Metalslinger Girlヨーロッパ

種類 ショート
担当 菊池五郎
芸能 4Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 16.5万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 09/26〜09/30

●本文

■プロローグ
 全地球規模のプロジェクト、火星のテラフォーミング(=惑星の地球化改造)は成功し、火星は人類の住まう第2の惑星となった。各国は大挙して入植者を送り、それはさながらアメリカの西部開拓時代を彷彿させた。
 入植は北方系、東方系、極東系の3つの陣営に分かれて順調に進められていたが、火星はテラフォーミングの際、極冠部の永久凍土が融解して地表の大半が海と化した為、実用に足る土地はアフリカ大陸程度しかなかった。
 そうなれば各陣営はより広大な入植地を手に入れようと開拓を押し進め、結果、入植地を巡る紛争が頻繁に起こるようになった。

 火星開拓世紀(=F.C.=Frontier Century)23年。入植が開始されてから23年が経った今も、火星は各陣営の入植者達による紛争の渦中にあった。

 各陣営は、『Flamberge(フランベルジェ)』と呼ばれる人型兵器を競って配備し、紛争へ投入した。
 入植が始まったばかりの火星は不整地が多く、車両での踏破が不可能な地形の作業用に開発されたのが、二足歩行型開拓機『Zwihander(ツヴァイハンダー)』である。
 FlambergeはZwihanderを戦闘用に特化させた兵器だ。Zwihanderが1人乗りなのに対し、Flambergeはメインパイロットとサブパイロット兼オペレーターの2人乗りだ。入植者達の開拓する各地域へ配備される数は陣営にもよるが、極東系は「軍備を持たない」という建前から、陣営で傭兵と専属契約を結び、安全を確保してもらっていた。

 極東系の入植者の中でも日本の出身者が多く集まる地域は、グランド・トキオと名付けられている。
 整地して日本の風景を創り出している事もあるが、元々あった湖などが琵琶湖や諏訪湖といった、本土にある湖と似ていた為、日本人はわざわざここに入植したともいわれている。

 それは、湖の近くのコミュニティに駐在している傭兵達の前に突然現れた。彼らは戦いのプロであり、警戒を怠る事などまずないだろう。しかし、それはレーダーには一切引っ掛からず、傭兵達の前に姿を現したのだ。
 ――パールピンクのFlamberge。
『た、助けて! 追われているの!!』
 しかも、Flambergeから聞こえてきたのは少女の助けを求める声だった。
 その直後に、レーダーが数機のFlambergeを見付ける。追われているのは間違いなさそうだ。
 だが、パールピンクのFlambergeは妙に丸みを帯びており、女性を彷彿させるフォルムで、誰も見た事がなかった。助けを求めている事から、敵ではないようだが。
『わたしはスー、Alice・quartetのメンバーの1人よ』
 しかも自己紹介を始めるが、その部隊名には聞き覚えがあった。“Alice・quartet”は女性だけの傭兵小隊の名前で、傭兵達のアイドル的存在だった。
 だった、というのは数ヶ月前に全滅してしまったからだ。実際、Alice・quartetの消息は掴めていなかった。
 その1人、スーが目の前のFlambergeの中にいるというのだが‥‥。

 どうやら真相を聞き出すには、まずスーを追ってきたFlambergeを倒さなければならないようだ。


■各陣営
・北方系:ヨーロッパを中心とした入植集団。東方系と対立し、極東系とは中立。
・東方系:ロシアを中心とした入植集団。北方系・極東系と対立。
・極東系:アジアを中心とした入植集団。北方系・東方系共に中立。
※各陣営は入植地に『コミュニティ』と呼ばれる街を作り、開拓を進めている。


■入植した人々
・傭兵:個人でFlamberge、ないし戦闘用に改造したZwihanderを所有し、小隊が配属されないような入植地を有償で警備する。また、腕の立つ傭兵は自分を各陣営に売り込み、小隊へ編成されている事もある。傭兵は対立・中立関係なく、どの陣営にもいる。
・入植者:基本的に民間人。入植の為に地球から来て間もない者もいれば、入植が始まって23年が経っており、火星生まれ・育ちの2世代目も登場している。14歳以上であればZwihanderの基本的な操縦技術は学校で習うので、希にいきなりFlambergeに乗って敵Flambergeを撃墜してしまう逸材が現れる事もある。
・Flamberge乗り:基本的に軍人。各陣営よりFlambergeを与えられて小隊へ編成され、各入植地の警備に当たる。他の陣営の者が混ざる事は少ないが、中立の陣営であれば協力していてもおかしくない。


■Flamberge
・unknown:東方系の軍が極秘に開発していたらしいFlamberge。基本性能は指揮官機を凌駕する。「スー」という名の少女型人工知能を搭載しており、自立稼動が可能らしいが‥‥。
 火力:A(S?) 白兵:A 防御力:B 機動性:A 索敵能力:B 損壊率:D
 武装:荷電粒子砲?、サブマシンガン、ツインレーザーソード(兼シールド)、ステルス?

