Metalslinger Girl:2ヨーロッパ

種類 ショート
担当 菊池五郎
芸能 4Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 19.8万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 10/17〜10/21

●本文

■プロローグ
 火星開拓世紀(=F.C.=Frontier Century)23年。テラフォーミングが成功し、人類の住まう第2の惑星となった火星へ、地球より北方系、東方系、極東系の3つの陣営に分かれて入植者を送り始めて23年。
 極冠部の永久凍土が融解して地表の大半が海と化し、アフリカ大陸程度しかない実用に足る土地を巡り、各陣営はより広大な入植地を手に入れようと開拓を押し進め、火星は各陣営の入植者達による紛争の渦中にあった。

 各陣営は『Flamberge(フランベルジェ)』と呼ばれる二足歩行人型兵器を競って配備し、紛争へ投入した。
 FlambergeはZwihanderを戦闘用に特化させた兵器だ。Zwihanderが1人乗りなのに対し、Flambergeはメインパイロットとサブパイロット兼オペレーターの2人乗りだ。入植者達の開拓する各地域へ配備される数は陣営にもよるが、極東系は「軍備を持たない」という建前から、陣営で傭兵と専属契約を結び、安全を確保してもらっていた。

 極東系の入植者の中でも日本の出身者が多く集まる地域は、グランド・トキオと名付けられている。
 第弐琵琶湖の近くの極東系コミュニティに駐在していた傭兵達は、Flambergeに追われている「スー」と名乗るパールピンクに塗られたFlambergeと遭遇した。彼女を追っていたFlambergeは無人機で、スーは「目が覚めたらFlambergeになっていた」と説明した。
 しかし、スーが所属していた女性だけの傭兵小隊“Alice・quartet”は、数ヶ月前に全滅していた。しかも、傭兵達が“unknown”と名付けたスーの機体を調べたところブラックボックスが多く、中でも今の技術ではFlambergeへ搭載不可能な『荷電粒子砲』を搭載しているというデータも見付かった。
 スーの存在、そして機体のスペックを訝しげつつ、彼女が目覚めたという基地へ向かうと、おおよそFlambergeの基地とは思えない設備が整っていた。そして、所属不明の無人Flambergeにスー‥‥傭兵達は、Alice・quartet小隊の戦闘データを利用して、条約に抵触するような研究・開発を行っていたと踏み、スーを仲間として迎えると共に、Alice・quartet小隊の全滅の謎に迫る事となる。

『Alice・quartet小隊は、キャシー隊長が援護射撃を行い、あたしとロームさんが切り込み役、そして鉄壁を誇るシルバがキャシー隊長を護るというポジションだったの』
 スーは傭兵達にAlice・quartet小隊の話をする。シルバはスーと同い年の親友で、年上――まだ20代後半だが――キャシーがまとめ役の隊長、同じく年上のロームがスーと同じく接近戦担当し、交渉も得意だったそうだ。
 そこへ他の傭兵小隊から、索敵範囲外からの狙撃を受け、全滅寸前という連絡が入る。しかも、敵は強力な火器を使用しているとの事だった。
『狙撃!? キャシー隊長は狙撃を最も得意としていたわ。強力な火器も、あたしに搭載されている荷電粒子砲の事を考えれば、他にもunknownが搭載していてもおかしくないかも!』
 その通信を聞いたスーが驚きの声を上げる。
 新たなunknown登場の予感に、傭兵達はスーと共に救援へ向かうのだった。


■各陣営
・北方系:ヨーロッパを中心とした入植集団。東方系と対立し、極東系とは中立。
・東方系:ロシアを中心とした入植集団。北方系・極東系と対立。
・極東系:アジアを中心とした入植集団。北方系・東方系共に中立。
※各陣営は入植地に『コミュニティ』と呼ばれる街を作り、開拓を進めている。


■入植者達
・傭兵:個人でFlamberge、ないし戦闘用に改造したZwihanderを所有し、小隊が配属されないような入植地を有償で警備する。また、腕の立つ傭兵は自分を各陣営に売り込み、小隊へ編成されている事もある。傭兵は対立・中立関係なく、どの陣営にもいる。
・入植者:基本的に民間人。入植の為に地球から来て間もない者もいれば、入植が始まって23年が経っており、火星生まれ・育ちの2世代目も登場している。14歳以上であればZwihanderの基本的な操縦技術は学校で習うので、希にいきなりFlambergeに乗って敵Flambergeを撃墜してしまう逸材が現れる事もある。
・Flamberge乗り:基本的に軍人。各陣営よりFlambergeを与えられて小隊へ編成され、各入植地の警備に当たる。他の陣営の者が混ざる事は少ないが、中立の陣営であれば協力していてもおかしくない。


■Flamberge
・unknown―�U:東方系の軍が極秘に開発していたらしいFlambergeの2機目。基本性能は指揮官機を上回る。「キャシー」という名前の女性型人工知能を搭載しており、狙撃を得意とするらしいが‥‥。
 火力:A 白兵:C 防御力:B 機動性:B 索敵能力:A 故障率:C?
 武装:リニアキャノン、ブラスターライフル、胸部ヘビーガトリングガン、ハンドブラスター、ステルス?

