Graduationアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 菊池五郎
芸能 3Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 難しい
報酬 なし
参加人数 8人
サポート 0人
期間 04/03〜04/07

●本文

 『Succubus(サッキュバス)』というロックグループがいる。
 ボーカル兼ベースのシュタリア。
 ドラム(場合によってはシンセサイザー)のスティア。
 ギターのティリーナという、女性3人の構成だ。

 彼女達は月と片思いや悲恋といった恋愛を題材にする歌が多く、一部に熱狂的なファン(特に女性)がいるものの、メディアに露出していない事もあり知名度は高くない。
 メディアに露出していない理由の1つが、グループ名『Succubus』――文字通り『夢魔』の如く、彼女達がライブを行う時間帯の大半は夜だ。しかも好んで路上でのゲリラライブを行っているようで、ライブの直前になってファンサイトの掲示板へ書き込むくらいしか告知していない。そうやってファン達がやきもきする姿を見る事でテンションを高める小悪魔的な性格も、やはりSuccubusなのかもしれない。
 そしてもう1つの理由が、ライブ中にも関わらず、人目をはばかる事なくメンバー同士で抱擁し合ったり、接吻を交わす、まさにSuccubusの意味するパフォーマンスだ。
 シュタリアが長女、スティアが次女、ティリーナが三女という姉妹としての位置付けが彼女達やファンの間ではあるが、血は繋がっていない。
 彼女達は姉妹であり、恋人であった。

 ――ここはSuccubusの集う、秘密の花園‥‥。Succubusの3人が学校へ行っている時間を除いて、1日の残りの大半を一緒に過ごす、3人がゆうに一緒に寝られるベッドが中央に置かれたリビングだ。
「‥‥はぁ」
 ――カタカタカタ‥‥
「‥‥はぁ」
 ――カタカタカタ‥‥
「‥‥はぁ‥‥きゃふぅ!?」
「スティア、サイトの更新作業と溜息を付くのは、どちらかに集中しなさいな」
「ぁぁ‥‥シュ、シュタリアお姉様‥‥そんなに激しくぅ‥‥む、胸をマッサージされては‥‥ど、どちらもできないわ‥‥」
 スティアはベッドの上で横になり、ノートパソコンに向かっていた。
 しばらくキーボードを叩く小気味良い音が聞こえたかと思えば、スティアの溜息が中断させる。それが交互に繰り返されていた。
 突然、背後からシュタリアの声が聞こえると同時に胸を鷲掴みにされ、リズミカルにマッサージされる。強くもなく弱くもなく、気持ちいいが少し焦れったい‥‥スティアの身体を熟知したシュタリアならではのマッサージだ。しかも、マッサージに合わせて先端をこねくり回すのだから堪らない。
 スティアのキーボードを叩く手も、溜息も止まったが、今度は吐息が熱く艶めかしいものへ変わってゆく。
 燻っていた火種が高揚へと変わり、彼女の顎が反り上がり、力無くベッドで崩れると、シュタリアはようやくマッサージから解放した。
「先日の、オンラインライブの高画質版ですの?」
「はぁ、はぁ、はぁ‥‥そうよ。ファン側のネット環境やマシンパワーにもよるけど、より多くのファンにリアルタイムでライブを見てもらうなら、動画は低画質の方がベターだから」
 満足したのか、ディスプレイを覗き込むシュタリア。スティアも呼吸を整えると、更新作業の進み具合を報告する。
 先日、Succubusの初の試みとなるオンライン回線を使ったリアルタイムライブを、ギザの砂漠にある3基のピラミッド――クフ王、カフラー王、メンカウラー王――と、そこに隣接する大スフィンクスが見える場所で行った。その時、ネット環境を考えて、オンライン上で流したライブの動画は低画質に抑えていたのだ。
 今、スティアがサイト上にアップしているのは、その高画質版と、ライブ前、参加したアーティスト達がカイロのショッピングモールで買い物をしている風景といった、秘蔵映像だ。
「丁度良いですわ、次のゲリラライブは『ファンタジーランド』で行うと告知して下さいな」
「ファンタジーランド、ですか?」
「今、卒業記念の旅行で行っている方が多いと思いますの。今回のゲリラライブは“卒業記念”をテーマに考えておりますの」
 シュタリアは下手に卒業式に赴くより、卒業記念旅行で多くの人が訪れるであろう場所に着目したようだ。
「ですが、ファンタジーランドでのゲリラライブは、難しいのではないかしら?」
 相手は天下(?)のファンタジーランドだ。スティアの疑問はもっともだろう。
「ふふふ、その点なら問題ないですわ。ティリーナを通じてヴァニシングプロから許可を戴いてきましたから」
「まぁ、シュタリアお姉様ったら!」
 シュタリアはティリーナがヴァニシングプロに所属している事を良い事に、そのコネを使って既にゲリラライブの許可をもらっていた。使えるものは理由する、この強(したた)かさもSuccubusならではと言えよう。


