魔弾タスラムヨーロッパ

種類 ショート
担当 菊池五郎
芸能 1Lv以上
獣人 10Lv以上
難度 難しい
報酬 102.6万円
参加人数 8人
サポート 1人
期間 10/02〜10/04

●本文

 イギリスの首都ロンドン、その閑静な郊外の一角にパブ『Gomory』がある。
 パブとは「パブリック・ハウス」の略で、イギリス国内に数万軒あるといわれている。老若男女問わずイギリスの庶民にとって、自分の家の次に馴染み深い憩いの場所だ。
「人魚の目撃情報?」
「ええ、レンスターでね」
 『Gomory』のこぢんまりとしたそう広くない店内は、まだ昼過ぎだというのに、リュシアン・リティウム(fz0025)と、彼女の幼馴染みの女性マスターしかいない。それもそのはず、入口には『CLOSES』の看板が下がっている。
 午前中、仕事が入っていたリュシアンは、終わった後『Gomory』へやってきて、いつものカウンター席に座ると、牛肉とニシンの切り身を煮込んだシチューをパイ生地で包み込んだ、ビーフ&エールパイ――ローカルメニュー(地元料理)の1つ――を食べ、遅い昼食を採っていた。
 リュシアンはイギリスを中心に活動している、ロックのヴォーカルから俳優、声優までこなすマルチタレントだ。
 女性マスターが彼女に切り出したのは、『アイルランドのレンスター地方にある湖で、人魚が目撃された』という噂だった。
「人魚の目撃情報なんて――」
「でも面白い事に、マスコミに騒がれる前にWEAが火消しに走ったのよ?」
 「昔からありますわよ」というリュシアンの言葉を、女性マスターは制した。
 人魚については今更説明する必要もないだろうが、面白い事にヨーロッパとアジア、両方で伝説が残されている。
 ヨーロッパの人魚の目撃情報は、よくジュゴンを見間違えたという話が主流だろう。
 しかし、それをWEAが噂の段階で留めようとしたのなら話は違っている。
「WEAが? まさか‥‥ナイトウォーカー?」
「人間に感染して人魚に近い姿へ変態した、という可能性はあるわ」
 もし、噂の人魚が本当にナイトウォーカーだとしたら、興味本位で見に行った人間が感染してしまう可能性もある。WEAの働き掛けは、その予防線とも考えられた。
 『Gomory』の女性マスターも獣人で、イギリス近辺のナイトウォーカーの動向やオーパーツに関する情報を集めている、獣人達の情報屋という裏の顔を持つ。
 リュシアンがまだ芸能界入りしていなかった大学生の時、『Gomory』でアルバイトをしており、女性マスターと顔馴染みだ。もっとも、『Gomory』の女性マスターは、リュシアンとそう歳は離れていない。先代のマスターである親から店と獣人達の情報屋を受け継いだのだ。
 そういう意味では、大学を卒業してから芸能界入りしたリュシアンは遅咲きと言えよう。
「それで気になって調べてみたんだけど、その人魚の目撃情報があった湖って、昔、遺跡があった場所だったっていうのよ」
「場所だった?」
「そう。元々遺跡があった場所が、地震か何かで湖になってしまった、という訳ね」
 過去形だった事に疑問を感じ、リュシアンが聞いた。
「それで、湖に沈んでしまった遺跡だけど、どうやらケルト神話関係の遺跡らしいの」
「ナイトウォーカーがいるという事は、その遺跡にオーパーツが眠っている可能性がある、といいたいのですわね」
 『経験によりオーパーツを狙って獣人が来るらしい』と学習しているナイトウォーカーも少なからずいるようだ。あくまで目安の1つに過ぎないが、調べてみる価値はあるだろう。
「光の神ルーが持っていたブリューナクに魔弾タスラム、英雄クー・フーリンが愛用していたゲイボルグ。ケトル神話系のオーパーツには射撃武器も少なくないわ。既に神話級のオーパーツを持つ“あいつ”とやり合うなら、あなたも神話級のオーパーツを手に入れないと‥‥」
「分かっていますわ! “あいつ”はお姉様の仇ですもの!! もちろん、今のわたくしでは勝ち目がない事も分かっておりますが‥‥」
 女性マスターはケルト神話に登場する射撃系の武器を挙げてゆく。リュシアンはリボルバー拳銃を愛用しているからだ。
 しかし、“あいつ”という言葉に、たおやかなリュシアンはいきり立った。
「ブリューナクに魔弾タスラム、ゲイボルグ‥‥いずれかがあればいいのですけど‥‥」
 一抹の希望を胸に、リュシアンは湖底遺跡の調査へ乗り出すのだった。


