年忘れライヴバトルヨーロッパ
| 種類 | ショート |
|---|---|
| 担当 | 菊池五郎 |
| 芸能 | 3Lv以上 |
| 獣人 | 1Lv以上 |
| 難度 | 普通 |
| 報酬 | 7.9万円 |
| 参加人数 | 8人 |
| サポート | 0人 |
| 期間 | 12/31〜01/04 |
●本文
●年末のヴァニシングプロヴァニシングプロは日本のロック系音楽プロダクションの最大手で、ビジュアル系ロックグループ『デザイア』が所属している事から、その名を知るアーティストは多い。また、二代目社長緒方彩音自らが陣頭指揮を執る神出鬼没なスカウトマンでも有名で、まだ芽が出ていないうちから厳選した若手をスカウトして育成し、デビューさせている。
「ああ、無理を聞いてくれて助かった、これでカウントダウンライヴが行える‥‥急なのはいつもの事？ ふふ、そうだな‥‥悪いと思っているが性分でね。今度、そちらへ行った折りには一杯奢るよ‥‥え？ ああ、もちろん、上等の旨い酒を持っていこう、じゃぁ、また年末に」
ヴァニシングプロの社長室。各地のライヴハウスや路上ライヴを練り歩き、日夜、新人発掘に精を出している彩音が社長のイスに座っている時間は１年の１／３もない。
その彩音の電話を掛ける声が聞こえる。
「お疲れさまです。ライヴバトルの場所は決まりましたか？」
彩音が電話を切るのと同時に社長室の扉が開き、副社長のエレクトロンボルトが湯気の立つカップを持って入ってくる。
丁度いいタイミングだ。
「すまないな。これでアジア・オセアニア、南北アメリカ、中東・アフリカの会場は確保できた」
彩音はエレクトロンボルトからカップを受け取る。彼女の好きな、ミルクが多めのコーヒーだ。
ヴァニシングプロは夏と冬の年２回、アジア・オセアニア、南北アメリカ、ヨーロッパ、中東・アフリカの４地域同時中継で、『ライヴバトル』を開催している。プロ・アマ問わずアーティストを募集して盛大に行うロックライヴだ。
今年の冬は大晦日の３１日に、年越しカウントダウンライヴとして開催する事が急遽決まった。
彩音は思い立ったら吉日な人なので、開催を決めてから場所の確保まであまり時間がなかったが、一度やると決めたら行動は早く、片っ端から連絡を取り、場所を確保したのだった。
●ヨーロッパ――パブ『Ｇｏｍｏｒｙ』――
「さて、と」
一通り電話を掛けまくり、メールを送りまって、『ライヴバトル』の場所を確保した緒方・彩音（fz1033）は、エレクトロンボルトの淹れてくれたコーヒーを飲み終えると、おもむろに立ち上がった。
「イギリスへ発たれますか？」
「ああ、アーティストの歌や演奏は直に聞きたいからな」
流石は彩音がヴァニプロの前社長の娘である事を隠して、ロックバンドを形成していた頃からの付き合いだ。エレクトロンボルトは彼女の次の行動を既に読んでいる。おそらく、先の先まで読んでいる。でなければ、ヴァニプロを運営する事は出来ないだろう。
「それに、私がデモテープの類をあまり好きではない事は、キミも知っているだろう」
「ええ、送られてくるプロモーションビデオやデモテープは、いつも俺が聴いていますしね」
「演出とはいえ、手を加えているかどうか、キミの方が聞き分ける耳を持っているからな」
彩音が生演奏にこだわる理由はそこだ。デジタルではなく、アナログの歌声や演奏が聴きたいのだ。
だから、各地のライヴハウスや路上ライヴを自らの足で歩いて回っている。
「それでしたら、こちらをお持ち下さい。『Ｇｏｍｏｒｙ』のローカルビールに負けない逸品ですよ」
出発準備をする彩音にエレクトロンボルトが渡したのは、日本酒だった。度数は高くないが、口当たりがまろやかで日本酒が苦手な者でもぐいぐい呑めてしまう銘酒の１つ。
