バレンタインドラマSPアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 菊池五郎
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 1万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 02/14〜02/18

●本文

 バレンタインデー――それは、普段なかなか言い出せない、胸の内に秘めた想いをチョコレートや品物に託して伝える、不思議と一歩踏み出す勇気が出る、なぜかときめく日。
 しかし、同時にやきもきする日でもある。

 ――あの人はチョコレートを受け取ってくれるかしら?
 ――あの子からチョコをもらえるだろうか?
 ――手袋よりマフラーの方がよかったかしら?
 ――今年もバレンタインか‥‥俺には関係ないけどね。

 様々な思惑が数日前、下手をすれば数週間前、いや一ヶ月以上前から渦巻いており、そうなるとついつい頼ってしまうのが『神様』である。

「サッカー部の先輩、女子にとても人気があります。マネージャーの私からのチョコを受け取ってもらえるか分かりません‥‥だから、先輩にチョコを受け取ってもらえるようお願いします」
「どうか、同じクラスのあの娘からチョコがもらえますように。もらえればこの際、手作りでも出来物でも構いません。どうかもらえますように!」
 という訳で、バレンタインデーが近づくにつれ、この弁天神社をお参りする若い男女の数も日に日に増えていった。
『こういう時にしかお参りに来ないなんて、日本人って本当イベント好きよね』
「まあまあ、弁財天様」
 神社の本殿で願い事を聞きながら、この神社に祀られている七福神の一神、弁財天――サラスヴァティ――はお供え物のチョコを食べながら溜息を落とした。
 神様は仙人のように霞を食べている訳ではなく、その力の源は人間達が自分を信じる心、いわゆる『信仰心』だ。お参りされればされる程、信仰心が高まり、その神様の願いを叶える力になると同時に、神格が高まる。
 しかし、弁財天程になるとこれ以上神格は上がらないので、自分が祀られている地域に御利益をもたらす為の神力として信仰心が必要なのだが、日本人は神様を信じる時にムラがあり、常に信仰心が向けられる訳ではなかった。
 弁財天をなだめるのは、相向かいに折り目正しく正座する白衣に緋袴――端的に言えば巫女装束――に身を包んだ、柔らかい春の陽差しのような笑みを湛える美女だった。
 この神社に仕える巫女で、名を天埜探女(あめのさぐめ)という。
 弁財天は人間に顕現(=変身)しない限り、一般人にその姿は見えないが、探女は顕現していない弁財天の姿を見る事の出来る、数少ない厚い信仰と裏表のない心の持ち主だった。
 神社の仕事が余程忙しくない限り、こうして弁財天のお茶の相手をするのが探女の巫女としての務めだったが、彼女はそれを務めとは思っていなかった。
『あたしは音楽や芸能の神だから、恋愛成就は苦手なのよねぇ』
 新しいチョコの封を開けて食べながら弁財天はそう漏らした。
 神様にも得手不得手がある。神社に売っているお守りの種類を見れば、その神社に祀られている神様がどの願い事が得意か分かるだろう。
 この弁財天は、お正月にカップルを別れさせた前科がある程、縁結びは苦手としていた。
『おほほほほ、相変わらず食い意地だけは張っているようですわね』
『その声は‥‥ラクシュミね』
「あらあら、吉祥天様、ようこそいらっしゃいました」
 文字通り、そこに天から美女が舞い降りてくると、弁財天はかじっていたチョコを一気に頬張り、探女は新しい湯飲みを用意して、熱いお茶を入れて彼女の前へ差し出した。
 美女は吉祥天――ラクシュミ――だ。
『何しに来たのよぉ?』
『バレンタインは、わたくしは大忙しですから、少々休憩に。それに探女の淹れるお茶は美味しいのですもの』
「お褒めに与り光栄です」
 吉祥天は美と幸福を司っており、彼女は弁財天と違い、縁結びは得意中の得意である。この時期は大忙しだった。
 弁財天が透けるような薄絹を幾重にも纏い、羽衣を羽織っているのに対し、吉祥天はノースリーブのドレスと深いスリットの入ったスカートを履き、頭には薄絹のヴェールを付けている。
『嫌味を言いに来ただけなら、そのお茶を飲んだらさっさと帰りなさいよぉ。これはあたしへのお供えだから、あげないわよ』
 神様はご神饌や神酒といったお供え物を食べる事が出来、それも信仰心として力の源となる。この神社には弁財天の意向で、『お供え物はチョコレートにするように』と張り紙がしてあった。
『あなたらしいといえばあなたらしいですが‥‥探女のお茶のお礼に、1つ、助言を差し上げますわ。バレンタインは“愛の告白”が重要なテーマの日ですの。それはチョコレートや手作りの品に限った事ではありませんわ。わたくし達は物欲を叶えるのではなく、勇気を振り絞った告白をエスコートするのが“願いを叶える”という事ですのよ』
『勇気ある告白をエスコート‥‥そういう事か!』
(「弁財天様も吉祥天様も、本当は仲がお宜しいのに‥‥」)
 「敵に塩を送る」という諺があるが、仲が悪そうに見えて、実は意外と馬が合う吉祥天と弁財天だった。
『探女』
「はい、なんでしょう?」
 吉祥天の助言から、バレンタインの恋愛成就の方法を思い付いた弁財天は、お茶を新しくしようとしていた探女に声を掛けた。
『わたし、編み物教室をしたいと思うの。場所を用意してくれないかしら?』
「それは素晴らしいお考えです。弁財天様直伝となれば、この世に1つしかない逸品が出来上がるでしょう。畏まりましたわ。神社の社殿をお使いになられるといいでしょう」
 弁財天の提案に、両手を胸の前で叩いて賛同の意を表す探女。
『探女、わたくしも手作りチョコレート教室を開きますわ。場所を提供して下さらない?』
『あんたは自分の神社でやればいいでしょ!』
「いえいえ、女神様お二人が教室を開いて下さるなんて、滅多にないありがたい事ですし、面白そうですよ。吉祥天様も畏まりましたわ」
 半ば勝負を挑まれた形になった弁財天は食って掛かるが、吉祥天は意に介さず探女に告げると、彼女はにっこりと微笑んで承るのだった。

