Goddess Layer 12thアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 菊池五郎
芸能 3Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 難しい
報酬 8.6万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 10/05〜10/09

●本文

※※このドラマはフィクションであり、登場人物、団体名等は全て架空のものです。※※
※※ドラマチックな逆転劇等はありますが、全て「筋書き」によって決まっており、演じるPCの能力によって勝敗が覆る事はありません。※※

 1990年代初頭、日本の女子プロレス界は戦国時代を迎えていた。
 1980年代まで日本女子プロレス界を引っ張ってきた『真日本女子プロレス』が分裂、相次ぐ新団体の旗揚げにより、9団体が群雄割拠し、抗争に明け暮れ、しのぎを削っていた。

 その中でも最大の勢力を誇っているのが、真女の流れを受け継ぐ『東日本女子プロレス』だ。
 “東女の守護神”ことアイギス佐久間は、その圧倒的な強さで他の団体からの殴り込みをものともせず、また東女のヘビー級ベルトの防衛に24回成功した、まさに“アイギスの盾”と呼ぶに相応しい、日本女子プロレス界の女王だ。その名は東女ファンでなくても、プロレスファンなら知らない者はいない。

 だが、母体となった真女がなまじ大きかっただけに、東女も決して一枚岩ではない。
 アイギス佐久間の所属する「正規軍」の他、ニューフェイス、現ヘビー級ベルト保持者ダイナマイト・シュガーが結成した「維新軍(=革命軍)」や、アイギス佐久間に次ぐ実力の持ち主といわれる、リリム蕾奈(ライナ)が自分と同じ同性愛者を囲い、東女の数少ないヒールレスラーを加えた「反乱軍」が、今の東女の主な軍勢だ。


 今年も女子プロレスファン待望の、『関ヶ原の合戦』の時期がやってきた。
 『天下分け目の戦い』と称されるこの合戦を準えて、東女と『西日本女子プロレス』の共同開催で、毎年9月15日に東日本の女子プロレス団体と西日本の女子プロレス団体が、それぞれ東軍と西軍に別れて戦うエキシビション・マッチが行われる。
 今年の布陣は以下の通りだ。

○東軍
・東日本女子プロレス:アイギス佐久間、ダイナマイト・シュガー
・『ピリカシレトク(知床プロレス)』:セルリアンブルー
・『陸奥(むつ)女子プロレス』:伊達沙苗
・『湘北レディース』:パイソン五島

○西軍
・西日本女子プロレス:ライトニングバニー
・『JOWP(=Japan Ocean Women’s Prowrestling)』:富畑愛美
・『六甲歌劇団』:ペガサス瀧
・『CrusaderZ(CZ)』:武藤澪

 尚、高知県に本拠地を置く『くろしおマーメイド(マーメイ)』は、毎年、招待を辞退している。というのも、マーメイはアイドルレスラーに力を入れており、所属している選手のほぼ全員がアイドルレスラーだからだ。
 とはいえ、“キューティ・ペア”のマッキー北都とラッキー南は、ファンの間では「力の北都、技の南」と呼ばれ、攻防共にバランスの取れた日本女子プロレス界屈指のタッグパートナーであり、彼女達だけは招待選手として参加する。
 また、キューティ・ペア以外のフリーランスの選手も招待選手として何人か招かれ、それぞれ東軍と西軍に配属される。