・スー:東方系の軍が極秘に開発していたらしいFlamberge。基本性能は指揮官機を上回る。傭兵「スー」の人格が搭載され、自立稼動が可能。動力源である熱核融合炉を利用した荷電粒子エンハンサーを装備している。
 火力:A(S?) 白兵:A 防御力:B 機動性:A 索敵能力:B 故障率:D?
 武装:荷電粒子砲?、P90型サブマシンガン、ツインレーザーソード(兼シールド)、ステルス?

・アメノムラクモ:指揮官機。基本性能と汎用性は高いが、その分コストも掛かる為、原則1小隊に1機しか配備さない。
 火力:B 白兵:B 防御力:B 機動性:C 索敵能力:C 故障率:A
 武装:レーザーランチャー、レーザーソード、シールド

・ヒノカグツチ:支援機。中距離〜遠距離火力支援を主任務として開発され、射程距離と火力は抜群。その分、白兵戦能力や機動性を犠牲にしている。
 火力:A 白兵:E 防御力:C 機動性:D 索敵能力:E 故障率:D
 武装:ロングレンジレーザーキャノン×2、9連装ミサイルランチャー、連装バズーカ

・クサナギ:白兵機。白兵戦に特化した装備になっており、射撃武器はほとんど装備していない。
 火力:D 白兵:A 防御力:B 機動性:C 索敵能力:D 故障率:C
 武装:レーザーナイフ、レーザーソード、レーザーグレイブ、シールド、グレネード(榴弾)

・ムラマサ:隠密機。ステルス機能を搭載した機体で、破壊工作や潜入任務を行なう。ステルス機能を実現する為に防御力を犠牲にしている。
 火力:D 白兵:D 防御力:E 機動性:A 索敵能力:B 故障率:B
 武装:ガトリングガン、レーザーナイフ、スモークディスチャージャー(煙幕)

・フツノミタマ:偵察機。高出力センサーや通信指揮システムを搭載し、索敵を行う機体。偵察機なので戦闘力はかなり低い。
 火力:D 白兵:E 防御力:D 機動性:B 索敵能力:A 故障率:B
 武装:マシンガン、レーザーナイフ、ECM
※この他、Flambergeを3機運搬できるホバー指揮車両『アメノヌボコ』がある。


■成長傾向
 芝居・発声

●今回の参加者

 fa0225 烈飛龍(38歳・♂・虎)
 fa0378 九条・運(17歳・♂・竜)
 fa1718 緑川メグミ(24歳・♀・小鳥)
 fa2944 モヒカン(55歳・♂・熊)
 fa3623 蒼流 凪(19歳・♀・蝙蝠)
 fa3928 大空 小次郎(18歳・♂・犬)
 fa3938 月影 飛翔(20歳・♂・鴉)
 fa4548 銀城さらら(19歳・♀・豹)

