真夏のマーメイド達アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 菊池五郎
芸能 3Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 難しい
報酬 不明
参加人数 8人
サポート 0人
期間 08/14〜08/18

●本文

 『Succubus(サッキュバス)』というロックグループがいる。
 ボーカル兼ベースのシュタリア。
 ドラム(場合によってはシンセサイザー)のスティア。
 ギターのティリーナという、女性3人の構成だ。

 彼女達は月と片思いや悲恋といった恋愛を題材にする歌が多く、一部に熱狂的なファン(特に女性)がいるものの、メディアに露出していない事もあり知名度は高くない。
 メディアに露出していない理由の1つが、グループ名『Succubus』――文字通り『夢魔』の如く、彼女達がライブを行う時間帯の大半は夜だ。しかも好んで路上でのゲリラライブを行っているようで、ライブの直前になってファンサイトの掲示板へ書き込むくらいしか告知していない。そうやってファン達がやきもきする姿を見る事でテンションを高める小悪魔的な性格も、やはりSuccubusなのかもしれない。
 そしてもう1つの理由が、ライブ中にも関わらず、人目をはばかる事なくメンバー同士で抱擁し合ったり、接吻を交わす、まさにSuccubusの意味するパフォーマンスだ。
 シュタリアが長女、スティアが次女、ティリーナが三女という姉妹としての位置付けが彼女達やファンの間ではあるが、血は繋がっていない。
 彼女達は姉妹であり、恋人であった。


 ――ここはSuccubusの集う、秘密の花園‥‥。
「シュタリアお姉様、こちらは如何?」
「ちょっと派手すぎません?」
「ではこちらは?」
「色は良いですけど、肌を露出するのはあまり好きではありませんの」
「でしたらこの組み合わせね」
 次女のスティアは、先程から取っ替え引っ替え、長女のシュタリアへ水着を渡し、シュタリアはそれらを来て姿見で確かめる。
 3人がゆうに一緒に寝られる大きさのベッドが置かれたリビングは、試着前後の水着が散乱していた。Succubusの3人は血は繋がっていないが、姉妹同然にここで一緒に暮らしている。
 シュタリアは露出は好まないようで、最終的に青のタンキニ水着+パレオを選んだ。露出は好まなくてもおへそは出したいらしい。
 スティアは姉の水着を選んだ後、ビキニ水着を選んだ。お嬢様然とした顔立ちの彼女が露出の高いビキニを着ると、得も言われぬ色香が漂う。
 ゲリラライブの場所を下見に行っており、この場にはいないが、末っ子のティリーナはワンピース水着を選ぶだろう。しかもフリフリの奴を、だ。
 Succubusは夏という事で、海辺でのゲリラライブを企画していた。場所は江の島を臨む“東洋のマイアミビーチ”こと『江ノ島東浜海水浴場』だ。海辺でゲリラライブをするのだから、アーティストは水着着用は必須、とばかりに、シュタリア達も水着選びに余念がなかった。
「参加されるアーティスト達は、どんな水着姿でしょう。今から楽しみですわ」
「またそんな事を仰って‥‥ティリーナが聞いたらむくれるわよ?」
 姉の性格は重々承知しているが、スティアは苦笑を浮かべる。ティリーナは“超”が付く程のシスコン――しかも、スティアより、シュタリアにベッタリ――だからだ。
「あら? スティアはむくれてくれませんの?」
「シュタリアお姉様が女の子を愛でるたびにいちいちむくれていたら、キリがないわ」
「つれないのね。嫉妬の1つもして欲しいから、スティア以外の娘に手を出しているのですわよ?」
「答えは始めから分かっているくせに意地悪なんだから」
 スティアはティリーナほどヤキモチ焼きではないので、シュタリアが他の女の子を愛でようと嫉妬しない。それにスティアはシュタリアと、精神的に強く結び付いているので、少なくともティリーナのように感情をぶつける事はない。
 もっとも、ティリーナはシュタリアを独占したいだけなので、感情をぶつけてくるだけであり、やはり彼女も誰かにシュタリアを取られるとは微塵も思ってはいない。
「そういえば、どうして今回、江の島を選ばれたの?」
「江の島、というより、江ノ電近辺を散策してみたかったのですわ。ゲリラライブは今回はその“ついで”ですわね」
「江の島散策か‥‥江の島といえば弁財天かしら? よく来てくれた悪魔の彼女は意外と対抗したりしてね」
「ああ、あの悪魔っ娘ですわね。悪魔vs弁財天というカードもなかなか面白そうですわね」


