サヨナラは言わせないアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 菊池五郎
芸能 4Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 難しい
報酬 不明
参加人数 8人
サポート 1人
期間 10/25〜10/29

●本文

 『Succubus(サッキュバス)』というロックグループがいる。
 ボーカル兼ベースのシュタリア。
 ドラム(場合によってはシンセサイザー)のスティア。
 ギターのティリーナ(fz1042)という、女性3人の構成だ。

 彼女達は月と片思いや悲恋といった恋愛を題材にする歌が多く、一部に熱狂的なファン(特に女性)がいるものの、メディアに露出していない事もあり知名度は高くない。
 メディアに露出していない理由の1つが、グループ名『Succubus』――文字通り『夢魔』の如く、彼女達がライブを行う時間帯の大半は夜だ。しかも好んで路上でのゲリラライブを行っているようで、ライブの直前になってファンサイトの掲示板へ書き込むくらいしか告知していない。そうやってファン達がやきもきする姿を見る事でテンションを高める小悪魔的な性格も、やはりSuccubusなのかもしれない。
 そしてもう1つの理由が、ライブ中にも関わらず、人目をはばかる事なくメンバー同士で抱擁し合ったり、接吻を交わす、まさにSuccubusの意味するパフォーマンスだ。
 シュタリアが長女、スティアが次女、ティリーナが三女という姉妹としての位置付けが彼女達やファンの間ではあるが、血は繋がっていない。
 彼女達は姉妹であり、恋人であった。


 ――ここはSuccubusの集う、秘密の花園‥‥。
 その日は珍しく、シュタリアは、秘密の花園にいた。Succubusの3人は血は繋がっていないが、姉妹同然にここで一緒に暮らしている。
 スティアやティリーナが高校へ通っている間、シュタリアも普段なら自分の仕事の為に家を留守にしている。もっとも、シュタリアがどんな仕事をしているか、妹達も知らないが‥‥。
 最低限自炊は出来るが、料理はスティアの方が上手いし、紅茶の淹れ方はティリーナには敵わない。
 自分で淹れた紅茶を飲みながらそんな事を考えていると、すっかり日が落ちている事に気付いた。
「あの娘達遅いですわね、連絡も無しに‥‥」
 スティアもティリーナもSuccubusのゲリラライブがあるので、部活やクラブには入っていない。2人ともゲリラライブで鍛えた楽器の腕を見込まれて、軽音楽部や吹奏楽部の助っ人を頼まれる事はあるが、妹達の性格からして遅くなるなら連絡の1つも寄越すはずだ。
 噂をすれば何とやら。スティアからの着信を告げる携帯電話の着メロが流れた。
「もしもし、どうしたの‥‥え!?」
『お姉様!? もしもし、お姉様!?』
 シュタリアが取り落とし、床に転がった携帯電話から、スティアの呼ぶ声が聞こえる。
「ティリーナが‥‥交通事故で‥‥緊急入院‥‥」
 何の事だか分からないといった風に先程、スティアから告げられた内容を呆然と反芻し、言葉の意味を確かめるシュタリア。
 次の瞬間、姉は着の身着のまま秘密の花園を飛び出していた。

『高槻理恵』
 ティリーナの本名が書かれたプレートが掲げられた個室の病室の扉を慌ただしく開ける。
 中にはスティアの姿はない。
 ぽつんとベッドが置かれ、とても交通事故に遭ったとは思えない、綺麗な顔のティリーナが横たわっていた。
 まるで寝ているかのように‥‥安らかな表情だ。
 信じられなかった。信じたくなかった。スティアに嘘だと言って欲しかった。
 しかし、全てを知るスティアの姿はなく、目の前のティリーナが全て現実だと物語っている。
「‥‥ティリーナ」
 1歩、2歩。シュタリアはよろよろとおぼつかない足取りでベッドに近付く。
 3歩、4歩。視界が滲んでくる。止め処なく溢れる涙で。
「ティリーナ―――――!!」
 絶叫――そして身体に縋り付く。
 しかし、ティリーナはもう二度と自分の名前は呼ばないし、もう二度と自分に微笑む事もない。そして愛し合う事はもう永遠に出来ないのだ。
「‥‥う‥‥ん‥‥」
「え!? ‥‥ティリーナ‥‥!?」
「あら、お姉様いらしたの?」
 ティリーナが吐息と共に寝返りを打った。
 驚くシュタリアとは対称的に、ステアがあっけらかんとした声と共に病室へ入ってきた。

