colorFull−PVを撮ろうアジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
風華弓弦
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芸能 |
3Lv以上
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獣人 |
2Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
9.4万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
09/06〜09/10
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●本文
●撮影プランは慎重に?
「え? 僕らで撮影場所とか、選んでいいの?」
驚いた表情の高原 瞬に、アイベックスの担当者が頷く。
「そうです。さすがに時間的な制約で国外での撮影は無理ですが、日本国内ならどこでも」
「沖縄でも、小笠原でも、北海道でも? あとは、軍艦島とか」
「‥‥遠いところばかりですね、高原さん。それから、軍艦島は危険なのでダメです」
担当者の指摘に、瞬はくつくつと笑う。
「だって、どこでもって言うから‥‥軍艦島は、冗談だけど」
「普通に撮影許可が出る場所で、お願いします。米軍キャンプとかも、ナシで」
「あ、別に軍隊とかその辺は興味ないので、大丈夫です」
「ええ‥‥冗談ですから」
担当者の切り返しに、瞬はまた笑う。
「割と、面白い人だったんだね‥‥あ、それで、撮影場所はどこでもいいって話だけど、曲は?」
「撮影日数は、五日。その間に、少なくとも『星数のスタート』 は撮らなければなりません。これがデビュータイトルになりますから。後り時間で残りの二曲のうち、どちらかを。現地へ赴いてのナチュラルなイメージでの撮影も可能ですが、デジタリックな映像にするなら専用スタジオも用意します」
「こう、CGでバーンバーン! って感じだね」
「バーンバーンでなくても、別に構いません」
指で銃を撃つ真似をする瞬に、担当者は淡々と答えた。
●リプレイ本文
●イメージと音を映像にする為に
アイベックスの打ち合わせスペースを占拠して、「colorFull」のプロモーションビデオ(PV)制作の意見出しが行われていた。
PVを作る曲は、デビュー曲である『星数のスタート』。
それに加えて、皆の希望で『GOING MY ROAD』が予定されている。ただし『星数のスタート』の撮影を優先し、時間があれば‥‥という段取りになっていた。
「『星数のスタート』は、やっぱり星が綺麗に見える場所がいいよな‥‥」
思い当たる場所を考える黒羽 上総(fa3608)へ、豊城 胡都(fa2778)がこくりと頷く。
「草原に、ぱーっと一面の星とか。どうでしょう」
「ビルの屋上から眺める星空も、いいんじゃないかな?」
テーブルに頬杖をつく一角 砂凪(fa0213)が、イメージを膨らませるように目を閉じ、姫乃 舞(fa0634)も彼女の意見に賛同する。
「夜の撮影なら、どこでもライトは使いますから‥‥星は合成で被せるとか」
「僕はアレかな‥‥夕日の見える丘、希望で。でもって、『GOING MY ROAD』はハードって言うか、ワイルドっぽい言うか、そんな感じかなー」
いつもより大人しい柊ラキア(fa2847)の提案に、それらを椿(fa2495)が繋ぎ合わせた。
「じゃあ、昼間から夕方に草原っぽいところでロケやって、メンバー個々のイメージシーン? でもって、ビルの屋上で最後はシメるとか。個々のシーンは「出逢い」「別れ」「すれ違い」「哀しみ」‥‥かな。歌詞から想像して」
