Metalslinger Girl:3ヨーロッパ

種類 ショート
担当 菊池五郎
芸能 4Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 19.8万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 02/06〜02/10

●本文

■イントロダクション
 F.C.23年(=火星開拓世紀)。テラフォーミングが成功し、人類の住まう第2の惑星となった火星へ、地球より北方系、東方系、極東系の3つの陣営に分かれて入植者を送り始めて23年。
 極冠部の永久凍土が融解して地表の大半が海と化し、アフリカ大陸程度しかない実用に足る土地を巡り、各陣営はより広大な入植地を手に入れようと開拓を押し進め、火星は各陣営の入植者達による紛争の渦中にあった。

 各陣営は『Flamberge(フランベルジェ)』と呼ばれる、全長17m前後の二足歩行人型兵器を競って配備し、紛争へ投入した。
 Flambergeは、二足歩行型開拓機『Zwihander(ツヴァイハンダー)』を戦闘用に特化した兵器だ。Zwihanderが基本的に1人乗りなのに対し、Flambergeはメインパイロットとサブパイロット兼オペレーターの2人乗りだ。
 入植者達の開拓する各地域へ配備される数は陣営にもよるが、極東系は「軍備を持たない」という建前から、陣営で傭兵と専属契約を結び、安全を確保してもらっていた。


■あらすじ
 極東系の入植者の中でも、日本の出身者が多く集まる地域グランド・トキオ。その第弐琵琶湖の近くの極東系コミュニティに駐在していた傭兵達は、謎のFlambergeに追われていた、自らを「スー」と名乗るパールピンクのFlambergeと遭遇する。彼女を追っていたFlambergeは無人機で、スーは「目が覚めたらFlambergeになっていた」と説明した。
 しかし、スーが所属していた女性だけの傭兵小隊“Alice・quartet”は、数ヶ月前に全滅していた。
 しかも、スーの機体はブラックボックスが多く、中でも今の技術ではFlambergeへの搭載が不可能と言われる『荷電粒子砲』を、実用レベルで装備していた。

 オーバーテクノロジーの固まりであるスーを仲間として迎える事に懐疑的な者もいたが、Alice・quartet小隊の隊長キャシーの人格が搭載された、新たな“unknown”が出現し、交戦した傭兵達は、スーと共にAlice・quartet小隊の全滅の謎に迫る事となる。


■今回の概要
『‥‥ロームには‥‥気を付けて‥‥彼女が‥‥』
 それがunknown―�Uに搭載された、Alice・quartet小隊の隊長キャシーの遺言となった。
 Alice・quartet小隊は、狙撃が得意なキャシー、接近戦担当のロームとスー、鉄壁を誇るシルバの4人で構成されていた。
 また、ロームは交渉も得意で、傭兵の依頼は、大抵は彼女が請け負ったという。
『あたし達は、謎の機体の奇襲を受けて全滅したの。もし、ロームさんが関わっているとしたら‥‥』
 スーはキャシーの遺言通り、ロームを探すつもりだ。宛てはないが、スー達が奇襲を受け、全滅した場所へ行けば何か手掛かりが得られるかも知れないと踏んでいた。
 そして傭兵達にも新たな任務が与えられる。
 極東系の入植地域で、所属不明のFlambergeが数回に渡って確認されており、その偵察、可能であれば排除して欲しいという内容だった。
 しかも、行き先はスーとほぼ同一。これは偶然なのだろうか‥‥?


■設定
□各陣営
・北方系:ヨーロッパを中心とした入植集団。東方系と対立し、極東系とは中立。
・東方系:ロシアを中心とした入植集団。北方系・極東系と対立。
・極東系:アジアを中心とした入植集団。北方系・東方系共に中立。
※各陣営は入植地に『コミュニティ』と呼ばれる街を作り、開拓を進めている。

□入植者達
・傭兵:個人でFlamberge、ないし戦闘用に改造したZwihanderを所有し、小隊が配属されないような入植地を有償で警備する。傭兵は対立・中立関係なく、どの陣営にもいる。
・入植者:基本的に民間人。入植の為に地球から来て間もない者もいれば、入植が始まって23年が経っており、火星生まれ・育ちの2世代目も登場している。14歳以上であればZwihanderの基本的な操縦技術は学校で習うので、希にいきなりFlambergeに乗って敵Flambergeを撃墜してしまう逸材が現れる事もある。
・Flamberge乗り:基本的に軍人。各陣営よりFlambergeを与えられて小隊へ編成され、各入植地の警備に当たる。他の陣営の者が混ざる事は少ないが、中立の陣営であれば協力していてもおかしくない。