※※技術傾向※※
体力・格闘・軽業・射撃

●今回の参加者

 fa0378 九条・運(17歳・♂・竜)
 fa0847 富士川・千春(18歳・♀・蝙蝠)
 fa1294 竜華(21歳・♀・虎)
 fa1634 椚住要(25歳・♂・鴉)
 fa2830 七枷・伏姫(18歳・♀・狼)
 fa3622 DarkUnicorn(16歳・♀・一角獣)
 fa4773 スラッジ(22歳・♂・蛇)
 fa5689 幹谷 奈津美(23歳・♀・竜)

●リプレイ本文


●時代を先取り?
「湖底に沈んだ遺跡か‥‥イスやリオネスの原型か? それとも運命の悪戯の産物か? なかなか面白いな〜」
 愛車のキャンピングカーに積んであるハロゲンXXXを、湖畔に設置したキャンプへ運ぶ九条・運(fa0378)。
 イスはフランス北西部のブルターニュ半島、リオネスはイングランド島のコーンウォール州西部ペンザンス沖にかつて存在したとされる、町と島だ。イスもリオネスも伝説では沈んでしまったとされている。
「遠く離れた場所でも、交流が無くとも似たようなお伽噺や神話が生まれるからの」
「遺跡のある場所について、伝承や古い地図を探して調べてみるのもいいかもな。人が暮らし、往来があったのなら、自ずと道が出来るはずだ。水没し、それが途切れたとしても、アタリを付けるヒントにはなるだろう?」
 椚住要(fa1634)が運が運んできた毛布などを黙々と張ったキャンプへ運び入れる中、リュシアン・リティウム(fz0025)が用意した酸素ボンベ一式の使い方を確かめるDarkUnicorn(fa3622)と、新井久万莉と魚群探知機の試運転をしているスラッジ(fa4773)が応えた。
「この広い湖の湖底から遺跡を探さないといけないものね。地震か何かで湖になってしまったとしたら、過去の地質調査とか国土関係の資料とかあると参考になるかな」
 富士川・千春(fa0847)が森に囲まれた、全周6kmに渡る湖を見渡す。山間ではあるが、自然に湖が出来そうな地形ではない。地震といった自然災害で出来た、と見るべきだろう。
 スラッジや彼女が告げた資料は町へ行けば手に入るとリュシアンは踏み、この後向かうつもりだ。
「そのテの、古代の遺物ってのは、大抵水や地に埋もれたところにあるのがパターンだからねぇ」
「一人の剣術家として、神話級の武器関係のオーパーツは手に入れたいものでござるよ」
「いつかそういう武具に認められるような武術家になりたいものね」
 ウェットスーツに着替え、水中銃(スピアガン)の感触を確かめる幹谷 奈津美(fa5689)。多くの獣人がオーパーツを持っているが、七枷・伏姫(fa2830)が言うように神話にその名を刻むオーパーツを持つ獣人はほとんどいない。竜華(fa1294)もそうだが、神話級のオーパーツの使い手となる事は、剣術家や武術家にとって誉れ高き事だろう。
 もっとも、伏姫は以前、ダークサイド獣人らしき者に出し抜かれた事があるので、その分気合いの人一倍入っていた。