「そっか! あ、感心したから椿さんに飴玉一個プレゼン! 胃袋にいれちゃってー!」
「ありがとー! でも、一個じゃ足りないよ?」
「一個しかないもん」
二人のやり取りを笑ってみていた門屋・嬢(fa1443)も、控え目に意見を出す。
「場面は‥‥あたしは、学生を連想するなぁ。入学式と、卒業式のイメージ? 思い出を失くしたくないって雰囲気が強そうなんだけど‥‥」
「思い出かぁ‥‥俺は恋人同士のすれ違い、かな。瞬はどう? ずっと考え込んでるみたいだけど」
何やら物思う様子の高原 瞬に気付いて、篠田裕貴(fa0441)が話を振る。微妙な表情で話を聞いていた瞬は、彼へ苦笑を向けた。
「うん‥‥みんなの『星数のスタート』って、割とセンチメンタルなイメージなんだなって。ちょっと意外」
「そうかな?」
「この曲、感傷とかを前面に出した歌じゃなくて、ある種のエールじゃないのかな‥‥それに、一番最初の、デビュー曲のPVだよ? 『colorFull』を知らない人達へ、『colorFull』はこんなユニットですってアピールするモノ‥‥だよね‥‥」
「ねぇ、裕貴サーン。おやつなーいー?」
椿に呼ばれて裕貴は他の七人へ振り返り、椅子から立ち上がった。
「ごめん。話の途中だけど‥‥」
「あ、いーよ。こっちこそ、ごめんね」
何故か謝る瞬は、笑顔で裕貴を見送る。
「カメラ見て笑っちゃわないように、お芝居も頑張らないといけませんね」
「そういえば、演技は初挑戦になるのか」
「NG連発して、時間食わないようにしないと‥‥」
「じゃあ、服装はライブの時みたいにバンダナどっかにつけて‥‥瞬も適当に、よろしくね!」
声をかけられた音楽の素人で芝居のプロは、にっこりと笑って答えた。
「うん。皆に合わせるよ」
そして、翌日から四日間に及ぶ撮影が始まった。
最初の二日は夜の演奏シーンに、演技パートのリハーサルと本番。
演技に関して言えば、メンバーのうちで砂凪や舞は何とかクリアしたものの、これまで演技の機会が少なかった胡都、上総、ラキアの三人が獣化もしない状態で『苦戦』を強いられ、ドラマなどの撮影で慣れている瞬が『演技指導』のフォローを行った。
三日目には撮影許可の下りた近郊の観光農園へと向かい、『緑の丘』での演奏シーンを撮影して、とんぼ返りをし。
最終日の四日目は、撮影スタジオを借りて作られたセットで『GOING MY ROAD』の演奏を、何度も何度も繰り返す。
日が暮れて全ての撮影が終われば、九人は撮影スタジオの試写室へと招かれた。
●ラッシュ1〜『星数のスタート』PV
風を追うように、カメラが芝生の上をスライドしていく。
ミドルテンポの柔らかなメロディが入り、カメラは緑の丘に立つメンバーを掠めて、空を映す。
そして中央にSHOUTを握るラキアを据えて、ハイアングルで九人を捕らえ。
「 いくつもの出逢いと別れをくり返し 」
公園で誰かを見つけて、はっと息を飲む砂凪と。
手紙を胸に押し当て、俯いて泣く砂凪のカットが連続し。
「 すれ違う哀しさにも慣れたフリをして 」
変わって映るは、ビルの谷間。
行き交う人の流れの中を、俯き加減で歩く舞へ画面が寄って。
彼女は不意に足を止め、少し哀しげな表情ですれ違った人を振り返る。
だが、すぐに無表情を取り戻し、再び俯き加減で歩き出す。
「 失ってはじめて気付くと言うけれど 」
廊下で、誰かとすれ違う嬢。
硬い表情でやり過ごした後、ふっと表情を歪めて走り出す。
「 なくさぬように しがみつくので精一杯 」
再び、雑踏の舞の姿。
手を伸ばし、淡く小さな輝きを掴もうとして、片手を伸ばす。
ぎゅっと光を掴み、握った手を胸元に寄せると、もう片方の手を添えて大事そうに抱え、哀しげな表情で目を伏せる。