□Flamberge
・unknown―�V:東方系の軍が極秘に開発していたらしいFlambergeの3機目。基本性能は指揮官機を上回る。「ジルバ」という傭兵の女性型人工知能を搭載しており、鉄壁の防御を誇るらしいが‥‥。
 火力:B 白兵:B 防御力:S 機動性:B 索敵能力:B 故障率:E?
 武装:フレイムガン、ナパームランチャー、ショルダータックル、ソニックシールド×2

・スー:東方系の軍が極秘に開発していたらしいFlamberge。基本性能は指揮官機を上回る。傭兵「スー」の人格が搭載され、自立稼動が可能。動力源である熱核融合炉を利用した荷電粒子エンハンサーを装備している。
 火力:A(S) 白兵:A 防御力:B 機動性:A 索敵能力:B 故障率:D?
 武装:荷電粒子砲、P90型サブマシンガン、ツインレーザーソード(兼シールド)、ステルス?

・アメノムラクモ:指揮官機。基本性能と汎用性は高いが、その分コストも掛かる為、原則1小隊に1機しか配備さない。
 火力:B 白兵:B 防御力:B 機動性:C 索敵能力:C 故障率:A
 武装:レーザーランチャー、レーザーソード、シールド

・ヒノカグツチ:支援機。中距離〜遠距離火力支援を主任務として開発され、射程距離と火力は抜群。その分、白兵戦能力や機動性を犠牲にしている。
 火力:A 白兵:E 防御力:C 機動性:D 索敵能力:E 故障率:D
 武装:ロングレンジレーザーキャノン×2、9連装ミサイルランチャー、連装バズーカ

・クサナギ:白兵機。白兵戦に特化した装備になっており、射撃武器はほとんど装備していない。
 火力:D 白兵:A 防御力:B 機動性:C 索敵能力:D 故障率:C
 武装:レーザーナイフ、レーザーソード、レーザーグレイブ、シールド、グレネード(榴弾)

・ムラマサ:隠密機。ステルス機能を搭載した機体で、破壊工作や潜入任務を行なう。ステルス機能を実現する為に防御力を犠牲にしている。
 火力:D 白兵:D 防御力:E 機動性:A 索敵能力:B 故障率:B
 武装:ガトリングガン、レーザーナイフ、スモークディスチャージャー(煙幕)

・フツノミタマ:偵察機。高出力センサーや通信指揮システムを搭載し、索敵を行う機体。偵察機なので戦闘力はかなり低い。
 火力:D 白兵:E 防御力:D 機動性:B 索敵能力:A 故障率:B
 武装:マシンガン、レーザーナイフ、ECM
※この他、Flambergeを3機運搬できるホバー指揮車両『アメノヌボコ』がある。

・換装パーツ
 ハンドブラスター(火力+1)×1
 ブラスターライフル(火力+2、機動性−1)×1
※ブラスター(熱線)はレーザー(光線)より威力を上とします。


■成長傾向
 芝居・発声

●今回の参加者

 fa1718 緑川メグミ(24歳・♀・小鳥)
 fa2832 ウォンサマー淳平(15歳・♂・猫)
 fa3255 御子神沙耶(16歳・♀・鴉)
 fa3623 蒼流 凪(19歳・♀・蝙蝠)
 fa3928 大空 小次郎(18歳・♂・犬)
 fa3938 月影 飛翔(20歳・♂・鴉)
 fa4548 銀城さらら(19歳・♀・豹)
 fa4611 ブラウネ・スターン(24歳・♀・豹)