 その後、ファンサイトに、今度のSuccubusのゲリラライブはファンタジーランドで行うという書き込みがなされた。
 いつものように彼女達だけではなく、他のアーティストやロックバンドを誘う。呼び掛け=有志なので金銭的な報酬はないが、交通費や飲食費を始めとする必要経費はSuccubus持ちだ。また、「発声」や「音楽」センス、「楽器」演奏はもちろんの事、今回はゲリラライブをどう「演出」するか、そういった点も鍛えられるだろう。
 尚、今回のゲリラライブは場所が場所だけに、ゲリラライブ中、女性はSuccubusのメンバー達に弄られる危険性はなさそうだし、参加者も弄るのは避けた方がいいだろう。
 但し、ゲリラライブ後にファンタジーランドに併設されたホテルで開かれる打ち上げに関しては、その限りではない。


「ところで、スティア、あなたは先程からどうして溜息を付いていたのかしら?」
「それなんですが‥‥わたし、恋をしてしまったかも知れません」
「恋、ですか? 一体誰に?」
 スティアに溜息の理由を聞いたところ、意外な返答に、滅多な事では動じないシュタリアも少し驚く。
「ええ。ゲリラライブに参加している、白い髪のボーイッシュな娘に、かも、知れません」
「‥‥ああ、あの娘、ですわね」
 白い髪のボーイッシュな少女、といえば、シュタリアもすぐに思い当たる。
「スティアはああいう娘が好みでしたか」
「いえ、分かりません」
「分からない? なるほど、それで恋をしてしまったかも知れない、という訳ですわね」
 スティア自身、今胸の内に湧き起こる感情を上手く説明できないでいる。恋とは得てしてそういうものだとシュタリアは納得した。
「それが‥‥あの娘の事を思い出すと、自然と手がこう‥‥」
 スティアは恍惚とした表情で両手をワキワキさせる。
「嗚呼! あの男物のシャツを内側から押し上げる、ゴム鞠のような胸を揉みしだいて、ハスキーな声を可愛く啼かせてみたい! シュタリアお姉様、これって恋よね!?」
「‥‥い、いえ、それは恋ではないと思うけど‥‥」
 やはりスティアもSuccubusの1人だと痛感したシュタリアだった。

●今回の参加者

 fa0034 紅 勇花(17歳・♀・兎)
 fa0304 稲馬・千尋(22歳・♀・兎)
 fa0329 西村・千佳(10歳・♀・猫)
 fa0506 鳴瀬 華鳴(17歳・♀・小鳥)
 fa1236 不破響夜(18歳・♀・狼)
 fa1339 亜真音ひろみ(24歳・♀・狼)
 fa2073 MICHAEL(21歳・♀・猫)
 fa3596 Tyrantess(14歳・♀・竜)

●リプレイ本文


●夢の国へ
「ファンタジーラン♪」
 MICHAEL(fa2073)が、テレビCMで流れている『ファンタジーランド』のノリのいいテーマソングの一節を口ずさむ。
「いつ来てもワクワクするわよね〜♪ 『レールウェイ・ウィズ・レールガン』とか『ブラックマウンテン』とかに乗りたいの〜!」
「‥‥その為にこれだけやっているのだから、遊び回ってても見付かりにくいでしょ」
 MICHAELがインフォメーションマップを広げながら、乗りたいアトラクションをチェックしてゆく。隣にいる稲馬・千尋(fa0304)は相変わらず感情が読み取りにくいが、その出で立ちから遊ぶ気満々だと窺える。
「Succubusとやるのは2度目だね。前のフォルトゥナヒルでのライブは、色々と有意義だったな」
「ふふふ、ごちそうさま」
 亜真音ひろみ(fa1339)が黒い癖っ毛を掻きながら微笑むと、Succubusの長女シュタリアは惚気話に微笑み返す。
 ちひろ達4人は、ファンタジーランドの正面入口に並んでいた。春休みだけあって、開園前だというのに既に長蛇の列が出来ている。親子連れやカップルが目立つが、目を引くのは中学生や高校生といった少年や少女達のグループだ。卒業記念に来園しているのだろう。
 ところで、何故MICHAEL達が開園前から並んでいるのかというと、自分達の出番まで出来るだけアトラクションで遊びたいからだ。春休み中は来場者も増えるので、アトラクションの待ち時間も比例して増える事から、こうして朝から出向いていた。