■主要登場人物紹介■
・サラスヴァティ:外見20代後半。弁財天。神としての能力は音楽・芸能と財福で、恋愛成就は能力外らしい? 人間の美女に顕現(=変身)する事が可能。顕現とした場合、カジュアルスーツ姿を好む。
・ラクシュミ:外見20代後半。吉祥天。美と幸福の神で、恋愛成就はお手の物。サラスヴァティとは犬猿の仲だが、ケンカするほど仲がいいともいう。人間の女性に顕現すると、ドレス姿を好む。
・天埜探女:外見20歳前後。弁財天を初めとする、七福神を祀る神社の巫女。おっとりしていて穏和な性格。
※外見はあくまでイメージであり、配役はこれに沿う必要はありません。

■技術傾向■
 発声・芝居・演出

●今回の参加者

 fa0262 姉川小紅(24歳・♀・パンダ)
 fa0488 エル(16歳・♀・狸)
 fa1163 燐 ブラックフェンリル(15歳・♀・狼)
 fa1338 富垣 美恵利(20歳・♀・狐)
 fa1526 フィアリス・クリスト(20歳・♀・狼)
 fa1782 森宮・千尋(22歳・♀・狐)
 fa2554 リーベ(17歳・♀・猫)
 fa2820 瀬名 優月(19歳・♀・小鳥)