「ボクが出ていいんですか!?」
 ダイナマイト・シュガーは東女の社長、佐久間章枝に呼ばれて社長室へ入ると、関ヶ原の合戦の対戦表を渡されて素っ頓狂な声を上げる。自分の名前がノミネートされていたからだ。
「いいも何も‥‥あなたは東女のヘビー級ベルトを巻いている、立派な看板だもの。堂々と出て欲しいわ」
「そうそう、わたくしを差し置いて出場ですもの」
「すみません」
 先に社長室に来ていたアイギス佐久間が、彼女を安心させるように肩に手を置き、リリム蕾奈が大袈裟に肩を竦める。
 関ヶ原の合戦は2つのエキシビジョン・マッチが用意されている。
 1つは、各団体のデビューしてから1年未満のレスラーだけを集めたニューフェイスオンリーのトーナメント戦。こちらは参加枠は固定されておらず、条件さえ満たしていれば何人でも登録可能だ。
 もう1つは、各団体より代表者を2名選抜して、フリーランスのレスラーも加えられて行われる総当たり戦。各団体とも最強の選手を選出する為、自ずと各団体の威信を賭けた戦いとなる。
 女子プロレス専門雑誌『Goddess Layer――戦女神達の神域――』でも大々的に特集記事を組むように、こちらの試合が関ヶ原の合戦のメインといえる。
 ダイナマイト・シュガーはデビューして1年未満であり、本来ならニューフェイスオンリーのトーナメント戦に参加する。しかし、リリム蕾奈が言うように、彼女が参加枠から外れ、代わりにダイナマイト・シュガーが総当たり戦へ参加する事になっていた。
 これはニューフェイスとしては破格の扱いだ。
「ライトニングバニーに愛美、ペガサス瀧に武藤先輩。今まであなたが戦ってきた相手ばかりだけど、あなたが成長しているように、愛美達も鍛えて強くなっているわ。胸を借りるのではなく、全力でぶつかって勝ちに行きなさい!」
「‥‥は、はい!」
「わたくしの分も勝たなければ‥‥帰ってきた時、うんとお仕置きしますわよ?」
「が、頑張ります!」
 アイギス佐久間とリリム蕾奈に発破を掛けられ、「行けるところまで行ってみよう」と関ヶ原の合戦への参加を承諾するダイナマイト・シュガーだった。
「それに、私も決着を付けなければならない相手がいるから‥‥」
 『バルディッシュ真田』――かつての同期であり、袂を分かった親友がフリーランスとしてノミネートしたのを認めたアイギス佐久間も、負けられない一戦が控えていた。


※※主要登場人物紹介※※
・ダイナマイト・シュガー(佐藤由貴):15歳
 言動や言葉遣いは男勝りな面もあるが、明るく元気な少女。リーダー的カリスマを秘めているが、実力共にまだまだ荒削りで発展途上。リングネームからパワーレスラーと思われがちだが、打撃技を得意としている。
 所属:東女
 修得技:アームホイップ/投、スリーパーフォールド/極、ヘッドバット/力、エルボー、スーパーダイナマイト(延髄切り)/打、ドロップキック/飛
 得意技:いなずま重力落とし(ノーザンLスープレックス)/投

・バルディッシュ真田(真田稲子):22歳
 元東女のレスラー。アイギス佐久間や富畑愛美と同期で親友。東女時代はアイギス佐久間に勝つ事が叶わず、東女を辞めてフリーランスとなり、世界の各団体を回って修行していた。根は優しいが、自他共に厳しく妥協を許さない性格なので、やや取っつきにくいと思われがち。華麗な飛び技を得意とし、リングネームにもなっている必殺のフライングニールキックは、一撃で相手の意識を刈り取る程の威力だ。
 所属:フリーランス
 修得技:アームホイップ/投、ドラゴンスクリュー/極、ヘッドバット/力、ジャンピングニーパッド/打、ローリングソバット、フランケンシュタイナー/飛
 得意技:バルディッシュ(フライングニールキック)/飛


 ※※技術傾向※※
体力・格闘・容姿・芝居

●今回の参加者

 fa0295 MAKOTO(17歳・♀・虎)
 fa2321 ブリッツ・アスカ(21歳・♀・虎)
 fa2997 咲夜(15歳・♀・竜)
 fa3072 草壁 蛍(25歳・♀・狐)
 fa3251 ティタネス(20歳・♀・熊)
 fa3635 甲斐・大地(19歳・♀・一角獣)
 fa4558 ランディ・ランドルフ(33歳・♀・豹)
 fa5111 相澤瞳(20歳・♀・虎)

●リプレイ本文


 『関ヶ原の合戦』は、東軍と西軍の中核を成す東日本女子プロレスと西日本女子プロレスが持ち回りで開催する。
 今年は東女が主催なので、戦いの舞台に選ばれたのは、かつての日本女子プ ロレス界を席巻した真日本女子プロレスのホームともいうべき田園コロッセオだ。
 12000席ある客席は西軍ファン席と東軍ファン席に分けられ仕切りが設けられ、出入口も別々になっている。これはヒートアップしすぎたファンが諍いを起こさない為の配慮だ。
「この舞台にボクが立ってるなんて‥‥」
 ダイナマイト・シュガー(咲夜(fa2997))は実感が湧かないといった、何とも締まりのない面持ちで、客席を見上げた。
 去年まではこの客席に座るどころか、広島の実家の居間で家族とアイギス佐久間(草壁 蛍(fa3072))の試合をテレビで観戦していた。
 ところがどうだ。中学校卒業と同時に東女の門を叩き、同期の若手達と維新軍(=革命軍)を結成してアイギス佐久間へ戦いを挑み、今や東女の看板レスラーの1人としてこの場に立っている。
 アイギス佐久間も、現日本女子プロレス界最古の現役レスラーにして“キックマスター”の異名を持つCrusaderZの武藤澪(ランディ・ランドルフ(fa4558))も、デビュー当時はニューフェイス・トーナメントに参加している。
 入門1年目のニューフェイスがエキシビジョン・マッチへ参加する事は、破格の、いや、前代未聞の待遇といえよう。地に足が着いていないのも無理はない。