●リプレイ本文


●Associating with a girl is serious?
 極東系の陣営と専属契約を結んでいる傭兵達は、職業軍人のFlamberge乗り達に比べればまだ自由は利くが、基本的には陣営の意向に従って配属・異動が決まる。
 第弐琵琶湖のコミュニティを警備するこのFlamberge小隊からも、傭兵の異動と新たな配属があった。
「ワシの名はダイン、アメノヌボコ担当だ。よろしく頼むぞ、ボーイアンガール」
「ヒノカグツチ『アグニ』のパイロット、グエン・バン・ルオンだ。よろしく頼むぜ、お若いの」
「同じくアグニのオペレーターのイセ・コウイズミ・ノブツナだ、伊勢と呼んでくれ」
『ダイン‥‥確か、北方系の退役Flamberge乗りだったわね。歴戦の傭兵グエンの名前は聞き及んでいるわよ』
 白髪髭面のマッスルおじさまダインと、浅黒い肌にバンダナを巻いたスキンヘッドの壮年の男性グエン、そして装飾付きの鉄杖を持った10代半ばの青少年イセが、集まったFlamberge小隊の傭兵達に挨拶をする。
 ダインの退役前の最終階級は大尉であり、グエンはベテランの傭兵として名が通っている。スーは面識はないが、2人の事は知っており、没落した元財閥令嬢という経歴を持ち、この手の噂には疎いナオミ・サトーに説明した。
「アメノムラクモのパイロット、ナオミですわ」
「オペレーターのゴロー・ヤマダです。お嬢様共々よろしくお願いします」
 ナオミは極めて自己中心的性格なので、「そんな事、知っていますわ」と澄まし顔。ゴローと自己紹介をする。
 尚、イセ達はカジュアルウェアだが、ナオミは普段着のイブニングドレス、ゴローは燕尾服という恐ろしい感覚でその場にいる。
「クサナギのパイロット兼メカニックのカズマ・ミカゲだ、よろしくな。その錫杖、何か格闘技でもやるのかい?」
「本業はコッチなんだが、まあ俺も兵法者だ。一応銃撃砲撃戦も大丈夫だ。ヨロシクなオッサン!」
「クサナギのオペレーター、アイよ」
 カズマが手を差し伸べながらイセの持つ錫杖を見遣る。するとイセは嬉しそうに応えた。彼は火星生れの火星育ちながら、コミュニティで実践武術としての面を残した正統な新陰流を学んだという。しかし、事情により予定されていた正規の人員が派遣できなくなったので、代役オペレーターとして派遣されたのだ。
 アイは興味ないのか、淡々と挨拶をする。
「そちらのガールは? 隊員ではないようだが」
『スーよ。“Alice・quartet”小隊の1人だけど、今はFlambergeになっちゃったからこの小隊に身を寄せてるの』
「Flambergeになった? ガール、済まないが詳しく聞かせてくれないか?」
 Alice・quartetの名前を聞くと、歴戦の傭兵グエンも驚きを隠せない。彼もAlice・quartetの撃墜数といった戦果、そして全滅した事を知っているからだ。
 そこは隊長。ダインは冷静に事の顛末を詳しく聞き始める。
 ちなみに、ダインやグエンがスーの事を少女と認識しているように、彼女は機体から自分本来の姿をホログラフィー投影していた。前回の戦闘で目覚めた機能だ。
 ホログラフィー投影されたスーは、赤毛の髪を肩口で切り揃え、右耳の上に髪飾りを付けた、可愛いけどちょっと気の強そうな女の子だ。右頬に逆三角形のような入れ墨があるのは、Alice・quartetのメンバーの証だという。

 スーはダイン達にAlice・quartet小隊の話をした。キャシーの狙撃の腕前は傭兵の中でもトップクラスだという。
『小隊では私とシルバが下っ端だったな〜。いっつも突撃仕掛けてマシンガンで弾ばら撒いて、囮役っていっているけど、仕留めるのはいつもキャシー隊長とかだったな〜。格好いいのよね〜、クールで。私が男の子だったら結婚したくなりそうなんだけど‥‥』
「スー。人間だった時の記憶は残っているのか? キャシーもunknownにされている可能性はある訳だ。戦闘の際に何か目立つ癖とかはなかったのか? あったのなら教えてくれないか?」
「皆さん、unknownは名前ではないので、今後、スーさんとunknownを区別する為に、スーさんの機体は『アマテラス』と呼称します」
 グエンは他のAlice・quartet小隊のメンバーもunknownにされている可能性を推測していた。そこへナオミが割り込むと、スーの機体をアマテラスと命名する。
「アナタ、家族とかは?」
『お姉ちゃんがいるけど‥‥私達傭兵だから、しばらく会っていないわ』
(「アナタの腹違いの姉である私は目の前にいるわ。それに気付かないなんて‥‥」)
 自分の存在に気づかない今のスーにカマを掛けたアイは、偽物と憎むようになっていた。
「女の子の中に入る‥‥か‥‥音だけ聞くとエッチだな」
『あ、あのねぇ。どうしてそういう事言うの!? 本当はすっごく恥ずかしいんだからね。キミ、女の子にモテないでしょ?』
「な、なんでそれをー!?」
 スーはブラックボックスが多いとはいえ、Flambergeである以上、最低限のメンテナンスを受けなれば機体を維持できない。本人に許可をもらってコックピットに入り、内装とコンピュータのデータを軽口を叩きながらチェックしていたイセは、スーに痛いところを突かれ意気消沈。
『メンテって身体中をまさぐられる感じがするから、今すぐ逃げ出して男の人をぶちって踏んで、ぐりぐりしてみたいんだから! でもみんなの為を思えば仕方ないって我慢してるんだからね』
「‥‥できれば、それは止めてくれないかな。ちゃんとキレイに仕上げるから」
 乾いた笑いを浮かべると、カズマはイセと一緒にパールピンクの装甲にワックス掛けをして綺麗する。
 カズマはスーを小隊の一員として接しているし、イセは早くも打ち解け始めている。

