文化祭アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 菊池五郎
芸能 4Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 難しい
報酬 なし
参加人数 8人
サポート 0人
期間 10/06〜10/10

●本文

 『Succubus(サッキュバス)』というロックグループがいる。
 ボーカル兼ベースのシュタリア。
 ドラム(場合によってはシンセサイザー)のスティア。
 ギターのティリーナという、女性3人の構成だ。

 彼女達は月と片思いや悲恋といった恋愛を題材にする歌が多く、一部に熱狂的なファン(特に女性)がいるものの、メディアに露出していない事もあり知名度は高くない。
 メディアに露出していない理由の1つが、グループ名『Succubus』――文字通り『夢魔』の如く、彼女達がライブを行う時間帯の大半は夜だ。しかも好んで路上でのゲリラライブを行っているようで、ライブの直前になってファンサイトの掲示板へ書き込むくらいしか告知していない。そうやってファン達がやきもきする姿を見る事でテンションを高める小悪魔的な性格も、やはりSuccubusなのかもしれない。
 そしてもう1つの理由が、ライブ中にも関わらず、人目をはばかる事なくメンバー同士で抱擁し合ったり、接吻を交わす、まさにSuccubusの意味するパフォーマンスだ。
 シュタリアが長女、スティアが次女、ティリーナが三女という姉妹としての位置付けが彼女達やファンの間ではあるが、血は繋がっていない。
 彼女達は姉妹であり、恋人であった。


「文化祭のステージの出し物に、Succubusのライブを?」
「そ! お願いできないかな、摩利さん?」
 帰りのホームルームが終わり、鞄へ荷物を入れていたスティアの元へ何人かの少女達がやってくると、顔の前で手を合わせ、祈るような仕草と共に用件を切り出した。
 季節は秋。スポーツの秋。食欲の秋。読書の秋。そして‥‥芸術の秋。この時期、多くの学校で文化祭や学園祭が開かれる。
 スティアの通うこの高校でも、文化祭を間近に控えている。次女のスティアはお嬢様学校へ通う三女のティリーナ(fz1042)と違い、共学の高校に通っている。
 着ている制服も有名デザイナーが手掛けたという、ファッション制重視のブレザーだ。『深窓の令嬢』という言葉を体言化したような端麗な容姿の彼女は、そんな制服も自然に着こなしているが、どこか浮世離れしていてクラスでも浮いた存在だった。
 そんなスティアがロックバンドを組んで、日本各地のみならず、世界各地でゲリラライブを行っている事は、全クラスメイトの知るところだ。
 故に、いつゲリラライブの為に休むか分からない彼女は文化祭の準備係から外され、当日、クラスの出し物の売り子が決まっていたが、ステージの出し物を盛り上げる適任として白羽の矢が立ったという訳だ。
「私の一存では決められないから、この場では即答できないけど、お姉様に聞いてみるわ」
「それで、こんな事をお願いするのは悪いんだけど‥‥Succubus以外のアーティストも呼べないかな? 摩利さんのお姉さんの口利きで」
 今、スティアを取り囲んでいる少女達は、クラスメイトを含めた文化祭運営委員だ。
 なるほど。Succubusだけではなく、Succubusが声を掛けて、他のアーティスト達も連れてきてもらう事を期待しているのだ。
 ――しかも『口利き』という点に、普通にアーティストを呼ぶよりも格安、或いはノンギャランティなどと、都合の良い期待が含まれているかも知れない。
 あくまでステージの出し物の1つであり、事前にチケットを販売する訳ではないようなので、仕方ないかも知れないが。
「‥‥私も当たってみるわ。文化祭を盛り上げる手伝いと言えば、来てくれるアーティストもいるかも知れないから」
「ありがとう、摩利さん!」
「声を掛けるだけだから、過度の期待はしないでね。それと来てくれるアーティストには、文化祭のクラスの出し物を全て無料で楽しめるといった配慮をお願いするわ」
「それはもちろん」
 文化祭運営委員の条件を呑みつつ、最大限の好条件を引き出すスティアだった。