「ただの打撲ですの!?」
「だってお姉様、入院した理由を告げる前に携帯を切ってしまうんですもの」
 その後、ティリーナに宛われた病室で、お見舞い者様に用意されたパイプ椅子に座り、スティアが事の次第を話した。盛大な安堵の息を吐くシュタリア。
「でも、ただの打撲といっても、交通事故に遭ったのは事実だし、検査入院や容態の様子見もあるから、3、4日は入院が必要みたい」
 ティリーナは友達と下校途中に、友達を庇って車にはねられたそうだ。獣人という事と、幸い、当たり所がよく、ただの打撲で済んだのだが。
 先程までティリーナに庇われた友達が、「理恵さんが目を覚ましたら、一言謝りたい」と付きっきりで看病しており、スティアは彼女を説得して、ようやく自宅まで送ってきたところだった。それで不在だったのだ。
「その娘、自分の所為だと思い詰めていて‥‥庇われたのだから、気にするな、というのは無理な話だけど、ティリーナの為に何かしてあげたいそうなの」
「そうですわね‥‥その娘にも手伝って戴き、ティリーナの退院祝いにゲリラライブを行うというのは如何でしょう? もちろん、病院内外では五月蠅くできませんから、場所を設定しなければなりませんが」
「それは良いアイディアね。さっきティリーナの思い出話をしていたんだけど、その娘サクソフォーンをやっているそうなの。ティリーナがいなくても面白いゲリラライブが出来そうだわ」
「先ずは場所ですわね。ティリーナを呼び出すとして、意外性のある場所がいいかも知れませんわね」


 その後、アーティストやロックバンドへSuccubusからゲリラライブのお誘いのメールが届いた。今回のゲリラライブの趣旨は、Succubusのメンバーの1人、ティリーナの退院祝いだという。それに加えて何かお目出度い事があれば一緒に祝っちゃおうという内容だ。
 「お誘い=有志」なので金銭的な報酬はないが、交通費や打ち上げ時の飲食費はSuccubus持ちだ。
 尚、今回のゲリラライブはお目出度い席なので、ライブ中、女性はSuccubusのメンバー達に弄られる危険性はなさそうだし、参加者も弄るのは避けた方がいいだろう。
 但し、ゲリラライブ後に開かれる打ち上げに関しては、その限りではないが。

●今回の参加者

 fa0013 木之下霧子(16歳・♀・猫)
 fa0034 紅 勇花(17歳・♀・兎)
 fa0069 イオ・黒銀(22歳・♀・竜)
 fa0329 西村・千佳(10歳・♀・猫)
 fa0506 鳴瀬 華鳴(17歳・♀・小鳥)
 fa1584 高川くるみ(20歳・♀・兎)
 fa2073 MICHAEL(21歳・♀・猫)
 fa3596 Tyrantess(14歳・♀・竜)