「私の調べたところ、スー様の兵装は手持ちの実弾兵器以外全て模擬兵装‥‥つまりダミーで御座いました」
「武器は偽物、動力や武器管制システムは開発途上、完成しているのは自律システムのみ‥‥つまりスーさんは何かの試作品という事かしら?」
 一方でゴローの結論に、自分の感想を素直に吐露するナオミ。
「爺、スーさんの拘束手段はないかしら?」
「私は同情と安全を天秤に掛ける気はない」
 熱核融合炉の搭載など、自律させるにはあまりに脅威となる要素がアマテラスには多いので、安全にこだわるナオミがゴローに打診すると、アイが万一の事を考え、スーのFlamberge制御用OSにフリーズプログラムを何重にもカモフラージュして潜り込ませた事を告げた。
「試作型の自律兵器‥‥武器は全て偽物だけど処分するに越した事ないわ」
「スー様には申し訳ないのですが‥‥」
 スーの熱核融合炉はヘリウム系なので放射能汚染の心配は薄い、と判断を下したアイは、unknownという存在自体を闇に葬る事を2人に進言する。もっともだと頷くゴローだった。


●An once friend
「こちら救援信号を受信したアメノヌボコだ。何があったのかできる限りでいい、報せてくれ」
 ホバー指揮車両で、スーの件について、グエンが聞き出したキャシーの個人戦術や嗜好、些細な癖といった情報を交換しあっていたダインの元へ、他のFlamberge小隊から、索敵範囲外からの狙撃を受け、全滅寸前という連絡が入った。
 生存者の話では、敵はFlambergeを一撃で貫通する強力な火器を使用しているとの事だった。
「今から生存者の救援に向かう!」
 ただちに出撃するダイン達。

『狙撃!? キャシー隊長は狙撃を最も得意としていたわ。強力な火器も、私に搭載されている荷電粒子砲の事を考えれば、他にもunknownが搭載していてもおかしくないかも!』
「破壊力だけ見れば、アグニのロングレンジレーザーキャノンも負けちゃいないぜ?」
「まだ、unknownの仕業と断定できた訳じゃないし、ともかく情報を集めなければ動きようがないからな。襲撃を受けたという小隊から可能な限りの情報を仕入れてくれ。どんな些細な事でも良い。必要か必要でないかは俺の方で判断するからな」
 アメノヌボコの後に付いていきながら、悲愴めいた声を出すスー。イセがヒノカグツチでもスペック的には狙撃が可能な事を告げ、グエンはスーを落ち着かせると共に情報収集を優先し、今後の展開を少しでも有利にする為に動く。