 ――ここはSuccubusの集う、秘密の花園‥‥。
「文化祭のステージを盛り上げる手伝い?」
「はい、クラスメイトに頼まれまして。Succubusとアーティストを呼んで欲しいそうなの」
 帰宅したスティアは夕食の時、長女のシュタリアに学校での頼まれ事を聞いた。
 Succubusの3人は血は繋がっていないが、姉妹同然にここで一緒に暮らしている。
「構いませんわよ。たまにはゲリラライブ以外のライブも新鮮ですし。そうですわね、他のアーティストにも声を掛けてみましょうか」
 シュタリアは2つ返事で快諾した。それどころか乗り気だ。
「シュタリアお姉様、スティアお姉様の学校の女子に手を付けてはダメですよ?」
「手厳しいですわね。スティアに悪い噂が立っては学業の妨げになるもの。そんな事はしませんわ」
 シチューを口に運んでいたティリーナが、ややむくれた表情で長女に釘を刺す。シュタリアが快諾した理由をおおよそ察したからだ。彼女は“超”が付く程のシスコン――しかも、スティアより、シュタリアにベッタリ――だからだ。もっとも、ティリーナはシュタリアを独占したいだけなので、感情をぶつけてくるだけであり、誰かにシュタリアを取られるとは微塵も思ってはいない。
 シュタリアは長女として、次女と三女を親元から預かっている責任があるので、彼女自身が言うようにスティアの悪評を広めてしまうような事は微塵も考えていない。むしろ純粋にスティアの為に、スティアの学校に貢献しようと思っての事のようだ。


 その後、ファンサイトに、今度のSuccubusのライブはゲリラライブではなく、高校の文化祭のステージの出し物の1つとして行うという書き込みがなされた。
 この書き込みを見たファンが文化祭へ足を運ぶかも知れないし、宣伝効果もあって一石二鳥だ。
 いつものように彼女達だけではなく、他のアーティストやロックバンドを誘う。「呼び掛け=有志」なので金銭的な報酬はないが、交通費はSuccubus持ちだ。また、参加したアーティスト達は文化祭の出し物が全て無料になるので、屋台などでお腹を満たす事も出来るだろう。飲食費も実質無料だ。
 尚、今回のライブは高校のステージという条件だけに、ライブ中、女性はSuccubusのメンバー達に弄られる危険性はなさそうだし、参加者も弄るのは避けた方がいいだろう。

●今回の参加者

 fa0013 木之下霧子(16歳・♀・猫)
 fa0034 紅 勇花(17歳・♀・兎)
 fa0069 イオ・黒銀(22歳・♀・竜)
 fa0329 西村・千佳(10歳・♀・猫)
 fa0506 鳴瀬 華鳴(17歳・♀・小鳥)
 fa1236 不破響夜(18歳・♀・狼)
 fa2073 MICHAEL(21歳・♀・猫)
 fa3596 Tyrantess(14歳・♀・竜)

