6月の花嫁ドラマSPアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 菊池五郎
芸能 3Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 7.9万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 06/29〜07/03

●本文

 お初にお目に掛かります。当方は結婚式場『フォルトゥナ・ヒル』の広報担当です。
 当『フォルトゥナ・ヒル』は、この度グランドオープンする事になり、そのテレビCMを企画しております。
 つきましては、テレビCMに出演して下さる方を募集致します。未婚・既婚は問いません。「テレビCMを観た人が思わず結婚式を挙げたくなる」ような、素敵なお二方を希望します。もちろん、これは当方の希望ですし、急遽組まれ、仲睦まじい演技が出来る方であれば問題ありません。

 また、同時に監督や演出家を始め、撮影スタッフや音響、大道具・小道具といった裏方も募集いたします。
 監督や演出は演じられる方が兼任されても構いません。撮影スタッフや音響・道具係は、当方の結婚式場にも専属のスタッフがおりますが、やはり良いものを作るにはプロにお任せした方がいいと思った次第です。

 オンエアするCMは、15秒の通常版と30秒のロング版があり、基本的には15秒の通常版の方をお願いします。ロング版は今回は1本のみとさせて戴きます。
 CMの内容はお任せします。15秒、あるいは30秒の中に、当『フォルトゥナ・ヒル』の良さと幸せ一杯に包まれた結婚式、そして結婚の素晴らしさを思い思いの演出で表現して下さい。

 さて、当『フォルトゥナ・ヒル』の施設ですが、緑に囲まれた閑静な郊外にございます。お車で30分と交通の便もよく、送迎バスもご用意致します。
 本館は尖塔をいくつも戴く中世ヨーロッパの宮殿を思わせる建物です。中にはパイプオルガンを備え付けた大聖堂や聖堂といったチャペルをいくつも抱えております。また、神殿を控えた式場もあり、神前結婚も可能となっております。
 披露宴会場は、中世の貴族達の会食場を模したロマンティックな会場から、貴族の別荘を思わせるシックな落ち着いた会場、バーカウンターやステージを有したスタイリッシュな会場に、畳敷きのお座敷もございます。
 そして、当『フォルトゥナ・ヒル』の一番の売りは、敷地内の小高い丘の上に立つ小さなチャペルでございます。この丘は『幸運の丘』と呼ばれ、チャペルの入口には、当『フォルトゥナ・ヒル』の名前にもなっている、古代ローマの運命を司る女神フォルトゥナの象徴である車輪がオブジェとして飾られております。
 このチャペルで挙式したお二方の門出は、幸運の女神フォルトゥナの祝福の元、見守られたものとなる‥‥という当『フォルトゥナ・ヒル』の願いが篭められております。

 ウェディングプランでますが、当『フォルトゥナ・ヒル』では、大人数の挙式はもちろんの事、少人数での挙式と披露宴、親族のみの会食を行う事も可能ですし、2名様より大聖堂での挙式のみ、というプランもございます。

 以上が、当『フォルトゥナ・ヒル』の施設概要となります。
 挙式を上げようと思われている方、既婚でも華やかな挙式を上げたい方、結婚式に憧れている方がおりましたら、当CMでささやかながら思い出作りをされては如何でしょうか。
 素晴らしいテレビCMがオンエアできるよう、皆様のご応募、心よりお待ちしております。

 尚、当CMは、音楽・芝居・美術・撮影・演出の勉強になります。

●今回の参加者

 fa0631 暁 蓮華(20歳・♀・トカゲ)
 fa0910 蓮城 郁(23歳・♂・兎)
 fa1108 観月紗綾(23歳・♀・鴉)
 fa1681 木野菜種(23歳・♀・亀)
 fa2177 縞八重子(27歳・♀・アライグマ)
 fa2385 霧島・沙耶香(18歳・♀・パンダ)
 fa3487 ラリー・タウンゼント(28歳・♂・一角獣)
 fa3579 宝野鈴生(20歳・♀・蛇)

●リプレイ本文


●下見
「結婚式か‥‥うん、腕が鳴る」
「明るくて聞いてて楽しくなるような感じがいいわね、うん」
 暁 蓮華(fa0631)と木野菜種(fa1681)は、フォルトゥナ・ヒルの敷地の中を歩いていた。蓮華は特殊効果担当、菜種はBGM作成担当と、2人とも裏方という事で、一度フォルトゥナ・ヒルの中を全て回りたいと申し出たのだ。
 披露宴会場をざっと一通り回り、今はフォルトゥナ・ヒルご自慢の小高い丘に来ていた。
 街の中心地から30分離れるだけで、こんなにも緑が広がっているのだろうか? 遠く眼下に街並みを見下ろすそこは、一面、深緑に萌えている。吹き下ろす心地よい風が蓮華の灰色のポニーテールを揺らし、悪戯してゆく。
「百聞は一見と言うが‥‥やはり一度自分の目で見ておかないと、役者のプランのイメージを最大限に尊重する事も活かす事も出来ないからな」
「CMの音楽って難しいのよ。15秒や30秒で視聴者に心象を残さないといけないし、かといって絵を越えて目立ってもいけない」
 ミント味のガムを噛む蓮華に、菜種が手を差し出した。
「あたしも良い音楽を作るから、良い合成、お願いね」
「ああ、お前達のイメージ、必ず形にしてみせるぞ」
 菜種の手を、不敵な笑みを浮かべて握り返す蓮華。