ヨーロッパの年越しカウントダウンライヴは、イギリスの首都ロンドン、その郊外にあるパブ『Ｇｏｍｏｒｙ』で行われる。
パブとは「パブリック・ハウス」の略で、イギリス国内に数万軒あるといわれ、老若男女問わず庶民のイギリスの庶民にとって自分の家の次に馴染み深い憩いの場所だ。
『Ｇｏｍｏｒｙ』の店内はこぢんまりとしてそう広くないが、ローカルメニュー（地元料理）とローカルビール（地酒）で評判を呼んでいる。
彩音はイギリスを中心に活動している、ロックのヴォーカルから俳優までこなすマルチタレント、リュシアン・リティウム（fz0025）に『Ｇｏｍｏｒｙ』を紹介してもらっていた。
「イングランドの人はロックを聴く耳が肥えているからな。どんなライヴになるか、今から楽しみだ」
『Ｇｏｍｏｒｙ』の店内には小さいながらステージがあり、定期的にロックのライブが開かれていた。
『ブリティッシュ・インヴェイジョン』という音楽用語がある。直訳すると『イギリスの侵略』、１９６０年代、ロックの本場であるアメリカへイギリスのロックバンドが上陸し、次々と全米を席巻した事からこの用語が作られた。
イギリス人はロックが好きだし、ロックを聴く耳も肥えているのだ。その中で演奏するのだから、腕試しとしてももってこいといえる。
また、パブなので、ライブが終わった後、ローカルビールとローカルメニューで新年を祝う事になる。それらを楽しみながら親睦を深めるのも良いだろう。
※※成長傾向※※
容姿・発声・音楽・楽器
●リプレイ本文
●イギリスでの年越し
数代前から続くパブ『Ｇｏｍｏｒｙ』は、入り口の木製の扉からして年季が入っていた。
「歌詞と曲のイメージに合わせて次第にライトを広範囲に広げ、前にある何かを打ち壊す感じで、先にある新しい明日へと突き進むイメージをライトで演出して欲しい、と思ったが‥‥」
「パブではこれが普通ですよ。演出より、歌唱力と演奏技術のみで、お客さんを沸かすのです」
店内をざっと見渡した陸 琢磨（fa0760）は、身振り手振りで演出を説明し、溜息を付く。彼からすればいつも通りの演出プランだったが、マリーカ・フォルケン（fa2457）の言う通り、ここはパブであり、ライブハウスやコンサート会場のような派手な照明機器は一切無い。
「まさかこっちでピアノロックをお披露目する事になるとは思わなかったな。まぁ、場所が何処であれ、直に聞いてもらうチャンスは活かさないと。良いライヴになるよう気合い入れてくか」
「エスコート、宜しくね」
佐武 真人（fa4028）はピアノの調律を兼ねて一曲披露する。彼はピアノをロックの演奏に用いるミュージシャンだ。
今回、パートナーを務める橘川 円（fa4980）はチェロを担当する。彼女もまた、ストリングスをロックに取り入れてみたいと試みていた。
「海外で年越しなんて初めてだなぁ‥‥ちょっとドキドキするかも」
「ローカルビールが楽しみなのは言うまでもないが、みんなで楽しく新年を迎えたいよね」
紅 勇花（fa0034）の緊張を少しでも和らげようと、早河恭司（fa0124）が微笑み掛け、ウインクを落とす。
「活動が忙しいだろうし、気軽に遊びに来てくれ」
「ヴァニプロの方には１度挨拶に行ったっきりになっちゃったけど、これからも何かとお世話になります」
「あ、がお太郎と主がお世話になってマス」
緒方・彩音（fz1033）と恭司の挨拶が終わるのを待って、椿（fa2495）が頭を下げる。
「俺、椿さんと組むんですけど、緒方社長、アコギの演奏お願いできませんか？」
「社長サンはギターも嗜んでいたと聞いたノデ、お願いしたいのデスが‥‥イイ？」
「構わないよ。私も仁和クンの三味線ロックを直に聴きたいと思っていたところだ」