●リプレイ本文


●何やら神社の中が殺気立っています
「さて、頑張ろうかな。ラクシュミには負けられないし‥‥って、探女! どうしてこいつがあたしの目の前にいるの!?」
「探女、わたくしはチョコレート教室を所望したのですわよ? どうして目の前に編み物教室の場所があるのです?」
 神社の本殿には、何故かサラスヴァティとラクシュミが対峙していた。
 サラスヴァティは一足早い春の彩りのカジュアルスーツを纏っていた。一方、ラクシュミはそのまま舞踏会に行けそうなドレスの上にフリルをあしらった洋風のエプロンを付け、髪をまとめて三角巾で覆っている。
 そしてサラスヴァティの前には色とりどりの毛糸の入った篭が置かれたテーブルが、ラクシュミの前には調理器具が置かれたテーブルが、それぞれ相向かいに設置してあったのだ。
「うちの神社があまり広くないのはお二方ともご存じでしょう? それに弁財天様と吉祥天様のご助力があれば、誰一人恋敗れる事はないと信じておりますもの」
(「「やられた!」」)
 両手を胸の前に合わせてほにゃんと微笑みながら告げる探女。見ての通り彼女に悪意はなく、二人の女神様はとても仲が良い親友同士だと信じて疑わないからこそ、編み物教室とチョコレート教室を同じ場所で同時に開いたのだった。
 探女の屈託のない笑顔(別名:ヒーリングスマイル)に、二人の女神はすっかり毒気を抜かれてしまった。
「わたくし、この通り、不器用で困ってしまいますのよ〜。編み物教室とチョコレート教室を同時に受けられるのは、と〜っても助かりますわぁ」
「これ‥‥雑巾?」
「あらあら〜、それはマフラーですのよ」
 差し出されたそれは、ラクシュミが見ても雑巾だった。
「‥‥は!? 探女、起きないと死ぬわよ!!」
「‥‥は!? 寝てました?」
「探女は不味い料理を食べると、防衛本能が働いて眠ってしまうのよね。あなたは不器用を通り越して、女神殺し(ゴッドスレイヤー)になれるわ」
 見た目からしてボロボロで、更に何を入れたのか、一口食べたサラスヴァティが昇天しそうになり、探女が眠ってしまうような味のチョコを渡すのは、ぽやーっとした感じの箱入り娘、五十鈴だった。
「あらあら〜、わたくしったら女神様も殺せる、そんなに凄いチョコが作れたのですわね〜」
「「褒めてない、褒めてない」」
 困っている割にその物言いは呑気で、探女から口直しのお茶をもらいながら二人の女神は同時に突っ込んだ。
「わ、私は編み物教室希望ですけど‥‥両方参加出来るならチョコレート教室にも通って、一緒にラッピングしたいです‥‥」
 春を感じさせるふんわりワンピースを着た藤城 美羽(ふじしろ みわ)が、恐る恐る手を挙げた。
「この人達はいい女神達だから、食べないから大丈夫だよ!」
「め、女神ですか‥‥?」
「をほほほほ、わたくし達が美しいので、この娘ったら女神と勘違いしたのですわ、きっと」
 褐色の肌に銀色の髪をポニーテールにした美少女テスタロッサが元気よく言うと、慌ててラクシュミが彼女の口を塞いだ。首を傾げる美羽だが、緊張は先程よりはほぐれたようだ。
「わたくし達が女神という事は、探女以外の人間達には内緒ですわ」
「う、うん、分かったよ」
「ところでテスタロッサも参加するの?」
「うん! ご主人様にプレゼントしたいんだ!」
 女神に交互に訊ねられつつも、物怖じせず応えるテスタロッサ。
 ちなみに、テスタロッサは美少女だが、その正体は近所に住む飼い犬である。正月にサラスヴァティが引き起こしてしまったアクシデントを解決する為に人間に変身できる能力を与えられて以来、こうして時々人間に変身し、人間社会の事を勉強しているのだ。

「ここのところ、参拝している人が多いわね」
 若い参拝客に混じって参拝をしていたブロンドヘアの美少女シギュンは、何事かと柏手を打ちつつ耳を傾けた。
 この神社は七福神を祀っている事から、地元の神社にしては参拝客は少なくないが、それでも自分と同年代の若い参拝客の姿が目立つのは気になる。
「なるほどバレンタインが近いのね‥‥でも、渡す相手がいる訳でもないし、まして私が手作りチョコなんて‥‥」
 自分と同年代の参拝客の多い理由を知った彼女は、自分の両手を見つめて溜息をついた。
「編み物教室と手作りチョコレート教室‥‥そうだわ!」
 その時、本殿から外へ筒抜けの女神達の会話を耳にすると、脳裏にとある考えが浮かんだ。
「手編みのマフラーでも作って、バレンタインに兄貴に叩きつけてやれば、もう私の事を不器用だなんて言えなくなるはず! たとえマフラーがダメでも、手作りチョコで代用もできる! 編み物教室と手作りチョコレート教室、今から参加できますかー?」
 シギュンも本殿へと入っていった。

 かくしてサラスヴァティとラクシュミの前には、五十鈴と美羽、テスタロッサとシギュンが勢揃いした。
「むぅ、しょうがないね。今回はバレンタインだから皆の恋を成就してもらうのが一番だし、参加者の人が両方参加したいのならそうしようか。別に、ラクシュミの方が気になるとかじゃないからね! この子達の恋を成就させてあげたいだけだからね!!」
「分かっていますわ(本当は弁財天だけじゃ心配だし、力を合わせてと思い、申し出たのですけど‥‥勝負にならなくて良かったですわ)」
 受講者の顔触れに、不承不承ながら納得するサラスヴァティ。ラクシュミは苦笑しつつ、内心では安堵し、探女にウインクを贈ったのだった。