●リプレイ本文


●ぶらっくほーる・すとまっく
「文化祭ライブ、頑張りますネ☆ 母校の制服での演奏なんて初めてですけど、ワクワクしてきますネ♪」
「僕も凄くワクワクしてるよ。何気に夢だったんだよね、文化祭でのライブって。僕が行ってた高校じゃ色々うるさくて出来なかったから‥‥さ」
「お堅い学校は、とことんお堅いものねぇ」
 木之下霧子(fa0013)と紅 勇花(fa0034)、イオ・黒銀(fa0069)は、Succubusの次女スティアに案内され、彼女の母校の門をくぐり、控え室として用意された教室で着替えていた。
 霧子は母校のスタンダードなセーラー服。ワンポイントで、彼女のこだわりでもあるペンギンの髪留めを装着している。
 勇花はギタリストとしては知る人ぞ知る存在なので、ライブが始まる前に文化祭を回るのに際し、変装の為にもスティアから制服を借りた。
 イオも制服を借りようとしたが、彼女が制服を着ていたのはろくね‥‥げふんげふん、い、いや、こすぷ‥‥ごほごほ、保護者という立場から、赤のベストにミニスカート、ガーダーベルトの上に黒のレザー製のロングコートを羽織っている。
(「‥‥にしても、正直スティアさんがまだ高校生‥‥僕より年下だったなんて思わなかったな‥‥胸も大きいし、スティアさんが大人っぽいのか、僕が子供っぽいのか‥‥」)
 スティアから借りた彼女の制服は、勇花が着ても胸の部分に余裕があった。一見、Succubusの長女シュタリアの方が肉感的な体付きに見えるが、スティアは着痩せするタイプのようだ。
 色んな意味で軽く肩を落とす勇花。
「ふふふ‥‥久しぶりなので、皆さんどのくらい育ったかチェックなのですヨ♪ おお! イオさんのは掌な収まりきらないのですヨ!?」
「ふふ、シュタリアとマッサージし合っているもの。そういう霧子ちゃんも‥‥」
 着替えを手伝いながら、「キュピーン☆」と霧子EYEを光らせて、成長具合を確かめる霧子。
「俺は日本で言う小学校しか行ってねーし、こういうのは初めてだが、なかなか楽しそうだな」
「私も大学には進まなかったからぁ〜、文化祭と言えばこれが2年振りねぇ〜」
 Tyrantess(fa3596)はMICHAEL(fa2073)に服装を見立ててもらっている。今回のライブは普通の高校という事で、Tyrantessも「いつも通り」だと刺激が強すぎると自粛したようだ。
 赤のショートジャケットとミニスカート、黒のニーソックスは、「Tyrantessにしては」少しおとなしめの服装といえる。もっとも、露出という面ではイオの方が上だが。
 Tyrantessに応えた鳴瀬 華鳴(fa0506)はライブの事も考えて、何処かのエスカレーター式女学院の制服らしい紺色と赤色のブレザーとスカートを纏い、首からブラッドスターを提げ、右手首には愛を呼ぶリストバンドを着けている。
 シャムスは流石に「注目度が120%になるので止めて下さい」とSuccubusの三女ティリーナ(fz1042)に止められていた。
「飲食が無料‥‥これは食べ歩きをしっかりと考えなきゃね!」
「に、そういえば文化祭って久しぶりなのにゃー。自分の学校の文化祭‥‥行ってないにゃぁ」
 全メニューを制覇する気満々のMICHAELは、スティアから渡された文化祭の出店マップを見ながら、真剣に回るルートを悩んでいる。
 横から覗き込む西村・千佳(fa0329)の服装は、自身が通う中学の制服だ。ごく普通のセーラー服だが、動きやすいようにスカートの丈は短めにしてあり、チラチラとにくきゅうプリントが見える事がある。
「案内とか見てもあんまりよく分かんねーし、誰かエスコートしてくれる奴はいないのか?」
「ふっふっふっ、おねーさんがエスコートしてあげましょう。フランクフルトとか〜♪ クレープとか〜♪ 焼きそばとか〜♪」
「色気より食い気だな、おい。しかもカロリー高そうなモンばっかりじゃねーか」
 出店マップと一緒に渡された出店の無料チケットをヒラヒラさせるMICHAEL。Tyrantessは来る者は拒まずがモットーだし、食べた分はライブで消費すれば問題なし。
「さて、それじゃあ甘いもの求めて文化祭周遊の旅にゃ〜♪」
「その前に」
 全員が着替え終わったのを見計らい、千佳が出発の音頭を取ると、霧子が待ったを掛けた。
「校内の出店で食べ放題という事ですけど、学校の中で芸名で呼び合うのはちょっと抵抗というか‥‥やはりプライベートでは、お互い本名で呼び合ってみませんか♪ ちなみに私は日下部霧子というのですヨ♪」
「確かに一理あるわねぇ〜。私はね、星牟礼・咲夜‥‥」
 言い出しっぺという事で、霧子から自己紹介を始め、あの華鳴ですら自らの秘密にしていた本名を呟いた。相手の本名を聞き出すには、先ず自分から名乗るのが筋だと思ったのだ。
「わ、私は‥‥高槻理恵‥‥です」
 その結果、ティリーナやシュタリアの本名(こちらは名前のみで美紀)を聞き出した。また住んでいる場所の住所も教えてもらったので、これで来年の年賀状を送れる。

「あっちの出店の方がクレープのメニューが豊富だけど、こっちの出店の方がボリュームがあるのよねぇ」
「ンなの、タダなんだから両方食えばいいじゃねーか。俺はこの太くて熱い肉棒をもらうぜ」
「肉棒ってフランクフルトじゃない‥‥先っぽからかぶりついてエロしい」
「この幹のように硬くて、熱した鉄のように熱い奴程美味いんだぜ。噛むたびに迸る汁もいけるしな」
「肉汁、ね」