「今回は素敵な結婚式が一杯見られそうですねー」
「見られそうですねーって、沙耶香さんも花嫁役の1人ではありませんか」
「そうですけど、華やかな結婚式はやっぱり憧れますよ」
 こちらは役者組。霧島・沙耶香(fa2385)と宝野鈴生(fa3579)は、貸しウェディングドレスのコーナーにいた。今、撮影時に着るウェディングドレスを選んでいる真っ最中だ。
「結婚式場か‥‥僕の国にはこういう施設がなかったから、ちょっとびっくりだよ」
「‥‥あ、ラリーさん、お帰りなさい」
 ラリー・タウンゼント(fa3487)は新郎役のスーツを持参したので、一足先にフォルトゥナ・ヒルが誇る式場の数々を物珍しそうに見回ってきたところだ。
「日本人っていうのはこういうところで挙式するんだね、うん、新鮮だったよ。この式場、まだオープンしていないんだよね? 撮影が終わったら、パンフレット貰っていきたいな。俺の旦那様用と従兄用に」
「「え゛!? ‥‥旦那様‥‥」」
 聞いてはいけないような発言を聞いてしまい、思わず瞬間凍結する沙耶香と鈴生。
「私も早くこんな素敵な結婚式がやりたいです」
「僕もいつ、“ホンモノ”着られるかなぁ‥‥」
「あらあら、そんなネガティヴな心構えでは、幸せも、彼も、結婚も、みんな逃げていってしまうわよ?」
 何とか自力解凍し、現実を見つめる沙耶香と鈴生の頭が、ぽこぽこと軽い音で叩かれる。縞八重子(fa2177)が丸めた紙束を持ち、もう片方の手で眼鏡のフレームを持ち上げた。
「はい、ラリー君、ちょっと丸まってしまったけど、ご所望のフォルトゥナ・ヒルのパンフレットよ」
「ありがとうヤエ、打ち合わせは終わったのかい?」
「ええ、ラリー君達の提出したCMプランは全て通ったわ。ウェディングドレス選びが終わったら撮影に入れるそうよ‥‥そうね、後は、あの2人が帰ってきたらかしら?」
 八重子はプロデューサーとして培った腕を活かし、今回のCM撮影のチーフディレクターとして、今までフォルトゥナ・ヒル側と綿密な打ち合わせを行っていた。舞台の裏方のセッティングの手配に始まり、衣装や小物の準備、カメラ割り等、撮影を始めるに必要な準備は全て整えてきた。
 悪戯した我が子を許す母のような微笑みを浮かべて八重子が視線を向けた先には、フォルトゥナ・ヒルの上に建つ小さなチャペルがあった。

「この式場はどこも本当に見事ですねぇ」
「そうだね(私達でする時にはどの様にするのだろう‥‥)」
 蓮城 郁(fa0910)と観月紗綾(fa1108)は、2人きりでフォルトゥナ・ヒルの建物を見て回っていた。恋人同士に甘々な一時に水を差すような、野暮な者はいない。
 2人であーでもない、こーでもないと言いながら一足先に衣装を選び、今度は披露宴会場巡り。中世の貴族達の会食場を模したロマンティックな会場では、2人でテーブルに付いて貴族の食事の真似をしたり、貴族の別荘を思わせるシックな落ち着いた会場では、「こんな別荘を持つのもいいね」と笑い合ったり、バーカウンターやステージを有したスタイリッシュな会場では、郁がシェイカーの真似をして紗綾にグラスを出したりと、自分達の結婚式本番はどんな物が良いだろうか、と参考にしていた。
 女神フォルトゥナの象徴である車輪が飾られたチャペルでは、紗綾のパイプオルガンの演奏に合わせて郁が軽く能の舞いを披露する。
「幸せを見守る丘、光ある未来へと歩き出す場所、そんな希望に満ちた内容を‥‥此度は心から視聴者に伝えられそうです」
「私もだよ。このような場所で郁さんと式を挙げれたら幸せだろうな‥‥って、いや独り言だよ。つい、美しいステンドグラスから洩れる光が眩しくてね」
「私にとってこの世に、紗綾さんほど美しく輝く光はありませんよ。そしてその光から決して目をそらす事は出来ません」
「‥‥郁さん‥‥」
 ステンドグラスから射し込む光に形作られた2人の影が、少しずつ重なり合っていった。