 湖畔にはリュシアンが用意したフィッシングボートが2艘浮いている。フィッシング用なのでそれ程大きくなく、半径1mの巨大なハロゲンヒーターを置くともう一杯一杯だ。
 運がハロゲンXXXを試しに付けようと、ボートに積んである発電器を動かすと、祭りの時の屋台の後ろで聞こえる音がする。湖は静寂に包まれてさざ波の音しかしないので、より五月蠅く聞こえる。
 伏姫がホットの缶コーヒーや紅茶を入れたポットを用意している間に、女性陣はウェットスーツに着替え終えていた。
「リュシアンさんが用意してくれたウェットスーツのサイズはぴったりのようね」
「サイズはぴったりだけど‥‥胸が苦しいのよねぇ。もうワンサイズ、上にすればよかったかしら?」
「露出の高い水着じゃないのは残念だと思ったが、今日から考えを改めるよ! ウェットスーツは守る物じゃない! 攻める物なんだよ!」
「むむむ‥‥やるな竜華。じゃが、時代は黒サラシにゴスロリ褌黒の、素潜りスタイルなのじゃ!」
 ウェットスーツと身体のサイズはぴったりだが、竜華の胸はパンパンに張り詰めており、今にも内側から弾けそうだ。
 竜華の胸を眼福とばかりに手を合わせて拝む運。ヒノトは紅玉の如き紅い瞳に炎をメラメラと燃え上がらせながら、素潜りスタイルで胸の前で腕を組み、仁王立ち。
「‥‥無理に対抗しなくても良いと思うが‥‥似合っていると思うぞ‥‥」
 アイルランドの10月は寒い。潜る前に風邪を引かないようにと、ヒノトに毛布を渡すスラッジ。その気遣いも嬉しいが、わずかに聞こえたぶっきらぼうな感想もヒノトには嬉しかったりする。
「今日の探索で、遺跡の場所にアタリが付けられればいいが‥‥」
「地道に魚郡探知機で湖底の地形を調べるしかないな。起伏が激しければ遺跡の可能性があるだろう」
「リュシアンさんに湖底記録機能が搭載されている魚郡探知機を用意してもらったから、今日はソナーで湖底を隈無く探す事に専念するわ」
「それに、私がいれば確認に潜らなくてもいいでしょ?」
 スラッジが要の方を向き直ると、彼と千春、久万莉は魚群探知機と睨めっこをしている。
 水が綺麗で透過度が高いとはいえ、水深15mともなれば視界は利かない。湖底に起伏を見付けると、久万莉が透過金瞳で湖水を透過し遺跡かどうか確認した。併せて千春が超音感視をエコーのように使い、材質の違いを密度で量った。


 初日の調査の結果、水深15mを越える起伏がいくつか見付かり、千春の超音感視で調べたところ、いくつか自然物としては不自然な湖底が感じられた。
 合流したリュシアンが手に入れた古い地図や聞き込んだ伝承を加味し、実際に潜って調べる候補を2、3個までに絞り込んだのだった。


●メロウ
 翌日、竜華・奈津美・リュシアンが水中銃を片手に分担された場所へ潜水する。
『半獣化しても‥‥やっぱり視界は悪いわね』
 竜華達は完全に水中へ潜ってから半獣化した。
 やがて湖底が見えてくるが、鋭敏視覚を使っても心許なく感じる。船上のモニターと有線で繋がっている水中カメラに湖底の様子を映しながら、竜華達はアタリを付けた場所を調べる。
 尚、会話はハンドサインとライトの簡易モールス信号で行われている。
『何かあるよ! 綺麗な直方体の‥‥柱のような岩だよ』
 奈津美が倒れた柱のような、切り取られたような面をした直方体の岩を見付けるが、それが1、2個転がっているだけで、遺跡らしきものはこの付近には見当たらなかった。