●リプレイ本文


●Life of a mercenary
 第弐琵琶湖のコミュニティを警備するこのFlamberge小隊は、コミュニティの出入り口に一番近い一流ホテルが借り住まいとして充てられている。
 自室のベランダで日光浴をしながら読書を楽しむナオミ・サトーの元へ、ゴロー・ヤマダが恭しくティーカップを運んでくる。彼女はティーカップを受け取ると先ず香りを楽しみ、次いで味を楽しむ。
 ナオミは没落した大財閥サトーの元令嬢であり、「爺」と呼ばれるようにゴローはサトー財閥で執事をしていた老紳士だ。
 彼女達が没落前に近い水準の生活が送れるのも、ひとえに傭兵をやっているからだ。
『ナオミさん、ゴローさん、新しく配属された傭兵の方が来られました。フロントへお越し下さい』
 そこへ女性の声で通信が入る。機械的な喋り方のそれは、初めて聞く者にはコンピューターのAIが喋っているように聞こえるだろう。しかし、喋っているのはサーヤという、れっきとした人間の女の子だ。ホバー指揮車両『アメノヌボコ』のオペレーターを務めている。
 身支度を整えて2人がフロントへ降りてくると、既にサーヤの他に、クサナギのパイロット兼メカニックのカズマ・ミカゲとオペレーターのアイ、スーが揃っている。その前にいる男女2人が新しく配属された傭兵達だろう。
 ナオミはアメノムラクモのパイロット、ゴローはオペレーターだ。
 カールの効いた黒髪と過剰な装飾品を身に付けた、20歳くらいの長身の男が、ナオミ、アイ、サーヤ、スーと女性陣を見渡して口笛を吹いた。
「こちらがヒノカグツチのオペレーター、ロウ・バティットさんです」
「あなたがロウ・バティット?」
「お、俺の事を知ってるのかい? 嬉しいねぇ」
 サーヤが特に気にせずロウの紹介を続けると、隣に立っていた細身ながらセクシーな女性が名前を聞き返した。
「武勇伝には聞いているわ、下半身に節操のない男、っていうね。女傭兵の間ではちょっとした伝説よ」
「それは誤解だ。男性たるもの、全ての女性に等しく愛を注ぐのが当たり前なのさ、そうだろ?」
「お、俺に振られても‥‥」
「わたくしめも存じませぬ」
 悪戯っぽくロウの『武勇伝』を話すと、彼は肩を竦めてカズマとゴローに同意を求めるが、2人とも乗ってこない。ロウはいきなり孤立無援だ。
「こちらがヒノカグツチのパイロット、ジェスター・ウィズロウさんです」
「ジェスターでいいし、仲間からは“トリガーハッピー”って呼ばれてるわ、よろしくね」
『あなたがあの、射撃の腕で極東系の傭兵の間でベスト10に入るっていうトリガーハッピー?』
 やはりサーヤは気にも留めず、続いて淡々とジェスターの紹介に移る。彼女の二つ名に反応したのはスーだった。
「そういうあなたも見覚えがあるわね」
「そういえば、この小隊は1機だけFlambergeを出しっぱなしにしてあるし、ホテルに横付けしてるけど、パールピンクとは可愛らしいカラーリングだな。君のFlambergeかい?」
 ジェスターもスーに見覚えがあるようだ。すると、ロウが思い出したかのようにホテルの横に佇むFlambergeの事を思い出した。Flambergeは兵器なので、運用しない時はアメノヌボコへ搭載し、いつでも出撃できる体制を整えておくのが常識だからだ。
「あたしの、というか、あたし自身、というか‥‥スーよ。“Alice・quartet小隊”の1人だけど、何故かFlambergeになっちゃったからこの小隊に身を寄せてるの。よろしくね」
 スー自身、自分の今の状態をどうやって説明しようか少し考えた後、悲劇的に見えないよう明るく名乗った。
「!? スー! 生きてたのか! 会いたかったよ! ってあれ?」
 ロウが両手を広げてスーを抱き締めるが、その手は空を切ってしまう。大げさにショックを受けるロウ。
 スーは機体から自分の本来の姿をホログラフィー投影していた。建物の中まで透過するようだが、距離的に制限を受けるようで、 自分の機体をホテルに横付けしていた。
 ホログラフィー投影されたスーは、赤毛の髪を肩口で切り揃え、右耳の上に髪飾りを付けた、可愛いけどちょっと気の強そうな女の子だ。右頬に逆三角形のような入れ墨があるのは、Alice・quartetのメンバーの証だという。
『な、何するのよ!?』
「つれないなぁ、彼氏の再会の抱擁を無視するなんて」
『か、彼氏ぃ!?』
「‥‥」
 ホログラフィー投影なので抱き付かれる心配がないとはいえ、スーは動揺を隠せない。一瞬だけ、アイの表情が険しくなった事には誰も気付いていなかった。彼女はスーの腹違いの姉だが、スーはアイの事を覚えていなかった。それがここに来て更に彼氏の登場だ。アイからすれば『自分の知らないスー』を見せつけられているようなものだ。
『ロウって確か、東方系の陣営にいたFlamberge乗りでしょ!? キャシーさんに墜とされた』
「ははは、ばれたか。今はしがない傭兵さ」
 スーに自分の正体を言い当てられ、ロウは笑いながら冗談だと白状した。
「皆さんの親睦が深まったところで辞令を告げます。最近、極東系の入植地域で、所属不明のFlambergeが数回に渡って確認されています。その哨戒、可能であれば排除が今回の任務です」
『その場所って‥‥あたし達が謎の機体の奇襲を受けて全滅した地域じゃない!?』
 あくまでマイペースなサーヤ。辞令を聞き、スーは叫び声にも似た声を上げた。


