残暑見舞いライヴバトルヨーロッパ
種類 |
ショート
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担当 |
菊池五郎
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芸能 |
3Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
不明
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
08/31〜09/04
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●本文
ヴァニシングプロは日本のロック系音楽プロダクションの最大手だ。ビジュアル系ロックグループ『デザイア』が所属している事から、その名を知るアーティストは多いだろう。
また、二代目社長緒方・彩音(fz1033)自らが陣頭指揮を執る神出鬼没なスカウトマンでも有名で、まだ芽が出ていないうちから厳選した若手をスカウトして育成し、デビューさせている。
彩音自身「綺麗なものが全て」と豪語しているが、それは外見だけに限った事ではない。綺麗な音楽、綺麗な歌声、ロックグループであれば綺麗なチームワーク、というように、全てにおいて綺麗さを求めており、それに伴う努力も見ている。
才能やセンスの上に胡座をかき、それを磨かないアーティストや見掛けだけのビジュアル系は、ヴァニシングプロには所属していない。ヴァニシングプロのプロデュースは、日本のロック界では若手の登竜門とされている。それだけ実力がある事をヴァニシングプロが保証するからだ。
●8月のヴァニシングプロ
「社長、お帰りなさい」
副社長のエレクトロンボルトがトレーにアイスコーヒーを載せて、社長室の扉を開け、入ってくる。
各地のライヴハウスや路上ライヴを練り歩き、日夜、新人発掘に精を出している彩音が社長のイスに座っている時間は1年の1/3もない。実質、ヴァニシングプロを取り仕切っているのは、副社長のエレクトロンボルトだ。
「ありがとう。キミの淹れるコーヒーはいつもいつも格別だな」
「ありがとうございます」
アイスコーヒーに多めにミルクを入れて味わう彩音。優男はにっこりと微笑む。何人かの女性を虜にできる、そんな微笑みだ。
エレクトロンボルトの趣味の1つにコーヒーのブレンドがあり、自社ビルにある給湯室の一角は、彼のコーヒー一式が占拠している。自社ビル内に飲み物の自販機はあるが、彼のコーヒーを所望する社員やアーティストは多い。
「スカウトの方はどうでしたか?」
「何人か目星を付けてきたから、後で連絡を取ってくれ」
「了解しました」
彩音自らが声を掛けたアーティストの連絡先が書かれたメモ帳を渡す。
彩音は不意に天井を見上げた。社長室の天井にはシーリングファンと呼ばれる、天井に取り付ける大型の扇風機が回っている。オフィスやトレーニングルームはエアコンが完備されているし、社長室にもあるが、ハードボイルド嗜好の彩音はシーリングファンがお気に入りで、冷房は来客の時以外付ける事はない。外にいる事が多いので、なまじ冷房に慣れてバテない為、という事もあるが。
「しかし、最近は殊の外ナイトウォーカーの活動が活発に感じられる。今月だけでも3回、路上ライヴで遭遇した」
先日も戦闘経験の少ない若手ロックアーティストばかり狙うナイトウォーカーを獣人達と協力して退治したが、同じような事か全国で起こっており、彩音はその他に2回、拳を交えている。
「また、ナイトウォーカー退治の依頼を出さなければならないかも知れませんね。『ライヴバトル』はどうしますか?」
「規模を縮小してやる。日本とヨーロッパになりそうだがな」
「しかし、ライヴバトルの日程と、アニメの収録の日程が被りますが?」
「ああ、アニメのオープニングテーマの作成依頼が来ていたな。私はそちらの見学に行かなければならないか‥‥」