『先程の岩は人工物と見るべきじゃろうか?』
『自然の浸食で、希にあのような綺麗な断面のような形になるケースもあるけど、遺跡が地震か何かで湖底になったとしたら、その衝撃で砕けた一部、と見ても問題ないと思うわ』
『いよいよ、メロウの守る伝説の都も近付いてきたってところか』
 先程調べた場所より移動した後、伏姫と千春、運の3人が湖の中へダイブする。
『そういえば、人魚の獣人って会った事ないわよねぇ‥‥』
『メロウの守る伝説の都、のぉ。運にしてはロマンチックじゃな』
『俺にしてはってどういう意味だよ? 俺はいつでもロマンチストだぜ?』
 メロウとは、ケルト神話に登場する人魚の事だ。赤い色の羽で覆われた帽子を被っていて、この帽子がないと海へ戻れなくなるという。先にヒノトが言ったように、海と空との差違はあれ、日本の天女の羽衣伝説と似ている。
 運の言葉に千春が応えたように、今のところ人魚の獣人の存在は確認されていない。WEAもそれを踏まえ、人魚の目撃情報をナイトウォーカーと判断したのだろう。
 伏姫が運を茶化すが、もちろん、警戒は怠っていない。水中を少しでも自由に動けるよう俊敏脚足を発動させているし、千春は定期的に呼吸感知を使用し、また水中は音の伝導と速度がいい事を利用して鋭敏聴覚を索敵と早期発見に使っている。
 伏姫達も竜華達と同じような柱や石壁の残骸らしきものは見付けたが、遺跡自体は発見できなかった。


 要とスラッジ、ヒノトが交代し、潜水する。3人は離れず、なるべく固まって湖底へと近付いてゆく。
『‥‥ん? 一段深くなっているところに、さっきのような岩がある』
 鋭敏視覚を使用している要が、湖底の一段深くなった溝のようなところに柱らしき岩を見付けた。しかも、1つではない。2つ、3つ‥‥いや、石造りの建物の屋根のようにも見える。
『ビンゴかも知れないの。もう少し近付いて調べてみるのじゃ』
『!? 危ない!』
 ヒノトを先頭に更に潜ろうとすると、スラッジは視界の隅に閃光を捉え、彼女を突き飛ばす。ヒノトが今いた場所を、淡く光る玉が通り抜けてゆく。
 溝の影から姿を現したのは、上半身は美しい女性、下半身は魚のような尾を持った、まさに人魚だった。ワンレングスの髪をたゆたせながら、優雅な微笑みを浮かべて近付いてくる。しかし、左手は不釣り合いな大バサミになっていた。
『‥‥確かにメロウと呼ぶに相応しいな‥‥しかも、スピアガンが効かないときている』
 ウェットスーツを着ているので、即座に獣化する事は不可能だ。しかも尾鰭がある以上、水中での戦いはメロウに分がある。
 ボートの待機組に腰に付けたロープの一方を持っていてもらい、要は強く引いてナイトウォーカーが現れた事を伝え、引き上げてもらいながら水中銃で牽制する。だが、スピアはメロウの身体に届く直前で赤い障壁のようなものに阻まれてしまった。物理攻撃に対する耐性を持っているようだ。
 その間、メロウは光の弾を大ハサミより撃ち出し、ヒノトやスラッシュのロープを切ってゆくではないか。
 スラッジは2人に上へ泳いで上がるようジェスチャーすると、ヴァイブレードナイフで腕を軽く切り、血の匂いで自分の方へ向かってくるよう誘い掛けた。果たしてメロウは手負いと思ったのか、彼目掛けてやってくる。淡い光の玉を受けつつもメロウの身体を受け止めると、ヴァイブレードナイフを突き立てた。
 堪らず離れるメロウ。彼女はロープが切れてしまい、まだ上がりきっていないヒノトに狙いを変える。俊敏脚足のバタ足より尾鰭の方が速かった。
『刀を持っているのじゃが、水中ではどうしても動きが鈍くなるからの。それに普通の武器が効かないのであれば、防御として使うしかないのじゃ!』
 大バサミを日本刀で受けながら、淡光神弾を全弾至近距離でメロウへ叩き込んだ。
「はっはっは、物質通過能力を持っておるから、水中でも地上と変らぬ速度で撃てるのじゃ! メロウのコアは、む、胸の谷間にあるのじゃ!!」
 ヒノトはメロウと組み合った勢いも利用して湖面へ浮上すると、ボートで待機している奈津美達へコアの場所を一瞬言い淀みながらも報せる。メロウもまた、竜華に負けず劣らずスタイルがよかったからだ。
 一足先にボートへ戻っていた要がブーストサウンドを爪弾いてメロウを竦ませ、その隙を衝いて毛布を被りつつ獣化した奈津美が波光神息を、運がありったけの火炎砲弾を叩き込む。
 コアを射抜いたのは、千春が与一の弓より放った一筋の矢だった。