「久しぶりだね」
「1年ぶりかしら? 稲子の海外での活躍は見聞しているわ」
 バルディッシュ真田(MAKOTO(fa0295))とアイギス佐久間、JOWPの富畑愛美達同期で親友の3人は、試合前に顔を合せ、旧交を温めていた。
 バルディッシュ真田は双肩にベルトを掛けている。フリーランスとして海外の団体へ殴り込み、獲得してきた、彼女の武者修行の証だ。
「東女を辞める前よりも強くなっているはずだけど、正直な話、実感が無いんだよね」
「それは嫌味かしら?」
「あなた達以外と戦っても『強く』なったかは分からないからね」
「ふふ、ならリングで試さないとね」
 一見、弱気とも取れる発言をするが、そこは親友、その言葉に実は様々な含みを持たせてある事はお見通しだった。


●シングルマッチ〜61分1本勝負〜
 エキシビジョン・マッチは東軍と西軍に分かれ、総当たり戦で行われる。原則として同軍対決はないが、フリーレスラーも加わる事で、好カードや珍カードが目白押しだ。
「一度、南と本気で戦いたかったぜ」
「‥‥私もよ。こんな機会でもない限り、北都とやりあうなんて無いものね。思いっきり楽しませてもらうわ」
 くろしおマーメイド(マーメイ)のアイドルレスラーにして、日本女子プロレス界屈指のタッグペア“キューティ・ペア”のマッキー北都(ティタネス(fa3251))とラッキー南(相澤瞳(fa5111))の対決も、関ヶ原の合戦でしかお目に掛かれないレアカードといえる。マーメイはアイドルレスラーを売りにしているので、看板レスラー同士は戦えない(戦わせない)からだ。
 試合開始と同時に動いたのは、何とラッキー南。掌底を当てて体勢を崩したところをアームホイップで投げ、そのまま片逆エビ固めを決める。
(「‥‥パートナーだからこそ、北都の出鼻を挫けるし、裏を掻けるのよ」)
 冷静に状況を分析し、緻密な頭脳プレイをスタイルとしているラッキー南だから、マッキー北都は慎重に行こうとしたのだが、ラッキー南はその裏を掻き、見事に先手を取った。
 マッキー北都は片逆エビ固めを強引に振り解くと、起き上がり様にヘッドバットを喰らわせ、逆水平チョップのラッシュへ繋げる。ラッキー南はしばらく受けた後、パワースラムへ持っていくところをかいくぐり、カウンター気味にローリングソバットを放ち、必殺のサザンクロス・パニッシャー(サソリ固め)をガッチリ決める。
(「‥‥北都のパワーファイトを封じ込める為には、執拗に一点集中の関節技しかないわ」)
 マッキー北都のタフさは、タッグパートナーである自分が一番よく知っている。
 いつものタッグマッチならば、自分が引き立て役になってマッキー北都に華を持たせるが、この試合だけは押し込めて来た感情を剥き出しして勝ちを狙いに行っていた。
「やっぱり南は強いよ。うん、強い。俺なんかさっきから裏掻かれっぱなしだぜ」
 しかし、マッキー北都のタフさは、ラッキー南の想定を遥かに凌駕していた。
 最初は「下手に熱くなったら南の思う壺だ」と頭の中で言い聞かせ、冷静さを保つようにしていたが、手の内が分かっているのはラッキー南も同じだし、出鼻を挫かれた時点で冷静さは吹き飛び、熱くなっていた。
「それに、南『だからこそ』、この試合負けられないぜ」
 マッキー北都はサザンクロス・パニッシャーをリング中央で決められながらも、ラッキー南を引きずってロープまで行き、ロープブレイク。
 ラッキー南が起き上がったところへ、十八番のメガトンボンブ(ラリアート)が直撃! ラッキー南の身体は宙を舞い、そのまま場外へ吹き飛ばされ、力尽きてしまった。