●パブ『Gomory』
「という訳で、キミにロンドンでのライヴバトルを取り仕切ってもらいたいのだが?」
『はい、その日は丁度オフですし、構いませんわ』
彩音が電話を掛けたのは、イギリスを中心に活動している、ロックのヴォーカルから俳優、アニメの声優までこなすマルチタレント、リュシアン・リティウム(fz0025)だ。
ヴォーカルがメインなので聴く耳は肥えているし、ギターやベースといった弦楽器も嗜んでいるから、採点には打って付けだろう。
『ライヴバトルの場所ですが、今、わたくしがいるパブ『Gomory』は如何でしょう?』
「パブか。イギリス人はロックにうるさいから、いいかもしれないな」
今、リュシアンがいるのは、イギリスの首都ロンドン、その閑静な郊外の一角にあるパブ『Gomory』だ。
パブとは「パブリック・ハウス」の略で、イギリス国内に数万軒あるといわれている。老若男女問わずイギリスの庶民にとって、自分の家の次に馴染み深い憩いの場所だ。
『Gomory』のこぢんまりとしたそう広くない店内には、昼過ぎという事もあって、リュシアンと彼女の幼馴染みの女性マスターしかいない。リュシアンは今日は午前中仕事が入っていたので、終わった後『Gomory』へやってきて、カウンター席でローカルメニュー(地元料理)に舌鼓を打ちながら、仕事の後のローカルビール(地酒)を味わっていた。
「テーマは『残暑見舞い』だ。今年の夏の暑さを唄ってもいいし、暑さを吹き飛ばす内容もいいだろう。ひと夏の思い出というのもいいかも知れないな」
『組分けは4対4になれば、参加したアーティストの自由でいいのですわね。但し、組をまたいでのアーティストの貸し借りは無し、と』
「そうだ。バックバンドが足りなければ、キミが入るようにしてやってくれ」
『パブのステージは広くありませんし、備え付けはピアノしかありませんから、いっそ、アカペラというのもいいかも知れませんわ。終わりましたら、皆さんでローカルビールで乾杯したいですわね』
「ローカルビールか、いいね〜。歌い終わって火照った身体に、冷たいローカルビールをキューっと一杯! たまらないね。私もまたそちらに行きたくなってしまったよ。おっと、未成年者に飲ませてはダメだぞ?」
『もちろんですわ。来られる時にはまた日本酒をお願いしますわね。手前味噌になりますが、『Gomory』はローカルメニューも美味しいですし、未成年の方も満足して下さるでしょう。そうそう、賞品ですが‥‥』
彩音とリュシアンは、時々、横道に逸れながらもライヴバトルの打ち合わせを詰めていった。
※※成長傾向※※
容姿・発声・音楽・楽器
●リプレイ本文
●アットホームな雰囲気
「へぇ、パブの中ってこうなってるんだ。想像していたよりも意外と狭い、かな?」
「パブはビールをメインとした店ですからな。このGomoryはカウンター席や椅子席も多いですし、パブの中でも広い方ですぞ」
「日本の居酒屋と違って、混んでる時なんかは立ったままビールを飲むのも当たり前だからな」
パブ初体験の朱里 臣(fa5307)に、アレクサンドル(fa4557)と早河恭司(fa0124)が説明する。
「Gomoryの歴史は古く、1世紀以上前からありますの。昔から変わらないローカルメニューとローカルビールの味に加え、この近辺の遺跡の情報も扱っておりますわ」
「マスターも獣人だったな。音楽だけではなく、遺跡探検やオーパーツの情報も手に入るのは、獣人としては心強い」
「カウンターの奥の樽は、年季が入っているものね。ローカルメニュー、楽しみですわ♪」
「私、未成年だからローカルビールは飲めないんだよね。その分まで地元の名物料理を食べまるよー!」
『Gomory』を起点にイギリスの遺跡を探索しているリュシアン・リティウム(fz0025)の話を聞いて、年末にライブをした仁和 環(fa0597)はマスターの事を思い出した。女性マスターはリュシアンの幼馴染みで、先代よりパブを引き継いでまだ日は浅いが、先代とそれ程変わらない味付けが出来ていると、常連客の間でも早くも定評だという。