●それぞれに事情がある訳で‥‥
 ラクシュミがチョコレートの下拵えをしているうちに、サラスヴァティの編み物教室が開かれる事になった。
 先ずサラスヴァティが編み棒の使い方から説明を始め、手本を見せてゆく。
「美羽様は手慣れた手つきですね」
「じ、自分の為のマフラーなら編んだ事はあるんです。た、ただ、人にプレゼントするものとなると自信がないので‥‥今回、習いに来たのです」
 サラスヴァティと手分けしてり教えていた探女は、美羽が茶色の毛糸を選び、縄編みのマフラーを編んでいるのに気付いた。
「プレゼントは自信があっても緊張するものです。ですから、プレゼントしたい人の喜ぶ姿を思い描きながら、一編み一編み想いを込めるのですよ」
「想いを込める‥‥そう、ですね」
 探女の助言を聞いた美羽の編み方に迷いはなくなっていた。
「そういえばキミは、よく神社の境内で見掛けるよね?」
 この神社はテスタロッサのお気に入りの散歩コースで、よく来ており、時折、一心不乱にお参りしているシギュンの姿を覚えていたのだ。
「うん‥‥私、自分で言うのも何だけど不器用で、その事をいつもいつもいつもいつもロキ‥‥あ、ロキっていうのは私の兄なんだけど、ロキに指摘されててね。いつか見返してやろうと思ってるの。その為に女の子らしくなれるようにお料理をしたり、編み物したりしてるんだけど‥‥全然上達しなくて、毎日、弁財天に技芸上達祈願をしてるのよ」
(「なんて健気なの! こういう娘の祈願こそ、まさに信仰心よ!! この娘の願いは絶対に叶えてあげなくっちゃ!」)
 シギュンの身の上を聞いたサラスヴァティは、心の中で感涙を流しながら手取り足取り教えていった。

 一方、ラクシュミの手作りチョコ教室は、基本的にエプロン持参だが、シギュンのように飛び入り参加も考慮して、探女が余分に用意していた。
「高級感のあるトリュフチョコを簡単に作りますわよ。しかし、忘れてはいけない事が一つありますの。それは貴女の想いをチョコに託す事ですわ。簡単だから想いが込められていない、高級だから想いが詰まっているという事はありませんの。形より込められた想いが大事なのですよ」
「そうでしたわねぇ。わたくしったら、つい、うっかりしておりましたわ」
 ラクシュミが心構えを話すと、五十鈴は手を叩いて賛同した。
 先ずは、ラクシュミと探女が用意しておいたガナッシュを丸金口の絞り袋に詰め、シートの上に一口サイズのボールを作り冷蔵庫へ入れる。
 続いて、チョコを包丁で細かく刻み湯せんする。ここでポイントは、オリジナルにも使うので多めに湯せんする事だ。
 固めたガナッシュをチョコに潜らせパットにひいたココアやパウダーシュガーをまぶせば、トリュフの完成である。
 後は、湯せんしたチョコを型に流し固めラッピングして出来上がり。
「まあ、こんなに簡単に出来るなんて、まるで手品のようですわ〜。わたくしも、やれば出来るのですね!」
「本当ね。弁財天の御利益があったのかな?」
「チョコレートの場合、弁財天ではなく吉祥天ですわ」
 今まであれだけ苦戦していたにも関わらず、出来た五十鈴のチョコレートもシギュンのチョコレートも、見た感じ、まともだった。味見をしたが、そこそこ食べられるし、思わず自分の作ったものに感激する二人。
 ラクシュミはサラスヴァティではなく自分の御利益だという事をさり気なく突っ込んでいた。
「う、受け取ってくれると‥‥いいな」
 美羽はラッピングされたチョコに視線を落とした。
 彼女がこのチョコとマフラーを渡して告白したい相手は、一つ上の学年で、高校の時から想いを寄せているものの、勇気がなくて話をした事すらない、いつも学校の図書館にいる彼だった。彼に会いたくて図書館へ通い、姿を目で追う毎日が続いたが、偶然同じ大学に入学したのを切っ掛けに、今年のバレンタインに告白する決心をしていた。
「その想いがあれば、弁財天様も吉祥天様もあなたの背中を押してくれますよ」
 美羽の肩に手を置きながら、探女が二人の女神の御利益を謳ったのだった。