●リプレイ本文


●1人の為のゲリラライブ
「スティアお姉様、そんなに引っ張らないで下さい! 私、交通事故に遭ったばかりなのですから!」
「何言ってるの、単なる打撲でしょう? 精密検査の結果、後遺症も心配ないんだから、リハビリよ、リ・ハ・ビ・リ!」
「節々が痛いのは本当なんです〜!」
 Succubusの三女ティリーナ(fz1042)は、退院の手続きを済ませた次女のスティアに連れられて、母校の方へ向かっていた。
 ティリーナの通っているお嬢様高校は、幼・小・中・高・大の一貫お嬢様教育を売りとしている。ティリーナこと高槻理恵も幼稚園から通っているが、何の因果かSuccubusの長女シュタリアと出会ってしまったが為にゲリラライブに没頭し、道を踏み外しつつあった。
 ティリーナの通うお嬢様学校の近くには、緑豊かな公園がある。憩いの広場となっており、放課後、ここで歓談する女子生徒達も少なくない。
 ティリーナがスティアに連れられて公園に入ると――。
「わきゃ!?」
「「「「「「「「「「「ティリーナ、退院おめでとう!」」」」」」」」」」」
 盛大なクラッカーの音と共に、聞き覚えのある声が降り注ぐ。思わず身を竦めたティリーナが恐る恐る目を開けると、そこには鳴瀬 華鳴(fa0506)達がいた。
「‥‥」
「な、何よ‥‥」
「華鳴さん、理恵さんが事故に遭ったと聞いた時、動揺して食事も喉を通らなかったそうです」
 胸元に金糸雀が刺繍され純白の白ロリスタイルに、大事にしているブラッドスターを首から提げ、額にシャムスを着けた華鳴は、翠玉の如き瞳を潤ませていた。
 ティリーナが訝しむと、彼女の代わりにティリーナの親友の如月香里が応えた。すると華鳴は香里の頬をむにっと挟んだ。
「ちょっと以上に妬けるしぃ、怒ったけどぉ‥‥ティリーナちゃんがぁ身を挺して庇ったのだからぁ、これで赦してあげるわぁ」
「ティリーナちゃん‥‥本当に、無事で良かった‥‥」
 何故か泣き腫らしたような目で、華鳴の想いを代弁する紅 勇花(fa0034)。
「‥‥うん、何にせよ残されたシュタリアとスティアの2人が、甲子園ならぬ武道館目指す事態にならなくて本当に良かったと思うわ」
「こんな時に不吉な事をさらりと言うわね」
 稲馬・千尋の言葉に、イオ・黒銀(fa0069)が微苦笑する。
「ティリーナさん、私がプレゼントした新しい靴、早速履いてくれたのですネ☆」
「着替える時、スティアお姉様から渡されたけど、この靴、霧子からのプレゼントだったの?」
「はい、新たな気分でライブを見て下さいナ♪」
「しかし、事故とはティリーナも災難だったな。ま、元気の出る曲なら俺に任せな!」
「ライブ? 曲?」
「そうよ、ティリーナちゃん、軽傷で良かったわね〜♪ あたし達の退院祝いは盛大に盛り上げちゃうわよ!」
 ぺんぎん燕尾服に身を包んだ木之下霧子(fa0013)は、ティリーナの履いている靴が自分のプレゼントした靴だと分かると、ぺかんと満面の笑みを浮かべる。
 Tyrantess(fa3596)がティリーナの肩に手を置いて元気付け、MICHAEL(fa2073)が自分達がここに集まった理由を告げる。
「今回のゲリラライブは、いつもとちょっ〜とメンバーが違うにゃー。しかも特別ゲストで‥‥ティリーナお姉ちゃんのお友達、香里お姉ちゃんを加えての、ティリーナお姉ちゃんの退院祝いゲリラライブにゃ〜♪ しかも、観客はティリーナお姉ちゃん1人だけという贅沢なゲリラライブにゃ♪ みんな、元気にいってみようにゃ♪」
「初めまして、キーボーディストの高川くるみと言います。僭越ながら、ティリーナさんの退院祝いゲリラライブに参加します」
 霧子の腕に抱きついてべったりな西村・千佳(fa0329)がゲリラライブの開催を告げると、ショルダーキーボードを肩から提げ、半獣化してうさ耳をぴょこんと生やした高川くるみ(fa1584)がにこっと笑んで挨拶した。可愛いお人形さんのような美少女で、腰まである長く真っ直ぐな黒髪がチャームポイントだ。
「た、退院祝いゲリラライブって‥‥私の為に‥‥!?」
「そうですわ、皆、あなたの為に集まったのですわ」
「感涙を流すのは後後、私達の歌や演奏を聴いてからにしてね♪」
 シュタリアの説明に、感極まったかのように全身を震わせて俯くティリーナ。イオは人差し指を立てたお決まりのポーズで待ったを掛けると、千佳が華鳴達を示した。


 廻り繰る世界で 踊るのは硝子細工
 閉ざされし箱庭の中 見るのは偽りの夢

 何を求め何を得ても 充たされず
 聞こえ続けた心の悲鳴

 出逢えた事が運命ならば
 別れる事もまた運命と 誰が決めたの?
 罪でも構わない 愛すると決めたから

 伸ばした手が 引き寄せた
 刹那の恋よ 永遠となれ

 総てを無くしても失いたくない
 例えこの想いが響かなくても
 死すら越えて私は 貴女の傍でイきたい

 破滅しても良い 狂気に魅られても良い
 それでも握った手だけは放さない!
 何時までも 愛しき貴女の傍に居たい


 霧子がベース、勇花がギターを爪弾き、香里がサクソフォーンを奏で、千佳のバックコーラス&ダンスの下、華鳴が最初から熱く激しく唄う。
 ティリーナへ、高槻理恵へ捧げる為に創り上げた歌故、曲名はない。
 千佳達も華鳴の想いを考えて彼女を前面に押し出し、霧子達はあくまで花を添えるに留まる。
 Eメロから更にテンポアップ。華鳴は燃え尽きんばかりの勢いで、情熱的に激しく歌う。
 涙の溢れる瞳でしっかりとティリーナを見据え、精も根も尽き果てたかのように歌い切った。