星野 宇海(fa0379)とあずさ&お兄さん(fa2132)は、ライブ後にどのローカルメニュー(地元料理)やローカルビール(地酒)を頼もうか、早くもメニューをチェックしている。
「こんな舞台で演奏出来る機会なんてそうそう無いから、頑張ろうね、葵」
「せっかくの機会だものね。あたし達が羽ばたく為の大事なステージだから、120パーセントでやろう!」
『ブリティッシュ・インヴェイジョン』という言葉がある。『イギリスの侵略』と訳されるが、イギリスのロックバンドが、ロック発祥の地アメリカで数々のヒットを放った事を指すが、イギリス人はロック好きが多く、耳が肥えている。
店内に設けられた一段高いステージは、それ程大きくはない。しかし、このステージの上で唄う事の意味を、日向葵(fa5475)と春野幸香(fa5483)は肌で感じ取っていた。
●残暑見舞いライヴバトルinパブGomory
ライブ開始は午後5時過ぎからだが、日本のロックアーティストがロックを披露するという噂は口コミで広がっており、開始前から店内はロックファンで一杯になっていた。
「お集まりの皆様に、今宵の一時をロックで楽しんで戴けるよう、心を込めて演奏致します」
タキシードを着たアレクサンドルが恭しく礼を取ると、最前列の客のジョッキを借り受け、タキシードの裾を翻すとあら不思議、ジョッキの中のビールが無くなっているではないか!? もう一度翻すとジョッキの中にビールが戻っていた。
最初の曲は『Hearts』の『夏色Days』。
タンバリンを持ったコーラスの宇海は、白いシンプルなノースリーブ&ミモレ丈ワンピース。胸元が大きく開いた、身体のラインに沿った上衣とマーメイドラインのスカートで裾はフワリと。その上に生成シャツを羽織って裾を胸下で結び、カジュアルに。白いサンダルを履き、髪は下ろして自然に流している。
ベースの臣は、白のチュニック&黒のパンツ姿で、宇海と一緒にカジュアルシックに。髪は宇海に結ってもらったポニーテール。
ドラムにはアレクサンドルが着き、エレキギターを持ったリュシアンも加わる。
ステージの真横にある控え室から、涼しげなワンピースを着て麦わら帽子を被り、サンダル履きの『夏の女の子』ルックのあずさが出てくると、アレクサンドルがすっくと立ち上がってステージへエスコート。あずさに渡したマイクは、瞬時に向日葵に変わり、店内を驚かす。
♪サンダル突っかけ 元気に駆け出そう
暑さになんて 負けてられない だってやりたいことは無限大
まずは海と山 それからどこ行こう?
考えるより まず動かなきゃ 悩む時間ももったいないから
抜けるような空 揺れる向日葵
輝くのは太陽だけじゃない
上がる気温 そしてテンション?
『そんな夏色 Shinin’days☆』
春は(Green&Pink) 夏は(Orange&Blue) そして秋は何色?
休む間もなく 色変える世界 だけどだからいいんじゃない!
見上げる夜空 上がる花火
夜風が夏の終わり告げるけど
秋が来ても 飽きは来ない
『そんな七色 Sparklin’days☆』
次の夏も また会いましょ?
『サヨナラ夏色 Shinin’days☆』
(無印:あずさ ( ):コーラス 『 』:ハモリ)♪
『夏色Days』はドラムカウントから始まる。ベースの和音を合わせ、メロディは弾むドラムが紡ぐ。
Bメロからミドルテンポからテンポアップ。ビートを利かせ、ドラムは華やかにメロディを繰り返し、盛り上げる。
あずさは手に持った向日葵を揺らしながら唄い、ステージを目一杯使って踊ったり、元気に跳ねたり、楽しげに。時には臣と、宇海と、リュシアンと背中合わせになったり、腕を組むなど、弾むリズムで元気良くシンプルなメロディながら音は豊富に見ているだけで楽しいアイドル系ポップロック。
Cメロに入ると、ドラムから紙吹雪が花火のように吹き出し、アレクサンドルがドラムスティックを振ると、紙吹雪はパッと弾け散る。