「2人してこんな物陰に連れ込んで‥‥打ち上げはまだだよ!?」
「ライブ前のウォーミングアップってところかしら? 胸を気にしていたようだから、もう少し大きくしてあげようと思って」
「こんなところを誰かに見られたら‥‥」
「ふふ、羞恥プレイもまた一興ですわよ?」

「具の無い焼きソバや焦げ気味の焼き鳥を期待してましたケド‥‥」
「凄いにゃ、具しかない焼きソバとネギしかない焼き鳥にゅ〜♪ 文化祭楽しいのにゃ〜♪」
「それって焼きソバと焼き鳥とは言わないですネ‥‥」

「よく食べますね‥‥見ているこちらの方が胸焼けを起こしそうです」
「甘物全品制覇の金字塔を打ち立てないとぉ〜。理恵ちゃんはもういいのぉ〜?」
「わたしはもう十分戴きましたから‥‥咲夜はどうして進学しなかったのです? ‥‥いえ、人には話したくない事もありますよね。すみません、聞き流して下さい」

 MICHAELとTyrantess、勇花とイオとシュタリア、霧子と千佳、華鳴とティリーナに分かれて、文化祭を回った。スティアは自分のクラスの出し物が忙しく、一緒に回れなかった。


●ライブin文化祭
 Succubusが声を掛けたアーティスト達が出演するという事もあり、仮設ステージ前にはこの高校の生徒だけではなく、文化祭に訪れた他校の生徒や一般客も集まっていた。
「今日のライブは、Succubusのスティアお姉ちゃんの通う高校の文化祭からにゃ〜♪ みんな、楽しんでいってにゃー♪ それじゃぁ最初は僕達の歌『元気を出して☆』からにゃ♪」
 いつものSuccubusのゲリラライブと同じく、司会進行を務める千佳がステージ上に現れると、観客から歓声が轟く。
 歓声に合わせて、華鳴とベースギターを持った霧子、ギターを携えたティリーナがステージへ上ってきた。


 思い出の欠片 抱きしめて
 うつむき 耳を塞いでいた

 誰かのせいだと 逃げること
 覚えて ずっと歩き出せずいた

 でも‥‥
 君の瞳 君の笑顔
 君の笑い声が 僕を強くする

 元気を出して♪
 辛いことに くじけないで
 元気を出して♪
 嫌なことも 全て吹き飛ばそうよ♪


 『元気を出して☆』は、出だしはゆっくり目でしっとりと。徐々にテンポを上げ、明るくなっていく曲調だ。
 華鳴と千佳のツインボーカルをメインに、ベースの霧子とギターのティリーナがバックコーラスを添える。
 千佳と華鳴は、最初はステージの中央で聴衆を見ながらゆっくりと唄う。
 Bメロからサビの間に、ティリーナの十八番のスリーフィンガー・ピッキングによる早弾きが披露され。
 千佳達のバックでアピールを控えめに、華鳴達ツインボーカルを引き立たせるよう演奏していた霧子が、サビの部分で一気に出る。
「これぞペンギン奏法なのデス☆」
 曲も一気にテンションMAX! そのテンションを体現するかのように、千佳も華鳴もステージ上を元気に走りまわり、最後まで歌い切った。

「先月はぁ霧子ちゃん達のぉ、今月はぁ千佳ちゃんのぉお誕生月なのぉ。みんなぁ、思いっきり祝ってあげてねぇ? いぇーい♪」
 歌い終えた後、華鳴より素敵なサプライズが。
 自分の誕生日の時のお返しの意味を込めて、霧子とイオ、MICHAELと千佳の誕生日を祝い、Succubusよりサファイアスターやトパーズスターが贈られた。