 その後、ファンサイトに、今度のSuccubusのゲリラライブは、江ノ島東浜海水浴場で行うという書き込みがなされた。
 いつものように彼女達だけではなく、他のアーティストやロックバンドを誘う。「呼び掛け=有志」なので金銭的な報酬はないが、交通費や飲食費を始めとする必要経費はSuccubus持ちだ。
 今回はビーチでのゲリラライブなので、「水着」の着用が義務づけられる。水着は各自で用意する事になるが、訳あって水着を着られない場合は、水着に近い薄着での参加となる。
 尚、今回のゲリラライブは、老若男女が海水浴で賑わうビーチだけに、ゲリラライブ中、女性はSuccubusのメンバー達に弄られる危険性はなさそうだし、参加者も弄るのは避けた方がいいだろう。
 但し、ゲリラライブ後に開かれる打ち上げに関しては、その限りではないが。

●今回の参加者

 fa0034 紅 勇花(17歳・♀・兎)
 fa0069 イオ・黒銀(22歳・♀・竜)
 fa0304 稲馬・千尋(22歳・♀・兎)
 fa0329 西村・千佳(10歳・♀・猫)
 fa0506 鳴瀬 華鳴(17歳・♀・小鳥)
 fa1236 不破響夜(18歳・♀・狼)
 fa1376 ラシア・エルミナール(17歳・♀・蝙蝠)
 fa4581 魔導院 冥(18歳・♀・竜)

●リプレイ本文


●江の島いろいろ
 住宅街の真ん中を、家すれすれに走る江ノ電。やがて左側の住宅街が途切れ、国道134号線と併走すると、車窓一杯にマリンブルーの相模湾が広がる。
「海、海、海ぃ〜えへへぇ、楽しみだわぁ♪」
「見よ、華鳴は赤く萌えている! ってくらい、ハイテンションだよね、華鳴ちゃん」
「そのまま暁に逝けばいいのです」
 一緒にいるのが恥ずかしくなるくらい、最初から最高潮の鳴瀬 華鳴(fa0506)。麦わら帽子にフリル多めの黒ワンピース姿で、首にブラッドスターを提げ、右手首には愛を呼ぶリストバンドを着けている。
 親友とはいえ流石に恥ずかしいようで、紅 勇花(fa0034)は日差し対策に被ってきた帽子のつばを下ろす。Succubusの三女ティリーナ(fz1042)に至っては、携帯CDプレーヤーで音楽を聴き、完全に他人の振りだ。
 華鳴は少し前までティリーナへ寄せる想いで揺れ動き、精神的に不安定だったが、吹っ切れたようで今はリミッター解除状態だ。ティリーナの相変わらずの態度に微苦笑しつつも、勇花は親友の何かを肌で感じ取っていた。
「でも気持ちは分かるぜ。海はこう、なんていうか、見ているだけで人を開放的にするんだよな。もう少しで江の島に着くけど、ビーチボールとか適当なグッズも持ってきた方がよかったかな?」
 ラシア・エルミナール(fa1376)も華鳴に当てられたのか、伊達眼鏡越しに目を細めて相模湾を見た。今の彼女は黒髪を三つ編みにし、地味な服装に身を包んでいる。


「夏は嫌いではないけど、苦手なのよね‥‥」
「その髪の量じゃ暑いだろうに」
「切る気はないけど、本当デロデロするわ‥‥冷たい物売ってない?」
 稲馬・千尋(fa0304)と不破響夜(fa1236)、Succubusの次女スティアの3人は、響夜が朝早く出る事を勧め、一足先に着いてゲリラライブを行う江ノ島東浜海水浴場を下見している。
 千尋は真っ赤なビキニを纏い、その上に半袖で薄手の白い上着を羽織っている。響夜は黒髪のロングウィッグを付けて空色のサマードレスに身を包んだ、清楚なお嬢様スタイルだ。
 海の家へ冷たい飲み物を買いに行こうとする千尋へ、スティアが持っていた水筒の中身を注いで渡す。
「飲んだ事のない不思議な味ね。果物のようだけど、さっぱりしていて喉越しは爽やかで、でも力が漲ってくる感じ‥‥?」
「Succubus特製の媚薬‥‥」
「媚薬!?」
「というのは冗談で、ライブの前後に飲むオリジナルの健康ドリンクよ」
 仄かにフルーティーな味わいの飲み物は、冷たくて美味しかった。
 驚く響夜が聞けば、ざくろ酢を割ったものだそうだ。スティアは最近、フルーツビネガーに凝っており、飲みやすいように割ったりブレンドして、ライブの前後に飲んでいるという。