●撮影開始
「全員揃ったようね」
 幸せな気持ち一杯で戻ってきた郁と紗綾の姿を認めると、八重子が撮影スケジュールの資料を配り、ざっと説明する。
 撮影は3日間に渡って行われ、出来たCMより順次、蓮華と菜種が編集を加えていく。
 最終日はフォルトゥナ・ヒルの関係者も交えて撮影会という段取りになっている。
「クランクインの前に、1つだけ話しておきたい事があるの」
 沙耶香が買い出しに行ってきたお菓子や飲み物で舌鼓を打っていた鈴生達は、一斉に八重子の方を向いた。
「こういう結婚式などの話題は、あなた達若い子達の夢で作っていくのが良いでしょう。生憎と、あたしの場合は、かっこいい結婚式を挙げたとかいう事がなかったから‥‥」
 遠い目をして苦笑を浮かべる八重子。彼女にはその外見からは想像に難いが、子役として芸能界でも存在感を表し始めている娘がいる。これは八重子の経験談でもあった。
「華やかに、そして視聴者に夢を見せられるような、かっこいい物を作っていきましょう!」
「「「「「「「はい!」」」」」」」
 八重子が発破を掛けると、蓮華、菜種、沙耶香、鈴生、ラリー、そして郁と紗綾は元気良く応えるのだった。

「先ずは30秒版のBGMの制作ね‥‥これを基本にしたいし」
 菜種は自分で実際に見てきたフォルトゥナ・ヒルの全景と、郁と紗綾の撮影風景を頭に思い描き、そこから聞こえてくる旋律を譜面へ筆を走らせる。
「テンポは少々速めに‥‥せっかく30秒あるんだから、3部構成が良いわ。最初はギターのみ、次にメインのギターにサブのギターが絡んでくるの。うんうん、この辺は音楽漫談みたいにちょっとした掛け合いっぽく聞こえるといいわね‥‥あ、音楽漫談は余計か」
 ちょっとミス。
「最後はメインとサブ、両方のギターがユニゾンになるのよ。そう、結婚式のように。最初1人だったのが、パートナーと出会って絡んでゆき、そして一緒に音を奏でるようになる‥‥って感じ?」
 疑問系になってしまうのは、実際に上がってきた絵に音を合わせなければ分からないからだ。
 郁と紗綾の30秒版の撮影が終わり、マスターテープが菜種へ届けられる。
 彼女は八重子に頼んで収録場所を貸し切りにし、獣化してメインギターの演奏を録音してゆく。サブギターは敢えて半獣化に留め、ギターの音を重ねる作業を続けた。
 録音が終わる頃には、次のラリーと沙耶香の15秒版の撮影も終わっていた。
「30秒版の3部目のメロディを、テンポを落として15秒にすればいいわね。3本作られるから、ギターの他にウクレレやパイプオルガンの音色も使いたいわ。ラリーさんと沙耶香さんのはウクレレの、小気味よく乗りのいいメロディがいいかしら?」
 演奏に余念のない菜種だった。

「裏方の腕、存分に揮わせてもうぞ」
 菜種から上がってきたBGMと絵を合成し、ノイズを除去する等、画像を処理・編成するのは蓮華の仕事だ。
「にわか雨のお陰で虹が出たが‥‥これでは薄くていかん。もう少し濃く調整して‥‥」
 彼女は一時もミント味のガムを離さず、噛み続けながら嬉々として編集作業に臨んでいた。
 また、メインカメラワークも彼女の仕事だ。
「むぅ‥‥似合うと言われたが、あたしに着る機会はあるのだろうか? ‥‥いや、今は考えまい。似合うと言ってくれたのだから、それを素直に受け取ろう‥‥だが、あたしは綺麗なんだ‥‥」
 最後は蓮華や菜種も交えて、新婦役の女性が勢揃いするCMだった。出演者それぞれの衣装に合った披露宴会場で撮影し、一回転する画も撮る。蓮華は新婦が一回転するたびに、場所と人物が入れ替わるように画像を編集するのだが‥‥撮影時に八重子に「とっても綺麗よ、似合ってるわ」と言われた、蒼を基調とした着物風の花嫁衣装を身に纏った自分の姿ばかり再生して目で追っており、最後のCMの編集作業は最終日の午前様となってしまった。
 ――醜いアヒルと思っていた女性は、実は白鳥だったのかも知れない。
「柄でもない事をしてしまって不覚を取ったが‥‥出来は満足だ。裏方魂、此処に在りだな」
 出来上がった4本のマスターテープを持って撮影場所へ向かう蓮華の顔には、清々しい笑みと目の下に凄い隈とが浮かんでいた。