「これからもよろしく頼むぜ、相棒」
「‥‥こちらこそ」
 マッキー北都がラッキー南の身体を起こし、パートナーは互いの今後の健闘を祈って抱き合った。


●シングルマッチ〜61分1本勝負〜
 陸奥(むつ)女子プロレスのタイガー聡美や湘北レディースのKATANA鈴本、ピリカシレトク(知床プロレス)のカーマインレッド達の試合が消化されてゆく。
「次の相手は“キックマスター”武藤さん‥‥私も全力でお相手しなければ失礼ですね」
 知床プロレスのセルリアンブルー(甲斐・大地(fa3635))は、パートナーの試合を見ながら、次の試合に備え、普段の巫女装束をイメージした白衣に緋袴を纏い、白衣の袖口に波打つアクアマリンラインを入れたリングコスチュームから、青いプリーツスカート+虹色のリボンの新フォーム姿へ着替えていた。


「セルリアンブルー! 大自然に代わって折檻します!」
 花道にスモークが炊かれ、晴れると、そこにセルリアンブルーの姿が現れ、颯爽とリングへ上がる。
 一方、澪はファンの声援に利き腕を挙げて応えるだけで、威風堂々と花道を歩いてくる。早くも日本女子プロレス界のエースの貫禄に、プレッシャーを隠せないセルリアンブルー。顔を振って相手を見据える。
 試合開始のゴングが鳴ると、澪は自分の身体をロープへ振ってショルダータックルを繰り出す。セルリアンブルーはそれを真っ向から受け止め、ハイキックで返す。更に澪がステップキックで返すと、セルリアンブルーはローリングソバットを叩き込む。
 お互いに相手の攻撃を受け、返す、打撃戦が繰り広げられた。
「大自然の怒りを私の拳に聞きなさい。折檻します!」
 流れを変えたのはセルリアンブルー。澪をロープに振り、ラリアートと見せ掛けてローリング裏拳で意表を衝く。ダウンとしたところへ、きっちりアキレス腱固めを極めた。
 だが、やはり経験がものを言うのか。澪はロープブレイクでアキレス腱固めのダメージを最小限に留めると、セルリアンブルーが離れる前にボディスラムで投げる。起き上がったところへシャイニング・ウィザードを叩き込んで意識を刈り取り、止めは伝家の宝刀、真空飛び膝蹴り(ジャンピングニーパット)!
 最後の最後で澪に返されて、セルリアンブルーは逆転KOされてしまった。


●シングルマッチ〜61分1本勝負〜
「戦績は引き分けも挟んで五分を切りそうだよ〜。今のところダントツなのはアイギス佐久間さんと武藤さん、バルディッシュ真田さんとライトニングバニーさんか‥‥」
 オーロラビジョンに表示される対戦成績を見ながら、ダイナマイト・シュガーはガックリと肩を落とす。
 各団体ともエースを出しているし、エース同士の連戦に次ぐ連戦で、さしものダイナマイト・シュガーも常にベストコンディションを保ってはいられなかった。
「ウチはアイツの分まで勝たなあかんからな。そうそう負けてられへんのや」
 西女のライトニングバニー(ブリッツ・アスカ(fa2321))は、今まで“難波の龍虎”として2人で背負ってきた西女の看板が、今は自分1人の双肩に掛かっている。
 それが更なる成長を促し、今まで以上の気迫で関ヶ原の合戦に臨んでいた。
 その結果、これまでのライトニングバニーなら確実に倒されていたはずの場面でも立ち上がり、逆転したり引き分けまで持ち込むなど、西軍でも2位の成績をキープし、『西女健在』を西軍ファンに印象づけていた。