「江の島‥‥海は久しいな。電車や徒歩で行動とは、何とも雅ではないか」
「そういえば江の島って、龍に関する伝説が多かったわね」
「龍恋の鐘とか?」
「そうそう、『天女と五頭竜伝説』とか有名よね」
「どういうお話なのにゃ?」
「説明はメンドイから千佳ちゃんが自分で調べて勉強してね」
「えー!? イオお姉ちゃん手抜きにゃ!」
「五つの頭を持つ悪い龍が、天女に恋をしてしまい、結婚する為に悪行を止めたという恋の伝説ですわ。この伝説にちなんで設置された恋人の丘にある龍恋の鐘は、カップルで鳴らすと2人は結ばれるそうですの」
 魔導院 冥(fa4581)とイオ・黒銀(fa0069)、Succubusの長女シュタリアと西村・千佳(fa0329)は、江の島弁天橋を歩いて渡り、江ノ島エスカーに乗っていた。
 イオが江の島の蘊蓄(うんちく)を披露するとシュタリアが乗ってきて、面倒くさがるイオの代わりに、千佳に伝説について説明した。
(「恋人同士で鳴らす龍恋の鐘に、周りの柵に掛ける南京錠か‥‥今度、一緒に来てみるのもいいかも知れないな」)
「ただ、江島神社に祀られている江ノ島弁天は、縁切り伝説もあるのよねー」
 黒ロリスタイルの冥は、3人の話を聞きながら口元に手を当てて何やら思案している。そんな彼女へ、イオはウインクしながら小悪魔的な笑みを浮かべるのだった。


●ゲリラライブin江ノ島東浜海水浴場
「さあ、今日はここ江ノ島東浜海水浴場でのSuccubusのゲリラライブにゃ〜♪ 暑さを吹き飛ばす勢いで行くにゃ! 今回は弁財天vs悪魔vs人間がサブコンセプトにゃ♪ それじゃぁ、弁財天サイドから行くにゃー♪」
 胸の部分に『1年1組 ちか』と書いた白い布が縫いつけてある旧素狂(スクール)水着を着て、肉球グローブを嵌めた千佳が、ゲリラライブの開催を告げる。


「『陽炎』は周囲の暑さを忘れるくらい熱く激しい曲だ、気合入れていってみようか。場所も広くて気合入るし、お客サンばっちり楽しませていかないとね」
「弁天様が恋愛も司ってくれてたらな‥‥えへへ」
 ボーカルのラシアが華鳴達に発破を掛ける。羽織っていたプラスパーカーを勢いよく脱ぎ捨てる羽織る彼女は、ブラは首まで覆い、下は紐で結ぶ濃紺のハイレグビキニを纏い、薄いブルーのスケスケバレオを着け、ネックレスを腕に巻いている。
 応える華鳴は弁財天をモチーフにし、薄紫色が基調のフリルビキニに、羽衣に見立てた薄水色の薄布を両腕に絡ませている。
「‥‥そういえば、ティリーナちゃんと組むのは初めてかも‥‥よろしくね」
「ご一緒できて私も嬉しいです。勇花さんのギターをいつもチェックしてましたから」
 イオにコーディネイトしてもらった勇花の水着は、ピンクのフリルの付いたかなり際どいデザインのビキニだった。愛用のギターで細部を隠しつつ、ティリーナと挨拶を交わす。勇花のギターテクに一目を置いているティリーナは頭を下げた。
 今までの華鳴なら、他の人と楽しく話をしているティリーナを見るだけで、心の中にどす黒い嫉妬の炎が渦巻いていた。しかし、ティリーナが自分を嫌っている訳ではない事を知った今、嫉妬する事はない。それに先程まで日傘と称してティリーナと相合い傘をしていたので、らぶらぶは補給済みだ。