 続けてイオとシュタリア、MICHAELとくるみの4人が前へ出る。


 どこに行っても良い 僕らは自由なんだ
 先走る期待を胸に 今世界へと走りだす

 流れる景色 過ぎ去る思い出
 全部纏めて目指せFrontier

 ボクは一人じゃない 信じて前に進もう
 終わりの無い旅を行く

 ボクらなら何処までも行ける だからWe are believe Traveler


 MICHAELの愛用のギターとくるみのキーボードから紡がれるのは、疾走感溢れるグルーヴィーチューン。
 そのノリのいい旋律に、イオとシュタリアが歌声を乗せる。
 MICHAELは中音域を担当。カッティングで細かくリズムを刻み、唸らせる。自身も軽くステップ踏み、軽快に演奏する。
 くるみも跳ねるようにキーボードを演奏する。MICHAELのギターに絡むように、でも、双方の旋律を失わせないよう、低音域を奏でる。
 ステップもMICHAELに合わせて踏む。
 高音域はイオとシュタリアのハーモニーが紡ぐ。手を繋いだり、背中合わせになったり、時には軽く包容し合ったり‥‥ティリーナが頬を膨らませていたのは言うまでもない。

 シュタリアだけがその場に残り、Tyrantessとスティアへメンバーチェンジ。


 Not so bad days
 肩肘張らずカッコつけずに
 Not so bad life
 思ったままに生きていきゃいいのさ

 本当にこの世の中は
 どうしようもないバカばっかりだけど
 カビの生えた常識 下らないルール
 なんか邪魔くさいモノばっかりだけど

 本当は何が正しいかなんて 決められるヤツは
 この世のどこにもいやしないのさ‥‥自分以外には!

 Not so bad days
 どうせこの世はでっかい遊び場
 Not so bad life
 楽しむ以上に大事なことなんかない!
 Not so bad days
 いらないモノは全部放り投げて
 Not so bad life
 ガマンなんかせず生きていきゃいいのさ

 Not so bad!


 Tyrantessが愛用のエレキギターのネックにキスを落とし、『Not So Bad』が始まる。
 シュタリアがベース、スティアがドラムを務め、底抜けに明るいアップテンポのパンクロックが辺りに響き渡る。
 先程のイオのパフォーマンスに触発されたのか、Tyrantessも演奏の合間に、シュタリアのベースとネックをクロスさせてみたり、スティアの頬に軽くキスをした。
 すると今度は何故か勇花が頬を膨らませていた。

「何むくれてるんだよ?」
「‥‥別に」
 今度はTyrantessがその場に残り、勇花とMICHAELが交代する。
 Tyrantessは勇花が自分を睨め付けているのに気付いたが、理由が分からない。
 そんな中、3人で音を合わせ、三連符を三度刻み、エレキギターによる三重奏がスタート。
 曲調は明るくリズミカルなポップロック風だが、メタル風にアレンジされたインストゥルメンタル。
 MICHAELが高音域、勇花が中音域、Tyrantessが低音域を担当。
 最初はMICHAELがメロディラインを爪弾き、中盤で勇花へタッチ。
 ご機嫌斜めの勇花だったが、先程打って変わってややトーンを下げたブレイクパートを奏で、MICHAELはチョーキングでぎゅいんぎゅいんとアピール。
 後半は勇花からTyrantessへメロディラインが渡る。
 Tyrantessは水を得た魚のように、早弾きやアドリブ多用でガンガン飛ばしてく。
 付いていけない勇花とMICHAELではない。勇花もうねるような早弾きで盛り上げていき、MICHAELは低音域に厚みを持たせるように高音域を被せてくる。
 終盤、MICHAELへメインが戻ると、テンションは一気に最高潮へ達し、余韻を残さず終わった。

「今日のゲリラライブはこれで終了‥‥じゃないのにゃ。サヨナラは言わないにゃ♪ みんな、また会おうなのにゃ♪ SEE YOU AGAIN♪」
 演奏が終わってもMICHAEL達はその場に残り、千佳達が集まってくる。


