ヤツが来る!?ヨーロッパ

種類 ショート
担当 菊池五郎
芸能 1Lv以上
獣人 4Lv以上
難度 やや難
報酬 13.8万円
参加人数 8人
サポート 1人
期間 08/13〜08/17

●本文

「あの噂、本当ですの?」
「本当らしいわ」
 イギリスの首都ロンドン、その閑静な郊外の一角にパブ『Gomory』がある。
 パブとは「パブリック・ハウス」の略で、イギリス国内に数万軒あるといわれている。老若男女問わずイギリスの庶民にとって、自分の家の次に馴染み深い憩いの場所だ。
 『Gomory』のこぢんまりとした店内は、まだ昼過ぎだというのに女性マスターとリュシアン・リティウム(fz0025)の姿しかなかった。それもそのはず、入口には『CLOSES』の看板が下がっている。
 この時は決まって、ナイトウォーカーやオーパーツなど、人間に聞かせる事の出来ない内容を話している。
 リュシアンはイギリスを中心に活動している、ロックのヴォーカルから俳優、最近ではアニメの吹き替え声優までこなすマルチタレントだ。『Gomory』の女性マスターも獣人で、イギリスのナイトウォーカーの動向やオーパーツに関する情報を集めている、獣人達の情報屋という裏の顔を持っている。
「だとしたら、少々‥‥いえ、かなり厄介なナイトウォーカーですわね」
「そうね‥‥でも、人間に憑依する前に見付けて倒さないと、一般人から犠牲者が出てしまうわ」
 リュシアンと女性マスターは揃って深い溜息を付いた。
 仕事柄テレビ局に足を運ぶ事の多いリュシアンは、最近、『大英博物館近くのテムズ川沿いにある倉庫で巨大な“ゴの付くアレ”が目撃されている』という情報を小耳に挟み、女性マスターへ真偽を確かめに来たのだ。
 ゴの付くアレとは、食事中の方がいる事を考慮して敢えて名前は書かないが、台所などに現れる、黒光りする“ゴの付く虫”である。正式名称は“C”になるが、ここは敢えて馴染み深い“ゴの付くアレ”で呼ばせてもらう。
 ヤツらは小さい割に生命力がずば抜けており、高速で移動して目視しづらい上に飛行能力も兼ね備え、更にその姿を見て気絶する者もいる事から、その身体自体が精神攻撃に匹敵すると言われている。
 しかも『1匹見たら30匹はいると思え』という格言があるように、1匹退治しても次から次へとエンカウントする事が多い、極めて始末におえない虫だ。
 そのゴの付くアレが倉庫で目撃されたのだが、イギリスとはいえ、小さいながらゴの付くアレがいない訳ではない。単にゴの付くアレが目撃されただけなら、特段、噂にはならないだろう。しかし、目撃されたのが全長50cmからあろうか、巨大なゴの付くアレだというから噂になっているのだ。
 『異常気象で突然変異した』という説が囁かれているが、おそらくナイトウォーカーが憑依した為だろうと女性マスターは踏んでいる。
 下手をすれば、興味本位で見に行った野次馬に憑依してしまう可能性もある。最悪の事態が起こる前に、まだゴの付くアレに憑依している間に倒す必要があった。
 しかも、ゴの付くアレの目撃情報は複数ある事から、1匹だけという事はないはずだ。
「‥‥問題は、わたくしが行けない事ですわね」
 だが、リュシアンはウィンチェスターでオーパーツの調査を抱えていた。彼女はウィンチェスター大聖堂でダークサイド獣人――しかもトップクラスの――と一戦交えており、ダークサイド獣人もオーパーツを狙っている事が分かっている。特にアーサー王伝説関連のオーパーツは強力なものが多いので、1つたりとも渡す事は出来ないのだ。
「分かったわ、こっちは私が何とかするから、あなたはウィンチェスターの方をお願いね」
 かくして、女性マスターを通じてWEAへゴの付くアレ、もといナイトウォーカーの退治が依頼された。