・アメノムラクモ:指揮官機。基本性能と汎用性は高いが、その分コストも掛かる為、原則1小隊に1機しか配備さない(最前線から遠い小隊は配備されない事もある)。
 火力:B 白兵:B 防御力:B 機動性:C 索敵能力:C 損壊率:A
 武装:レーザーランチャー、レーザーソード、シールド

・ヒノカグツチ:支援機。中距離〜遠距離火力支援を主任務として開発され、射程距離と火力は抜群。その分、白兵戦能力や機動性を犠牲にしている。
 火力:A 白兵:E 防御力:C 機動性:D 索敵能力:E 損壊率:D
 武装:ロングレンジレーザーキャノン×2、9連装ミサイルランチャー、連装バズーカ

・クサナギ:白兵機。白兵戦に特化した装備になっており、射撃武器はほとんど装備していない。
 火力:D 白兵:A 防御力:B 機動性:C 索敵能力:D 損壊率:C
 武装:レーザーナイフ、レーザーソード、レーザーグレイブ、シールド、グレネード

・ムラマサ:隠密機。ステルス機能を搭載した機体で、破壊工作や潜入任務を行なう。ステルス機能を実現する為に防御力を犠牲にしている。
 火力:D 白兵:D 防御力:E 機動性:A 索敵能力:B 損壊率:B
 武装:ガトリングガン、レーザーナイフ、スモークディスチャージャー

・フツノミタマ:偵察機。高出力センサーや通信指揮システムを搭載し、索敵を行う機体。偵察機なので戦闘力はかなり低い。
 火力:D 白兵:E 防御力:D 機動性:B 索敵能力:A 損壊率:B
 武装:マシンガン、レーザーナイフ、ECM
※この他、Flambergeを3機運搬できるホバー指揮車両『アメノヌボコ』がある。
※これらのFlambergeの名前は極東系のものであり、北方系・東方系では呼び方が変わる。


■成長傾向
 芝居・発声

●今回の参加者

 fa1718 緑川メグミ(24歳・♀・小鳥)
 fa2431 高白百合(17歳・♀・鷹)
 fa2903 鬼道 幻妖斎(28歳・♂・亀)
 fa3255 御子神沙耶(16歳・♀・鴉)
 fa3623 蒼流 凪(19歳・♀・蝙蝠)
 fa3928 大空 小次郎(18歳・♂・犬)
 fa3938 月影 飛翔(20歳・♂・鴉)
 fa4548 銀城さらら(19歳・♀・豹)

●リプレイ本文


●Girl meet Team
 第弐琵琶湖と名付けられたその湖を初めて見た極東系の入植者達は、一様に驚くという。その名の通り、地球の日本にある琵琶湖一帯の風景そのままだからだ。しかも、まだテラフォーミングが終わったばかりで、第弐琵琶湖の水は澄み渡っており、泳ぐ事も可能だという。
 整地して日本の風景を創り出している事もあるが、地球では失われてしまった本来の自然の姿が、火星へ受け継がれている。
 また、第弐琵琶湖周辺は極東系入植者達の台所ともいわれている。第弐琵琶湖の水を利用した食料プラントが次々と建造され、米や日本野菜といった極東系ならではの食料品が極東系の各コミュニティへ出荷されている。
 これを隣接する東方系の陣営が見逃すはずがない。東方系の陣営は開拓を理由に、度々第弐琵琶湖近辺まで軍を派遣し、強引に入植を行った。これには極東系の陣営も黙ってはおらず、傭兵達と専属契約を結び、防備の強化を図った。