空かさず仁和 環（fa0597）が、彩音をナンパ――もとい、スカウトする。椿の後押しもあり、彩音はあっさり承諾した。
「（彼と組むと縁起が良いが‥‥今回も楽しめそうだ）じゃぁ、彩音さん、早速音合わせと行こうか」
「一緒に音を楽しむ仲間だもんネ♪ 彩音サン、友好を深めまショウ♪」
「差し当たって仁和クンの席はあそこという事で」
「す、隅っこ！？」
彩音は椿と環達『那岐』の仲間だ。２人とも呼び名が彩音さんに変わり、環が『Love is Peace』の楽譜を渡し、椿が彼女の手を取って席へエスコートしようとすると、彩音はわざわざ隅の席を指名した。
●カウントダウンライヴｉｎパブ『Ｇｏｍｏｒｙ』
Ｇｏｍｏｒｙの狭い店内は、ミュージシャン達と一緒にロックで年を越そうと、多くのロックファンが詰め掛けていた。
「こんな中でギターソロをするのか‥‥」
勇花は早くも雰囲気に呑まれつつあったが、熱狂的なロックファンの前でのライブは経験がない訳ではない。
「思うがままに想いのままに‥‥これが僕のスタイル。『響かせて』みせようじゃないか！」
愛用のギターを抱き締め、自らを奮い立たせる。
先鋒の勇花がステージへ上がると、客は盛大な拍手で出迎える。
♪
光絶えたる闇は終幕
閉ざされた絶望の夜に堕ちる‥‥
唯、哀しみに打たれ 蹲ったままで
凍てついた風に 傷痕が疼く‥‥
流れてゆく時 離れてゆく指 二度と訪れない日々
灼け付いた想いも過去となり 全ては闇の果てへ‥‥そして――
闇を裂いた光 幕開ける
満ちてゆく希望の朝に目覚め‥‥
今、喜びを求め 伏せた顔上げて
穏やかな風が 傷痕を癒す‥‥
巡り会った運命 繋ぎ合わせた指 一度きり逃せない一瞬（いま）
燃え上がる想いは未来示し 全ては光の向こうまでも――
♪
『暁 −ＡｋａｔｕｋＩ−』は年越しライヴを意識し、終わりと始まりをイメージした曲だ。
前半は物哀しい雰囲気のバラードロック調、後半は力強く明るいイメージのハードロック。
前半と後半の切り替わりでは、前半の重苦しい雰囲気を一掃するような一際激しい音を放ち、勇花はこの曲が持つ二面性を見事に演出した。
「お手をどうぞ、姫」
「ふふふ、ありがとう」
真人に優雅にエスコートされた円がステージへ上がると、客は沈黙を以て期待する。
真人の衣装はシンプルに白シャツに黒のパンツ。円は髪をアップにし、優美な黒ブラウスに白のロングスカート。
ステージ上に残るのは円のみ。彼女はチェロを構える。
真人はエスコートが終わった後、ステージを降りて備え付けのピアノへ。
ユニット『B and』の『Dear ones』の出だしは、真人のピアノの厳かな和音からスタート。
スローテンポでそれが少しずつ解けるように音が展開し、チェロのピチカートがピアノに沿うように流れていく。
メロディの１つ１つの音はおざなりにせずしっかりと。
それらがメロディアスなイントロ部分を静かに成して、一拍置いてピアノのグリッサンドでテンポアップ、ミディアムテンポへ。
イントロのメロディをチェロが今度は弓で大らかに奏で、ピアノが低音をフォロー。
重厚ながらも澄んだ音で、雄大に。
メロディが一巡すると主旋律と伴奏が入れ替わり、今度はピアノがメロディ、チェロが低音のリズムをしっかりと刻む。
最終局面はチェロが音を抑え目に伴奏を入れ、ピアノのみはっきりとイントロ部分をやや明るく展開させ、ハーモニーを美しく響かせてフェードアウト。
「タイトルに掛けて、みんな同じように見えても、どんな生き方をするかで人生は様々な色に広がっていく事を、同じメロディを繰り返し演奏する中、弾き方で表情を変える事で表現したわ」
演奏後、円が曲のコンセプトを語ると、今度は割れんばかりの拍手が起こった。
大晦日、３１日のトリを飾るのは琢磨だ。彼はイギリスでも名が知れており、客は最初から総立ちで臨む。