 倉庫には今日も今日とて、巨大なゴの付くアレを話の種に一目見ようと野次馬の姿があった。
 WEAによって報道規制が布かれ、巨大なゴの付くアレに関する報道は一切されていないが、人の口に戸は立てられないと言うように、口コミの噂までは止める事は出来ない。
「えへへ〜、な〜んか面白い事が起こってるみたいだねぇ」
 野次馬の中には子供も多い。その中に、ふわふわっとした綿菓子のようなブロンドヘアにヘットドレスをちょこんと付け、ピンクと白のフリフリのワンピースを着た少女の姿があった。
 彼女の名はメーフィル(fz0041)。どうやら噂を聞き付けて、物見遊山よろしく倉庫へやってきたようだ。

 ※※成長傾向※※
 体力・格闘・軽業・射撃・芝居

●今回の参加者

 fa0280 森村・葵(17歳・♀・竜)
 fa0542 森澤泉美(7歳・♂・ハムスター)
 fa0768 鹿堂 威(18歳・♂・鴉)
 fa1690 日向 美羽(24歳・♀・牛)
 fa1890 泉 彩佳(15歳・♀・竜)
 fa2073 MICHAEL(21歳・♀・猫)
 fa2830 七枷・伏姫(18歳・♀・狼)
 fa3126 早切 氷(25歳・♂・虎)

●リプレイ本文


●恐るべし、オバサン殺しスマイル
「リュシアン殿はいないでござるか?」
 ゴの付くアレ退治の準備にパブ『Gomory』を訪れた七枷・伏姫(fa2830)は、女性マスターの返答に残念がる。リュシアン・リティウム(fz0025)はオーパーツの調査で『円卓』があるウィンチェスターと、女優の仕事でロケが行われているワイト島を往復する毎日だという。
「リュシアンさんはイギリスでも指折りのマルチタレントだものね〜」
 伏姫の持つ日本刀は、以前、ダークサイド獣人に砕かれ、リュシアンからもらった品だ。本人に直接お礼を言いたかったのと、回収したアーサー王伝説関連のオーパーツ――ガラハッド卿の剣とロンギヌスの槍――の調査の進展具合を聞きたかったが、リュシアンと面識のあるMICHAEL(fa2073)が言うように今回は諦めるしかないようだ。
「倉庫の持ち主に立ち入り許可は得ているんだな?」
 女性マスターに確認を取る鹿堂 威(fa0768)。既に女性マスターを通じてWEAから倉庫の所有者へ、ゴの付くアレ退治に関する連絡は行っているとの事。
「ま、俺達に退治を押し付けたんだから、そのくらい手際がよくないとな」
「仕事の出来る女性って素敵ですよ。ありがとうございます〜、大切に着ますね〜」
 早切 氷(fa3126)は、女性マスターから橙の耐火服を受け取り、ほわんと満面の笑みを浮かべる森澤泉美(fa0542)を見ながら、灰色の髪を面倒くさそうに掻く。この橙の耐火服は今回のゴの付くアレ退治には欠かせない品なので、バックドラフトを持っていない人数分用意してもらった。もっとも、耐火服とは名前と形状だけで、バックドラフトと違い、耐火・防護性はまったく期待できないが。
 女性マスターは泉美の笑顔に応えて笑い、カウンターで売っているお手製のクッキーを一袋、おやつとして渡した。泉美の“オバサン殺しスマイル”に抗える女性がいるだろうか!?