 このFlamberge小隊も、極東系の陣営に直接雇われた傭兵達だ。
『こちらクサナギ、今のところ異常はない』
『こちらアメノムラクモ、こちらも異常ありません』
 クサナギのパイロット、カズマ・ミカゲとアメノムラクモのオペレーター、ゴロー・ヤマダから巡回の定期連絡が入ってくる。
『こちらアメノヌボコ、了解した。まぁ、今のところ奴さん達はいねぇようだし、適当にな、テキトーに』
『なぁに、また飲んでいるの?』
 コミュニティの前に停車している、カズマ達のベースキャンプを兼ねているホバー指揮車両アメノヌボコのパイロット、キム・サンウの返信に、アメノムラクモのパイロット、ナオミ・サトーの非難の声が聞こえる。没落した財閥の令嬢である彼女は、傭兵になった今もどこか潔癖性で、おそらく顔をしかめている事だろう。それを仕える執事のゴローが必至になだめているに違いない。
『鉄砲玉が怖くて酒が飲めるかってんだ!』
「‥‥まぁまぁ」
「事実です」
 そこへフツノミタマのパイロット、ユリが控えめに仲裁に入るが、オペレーターのサーヤが畳み掛けてしまう。キムは操縦技術は高いものの、常にバーボン片手に操縦している事から、“酔いどれ”と渾名されている。
「サーヤ‥‥確かにそうだけど‥‥。もう一回りしたら帰ろうか。コミュの人にもらった新鮮なミルクがあるから、温めて飲も」
 その場の状況の事実のみを淡々と伝えるサーヤに、ユリは溜息を1つ。とはいえ、彼女の冷静さはフツノミタマのオペレーターとしては必要不可欠で、なんだかんだいって良いコンビなのだ。
 林が乱立する有視界上に敵機の姿はなく、張り付けられた地図やメモに半ば埋もれたレーダーに敵影は感知されていないので、ユリが機体を転進させようとしたその時!
『た、助けて!』
「警告!」
 助けを求める少女の声と同時に、林の中からパールピンクに塗られたFlambergeが姿を現した。ワンテンポ遅れてサーヤが警告を発したところを見ると、今の今までレーダーに引っ掛かっていない事になる。
『追われているの!』
「誰に?」
『分かんない!!』
「機体の該当データ無し。目前の機体を“unknown”と呼称します。警告! 前方1kmにFlamberge3機発見」
 ユリが応対に出ると、パールピンクのFlamberge――unknown――は、身振り手振りで追われている事をアピールした。妙に人間らしい仕草だ。Flambergeを人間のように操る事は不可能ではないが、する必要はないし、ここまで人間くさく操作するにはかなりの技量が必要だ。
 その直後、サーヤがレーダーで数機のFlambergeを捉える。追われているのは間違いなさそうだ。
 いきなり、9連装ミサイルランチャーがパールピンクのFlamberge目掛けて発射される。当然、ユリ達にも飛び火する。
『もう‥‥! しつこいわね!! しつこい男の子は女の子に嫌われちゃうわよ!』
「女の子って‥‥乗ってるパイロットは女の子のようね」
「敵機、所属不明機3。一方的な交戦状態にあり、救援要請の必要性を進言します」
「そうね、unknownの武装は見たところ、P90型サブマシンガンだけのようだし‥‥食料プラントに流れ弾を当てる訳にもいかないわ。でも、何考えてるのこいつら。極東系入植者にケンカを売る気なの!?」
 サーヤが救援要請を出すと、ユリはマシンガンでミサイルの迎撃に当たる。
『爺、最初から全開で行くわよ』
『皆様、先陣は私共が務めます』
 いち早く駆け付けたアメノムラクモが、フツノミタマとunknownを追い抜いて一気に最前線へ躍り出る。ロングレンジレーザーキャノンの2条のレーザーの片方をかわし、片方をシールドで受け、レーザーランチャーを確実に当ててゆく。
 少し遅れてクサナギも到着し、アメノムラクモに続く。フツノミタマは元々戦闘は得意ではないので、マシンガンでクサナギの接敵を援護する。オペレーターのアイの正確且つ的確な攻撃予測を受けてグレネードで目眩ましをするカズマ。その間、相手の死角へと回り込み、爆発しないよう機関部にレーザーナイフを突き立てて機能を停止させる。
 最前線の傭兵達は補給がままならない事もしばしば。使える部品を回収する癖が付いていた。
「機体左腕部に、流れ弾による無用な損傷、罰金を戴くわね」
 クサナギのメインスクリーンの片隅には、罰金カウンターが表示されている。不用意に機体を傷つけると、カズマのお給料がそこからさっ引かれる恐るべきカウンターだ。
「残り1機! って‥‥」
『あー、助かった。ありがと。結構強いわね。あなた達』
 カズマの目の前で、柄の両方からレーザー上の刀身が延びたツインレーザーソードをバトンのように旋回させ、Flambergeを切り裂くunknownの姿があった。しかもunknownは、クサナギに抱き付いて来るではないか。
「機体右腕部と左腕部に損傷、罰金追加」
 不可抗力とはいえ、それでも罰金カウンターは増えるのだった。