♪
迷いが心に燻る
在り来たりな明日しか見えない
そんな下らなさを消し去る為に
僕はキミを思い出す
何度も躓き 膝が崩れたとしても
キミを想うだけで 諦めずに前を向ける
僕はたった一人じゃないから
身体を熱い血が燃え滾る
雑音なんて FADE OUT 鼓動が世界を SHUTOUT
偽りを消し去って行く
早鐘を打つ鼓動が HEAT UP
心が身体を BREAK OUT
解き放つんだ 明日へ 明日へ 明日へ！
GO AHEAD TO NEW WORLD！
♪
『NEW WORLD』はギター、ベース、ドラムを主に使用した、最もシンプルな激しいロックだ。
１節目、２節目、３節目と段を重ねる毎に激しく、そしてスピードを少しずつ上げていき、そしてサビの４節目で一気に最高潮まで上り詰める。
ギタリストの勇花と、ベーシストの恭司に演奏してもらい、ドラムはマリーカのキーボード音源で代用する。
激しく、しかし繊細に、そして想いを込めて琢磨は歌い上げる。
「５！ ４！ ３！ ２！ １！ ‥‥A Happy New Year！！」
琢磨自身がカウントダウンの音頭を採り、新年を迎えるのだった。
カウントダウンライヴはまだまだ続く。
新年最初のアーティストはステージ上に残った恭司だ。
黒のシャツにジーンズ、アクセサリーもペンダントなどを派手にならない程度につけた衣装で、アコースティックギターを構える。
♪
自分に無いものを求めて
手当たり次第に手を伸ばす
伸ばした手は無視され宙を彷徨い行き場をなくした
そんな手を取ってくれたのは君
君は俺の足りないピースを次々に埋めて癒してくれた
時間をかけて完成したパズル
心からありがとう そしてこれからもよろしく
♪
『パズル』はアコースティックギターの弾き語りで、曲調はロックバラード。
今まで激しい曲が多かっただけに、ここで一度クールダウンの意味もあった。
続いてステージに立つマリーカの姿に、男性陣は思わず口笛を吹いたり、囃し立てる。
緋色の胸元と背中が大きく開いたドレスに銀製品で統一された装飾品。
いささかパブとは場違いな、麗しい姿だ。
♪
いつだって世界には、
辛いこととか、悲しいこととか、
冷たいこととか、汚いものとかが満ち合われている。
ただ暮らして行くにも、足を引っ張るものばかり。
ただ、前だけを見つめるなんて難しい。
死人のようにうずくまって、物知り顔でそんな文句ばかり吐いて
それで貴方は満足なの？
『今日は昨日の続きで、明日は今日の繰り返し。
昨日と今日が同じように、明日も今日と何も変わらない』
亡者の貴方にはお似合いのセリフ。
でも、あたしは真っ平ごめん！
死んでいるみたいに生きるのはもうこりごり。
下を向いていても何も見つからない。
だから、
暗い夜が明けるように、
深い雪がやがて溶けるように
前を見ていれば、何かが変わる。
思い切って、前に踏み出せば、
その一歩は小さくとも、何かが変わるから。
生きながら、死人になった貴方は
そこでお休みなさい。
あたしはあたしの道を行くよ。
立ち止まり続けた昨日に別れを告げて
♪
『Ｇｏｏｄｂｙｅ Ｕｎｄｅａｄ』はマリーカが得意とする弾き語りの応用として、キーボードを演奏しつつ、熱唱する。
叩き付けるような激しさの中にも、一抹の寂しさを滲ませる曲調は、今に物足りなさを感じた女の別れの言葉らしく聞こえた。
トリを務めるのは、『那岐＆彩音』の３人だ。
環と椿が、２人で彩音をステージ上へエスコート。
椿は持っていたアコースティックギターを彩音に渡すと、ステージを降りてピアノへ向かう。
環、椿ともお揃いのノータイ、ダークグレーのカジュアルスーツ。彩音はダークブルーのベストにミニスカート、ロンググラブ＆ロングブーツという出で立ちだ。