その姿は、祈りにも似ていて。
曲は、ラキアのソロから全員でのコーラスパートに入る。
『 今も臆病な痛みがどこかに隠れている 』
何度もボタンを押し直す裕貴は、諦めたように携帯を閉じ。
薄暗い部屋で窓に寄りかかる砂凪は、雨雫に濡れたガラス越しに外を眺める。
『 シリアスになりきれず じゃれあっていた幼さは 』
まばらに人が行き来する広場の階段で、ギターを抱えた上総が座り込んでいる。
顔を上げ、何処か遠くへ視線を投げる彼を、見守る様に佇む背中。
次に画面は背中の主−−胡都を、正面から映す。
『 強さを偽る誰の中にもあるのでしょう 』
街灯の点る線路傍の道を歩くのは、眼鏡をかけた椿。
溜め息をついて、ネクタイを緩め。
疲れた風に歩く彼を、車窓から投げかけられる光が次々と通り過ぎていく。
椿が踏切の前を通り過ぎれば、線路を越えた反対側には立ち尽くすラキア。
ぽつぽつと落ちる雨粒に気付き、ラキアは空を見上げて、しんみり目を閉じる。
そこへ電車が通り、彼の姿を遮る。
『 笑うのも涙するのも ただ一生懸命に 』
画面は、ビルの屋上で唄い、演奏する九人へ。
下では星のように、街の灯りが輝く。
胡都は、少し色褪せた感じのジーンズのジャケットとパンツに、水色のバンダナを肩に巻いてドラムを叩き。
アースカラーのシャツとジャケット、ズボンをラフに着崩した上総は、エレキギターの弦をストロークする。
髪を後ろで一つに纏めた水色のバンダナが、その度に揺れて。
白いシャツに、ジーンズをやはりラフに着る椿は、頭に水色のバンダナを結んで、キーボードに指を滑らせる。
その背中では、長い髪を一つに編んだ三つ編みが、時おり跳ねて。
いつもの服装だと言う嬢は、黒のTシャツに白いジャケットを羽織り、水色のバンダナを巻いた左腕でベースギターのネックをホールドし、確かな低音を刻みながら、コーラスもこなす。
嬢の隣では、白地にグレーのストライプシャツにベージュの綿パンツを履き、太腿に水色のバンダナを結んだ裕貴も、伸びやかなテノールを控え目に響かせ。
襟元に水色のバンダナを巻き、白のフリル長袖Tシャツに水色のジーンズ姿の砂凪が、ゆっくりとスウィングしてステップを刻む。
『 願うのも託していくのも 愛すればこそ 』
迷彩柄のカーゴパンツに黒いTシャツ、黒パーカー、そしてベルトに水色のバンダナを結わえたラキアと。
白いカジュアル・ワンピースに水色のバンダナをスカーフ代わりに結んだ舞と。
そして瞬が嬢と裕貴に助けられ、呼吸を合わせて唄い上げる。
実際の音は収録も使用もされないが、メンバー達は音を出し、声を出して。
静かに余韻を残す演奏を聞きながらカメラはティルトアップし、瞬く星空を映し出す。
そして音と共に、画面はフェードアウトした。
●ラッシュ2〜『GOING MY ROAD』PV
暗闇の中、閉ざされた鉄扉の隙間から、光が滲み出ていた。
カツカツと木を打つ音に、キーボードとエレキギター、ベースギターがアップテンポなイントロを切り出す。
それがフッとトーンダウンしたところで、囁くボイスが入り。
「 Door For World Is Opened 」
同時に鉄扉が開き、白い光が溢れる。
フラッシュは一瞬で、次の瞬間には打ちっぱなしのコンクリート壁に囲まれた、荒廃した感のあるフロアに、九人が揃っていた。
中央と左右の三箇所に残骸のモニターが積み上げられ、そのうちの幾つかがまだ生きている事を主張するように、次々と映像を無節操に映し出している。
映像の内容は、練習風景や収録風景、野外ライヴの模様。
そこには、この場にいない舵の姿もあり。
『 ちょっとお遊び All night
広い世界を watching
ちょっと息抜き All right
全ての時間をenjoy!!