●Truth of Alice・quartet
「どういう事か、説明してもらいましょうか?」
 撃破した所属不明機をアメノヌボコまで運び、ゴローからおしぼりと戦闘後の紅茶を受け取ったナオミが、unknownに詰め寄る。撃破した所属不明機はいずれもパイロットは乗っておらず、プログラム技術に関して非凡な才能を持つナオミが調べたところ、オートパイロットになっていたからだ。
『私が知りたいくらいよ。気が付いたら基地に寝かされていて、Flambergeになっていたんだもの』
 頭(かぶり)を振り、両肩を竦めて溜息を付く仕草をするunknown。丸みを帯び、女性を彷彿させるフォルムの所為もあり、やはり人間くさい仕草だ。
「あなたのお名前は?」
『いっけなーい、私とした事が、まだ名前、言ってなかったよね。私はスー、“Alice・quartet”の1人よ』
「Alice・quartet!?」
 ゴローに言われて頭をコツンと叩き、unknownはスーと名乗った。
 所属する小隊名を聞いたユリは驚く。“Alice・quartet”は女性だけの傭兵小隊で、数ヶ月前に全滅したという噂が流れ、それ以来消息が掴めていないからだ。確かにスーという傭兵もいた。
『Alice・quartetが全滅したですって!? そんな話聞いていないわよ!? 現に私、ここにいるし‥‥って、どこ触ってるのよ、エッチ! スケベ!! 変態!!!』
「どこ触ってるって、この機体、並の機体じゃないぜ? 調べない事には分からないだろう?」
「Alice・quartetが全滅したのは事実です」
 カズマに機体を触られたスーは素っ頓狂な声を上げる。サーヤは淡々と事実を告げ、Alice・quartetの全滅の噂が掲載されたニュースのデータをスーのコンピュータへ転送した。
 スーは体育座りしてショボンとしてしまう。
「スペックが、現行のFlambergeとは桁違いだ。それにいくつか見た事の無い機構が使われてる。特にメインコンピュータから動力源は独立制御で、ほとんどブラックボックスだ。これを作った奴らは、相当なバックを持っていると見ていいな」
 カズマが調べた限りでは、unknownは現行のFlambergeの中で、最も高性能なアメノムラクモより更に高スペック且つ汎用性が高い事が分かった。しかし、その大半はブラックボックスの中。
 しかも、コックピットはがらんどうとしていて、スー本人は乗っていない。
「荷電粒子砲?」
「ブラフですかな」
 また、ナオミが引き続きプログラムを調べてゆくと、火器管制システムの中に『荷電粒子砲』なる武装がある事が判明した。それをブラフ――ハッタリ――と、やれやれという感じで切り捨てるゴロー。現行はレーザー兵器が主流であり、荷電粒子砲といったビーム兵器は大型のジェネレーターや荷電粒子エンハンサーが必要で、まだFlambergeが単体で運用できる兵器として実用化されていないからだ。
「人間は機械になれても、機械は人間になれないの‥‥」
「機械の分際で、人間様のフリしてんじゃないわよ」
『な!? ちょ!?』
「私はFlambergeになっていたっていうスーの言う事を信じるわ。今まで見てきたけど、スーって仕草とか普通の女の子なの。サーヤ、人工知能ってこんな仕草まで出来る?」
「プログラム理論的には不可能ではありません。しかし、実用化されたという話は聞いていません」
 アイやナオミ、ゴローはスーをFlambergeに搭載された人工知能としか見ていなかったが、ユリは違った。妙に人間くさい仕草は女の子のそれだし、加えてがらんどうのコックピット、サーヤの返答が彼女を後押しする。
「自律学習型のAIって可能性もあるわよ」
「スーが目覚めたっていう基地に行けば、何か分かるかもしれないわ」
「そうだな。一度、襲われているんだし、偵察に出る必要はあると思う」
 尚もナオミは突っぱねるが、ユリは大きなFlambergeの、いやスーの手に触れながら彼女を慰めるように言った。
 カズマの提案もあり、補給と仮眠を済ませると、スーの案内で基地へと向かった。