●Gバスターズ!?
 今日も今日とて、『全長60cmのゴの付くアレ』を一目見ようと、野次馬が倉庫の周りをたむろしている。その野次馬の合間を縫って、スポーツワゴンが倉庫の入口へ横付けされた。
「先ず人払いしないといけませんね。この程度の人数なら、これで十分です。彩佳さん、葵さん、このロープを倉庫の周りにくるっと巻いてきて下さい」
 日向 美羽(fa1690)は車内から眼鏡越しに野次馬の数をざっと見ると、泉 彩佳(fa1890)と森村・葵(fa0280)に幅広の黄色いビニールロープを渡す。
 バックドラフトと耐火服に身を包んだ完全防備の彩佳と葵が車から降りると、野次馬の間にどよめきが走る。
「私達は害虫駆除の業者です。これよりこの倉庫の害虫駆除を行います」
「強力な薬品を使うので離れて下さい」
 2人は害虫駆除の専門家よろしく、美羽が用意した『害虫駆除中につき立ち入り禁止』と一定間隔で書かれたビニールロープを倉庫の周囲に張り巡らせてゆく。
「イギリスは今の時期は過しやすくて助かりました」
 バックドラフトは耐火性を高める為、服の中が密閉されてしまう。イギリスは今の時期でも最高気温が20℃を越える事はあまりなく、バックドラフトを快適に着られるのだ。
「ほらほら、散らないと、ゴの付くアレが顔面にクリティカルヒットしても知らないわよ」
 妖しい笑みを浮かべながら、さり気なく脅しを掛けて、野次馬を追っ払うMICHAEL。
「イズミ君達、お仕事で来てるですよ〜。あんまり前に出てこないで下さい〜? 駆除の邪魔になっちゃうので」
 しかし、見るなと言われると見たくなるのが人の性。ビニールテープの中へ入り込もうとする野次馬には、防火服の中で半獣化した泉美が和気穏笑を纏いながら困った目で見上げると、流石にそれ以上入り込む野次馬はいなかった。
「あれは‥‥メーフィルサン!?」
 ビニールロープを張っていた葵は、野次馬の中にメーフィル(fz0041)を見付けた。アイドル歌手の彼女は、ロックのヴォーカルとしてイギリスで頭角を現しているメーフィルの顔を覚えていた。
「メーフィルサンにも手伝って欲しいですネ」
「楽しそうだしぃ、いいよぉ」
 葵が自己紹介と目的を簡単に話すと、メーフィルは2つ返事でOKした。
「メープルちゃんには何をしてもらうかね‥‥子供達の相手をしてもらってようか?」
「メープルぢゃないよぉ、メーフィルちゃん! レディの名前を間違えるなんてぇ、男失格だよぉ!」
「悪ィ悪ィ。レディっつーと、胸が大きくてスタイル抜群の、MICHAEL君や美羽君のような大人の女性を指すと思うんだがな」
 メーフィルに『男失格』の烙印を捺され、肩を竦める氷。彼のフォローとメーフィルのご機嫌取りを兼ねて、伏姫が自己紹介をし、親睦を深める。
「メーフィルちゃんって、ゴの付くアレを見た事ある? 実はあたし、見た事ないのよね〜」
「それは羨ましいですネ! 3体の黒いG‥‥正に最恐の敵と言って差し支え無いですネ。私はアレは苦手というか普通に超嫌いですケド‥‥やってやるですネ!」
「ゴの付くアレですか‥‥私は特別苦手という訳じゃないですけど、やっぱりちょっと気味悪いですよねぇ」
 ゴの付くアレを見た事がないと、あっけらかんと言うMICHAELを葵は羨ましそうに見つめる。美羽もそうだが、ゴの付くアレを生理的に受け付けない女性は多い。
「アジアを出ちゃうと、ゴ○ブリも昆虫みたいな外見になっちゃって、怖さも増しますよね。(踏んじゃえばすぐお亡くなりになりますけどね)」
「ふ、台所を預かる主夫にとって、ヤツらは永遠の敵! 獣人とNWが相容れぬように、我ら台所戦士とヤツらも相容れられぬ存在だ!」
 女性陣に同調して怖がる素振りを見せる泉美に、威がゴの付くアレとの武勇伝を語る。
「しっかし、こんだけナイトウォーカー騒ぎが立て続けだとヤな想像しちまうね〜」
「拙者も、最近のヨーロッパでの騒動や、ナイトウォーカーが出た場所が大英博物館の近くという事を考えると、今回の件も裏でダークサイド獣人が動いていて、陽動ではないかと踏んでいるでござる」
「ま、リシュアン君なら抜け目なさそうだし、大丈夫かもしれないけど、一応気に掛けておくかね」
「リュシアンさん、だよ。氷さん、女性の名前を間違える男性は嫌われるよ」
 氷と伏姫は、今回の騒動が作為的だと踏んでいた。
 ビニールロープを張り終えた後、美羽と一緒に出入り口や窓の目張りをし、ラッカー系のカラースプレーの準備を終えた彩佳が全員を呼びに来る。その際、氷に笑顔で指摘するのも忘れない。