●終わりよければ全てよし
 ラクシュミは探女にティータイムの用意をさせ、シフォンショコラを振る舞って五十鈴達の恋話で盛り上がった。
「探女には大切なヒトいないの?」
「私ですか? 私は神に仕える身ですから‥‥強いて挙げれば、サラスヴァティ様ですね」
「探女はわたくしの神社に是非来て欲しいのですけどね」
「それを決めるのは探女自身だから」
 テスタロッサの何気ない質問から、女神達は探女を取り合う口論になる。ここまで女神達に愛されている探女は幸せ者だと、テスタロッサは思うのだった。

「愛の言葉はそれだけで素敵な呪文よ、がんばって!」
 手作りのチョコとマフラーを抱えた美羽達に、ラクシュミはそういって1人1人の背中をほんの少しだけ押したのだった。

「あ、あの・・・突然すいません。高校の時からずっと気になってました。今日はバレンタインだからプレゼントを用意したの。良かったらもらってくれませんか? これを機会に時々お話出来ると嬉しいです」
 美羽の告白は大学の図書館の前で、勇気を振り絞って声を掛けた。
 彼の返事はOK。自分も美羽の事が気になっており、ずっと図書館に通っていたとの事だった。
 声を掛けてくれて嬉しいと、満面の笑みを浮かべてチョコレートとマフラーを受け取った。

「どう、ロキ、これで少しは見直したかしら?」
 シギュンの手作りチョコを頬張り、「まあまあ、65点」と厳しめの採点を付けるロキ。
「65点‥‥ね。及第点ってところかしら。いいわ、次は100点を取ってあげるから、覚えておきなさいよ」
 筋金入りの不器用なシギュンのちょっと可愛い気のある、女神達にはある意味苦難の復讐計画はまだ始まったばかりだ。

「これ、あなたの為に作りましたの。お口に合うかどうか分かりませんが‥‥」
 五十鈴がチョコとマフラーを渡した相手は、同じお嬢様学校に通う憧れの先輩だった。
 彼女の不器用さを知る先輩だったが、プレゼントと手の火傷や切り傷を見て頑張りを知り、そして受け取った。想いは通じたのだ。
「女神様殺しのチョコですから、多分、美味しいですわ」

「ご主人様達にチョコとマフラーを渡したら、驚かれたよ」
「そりゃ、そうよ。犬が作ったとは思えないもの」
「仲のよろしいお二人ですし、神格は同格ですから、御利益は何倍ですよ」
 テスタロッサはサラスヴァティと探女に結果を報告しに来ていた。
「今回は引き分けのようですわね。楽しかったですから、またやりましょう」
「っていうか、あんた、何しに来たのよ!?」
「決まっていますわ、探女のお茶を飲みに来たのですわ」
「はい、ラクシュミ様」
「こんな奴に出さなくてもいいのに。今度から、探女のお茶は一杯100円取ろうかしら?」
「随分とけちくさいですわね」
「疫病神が来なくなるなら、けちくさくてもいいわ」
「ちょ!? 疫病神とは誰の事ですの!?」
「チョコも飽きたし、何か他の物欲しーい。そろそろひな祭りだから、菱餅やこんぺいとうなんかいいなー、探女、お供え物にそう書いといて」
「畏まりましたわ」
「探女、ボクにもお茶も、お代わり!」
「はい、畏まりましたわ」
「ちょっと、聞いてるの!? 疫病神とはわたくしの事ですの―――――!?」

 何だかんだと賑やかな神社なのでした。


♪今、君に送るよ 短い胸に書いた言葉を

 君の優しさに 君の想いに
 気づかなかったあの頃
 もしも戻れるなら ただ黙って抱きしめたい

 今ならわかる あの時の想い
 だから、君に送るよ 短い胸に書いた言葉を♪


●CAST
 ラクシュミ(吉祥天)‥‥森宮・千尋(fa1782)
 天埜探女(弁財天側)‥‥エル(fa0488)
 天埜探女(吉祥天側)‥‥富垣 美恵利(fa1338)
 五十鈴‥‥姉川小紅(fa0262)
 シギュン‥‥リーベ(fa2554)
 藤城 美羽‥‥瀬名 優月(fa2820)

 テスタロッサ‥‥燐 ブラックフェンリル(fa1163)

 サラスヴァティ(弁財天)/エンディングテーマ‥‥フィアリス・クリスト(fa1526)

●ピンナップ


富垣 美恵利(fa1338
PCシングルピンナップ
みなみすばる