『こんな所に基地があったなんて‥‥』
 スーに案内された基地は、ナオミ達が警備するコミュニティからFlambergeの足で半日の所にあった。巧妙に地下に隠されており、キム達も気付かなかった程だ。
『凄いわね。あれって地球産の馬鹿高いジェネレーターで、こっちの施設は大学の工学系研究室並み。こちらはなまもの処理用の焼却炉‥‥ナオミさんが言っていた荷電粒子砲も、あながち嘘じゃないかも‥‥』
『ここで何の研究が行われていたか分かるか?』
『分かんない。確かにこの基地にはいたけど、逃げるのに精一杯だったから』
 スーが逃げる時に破壊したのだろう。半壊した基地の設備を見ながら、卓上計算機を叩くユリ。ただの研究施設ではない事はカズマにも見れば分かるが、スーは何も知らないという。
『さて、こういう展開だと、置き土産(自爆装置)か、お出迎え(精鋭迎撃部隊)がパターンだけど‥‥言った側から2時方向、距離1000に敵影3。前と同タイプのFlambergeね』
 フツノミタマのレーダーが敵影を捉える。
『爺、帰ったらデザートを出して頂戴』
『お嬢様、ご立派で御座います』
 レーザーソードとシールドを巧みに操り、1機撃破するアメノムラクモ。
『罰金‥‥罰金‥‥これであなたの今回の報酬の半分は罰金ね』
『あいつ、左の動きが若干鈍い? センサーに死角ありか。そこをつく!』
 無表情ながら何処となく楽しむ雰囲気のアイの辛辣な言葉を気にせず、レーザーグレイブを旋回させて、手傷を負いながらもクサナギも1機撃破する。
『SMG、残弾0!?』
『これを使って! サーヤ、スーの援護に回るわよ』
『了解しました』
 スーの持つサブマシンガンの残弾が切れると、ユリがマシンガンを放り投げ、フツノミタマはサーヤの指示でレーザーナイフを投げ付けて援護する。

 激戦の末破壊したFlambergeも、3機とも無人機だった。
 カズマは東方系の陣営が極秘に進めている無人機の開発ではないかと推測する。しかし、基地の設備と、所属不明のFlamberge、そしてスーを見る限り、Alice・quartet小隊の戦闘データを利用して、条約に抵触するような研究・開発を行っていた可能性の方が高いとユリは指摘した。
「条約といえば、荷電粒子砲と結びつく風の噂を聞いた事があるな」
 アメノヌボコへ帰還したサーヤ達へ、キムが珍しく口を挟んでくる。バーボンを煽り、一言。
「荷電粒子エンハンサーって奴だ。熱核融合炉を利用した、な」
「核融合炉!?」
 その場にいる全員が驚いた。Flambergeの動力はバッテリーだ。Flambergeにはソーラー発電が組み込まれているし、アメノヌボコにも急速充電器や予備バッテリーが積まれてある。
 だが、核融合炉が動力だとしたら、スーが高スペックなのも頷けるし、ブラックボックスが多いのも分かる。
「だとしたら、スーは破壊してはいけない、破壊されてもいけない機体なんだわ。それにあなたの事をもっと知りたいし、これからもよろしくね」
『ありがと。私ももっと自分の事を知りたい。何でFlambergeになっっちゃたのかとか、シルバ達Alice・quartetのみんなはどこへ行っちゃったのかとかね』
 もちろん、風の噂に過ぎないが、スーの機体にブラックボックスが多いのは確かだ。
 出会ったのは偶然かもしれないが、ユリはスーを護っていかなければならないと思うのだった。


●CAST
 スー
  緑川メグミ(fa1718)

 ユリ
  高白百合(fa2431)
 サーヤ
  御子神沙耶(fa3255)
 カズマ・ミカゲ
  月影 飛翔(fa3938)
 アイ
  蒼流 凪(fa3623)
 ナオミ・サトー
  銀城さらら(fa4548)
 ゴロー・ヤマダ
  大空 小次郎(fa3928)
 キム・サンウ
  鬼道 幻妖斎(fa2903)