡単に腹ごしらえできる様にって、佐伯がお握りを持ってきていたけど‥‥早くしないと、彼に全部取られそうだね」
既に駆け出した椿を見送る川沢の言葉に、後に続くメンバー達も漸く普段の顔を見せた。