●クランクアップ
〜恋人達のファンタジア〜
 チャペルの入口から、タキシード姿の新婦(=郁)がオーガンジーを重ねたツーピースのプリンセスラインのウェディングドレスに身を包んだ花嫁(=紗綾)の手を取り、ステンドグラスの光に彩られた祭壇の前へ歩いてゆく。
 誓いの言葉と指輪の交換を済ませ、新郎はロングヴェールを上げる。そこには緊張した面持ちの新婦が。
 「大丈夫ですよ」とそっと囁き、その囁きと同じくらいそっと優しい口づけ。

 場面は変わり、さあ、これから丘でのブーケトスというところで、突然の通り雨。
 新婦は花嫁をお姫様抱っこして、足早に近くの樹の下へ雨宿り。
 自分の格好に最初は戸惑っていた新婦も思わず吹き出す。釣られて微笑む新郎。
 見つめ合っていた視線を新婦が先に閉じると、新郎はそのまま唇を重ね合わせる。
 唇が離れた時、どちらともなく深い幸福感に包まれた明るい笑顔が零れる。
 すると、雲間から陽の光が教会と丘を包む。それは木漏れ日となって2人を祝福するかのように降り注ぐ。
 再び集まる人々へ向けて、幸せが次に訪れるように、笑顔でブーケトスする新婦。その背景には虹の橋が架かり、雨の雫で煌く緑と始まりよりずっと澄んだ青空が広がる。
「「あなたの元へも届きましたか、フォルトゥナ・ヒルの光。幸運の女神が導く丘へ、最愛の人と、共に」」

〜恋人達のセレナーデ〜
 そこは暗く落ち着いた雰囲気のバーカウンター。座っているのは新郎新婦の身内と親しい友人達のみ。小さな小さな結婚式。
 花嫁(=沙耶香)はラフな感じの白のワンピースとバラのブーケ。
 新郎(=ラリー)はイタリアブランドの黒スーツに白いワイシャツ、濃紺の棒タイと、着飾らずにシンプルに。しかし、その胸には新婦のブーケと同じ花のコサージュを彩る。

 年上の新郎はワインの入ったグラス、年下の新婦はシャンパンの入ったグラス。
 自然に視線が合い、慈しむような柔らかい微笑みを浮かて、グラスを重ね合わせる。
 チンッ、と小気味良いガラスの音だけが響く。
 新郎の友達が「こんな若い娘捕まえて犯罪者め」と冷やかし、新婦の母が「娘をよろしくお願いします」と感涙を浮かべる。
 和気藹々とした温かい雰囲気の中心にいる新郎と新婦は、改めて顔を見合わせ、満面の笑みを浮かべた。
「「あなたの元へも届きましたか、フォルトゥナ・ヒルの光。幸運の女神が導く丘へ、最愛の人と、共に」」

〜新婦へ捧げるトッカータ〜
 畳敷きの居間。そこに置かれたテーブルには、図書館から借りてきたり、購入した、神前結婚式関係の本が山積み。
 ページを捲っては読み、読んでは立ち上がって歩き方や起立・礼・拍手をしたり、家の茶碗を使って三々九度の練習をする女性(=鈴生)。

 場面は結婚式当日へ変わる。
 神殿を前に臨み、白無垢姿の女性の顔がアップで映し出される。目の前には三三九度の杯が。
「びしっと決めなくちゃ!」
 女性は言葉少なに自分を叱咤すると、杯を両手で持ち、飲み干す。
 杯を置いてカメラの方を向き、一言。
「あなたの元へも届きましたか、フォルトゥナ・ヒルの光。幸運の女神が導く丘へ、最愛の人と、共に」

〜花嫁達のカノン〜
 純白のマーメイドドレスを着て、零れるようなブーケを持つ鈴生。その背景はロマンティックな中世の貴族達の会食場。
 胸元にキンモクセイの花をあしらったアクセサリを飾る、肩の開いたちょっぴり大胆なチャイナ風のウェディングドレスに身を包む沙耶香。バーカウンターやステージを有したスタイリッシュな会場を背負うとより映える。
 蒼を基調とした着物風の花嫁衣装を纏う蓮華。貴族の別荘を思わせるシックな落ち着いた会場とマッチしている。
 白無垢姿の菜種には、畳敷きの座敷や和式の会場がよく似合う。
 落ち着いた碧色のホルターネックのカクテルドレスを着る紗綾。くるりと回ると大胆に空いた背中が見える。その後ろには小高い丘の上に建つ小さなチャペルが。
「「「「「あなたの元へも届きましたか、フォルトゥナ・ヒルの光。幸運の女神が導く丘へ、最愛の人と、共に」」」」」