 全滅した小隊は、アメノムラクモとフツノミタマが狙撃されて一撃で大破、ヒノカグツチは反撃する間もなくロングレンジレーザーキャノンを破壊され、辛うじて中破に留まったという有様だった。
「フツノミタマの策敵範囲外からの攻撃だ。割り出しはオレに任せろ」
 自機と僚機、指揮車両の取ったレーダーを始め、計機や音波・振動といったセンサーをフル稼動させ、グエンのサポートに専念するイセ。
 次の瞬間、クサナギが左腕ごとシールドを破壊されてしまう。
「左腕、及びシールド破損、交換費用別途請求」
 札束に羽が生えて飛んでいくアニメがカズマの前の画面に表示される。
「動きを止めるなよ、止まったら撃破されるぞ‥‥今回の俺の報酬は残るんだろうか」
『爺、そろそろ行きますわよ』
『お嬢様‥‥今回はスー様のようにはいかぬようです。敵の使用している兵器はレーザーではなく、高出力のビーム兵装‥‥私の見立てでは、ブラスター系かリニア系のキャノンではないかと』
 クサナギとアメノムラクモがジグザクに動き続けて囮となり、その間、ダインがアメノヌボコのセンサーで周辺環境の地形映像と数値の変化を遂次チェックし、並行して襲撃された小隊から聞き出した情報から狙撃地点を割り出す作戦に出た。
 すると、相手の動力源をスーと同じく熱核融合炉である事を前提にゴローが推測を告げる。
 リニアキャノンは和名を電磁弾体加速砲、ブラスターキャノンは熱線砲といい、共にレーザーより貫通力に優れているビーム兵器だ。だが、スーに搭載されている荷電粒子砲同様、Flambergeへの実装は未だ実現していない兵器でもある。
 ダインによって“unknown―�U”と呼称された相手の火力は強い為、カズマの目の前の罰金カウンターは鰻登りだ。
 だが、彼らの交戦によって得られる諸々の情報から割り出されるunknown−�Uの装備スペックから、ゴローの推測がにわかに現実味を帯びてくる。
 更にunknown−�Uの攻撃軌道とスーから聞いたキャシーの狙撃の癖を加味した結果、ダインは遂に狙撃地点を割り出した。
『オッサンは即座に狙って撃て!』
『OK。この際だ。収支を度外視しての大盤振る舞いをしてやろうじゃないか』
 アグニからロングレンジレーザーキャノンとミサイルランチャーの集中攻撃が開始される。
 その間、クサナギとアメノムラクモ、そしてスーの3機が接近し、3対1の白兵戦に持ち込んだ。
 unknown―�Uは金色に輝く機体だった。フォルムはスーと似ているが、キャノン砲や両手に持ったライフルと銃、胸部に付けられたヘビーガトリングガンなど、射撃専用の様相だ。
『キャシー隊長なんでしょ!? もう止めてよ! 分からないの!? 私、スーだよ!!』
 P90型サブマシンガンで弾幕を張りながら、止めに入るスー。だが、unknown―�Uは彼女の言葉には反応せず、ヘビーガトリングガンとハンドブラスターで弾幕を張り、ブラスターライフルを撃ってくる。
 アグニとクサナギの援護があっても、ナオミはピンポイントで頭部を吹き飛ばす事ができずにいた。
 こんな事が出来るのはキャシーだけだとスーは確信する。
『止める為には壊すしかないの‥‥仕方ない、か‥‥何これ!? 荷電粒子砲撃鉄起動!? 荷電粒子エンハンサー出力上昇!? 目標はunknown―�U、ロックオン。ごめん‥‥キャシー隊長」
 するとスーのバックパック部分が展開し、肩に小型の砲身が出現する。それはゴロー達が「ブラフ」と言っていた、荷電粒子砲だった。そう、スーのOSには兵装を偽装するシステムが組み込まれており、ゴロー達はまんまとそれに引っ掛かってしまったのだ。
 キャシーに謝りながらスーは荷電粒子砲を発射した。

『‥‥スー‥‥スーなの?』
『キャシー隊長!? 私だと分かってくれたの!?』
 大破したunknown―�Uから聞こえてくるか細い女性の声。それはキャシーのものだった。
 慌てて近付くスー。キャシーは辛うじて無事なリニアキャノンを外し、彼女に渡した。
『‥‥ロームには‥‥気を付けて‥‥彼女が‥‥』
 だが、全てを告げ終わらないうちに無情にもunknown―�Uは爆発する。
『キャシー隊長―――――!!』
「スー、辛いだろうけど、俺達はお前のお陰で助かったんだ。ありがとう」
『でも、Alice・quartetのメンバーはまだ2人いるんだろ? 今後同じ事になったらどうするんだ?』
『‥‥キャシー隊長の遺言通り、ロームさんを探すわ』
 慟哭するスーの肩に手を置くクサナギ。イセの質問にしゃくり上げを抑えながら応える。
「適正作戦終了時間を7分オーバー、バッテリー使用過多で罰金加算」
 アイが至って冷静に罰金カウンターをカウントし、しんみりする雰囲気に水を差した。
「爺、今日はダージリンとミルフィーユがいいわ」
「かしこまりました、お嬢様(旦那様‥‥とうとうムラクモの封印を解く時が来たかも知れません)」
 2機を後目に撤収しながらお決まりのお茶のオーダーを告げるナオミ。応えながら彼女の父の写真に向かって静かに呟くゴローだった。


●CAST
 スー
  緑川メグミ(fa1718)

 ダイン
  モヒカン(fa2944)
 グエン・バン・ルオン
  烈飛龍(fa0225)
 イセ・コウイズミ・ノブツナ
  九条・運(fa0378)

 カズマ・ミカゲ
  月影 飛翔(fa3938)
 アイ
  蒼流 凪(fa3623)

 ナオミ・サトー
  銀城さらら(fa4548)
 ゴロー・ヤマダ
  大空 小次郎(fa3928)

 キャシー
  リュシアン・リティウム(fz0025)