●Best friend
「見た事もない計器がいくつかあるが、unknownっていっても、コックピットは普通のFlambergeとあまり変わらないな」
『うう‥‥また男の人に身体の中に入られた‥‥もう、お嫁に行けない〜』
「そん時は俺がもらってやるよ!」
『そんなのもっとイヤよ!』
 興味本位からロウが機体へ搭乗しようとすると、スー(のホログラフィー投影)は泣き始める。そのあまりに普通の女の子女の子したリアルな反応に、ロウは内心舌を巻いていた。
 スーが指摘したように、ロウは腕前はあったが、Alice・quartet小隊に墜とされた事を切っ掛けに軍を離れていた。Alice・quartet小隊の生き残りの噂を聞いてやってきたが、スーには対抗心の代わりに興味が湧き始めていた。
『一応全滅したって言われてる場所まで行ってみるけど‥‥』
「しかし、スー達が全滅した場所と同じ場所に所属不明のFlambergeか‥‥偶然にしては出来過ぎだな。まだあの場所に何かあるのかもしれない」
(『‥‥ロームには‥‥気を付けて‥‥彼女が‥‥』)
『あたし達が全滅した仕事を請けたのもロームさんだったなぁ。もし、ロームさんが関わっていたとしたら‥‥』
 的を得たカズマの言葉にスーは可愛らしく頬に手を当て、unknown―�Uから発せられたキャシーの遺言を思い出しながら応えた。自分の機体と遺体に対面するかもしれない。そんな考えを悟られないように。
「unknown―�Tがスー、unknown―�Uがキャシーさん‥‥あくまで可能性の話だけど、他にもunknownがあって、Alice・quartet小隊のジルバやロームの人格がAIとして搭載されているかもしれないわね」
 ガンナーのジェスターからすれば、同じ女傭兵のガンナーの頂点に君臨していたキャシーは憧れの人であり、さん付けで呼んでいた。
『ジルバはあたしと同い年で親友だったわ。あたし達が呆れるくらい生真面目で融通が利かない性格だったわ』
「なるほどね。逆に言えば、どんな時でも冷静に対処できるからこその鉄壁かも知れないわね。その冷静さをどう突き崩すかが攻略の鍵か‥‥」
 スーからジルバの話を聞き、ジェスターはプロファイリングをしていた。あくまで可能性の話だが、スーやキャシーの話を聞く限り、新たなunknown――unknown―�V――遭遇する可能性は極めて高い。
 残念ながら、指令のあった地域はまだ開拓途中で近くにコミュニティはない。カズマは近くにいたFlamberge小隊を探して様子を聞ければ、と、極東系の陣営に連絡を入れようとしたその時。
『全機へ警告。前方5kmの地点に、所属不明のFlambergeを発見。データベースに無い機体ですので、現時点を以て、“unknown―�V”と呼称します。各機出撃準備をして下さい』
 アメノヌボコに乗るサーヤより通信が入る。案の定、といったところだろう。
 肉眼でunknown―�Vの姿を捉える。両手に角を無数に生やした歪な菱形の盾を付けた、無骨な機体だ。スマートなアメノムラクモやクナサギより、がっしりとしたヒノカグツチに近い。
『2対の盾‥‥ジルバかも!?』
『unknown―�V、砲撃を開始』
「ナパーム弾ですか‥‥厄介ですな」
「バッテリー消耗速度が予定より15%超過、罰金発生です」
「被弾してないのに罰金!?」
 スーとサーヤから通信が入ると同時に、ゴロー達の駆るアメノムラクモの周りに火柱が無数に立ち上る。クサナギのメインスクリーンには、早くも罰金メーターが現れる。
 核融合炉で稼働しているスーと異なり、普通のFlambergeはバッテリーを動力源としている。放熱対策はきちんとされているが、耐熱温度を超えればオーバーヒート、ひいてはシステムダウンや弾薬の熱誘爆の危険性もある。
 なので、ナパーム系の武器の使用は自粛されている感があるが、相手がunknownなら話は別だ。
「消耗戦は不利よ、ここはアマテラスを盾に打って出るのみ! アナタ機械でしょ! キチンと働きなさい!」
 ナオミはスーを盾にハンドブラスターを、ジェスターはブラスターライフルを、スーはP90型サブマシンガンを撃つが、2対のシールドにことごとく防がれてしまう。
「攻撃が弾かれた! マシンガンならまだ分かるが、ブラスターも効かないのか!? 何て防御力だ」
『何て硬さなの! 本当にジルバなのかも‥‥』
「まさに鉄壁ってか。ま、それこそ落とし甲斐あるってもんじゃないの。特に女性はね」
 カズマが驚きの声を上げるとスーが親友に間違いないと察知し、ロウが茶々を入れる。
 ハンドブラスターとブラスターライフルは、共にレーザーより貫通力に優れたビーム兵器だ。だが、スーに搭載されている荷電粒子砲同様、Flambergeへの実装は未だ実現していない兵器でもある。これらはキャシーのunknown―�Uの遺品だが、それすらunknown―�Vのシールドの前には無力だった。
「はぁ‥‥皆さん、使えない方達ですわね」
「左上腕部にフレイムガン被弾、装甲炎上により違約金発生」
 自分も打つ手がないのは棚に上げ、芳しくない味方の戦果に毒を吐いて溜息を漏らすナオミ。明らかに不利な状況でも全く慌てず、札束に翼が生えるアニメを登場させるアイ。ナオミの毒吐きは気にも留めていないようだ。こういう時は何故か頼もしい。
「あの盾は目に見えない高周波振動を起こしていて、攻撃を分解したり、減退させているようだ‥‥あの盾の前にはおそらく荷電粒子砲も効かない。倒すには荷電粒子砲を零距離で撃つしかないが、スーやれるか? また君に辛い思いをさせるかもしれないけど‥‥」
『‥‥至近距離で行けるのなら‥‥』
 unknown―�Vのシールドの特性の分析し、ジェスターのジルバのプロファイリングを加味したカズマは、結果を導き出す。スーはそれに声を絞り出して応える。
「バイパス、ナンバー1、2オン、ナンバー3から10までオフ、お嬢様、オーバードライブ、始動します」
「こ、この力‥‥これがお父様の残したアメノムラクモの実力なのね」
「ジェスター、アメノムラクモを援護するぞ」
「言われなくても分かってる!」
 ゴローは危険とも言える緻密なバイパスカットによって余剰出力を生み出し、それを駆動系へ回す『オーバードライブ』を発動させる。一歩間違えばFlambergeがオーバーヒートによって自爆しかねない裏技で、卓越した戦術眼を持つ伝説のオペレーターであるゴローにしかできない荒技だ。
 ヒノカグツチが接近を援護。これにより アメノムラクモは30秒間だけだが、通常の約3倍弱のスピードで移動し、unknown―�Vを肉薄する。
『やだ! 何で!? 火器管制機能が解除できない! コックピットを狙ってる‥‥だめ! だめー!!』
 その間、後方から接近したスーが、機体に収納されていた荷電粒子砲を展開させるが、致命打を外そうとするも自分自身でも機体が言う事を利かず、撃破してしまった。
『‥‥スー‥‥ありがとう‥‥倒してくれて‥‥これで、ロームさんの言うなりから‥‥解放されました‥‥』
 爆発する寸前、unknown―�Vから最期に通信がスーに入ってきていた。