サビBはメリハリを利かせ、最後はトーンダウン。やや大人しく溜めてから歌詞の終わりで再び盛り上げ、ハモる中、宇海が軽やかにタンバリン鳴らし、あずさは可愛くポーズを取り、曲の余韻は残さず終わる。
ここで、演奏は『Hearts』から『Twilight Moon』へ交代する。
「私もお手伝いしますわね」
合わせてドラムからスピネットピアノに換える為、恭司と環、アレクサンドルの男手3人で持ち運ぶのだが‥‥小さいステージに合わせた縦型で高さのないスピネットピアノとはいえ、その重さは200kgにもなる。大の大人の男3人掛かりでも移動は大変で、宇海とリュシアンも手伝う事に。
尚、あずさは『大の大人の男』の中には入っていない。
「アレクサンドルを除いた男性陣が、明らかに女性に力負けしそうってのはどうかと思うけど」
「恭司パパさん、ライブ後、Gomoryの裏へ来て戴けるかしら?」
「しばらく芸能活動してなかったから、パパなんてすっかり忘れられてるものだと思ったのに‥‥覚えていてもらえてるのは嬉しいけどさ‥‥」
うっかり口を滑らせた恭司に、リュシアンと宇海はにっこりと女神のような笑顔を浮かべて彼をGomoryの裏へ呼び出したのだった。
「さて、次は『Twilight Moon』で『MyLove is Fire』だよ。夏の暑さと女の情念、どちらが熱いのか、その耳で存分に確かめて、あたしらを焼き付けて楽しんでよ」
愛用のエレキギターを肩から提げ、淡い紫系の長袖シャツ、その上から良い具合に色の抜けたジージャンを羽織り、紺のジーンズ履き、チームカラーである、黄昏時の陽の色のバンダナを右手首に巻いた葵が聴衆に挨拶する。
「勝っても負けても今の自分を出し切って頑張ろう、幸香」
葵はお揃いの服装の幸香に発破を掛ける。これから唄う『MyLove is Fire』は幸香が作詞と作曲を手掛けたからだ。
ベースの恭司は、長袖のTシャツに黒の革パン履き、チームカラーの黄昏時の陽の色のバンダナは、演奏の邪魔にならないよう二の腕に結んである。
ツインギターの片翼、環もカジュアルジャケット姿で、黄昏時の陽の色のバンダナで髪を結っている。
♪SummerDays
まだ夏の日は終わらない
あなたとあたし、此処にいるのなら‥‥
夏の恋なんて、ただの幻
そう思っていたのに‥‥
あの日、あの場所で、あなたと出会って、
あたしは炎の神の僕ね。
この燃え上がる想いは、もう誰にも止められないから。
だから、あなたを焼き尽くすまで傍にいるわ。
あなたを虜にするまで‥‥
もうあなた以外に何も見えないから
あなたを連れ去るわ。
あたしのこの胸の中に‥‥
こんな愛し方しかできないあたしだけど、
あなたと二人、いつまでもこのままで〜
二人、このままで♪
前奏からAメロはスローテンポで、葵の歌詞を聴かせる感じから始まる。
AメロからBメロに掛けて一気にテンポアップし、Bメロでは葵のMC通り、女の情熱を感じさせる熱いイメージ。
BメロとCメロとの間奏で若干テンポダウンし、Cメロはそのままのテンポで聞かせる。
最後のサビはテンポを出だしくらいの戻して、情感を込めて歌い上げた。
再び、『Hearts』のメンバーがステージ上に現れる。
アレクサンドルはピアノに着き、リュシアンは愛用のアコースティックギターへ換えている。
臣も椅子に掛け、ウッドベースを構えていた。
あずさは帽子を脱ぎ、少し大人しめの印象にチェンジ。
宇海は肩から4mのロングストールを掛け、『MyLove is Fire』の演奏中にお色直しを済ませている。ストールはシフォンのビーズ付きで、淡い水色〜濃紺のグラデーションの色彩だ。
♪耳元を過ぎる潮風が
夏の終わりを告げてゆく
白い砂浜に残された足跡
波が攫って消してゆく
振り返って
あなたの声が風に混じる
ただひとり
風景(けしき)だけが滲んでゆく
あの日の二人‥‥遠く‥‥遠く‥‥
『行く夏を 往く夏を
幾つ数えたら
あなたを忘れられるのでしょう』
今も思い出はキャンバスに描かれたまま