「あたしは今回はインストよ。クール且つスタイリッシュなギターを聞かせてあげる♪」
 続いてMICHAELが愛用のフレイムストームを引き下げて、颯爽とステージへ現れる。
 爪弾き始めるは、アッパーロックな曲だ。
 基本に忠実且つ完璧な演奏で聴衆を引き付け。
 徐々にビートを上げていき‥‥最高潮に達したところで一気に爆発。
 スウィープピッキングやタッチ・ハーモニクスも加えて、曲だけではなくギターテクでも魅せた。
「これでもう、みんなあたしの虜よ♪ ふふ♪」
「そいつはどうかな? そっくりそのまま俺の『Generation of Revolution』の虜になっちまうかもよ?」
 秋空の下とはいえ、全力で演奏すれば汗を掻く。紅いブラにデニム地のハーフパンツ、紅いロングブーツという露出の高い出で立ちと相まって、MICHAELの掻く汗は健康的だがどこか艶めかしい。
 そのまま観客に投げキッスをすると、男性陣がドッと沸く。
 ところが、TyrantessがMICHAELのパフォーマンス中に割って入り、挑発的な言葉を投げかけた。
 彼女は愛用のエレキギターのネックに口付けを落とすと、おもむろに演奏を始めた。


 とうに時代に追い抜かれた 化石頭の大演説
 舞台の裏でため息ついた そんなのはもうやめにしよう
 そろそろマンネリじみてきた 世界という名の即興劇
 ここらで一つ流れを変えて 俺たちで盛り上げてこうぜ!

 We are the generation
 It’s time for ignition
 準備はとうにできてるはず 迷うことなく飛び出そう!
 例えブーイング浴びたとしても そんなのすぐに黙らせてみせるさ

 We are the generation
 Gonna make a revolution
 カビの生えた常識の壁 怯むことなく打ち破れ!
 そこから差し込む眩しい光が スポットのようにみんなを照らすから


 『Generation of Revolution』は、演奏もボーカルも最初からトップスピードで駆け抜ける、ハイテンションな曲調だ。
 唄っている都合もあって、Tyrantessのパフォーマンスは大きくはないが、流し目をしたり、息継ぎの時に艶めかしく舌なめずりをしたりと、MICHAELに言ったように、彼女が虜にした男性陣を煽りつつ飛ばした。

 Tyrantessの演奏後、ステージに集まった男性客は、MICHAELファンとTyrantessファンに分かれたとか。


「揺れるわよ♪」
「ちょ!?」
 とりを務めるのは、イオと勇花、スティアとシュタリアだ。
 ステージへ上がったイオの第一声は、人差し指を立てながらウインクで、どこかで聞いた事のあるフレーズ。
 聴衆には何の事か分からないが、勇花はたちまち顔を真っ赤にしてイオの口を塞いだ。
(「物陰に連れ込まれたのは、シュタリアさん以外、知ってる人には見られなかったからよかったけど、ずっとマッサージされてたんだよね‥‥」)
 そういう意味で『揺れる』らしい。


 Blazin’up heart & soul!

 日常のCircuitブチ壊して 瓦礫の道へ今すぐGo ahead! 
 お前の胸で燻るPassionates 迷ってる暇なんかないReignition now!

 Eggheadの屁理屈 笑い飛ばし蹴り飛ばせ HA・HA・HA!
 今この日この瞬間にContinueは無い 思いのままにLet’s go!

(Come on baby!)

 Blazin’UP! Blazin’UP!
 Blazin’up heart & soul!
 Blazin’UP! Blazin’UP!
 Blazin’up heart & soul!

 One more time!

(サビ×2)


 気を取り直して、イオがリードボーカル、勇花がギター&サブボーカル、シュタリアがベース、スティアがドラムにそれぞれ着く。
 スティアがシンバルで合図を取り、イオと勇花、シュタリアが最初のフレーズをシャウトして『Blazin’UP!』が始まる。
 ドラムが軽快なテンポを刻み、そのテンポの合間に跳ねるようなギターとベースを合わせ、自然と身体が動き出しそうなノリの良いハードロックの曲調だ。
 勇花は身体や足踏みでリズムを取りながら演奏し、サビに入る直前シャウトと同時に聴衆にも乗ってくるよう手で煽る。
 そこで聴衆から「おお!」とどよめきが起こる。
 イオの言う通り、揺れている! しかも前後左右に! 勇花がリズムを取れば取る程たゆたゆと揺れる。
 しかもイオがマイクをスタンドごとを持ちながら移動し、勇花と一緒にリズムを刻むから、こちらもEが揺れる!
 サビの『Blazin’UP!』は勇花とイオ、シュタリアでシャウトするが、後奏のサビの繰り返しでは聴衆も一緒にシャウトし、ノリにノったまま唄い終わった。