●戦慄のデッドストリームアタック!!
「見取り図を見た限りでは、討ち漏らしても下水から逃げられる心配はないですね。目張りもしたので、出入り口もここ1つだけです」
「監視カメラは?」
「主電源を落としてあります」
 ADの美羽は、こういう時の気配りはお手のもの。威の頼まれ事もきっちり終わらせている。
 この倉庫は穀物庫なので、普通のゴの付くアレが生息するには良い環境といえる。しかし、ナイトウォーカーなら巨体が災いして、隠れる場所は少ないはずだ。
 そう踏んだ葵は、ガクガクと身体を震わせながらも、森村家に代々伝わるゴの付くアレとの決戦装束――ゴム手袋とハリセン――を装備し、氷と2人で囮になる。ちなみに、葵が用意したハリセンでは心許ないと、女性マスターが実用的なハリセンを用意していた。
「Gの前に殺虫剤なんてタダの飾りですネ。偉い人にはそれが分かっとらんのですネ」
 不意に葵の身体の震えが収まり、逆に緊張が走る。ゴの付くアレ嫌いだけが感じ取れる、あの独特のプレッシャーが身体の中を駆け抜けたのだ。
『デッドストリームアタックを仕掛けなさい!』
「この声‥‥リュシアンさん!?」
「!?」
 次の瞬間、MICHAELの聞き覚えのある声が聞こえた。リュシアンの声だ。振り返った葵が息を呑む。全長60cmはあろうか、巨大なゴの付くアレが3匹、縦に編隊を組んで彼女目掛けて突っ込んできた。
「リュシアンさんは、ロンドンにはいないはずじゃぁ‥‥」
「ダークサイド獣人でござる! このナイトウォーカー達はダークサイド獣人が操っているのでござる!!」
「普通はナイトウォーカーは連携してこないはずだからおかしいと思ったけど‥‥」
 リュシアンは今、ウィンチェスターかワイト島にいるはず。信じられないといった表情の威に、心当たりのある伏姫が告げると、彩佳は納得する。倉庫内に気配は感じられないが、ダークサイド獣人が近くにいるようだ。野次馬に紛れているかもしれない。
「‥‥ま、ナイトウォーカーならコアっつー弱点が出来たと前向きに考えられるが、まじまじと見てて気持ち良いもんじゃねえよなぁ」
 今は目の前にナイトウォーカーを倒す方が先決、と、美羽達の方へ逃走する葵だが、ゴの付くアレの方が3倍速い! 追いつかれそうになりハリセンで迎撃するが、先頭のゴの付くアレはかわす。空かさず氷が2匹目のゴの付くアレと葵の間に割って入り、クローナックルで受ける。
「俺の頭を踏み台にした!?」
『葵さん、後ろ後ろ〜!』
 彩佳の知友心話が聞こえる。2匹目はフェイントで、本命の3匹目が氷の頭を飛び越え、葵の背後から迫る!
「攻撃は最大の防御デス。私の頭には二本の長い角があるですネ!」
 葵が2本の角から繰り出す必殺の頭突きで弾き飛ばす。
 3匹目が体勢を崩したところへ威が威嚇射撃をして残る2匹の隊列を乱し、氷と彩佳、美羽がそれぞれ赤青黄のカラースプレーをゴの付くアレに吹きかけた。
「ここまで大きくて色が違うと、逆に黒い忍者に見えないかもね☆ 今よりそれぞれ、『ガイラ』『マーシュ』『オルタガ』と呼ぶよ。ナイトウォーカーを瀕死まで弱らせると逃走する危険性があるから、コアを見つけて短期決戦だよ!」
「や、やじうまさんたちに手は出させませんよ!」
 彩佳がそう呼称して指示を出すと、泉美が怖さを押し殺すかのようにライトダガーの光の刃を展開させる。