『鮮やかに 艶やかに』
「色あせず ある」
(『 』:ユニゾン 「 」:ハモリ)♪
『遠く‥‥』の曲調はバラードロック。静かなアコースティックギターのソロにピアノとベースが重なり、しっとりと歌へ。
ヴォーカルは宇海へ替わり、スローなメロディの中、コーラスのあずさと掛け合うように音色が歌声の合間を彩る。
合わせて宇海とあずさは、唄いながらストールに室内灯が当たり、ビーズが煌めくようにふわっとはためかせる。
間奏でややテンポアップ、感傷的な旋律を紡ぐ。
Bメロ後のサビで、テンポは再びスローに。あずさがストールの端を持ち、宇海がストールを手で掲げつつ、舞台端へ移動。
広がっていくストールの布地でサビの遠いイメージを視覚的に演出する。
Cメロのユニゾンでは畳み掛けるように音を重ね、歌は静かながら情熱的にコーラスも交えて華やかに。
最後は音を高く伸ばし、宇海がストールをすっと取り、ハモリながら胸に慈しむように抱きしめる終わった。
トリを飾るのは『Twilight Moon』だ。
「よかった、端じゃなくて」
お色直しで、抜けるような青さに雲を見立てた白い文様が映える、清々しい和服に着替えた環は、三味線を片手にステージの立ち位置が端っこでなく安堵の息を漏らす。
「此処のローカルビールで祝杯が挙げれたらいいよね」
「葵がさっき言ったように、勝ち負けにはこだわらず、自分の持てる力を全て出し切ろう」
ピアノに着いた幸香へ声を掛けるギターの葵。アイスメタルを構えた恭司が彼女に応えた。
♪☆揺らめく陽炎 焦げつくような太陽
手を翳し見上げた空は何色だった?
『慌しい日々に追われ 世界はモノトーン』
★変わりゆく季節 一息ついてみないかい
原色溢れる街もそろそろ見納め
『熱おびた風にもほら 夏の色がある』
『永遠は一瞬の繰返し』
★残してきた夏も ☆今へ ★未来へと続いて行く
☆移ろう光と影の舞
「アスファルトの片隅」 『青い息吹逞しく』
『思い出に残る空が 青空であればいい』
☆大地までそそぐ光 ★瞳閉じてもなお眩しく
『胸の奥浮かび上がる色達』
★太陽の光 雲の白
☆濃いビルの影 夕立の涼
「全てが世界を彩る」『Summer Color』
(『 』:ハモリ 「 」:ユニゾン ☆恭司 ★環)♪
『夏色』は明るく爽やかながらも力強さのある、やや早めのミドルテンポロックだ。
葵のギターと環の三味線のメロディーを前面にメリハリをつけて、恭司のベースも低音を支えつつ響き合いリズミカルに。
Cメロの最後の歌詞で気持ちテンポアップ、歌を豊かに伸ばしつつフェードアウト。
声の余韻が残るうちに間奏へフェードイン。印象を変え、ゆったりとした曲調へ。
夏の情景をイメージするような異国情緒ある気怠いメロディーは、ベースと三味線を響き合わせ、強く弱く、緩やかに速く、息の合った演奏を魅せる。
ピアノは高音トリルで波や空の煌きを演出する。
みんな演奏で手が塞がってる分、恭司や環、葵はステージを動き、広く観客にテクニックを魅せる。
三味線ソロの間奏を徐々に弱くし、ベースとギターで本来のメロディを被せ、ピアノで勢いつけた後、一拍無音を入れ、全楽器の音を揃えてテンポアップで最後のサビへ走り込む。
各楽器が力強く主張し、最後まで歌と楽器のハーモニーを響かせ、余韻を残しつつ終わった。
判定はリュシアンと、聴衆全員で行った。その結果、僅差で『Hearts』に軍配が上がった。
あずさは希望通りろすう゛ぁいせを賞品としてもらった他、経験の浅い葵と幸香にはリュシアンより「これからも芸能活動に励んで下さいましね」とお守りが渡された。
聴衆が帰った後、宇海達の待望のローカルメニューが振る舞われた。イギリス料理の代名詞ともいえるフィッシュ&チップスにロースト・ビーフ、キドニーパイにヨークシャー・プディング。
未成年のあずさはジュースだが、環達はローカルビールやエールで乾杯して喉を潤した。
ちなみに、Gomoryの裏へ行った恭司の姿を見た者はいない‥‥というのは冗談で、後片づけを手伝うだけで済んだとか。