♪（☆椿、★環、【 】ハモリ）
【命短し恋せよEveryone】
☆「一人で平気」なんてツレナイこと言わず
【お手をどうぞ 麗しのLady】
☆とても偉大な超名言 【One for all ＆ All for one】
だけど全ては最初の一歩が肝心 小さなとこから始めよう
★そう思う俺の超迷言 【I for you ＆ You for me】
些細な幸福かき集めたら きっと世界平和も目じゃないさ
☆目には映らぬ「カタチナキモノ」
★それでも想いはそこにある
【限界などない 果ても知らない
愛は地球さえ救うんだろ？】
☆だから
【命短し恋せよEveryone】
★「一人で平気」なんてツレナイこと言わず
【お手をどうぞ 愛しのLady】
【一緒に世界平和目指し歩こう
「Good to see you」
きっとそう思える 思わせてみせるから】
♪
『Love is Peace』は、ミドルテンポのメロディアスロック。ピアノメインに、三味線のハーモニーとアコースティックギターのアクセントの、弾むような明るい旋律に、元気さの中にも調和を大切にした、環が表現力を、椿が音域を担当する、ツインヴォーカルの曲だ。
ピアノのみの短い前奏後、最初から飛ばしてハモリでスタート。
最初の英文のみのハモリは、スタッカート気味に歯切れ良く。
ピアノは低音をパーカッション的に響かせ、その上で弾むような明るい旋律を。
基本的にハモリ部分は伴奏も盛り上げ、三味線の音を響かせる。
サビパートはひたすら明るく。
後半に入ると、演奏はやや抑え、ヴォーカルを前面に出す。
間奏では、それぞれ三味線ソロとピアノソロを披露し、その後、彩音も早弾きのギターソロを魅せる。
間奏を挟んだ終盤は伸びやかに力強く。
そして最後は、ピアノと三味線の後奏でカットオフ。
既に深夜だが、観客は足踏みも交えてノリにノった。
●打ち上げ
客が帰った店内で、ローカルビールやアップルジュースで喉を潤し、フィッシュ＆チップスやキドニーパイ、ヨクシャー・プディングといったローカルメニューを摘んでお腹を満たし、唄い、演奏疲れた身体を癒す。
「新年明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」
恭司が改めて新年の挨拶をすると、琢磨や勇花が応えた。
椿と環は、ピアノソロと三味線ソロ、ギターソロのアドリブ演奏が上手くいった事に盛り上がっている。もちろん、隅で！
「ローカルビールって、こんなに美味しいものなのね。ローカルメニューも合わせて味付けしてあるみたいね」
「ふふふ。『Gｏｍｏｒｙ』のローカルビールとローカルメニューを楽しみに歌わさせて戴きましたもの」
２杯目のローカルビールを飲みきる円。ローカルメニューは素朴な味付けながら、ローカルビールと良く合い、ついつい摘んでしまう。真人も交えて飲み交わし、優雅にローカルメニューに舌鼓を打つマリーカも微笑み返す。
「橘川の場合はクラッシックの取り込みを試してるんだったか。俺はピアノもロックも『好き』で、面白いから弾くってとこから始まったが、どんなチャレンジもそれを通して伝えていくだけの根性は必要になる、お互い頑張ろうな」
「佐武クンのように楽しむ気持ちが一番大切だが、橘川クンのチェロをロックに取り入れる試みも楽しんでいると思うぞ。是非、ヴァニシングプロに来てもらいたいものだ」
三味線ロックやピアノロックが直に聴けてご満悦の彩音は、円をヴァニシングプロへスカウトした。
「僕‥‥どれくらいなんだろう、今の力‥‥」
「力とは推し量るものでも、比べるものでもない。誰かを喜ばせる、楽しませる事ができれば、それは力だろう」
思うところがあり、落ち着こうと外に出る勇花。彼女に彩音がコートを掛けながら助言をし、店内へ戻った。