●魔弾タスラム
「『経験によりオーパーツを狙って獣人が来るらしい』と学習しているナイトウォーカーも少なからずいるそうだから、ナイトウォーカーが潜んでいた辺りを探してみよう」
 ヒノトが負傷した要やスラッジを治癒命光で治療すると、千春の提案もあって先程の溝へ向かう。
 そこには半ば崩壊した、石造りの神殿のような遺跡が鎮座していた。ほとんどの部屋が水没していたが、祭壇のある部屋だけは不思議な事に空気があった。
「未盗掘の遺跡だけあって、当たりじゃないか?」
 運が中を見回しながら感想を漏らす。祭壇のある部屋には、刀短剣といった武器、粉薬といった調合された薬品が置かれていた。埃を拭うと、刀は黒い反り身が、短剣は施された禍々しい装飾が、新品同様に見えた。
(「流石に、あのダークサイド獣人も、湖底までは負ってこれないようじゃな」)
 以前、グウレイグのリュートというオーパーツを探索した時、別行動を取ったところをダークサイド獣人に襲われた伏姫は、轍は踏むまいとダークサイド獣人の介入を警戒していたが、ここまで姿を隠してくるのは難しいのでその心配はなさそうだ。
「その刀をもらっておきたいのじゃ。先程のメロウのように、能力かオーパーツしか効かぬナイトウォーカーが居るからのッ。歯痒い思いはしたく無いのじゃ」
「遺跡の時代からして、射撃系の武器は期待できそうにないね」
 隕鉄で作られた刀はヒノトがもらい、緑の粉薬は奈津美と千春に、赤い錠剤は運と竜華、伏姫に、ドロップは要に分けられた。また、短剣はスラッジへ渡された。
「これが‥‥魔弾タスラムですの?」
 祭壇には、ハンドボールの球より一回り小さいくらいの大きさの、奇妙な文様が描かれた弾が置かれていた。リュシアンが手にしたそれが、おそらく魔弾タスラムだ。
「えーと、リュシアンさん‥‥ナイトウォーカーの殲滅に関しては何も言わないし、お姉さんの仇を討つならそれもいい。けど‥‥先走りから感情に走るのだけは、抑えて欲しい。どんな相手か分からない相手に、構わず挑むのは半ば無謀だから。それに、私の目の黒い内は死人や怪我人なんて出したくないのもね」
「ありきたりだが、姉もそんな事は望まないと思うし、リュシアンに何かあれば大勢のファンが悲しむだろう。事情を知らない俺が言う事ではないが、せめて無理はしないようにな?」
 奈津美もスラッジも、リュシアンの詳しい事情を知る訳ではないが、復讐は感心したものではないし、またリュシアンは神話級のオーパーツを手に入れる事にこだわり過ぎているようにも感じ、そう注意した。
「私闘じゃないわよね。ダークサイド獣人が持つ強力な武具を危険だと判断すれば、倒すべき相手よね」
「復讐は己の感情の清算だからな。後の事と周りの迷惑を考えた上で好きにやれば良い。但し、俺にも手伝わせろ」
「皆さん‥‥ありがとうございますわ」
 竜華と運の頼もしい言葉に、リュシアンは魔弾タスラムを胸に抱き、手で口元を押さえて嗚咽を漏らさないようにしながら頭を下げたのだった。