「ま、もう汚れてるけど、コレならこれ以上汚れる心配ないしねぇ」
 ガイラにライトバスターを振るう氷。
「こっち来ないでくださぁいっ!!」
 泉美の方へ行くと、彼は慌てふためく。しかし、ライトフレーム越しにしっかり動きは見えているようで、軽やかな身のこなしで身体に掠らせもしない。
 氷と泉美の攻撃でコアが露わになる。
 その間、2人より後ろに下がり、ガイラから距離を取っていた伏姫は、上半身を捻り突きの構えを取る。そして俊敏脚足を発動させて全速力で一気に間合い詰め、間合いに入ると同時に身体の捻りにより得られる回転力と強化された脚力による突進力を乗せた渾身の突きをコアへ放つ。更に突きを放つ際にコークスクリューブローの応用で手首の捻りを加えて威力増加を試みるが、これは身体に余計な負荷が掛かって失敗。氷と泉美がきっちり伏姫のフォローに入ってガイラのコアを破壊した。

 ナイトウォーカー化する前の、ゴの付くアレの元々の性質を鑑みて、マーシュが飛んだところへ仕込み日傘を広げてぶつけ、叩き落とす。
(「ここで『妖精の悪戯』を決めれば倒せる自信はある‥‥自信はあるけど、蹴りはともかくDDTは抵抗あるよ」)
 彩佳の決め技『スイングDDT』は、ゴの付くアレにも効果はあるだろう‥‥普通のゴの付くアレならひっくり返るとしばらく起き上がれないが、やはりナイトウォーカーは違う。先程も塗料が体を覆う事で呼吸を阻害させ、動きを鈍らせる効果が無かったのと同じく、関節が逆方向に曲がり、腹を上にしたままMICHAELへ襲いかかってきた!
「やっぱりちょっと、気持ち悪いですよねぇ〜〜」
「イヤ、何これ‥‥来ないで! 来ないでよ〜、イヤイヤァァァァァァァァァァ!!」
 美羽の隣でMICHAELの断末魔の叫びが轟く! そのグロテスクな動きは、実際の怖さ・気持ち悪さを知らない彼女のリミッターを振り切るには十分すぎた。
 彼女は降魔の木刀をひっちゃかめっちゃかにマーシュの腹に叩き付ける。
「ハンマーで叩き潰しちゃえば、問題ないですっっ!!!」
 飛び上がろうとするマーシュの羽根を、鋭い目つきになった美羽が土竜の槌で的確に叩き潰す。ナイトウォーカーが絡むと美羽は頼もしくなるが、MICHAELを落ち着かせようという美羽の声も、暴走中の彼女には届かない。
「MICHAELさん、MICHAELさん、落ち着いて!」
「はぁはぁ、はぁはぁ‥‥あれ? ‥‥あたし‥‥」
 彩佳が羽交い締めにして、ようやくMICHAELの暴走が収まる。
 目の前にはマーシュだった残骸が無惨な姿を晒していた。どこが体でどこがコアか識別不能なくらいに。

 屋根付近に滞空するオルタガへ、威が支援射撃をして下へ引きずり下ろす。葵目掛けて飛来すると、彼女はハリセンを振り下ろし、威は今度は虚闇撃弾を全弾叩き込む。
「コアが見えた!」
「今デス、メーフィルサン! コア目掛けて一突きして下さいネ!」
 威と葵の言葉に愉しそうな笑顔で返し、メーフィルは二股に分かれた穂先から柄の途中まで奇妙に捻れた槍でコアを貫く。そのままコアを粉砕してしまった。
「メーフィル、案外と強いんだな。(今までゴの付くアレに集中してて気付かなかったが、あの槍はオーパーツか‥‥?)」
 その威力に冷や汗を拭う威だった。

「隅々まで洗いっこして、ゴの付くアレのヨゴレを落とすですネ!」
 簡単な後処理を終え、後はWEAに任せた美羽達は、葵の提案で一路『Gomory』へ。風呂を借り、女性陣は一緒に入って隅々まで洗いっこをした。泉美も一緒に洗ってもらったとか‥‥。