さぁ、一緒に飛び出せ 必要なのは
羽ばたくチカラ 夢見るキモチ 』
入れ替わり立ち代わりに動き回りながら唄い、ステップを踏む四人。
それを囲むように、バンドとコーラスのメンバーが配されている。
いずれも衣装は、黒を基調としたハード系に纏め、シルバーのアクセサリーの他に、色違いのバンダナをつけていた。
砂凪は、紺のバンダナを腕に。
舞は、右手首に真紅のバンダナを。
ラキアは、左手首にダークレッドのバンダナ。
裕貴は、紺のバンダナを左の上腕で結び。
胡都は、深い藍色のバンダナを肩に飾り。
椿は、首にオレンジのバンダナを巻き。
上総は、薄紫のバンダナで髪を結わえ、その手首にはミサンガが揺れている。
『 Let’s go!My way.
ノリで乗り切るdance party 』
「 俺がいるとこ全てが舞台 」
『 Let’s go!My rule.
誰も知らない Seacret Place 』
「 そう、いつでもどこでも俺が主役! 」
エレキギターの上総とベースの嬢が前に出て、『競演』を魅せ。
砂凪と舞がキャミソールの裾を翻すようにして、リズムを取り。
ラキアが音にのって飛び跳ね、瞬と肩を組む。
『 変わる必要なんてない そのまま進めばOK
さぁ、想いを越えて Let’s go! 』
はじける後奏に、画面はホワイトアウトして。
曲名が音を立ててタイプされ、その上に『colorFull』の焼印がガンッと打ち付けられて、PVは終わった。
●そこにいる意味
「お疲れ様でした!」
「折角だから、このまま打ち上げ行こうか」
「‥‥椿、連れて?」
「自分の食べる分は、ちゃんと自分で出すよー!」
わいわいと、賑やかに撮影スタジオを出る一行。しかし、不意にラキアがきょろきょろと辺りを見回した。
「あれ、瞬は?」
「そういえば、いませんね」
言われて思い出したように舞が答え、他のメンバーも振り返る。
「まだスタジオかな? ちょっと見てくる!」
スタジオへと引き返したラキアは、先ず駆け込んで試写室に誰もいない事を確認した。それから探しながら来た通路を戻りかけたところで、話し声に気付く。
辿っていった喫煙スペースで探す相手を見つけて、声をかけようとし−−。
「うん。だから、『colorFull』は別に僕がいてもいなくても、フツーにいけると思うんだよね」
−−足を止めた。
「それに、次の仕事のストアライブ。僕が行くと、警備とか安全面でいろいろ大変でしょ」
「確かに、そうですけど‥‥それは置いても、ユニットが動き出してまだ一ヶ月程じゃないですか」
困ったようなアイベックスの担当者の声に、瞬の声が淡々と答える。
「うん。皆、自分の事で手一杯みたいだし。ソコへ更に判ってない僕がぶら下がって、かえって重しになるのも悪いかなって。
二曲三曲やってやっぱり‥‥て言うより、フィーチャリングでデビューの盛り上げ役をやって出番が終わる方が、アイベックスのシナリオにも傷がつかないし。それに、『colorFull』は僕がいなくても売れると思う。それだけの、潜在的な実力はあるんでしょ」
数分の沈黙の末に、担当者は深い溜め息をついた。
「上とも、相談しないといけませんからね‥‥ともかく、今日はお話だけ伺っておきます。車で、事務所まで送りますか?」
「あ、お願いします。皆、帰っちゃったみたいだしね」
「瞬、いた?」
戻ってきた彼を見て裕貴が声をかけるが、ラキアはふると首を横に振り。
「じゃ、行こうか。お腹すいたね」
「居酒屋は無理だし、皆でつつくなら中華とか?」
わいわいと歩き出すメンバーに、ラキアは唯一自分より背の高い上総へ、後ろからどんっと飛びついた。
「おい!?」
「舵、いなくて寂しいーっ! なんか、とっても不安で落ち着かない落ち着かないーっ」
「‥‥あのなぁ‥‥判ったから、耳元で叫ぶな。あと、ゴーグル痛い」
苦笑しながら上総はラキアの頭を軽く撫で、半分引き摺るようにメンバーの後へと続いた。