「お嬢様、天晴れで御座います」
「爺、今日は香りを楽しみたい気分だからローズヒップにして頂戴」
 ナオミの活躍に大喜びするゴローに、お決まりのオーダーをする。
「今日の夕食は豆缶です」
「今月の依頼料、厳しいな。アイ、あの罰金、何に使ってるんだ?」
 作戦終了の安堵を壊すアイの罰金宣言に、苦笑するしかないカズマ。
「ここが最後の場所ねぇ‥‥あきらかに戦闘の跡があるな」
 ロウがざっと見た限り、爆発によってえぐられたクレーターの数は3。撃破されたFlambergeのものとすれば、3機、撃破された事になる。
 Alice・quartet小隊は、傭兵にしては珍しく4機編成だ。となれば、1機は撃墜されていない計算になる。つまり、Alice・quartet小隊は1人は生き残っている事を物語っていた‥‥。


●CAST
 スー
  緑川メグミ(fa1718)

 ロウ・バティット
  ウォンサマー淳平(fa2832)
 ジェスター・ウィズロウ
  ブラウネ・スターン(fa4611)

 サーヤ
  御子神沙耶(fa3255)

 カズマ・ミカゲ
  月影 飛翔(fa3938)
 アイ
  蒼流 凪(fa3623)

 ナオミ・サトー
  銀城さらら(fa4548)
 ゴロー・ヤマダ
  大空 小次郎(fa3928)

 ジルバ
  メーフィル(fz0041)