 熱い風に髪委ね
 輝く夏の太陽(The blazes sun)

 情熱も焼き焦がす
 見えない光の炎(shining heat)

 流れる汗も拭わずに
 風に逆らって

 焦がれるようなこの日差しの中
 揺れる蜃気楼 越えて行こう

 その向こうにある 君の姿目指して
 その微笑が幻だったとしても‥‥


 出だしから勇花とティリーナのツインギターが一音一音をはっきりと出す『陽炎』は、ハイテンポな熱く激しい曲調だ。
 Aメロはラシアが、Bメロは華鳴が独唱し、それぞれ担当しないパートでコーラスを彩る。ラシアのマイマイクたるSHOUTの調子も好調。
 最初のサビの部分はラシアと華鳴に加え、勇花が入るが、ティリーナはサビの後、Cメロに入る前の間奏部分で、彼女が得意とするスリーフィンガー・ピッキングの早弾きソロを披露する為、演奏に専念する。
 間奏では、華鳴が音頭を執り、周囲の聴衆に手拍子を求める。
 Cメロはラシアをメインに華鳴がハモる。
 最後のサビでは、今度はラシアと華鳴にティリーナのコーラスが加わる。
 そして後奏は、勇花がギターソロを披露。うねるような激しいサウンドで熱気を最高潮まで高めていき、余韻を残さず終了した。


「悪魔は神などには負けんよ。クックック‥‥」
 悪魔サイドの冥が、胸の下で腕を組んで不敵な笑みを浮かべる。着ているのは旧素狂水着だ。水着の布を内側から押し上げて、はち切れんばかりに張り詰めた胸元には、『1年あくま組 めい』と描かれた白い布が縫いつけられている。
「冥ちゃんのスタイルでスクール水着を着るのは、下手に露出を高めるより色っぽいかも知れないわね」
 黒髪をポニーテールにして、日差し対策にサンバイザーを付けたイオは、Eカップの谷間を強調した黒のビキニを纏っているが、冥の方がなまじ隠していてパンパンに張っている分、大きく艶やかに見え、ある意味、小悪魔的な出で立ちに微苦笑した。


 月は紅く染まり 夜の始まりを告げて
 悪魔達は目覚め 闇の世界を支配する

 愛と勇気と希望を見失い 彷徨うあなたに
 未来への道を照らしてあげよう 

 わたしの言葉が信じられない?
 悪魔は気まぐれ されどそれは女神も同じこと

 彷徨い続けるのなら止めはしない
 わたしの言葉信じるのなら 禁断の宴に招待しよう

 さぁ叫ぼう 心まで燃える程の猛々しい 灼熱の炎
 さぁ踊ろう 感じるまま何度でも激しい 情熱の舞

 暁が世界に訪れ 夜の終わりを告げるまで


 冥が作詞・作曲した『悪魔のきまぐれ』は、ボーカルの千佳とイオが低音は苦手という配慮から、可愛さに少し妖艶さを加えた内容になっている。
 A・Cメロはイオが、B・Dメロは千佳が唄う。
 歌い始めは伴奏はなく、歌声だけで静かに展開してゆく。Bメロの終わりから、冥のギターとシュタリアのベースによる伴奏が入り、Dメロからテンションと速度が少しずつ上がってゆく。
 そしてEメロで曲は最高潮に達し、イオと千佳もユニゾンで歌詞を紡いでいった。


「とまぁ、今回は弁財天様と悪魔が競い合ってるけど、それとは全く関係無い人間もいる訳でして‥‥関係無いとはいっても、全く負けるつもりは無いから、そこのところはよろしく。神様と悪魔の存在も霞ませる人ってのも、素敵でしょう?」
 妖艶な笑みを浮かべながら、千尋がギターを持って前へ歩み出た。