『かざした手を離さないで捕まえていて』
『楽しく笑顔で歩み止めずに』
『終わらない夢を見よう』
『未来を磨き光らせよう』
『Your believe self』
『どんな困難にも負けないで!』
『いつまでも元気に行こうにゃ♪』
『あなたと一緒に』
『みんなと一緒に』
『これからも! 弾いて、歌って、突っ走ってこうぜ!』
『『『『『『『『『『『だからサヨナラは言わせない』』』』』』』』』』』


 何が始まるのかとティリーナが全員の一挙一動を見守っていると、MICHAELから歌い始めた。
 くるみ、イオ、勇花、華鳴、霧子、千佳、シュタリア、スティア、Tyrantessが1フレーズずつ唄ってゆく。
 各自が1フレーズずつ考えて持ち寄った1曲だ。
 勇花とMICHAELがギターで明快なリズムの賑やかな曲調を紡ぐ。くるみがショルダーキーボードからベル(鐘)系の明るい音色で主旋律を彩る。
 最後は演奏を止め、全員で手を繋いだり、肩を抱き合い、香里のフレーズを合唱して締めた。
「みんな‥‥ありがとう‥‥」
 ティリーナは口元を押さえ、溢れてくる涙を堪えながらそれだけを言うのが精一杯だった。


●サヨナラ? そんな事は言わせない!
 ゲリラライブの余韻をそのままに、打ち上げはSuccubusの秘密の花園で行われた。
「‥‥はっ、また大きく!?」
 ウーロン茶で酔った(?)霧子は、シュタリアとスティアの2つの水蜜桃をもいでいたが、2人とも前より大きくなっており、掌では収まりきらずショックを受けた模様。
「うにゃー、やっぱり僕はこの方がいいのにゃ♪ 霧子お姉ちゃん、大好きにゃー♪」
 華鳴はそんな霧子の膝に乗り、『実は豊満で脱ぐと凄いんです』な胸に顔を埋めて甘えている。シュタリアを諦めた訳ではないが、当面は(当面は!?)霧子に甘える事にしたようだ。
「こここ、これは‥‥」
「理恵さんから惚気話は聞いていましたが、これ程とは‥‥」
 無礼講の打ち上げが続く中、Succubusの音楽の評判は聞いていても、こっちの方については耳に入っていなかったくるみは、香里とスルーし、音楽談議に花を咲かせていた。幸い、香里もサクソフォーンといった楽器に精通しているので、話題には事欠かなかった。
「Tyrantessちゃん〜、呑ませてあ・げ・る♪」
「つーか、他のヤツも、みんな最高だ、愛してるぜ! 俺はこんな“博愛主義者”で、“たった1人”は見つかる気配も見つける気もねー。だからMICHAEL、これからも『いろいろ』よろしくな?」
 MICHAELとTyrantessは、何故かお互いに酒を呑ませっこしている。身体が絡み合い、組んず解れつはお約束。
 小麦色に実った4つの果実がお互いの大きさで半ば潰れ、でも弾力を失っていない光景は特筆しがたい!

「‥‥いつの間にか、気がついたらスティアさんのコトばかり考えてた。今回だって、もしスティアさんが‥‥って思うと、涙が止まらなくて。この気持ちが『恋』かどうか僕には分からない、だけど‥‥ずっと、一緒にいさせて欲しいんだ」
「妹の事を出汁にして、随分と酷い事を言うのね。でも、嬉しいわ」
「ん!? んん‥‥」

「ねぇ、シュタリア‥‥大好き」
「あら、奇遇ですわね。わたくしもイオの事が好きですのよ?」
「それはLOVE? それともLIKE?」
「ふふふ、どちらの応えがよろしいかしら?」
「できればLOVEで。まぁ、私の事を思ってくれてるならどっちでもいいけど」

「‥‥まだデートにも行ってない! 色々話してない事もあるぬ 心の底の全てを見せれるたった1人だったのに! ‥‥そんなあなたを失うって思ったら‥‥怖かったんだからぁ!!」
「ごめんなさい」
「好き、大好き‥‥ティリーナ!」
「ごめんなさい」
「‥‥!?」
「だって‥‥今の私、湿布臭いし‥‥ロマンチックとか、ドラマチックに抱き合えないし‥‥」
「バカぁ‥‥そんな事考えてたのぉ!? 私はティリーナなら全て受け止めるよぉ」
「雰囲気も大切でしょ!? でも、ありがとう」

 勇花とスティア、イオとシュタリア、華鳴とティリーナがこの夜、互いの想いを結び合ったのだった。