「あれからどれだけ強うなったか、見せてもらおうやないか」
「ライトニングバニーさん、あの戦いがあったから、ボクはここまで戦う事が出来たんだよ!」
 ライトニングバニー、ダイナマイト・シュガー共に、お互いが最終戦の相手だった。
 試合開始。ダイナマイト・シュガーに以前快勝しているものの、その後の成長は聞いているので様子を見るライトニングバニー。一方、ダイナマイト・シュガーは、初手から全力で向かってゆく。
 ライトニングバニーをロープへ振って、帰ってきたところへエルボーを叩き込み、アームホイップで投げてダウンさせると、スリーパーホールドを極める。流れるような試合運びだ。
(「なるほど、随分と様になったようやな。あの時とは違うっちゅう事か」)
 様子見は止め、全力で反撃に転じるライトニングバニー。得意の足を活かしてショルダータックルを連発、ダイナマイト・シュガーを攪乱させると、ここぞとばかりにミサイルキックをお見舞いし、パイルドライバーで投げる。
 西軍ファンから歓声が漏れる。そのパイルドライバーは、ライトニングバニーのパートナーだったロッキー龍子の持ち技ドラゴンバスターだったからだ。
(「ロッキー龍子さんの技まで出せるなんて‥‥でも、ボクもライトニングバニーさんに負けないくらい練習したんだ!」)
 西女ファンを涌かせたサプライズも、ダイナマイト・シュガーの導火線に火を付けたようなもの。
 一度は敗られたスーパーダイナマイト(延髄切り)を攻撃の起点とし、いなずま重力落とし(ノーザンLスープレックス)へと繋げてゆく。


「今回はやられたな。けど、次はこうはいかへんからな?」
「ライトニングバニーさんに認めてもらえて、嬉しいです!」
 微苦笑しつつ握手を交わすライトニングバニー。「今回はやられた」と自分の実力が認めてもらえ、ダイナマイト・シュガーは彼女の手を取って満面の笑みを浮かべながら礼を言った。


●シングルマッチ〜61分1本勝負〜
「この日が待ち遠しかったよ。さぁ、今日こそ勝たせてもらうよ!」
「決着を付けるわよ、バルディッシュ真田! あなたの三日月斧も、このアイギスの盾で退けてみせるわ!」
 エキシビジョン・マッチの最終戦は運命の悪戯か、アイギス佐久間とバルディッシュ真田の、宿命の対戦だった。
 歓喜と闘志に満ちた笑みを浮かべるバルディッシュ真田。
 今、ゴングが鳴り響き、試合が始まる。バルディッシュ真田が先手を取るべくローリングソバットを放つが、アイギス佐久間はそれをかわし、逆水平チョップを叩き込んでくる。被弾しつつもヘッドバットをお返しし、アイギス佐久間が体勢を崩した隙を見逃さず、ドラゴンスクリューを極める。
 だが、アイギス佐久間もそのままでは終わらせず、エルボーを見舞った。
(「流石だ、流石だよアイギス佐久間! やはりあなたは最高だよ!」)
 悦びと闘志を増しながら、ギアとトルクを一段、また一段を上げてゆくバルディッシュ真田。中盤はアームホイップとフロントスープレックス、フランケンシュタイナーとDDT、バルディッシュ真田とアイギス佐久間のめまぐるしい投げ合戦が続く。
(「海外のマットでも味わえなかったこの臨場感‥‥あなたが私の『世界の果て』だよ!」)
 投げ合いのダメージは思いの外深刻で、バルディッシュ真田もアイギス佐久間も肩で息をしていた。
 バルディッシュ真田は、助走を付けて右膝でジャンピングニーパッドを放った‥‥ように見せ掛け、モーションの途中で空中一転!
「石突きに気をとられ刃を忘れたね!」
 バルディッシュ(フライングニールキック)を放ち、アイギス佐久間の首を狩り取る。
「‥‥知ってた? 私、あなた達の事がずっと羨ましかったのよ?」
 だが、バルディッシュを以てしても、アイギスの盾を砕く事は叶わなかった。アイギス佐久間は意識が飛びかけたが、ギリギリで耐えきったのだ。
「愛美のよう柔軟な身体も、バルディッシュ真田のような空中感覚も私には無い。だから私は『自分の武器』として、これをひたすら磨き続けたのよ!」
 追い討ちとばかりに放たれたジャンピングニーパッドを、一気に間合いを詰めて出頭で捉え、必殺のキャプチュードで返す。自他共に認める、日本で一番美しいキャプチュードだ。
 バルディッシュ真田は受け身を取れなかったが、アイギス佐久間も既に足にきており、両者とも立ち上がれず、引き分けとなった。


「少しは追いつけたようだけど‥‥まだまだだったよ」
「私もうかうかしてられないわ。あなただけではなく、ダイナマイト・シュガーを始めとするこれから育つレスラー達に負けない為にも、ね」
 バルディッシュ真田とアイギス佐久間は、これからも切磋琢磨していこうと握手を交わした。


 西軍は澪とライトニングバニーが同一一位、東軍はアイギス佐久間が一位という結果に終わった。
 また、今回はダイナマイト・シュガーの頑張りもあって、総合優勝は東軍に軍配が上がった。