 暑さと共に来る夏の日差し
 ただ暑いだけじゃすぐにバテるだけ
 熱気が人を駆り立ててる

 ワクワクが無ければバテちゃう熱さ
 でもそれがあればハイテンション
 楽しさが夏の原動力だから

 降り注ぐ日差しは暑いだけ?
 違うわ それも心躍らすスポットライト
 身が焼けるほど熱い輝き
 浴び続けて人もまた輝き返す

 こんなに熱い季節もないの
 太陽だけじゃなくて 人の心も熱いから
 熱さを感じなきゃ勿体無いから
 心も身体も熱く動かして行かないと


 『サマーシャインinハイテンション』(命名:シュタリア)は、テンポは一定だが、熱く激しい曲調だった。



 お気に入りのリズムに乗って 目一杯アクセル踏んで
 今すぐ この道走り出そう
 もし愛する人が 隣に座ってくれたなら
 それだけで 気分は最高さ

 何のために走る? 今はまだ分からない
 それに意味はあるの? それもまだ分からない だけど

 無限に続く道の 果てを君と見たいと
 最初に思った その思い まだ熱いままさ
 お前には似合わないと みんなは言うけれど
 君はついてきてくれるかい? flat out and GO!

 無限に続く道の 果ての果てを見ようと
 最初に思った その思い忘れられない
 馬鹿な夢想(ゆめ)だと みんなは笑うけど
 何かが見えると信じて flat out and GO!


 トリを務めるのは、ボーカル兼ギターの響夜とシンセサイザーのスティア。
 唄う『Flat Out ‐Remix‐』は、最初はゆったりとしたテンポと最低限の音で演奏し。
 Cメロ後の間奏で転調、そのタイミングでロングパレオとウィッグを脱ぎ去り、いつものショートカット&ビキニ姿へ変身する響夜。
 その勢いで最後のサビは思いっきり元気よく歌い上げた。


●想い
 ラシア達はSuccubusのメンバー達と散り散りに解散し、江ノ電やタクシーを使って七里ヶ浜が見えるホテルへチェックインした。
 冥は黒のビキニに着替えて海へ繰り出した。
「魅力的な仕草や動きなどを意識せずに自然に出来るようになりたいのだ」
 シュタリアに教授を頼む冥。シュタリアは恋愛相談は真面目に応対するので、冥は猛特訓を受け、マリンライフを満喫するどころではなかったようだ。
 一方、響夜とスティア、華鳴とティリーナは、ホテルの屋上にあるプールで軽くひと泳ぎした。
 プライベートプールではないが、彼女達以外利用客はいなかったので、響夜はクウィーンワイルドを着てちょっと冒険したようだ。


「夏だから着ておかないともったいないしね」
「こういう機会でもないと着ないからな」
 夕食後、Succubusのメンバーが泊まっている部屋で打ち上げが開かれた。
 千尋が浴衣を着てくると、ラシアも感銘を受けたのか浴衣に着替え、ケーキやフルーツといったデザートと、ソフトドリンクやワインといった飲み物に舌鼓を打ちながら、今日のゲリラライブの感想や反省点を話し合った。
 百合の趣味のないラシアは、いつ襲われるかと身構えていたが、意外や意外、打ち上げは真面目な反省会で終わった。


 反省会後、風呂へ行くシュタリアの手を引っ張って物陰に連れ込み、2人っきりになる千佳。
「あの‥‥僕ね、シュタリアお姉ちゃんの事大好きなのにゃ! だから‥‥後2年にゃ。2年経ったらその‥‥色々教えてくれるにゃ? それまでは甘えるだけで我慢するからー」
「2年間は長いもの。その間に、あなたが心変わりしているかも知れません。それに、あなたの歳でわたくしのような穢れた女を愛してはいけませんわ‥‥でも、母親の代わりにはなれませんが、そうですわね、甘えるくらいならよろしくてよ」
 シュタリアの目を見つめて想いをぶつける千佳。シュタリアは千佳の目をしっかりと見ながら、彼女の将来を見通して真面目に応えた。


 露天風呂に入り、月見酒と洒落込んでいたイオは、入ってきたシュタリアの沈んだ様子を感じ取っていた。
「その娘の未来の為とはいえ、好意を断るのは罪悪感が伴いますもの」
「じゃぁ、大人のおねーさんが、火の点いちゃった身体を冷ましてもらおうかしら?」
 自嘲するシュタリアの唇を塞ぐと、イオはその豊満な身体へ自身の身体を預けていった‥‥。