●11:00〜マーメイド・ベイ前〜
 悪い魔女に入れ替わられて王子様と結婚されてしまう人魚姫。その事を知った人魚姫の兄弟姉妹達は、悪い魔女の魔法を解く為に、王子様が人魚姫に贈り、悪い魔女が捨ててしまったサムシングフォーを探しに珊瑚礁の迷路へと向かう。
「皆さんが『マーメイド・ベイ』をクリアーすれば、人魚姫は晴れて王子様と結ばれる。でも、人魚が人間の世界で暮らすのは、凄く勇気の要る事だと思う」
「そんな人魚姫のような、新しい生活、新しい環境へ旅立つ人達へ、私達とSuccubusからこの歌、『SAILING』を贈ろう!」
 紅 勇花(fa0034)が愛用のエレキギターを爪弾くと、通行人やイスに座って休憩していた人達が一斉に振り返る。Succubusの次女、スティアが紡ぐキーボードの軽快な前奏に合わせて、不破響夜(fa1236)が『SAILING』を簡単に説明すると、上着と巻きスカートを脱ぎ捨て、ベストとショートパンツ姿で歌い始める。


 暁の風の導くままに 水平線へと滑り出す
 目指す先は遥か‥‥幼き日々のIdeal Masterpiece

 空を過ぎる渡り鳥 巡る時の交差点(クロスロード)
 長い長い、旅路の予感‥‥只、未来夢見て‥‥!

 Sailin’away!For the future dreams!
 別離の言葉は再会の誓い
 Sailin’away!For the brilliant dreams!
 誰にも負けない「僕」に、きっとなるから‥‥


 『SAILING』は旅立ちをイメージした、軽快なライトメタルだ。
 流れるようなメロディを奏でる勇花はリズミカルな音を意識し、体現するかのように身体でも軽くリズムを刻む。
 サビの英語部分の演奏はスティアに任せ、勇花と響夜がハモる。
 実は響夜がスタンドマイクを忘れてしまい、マイクは彼女の付けているヘッドセットマイクしかないからだ。
 不意に勇花の頬が赤らむ。ヘッドセットマイクという形状上、息が掛かるくらい近付かなければならないし、彼女も響夜も胸が大きい。必然的に2人の胸が重なり合い、ゴム鞠のようにいびつに歪む。
 背後から感じるスティアの視線に、勇花の背筋に悪寒が走ったのは気のせいだろうか?
 最後は勇花も演奏に戻り、響夜が余韻を残しながら歌い終わる。

「うう〜‥‥やっぱ恥ずかしい‥‥」
「スタンドマイクを忘れてきて悪かった。でも、私は良い感じで歌えたと思うぞ?」
 演奏が終わると勇花達は速やかに撤収し、大きめの旅行鞄に楽器や器材を入れてロッカーへ預ける。未だに赤面している勇花に、響夜は謝った。
 勇花は青と黒のジャケットとシャツ、スカートという服装だ。スカートの下にスパッツを穿いているが、普段ボーイッシュな格好を好む彼女は、スカートを履き慣れておらず、それに加えて演奏中、響夜の張りのあるバストの感触に、感情の火照りが治まらないのだ。
「ウルフファング、いいね。使わせてもらっているよ」
 勇花の恥じらいはどこ吹く風、売店巡りをしながら響夜はスティアからもらったピックの調子を嬉しそうに伝える。
「‥‥何か部屋に置いておけるようなモノとか、華鳴ちゃんが好きそうなお菓子は無いかなー」
「でしたら、これなど如何かしら?」
 勇花も気を取り直して‥‥というか、先程の事は考えないように買い物に集中すると、スティアが可愛くてシュールな兎のぬいぐるみを勧めた。


●同刻〜ミラー・オブ・トゥルーラブ前〜
 鏡だらけの迷路には男性用と女性用の入り口があり、迷路内では鉢合わせしないように作られている。
 出口前でガラス越しにお互いの姿を確認出来るようになっており、マイクで相手に対する愛の言葉を言わないと、出口への扉は開かない。カップル向けのアトラクションだ。

「華鳴、あなた、遅いですよ」
「ティリーナちゃんがぁ、携帯番号教えてくれればぁ、気を揉まなくて済んだのにねぇ〜」
「華鳴に教えると、何をされるか分かったものではないですから」
「車を買ったのは良いけど、免許がなかったのにゃー」
 西村・千佳(fa0329)と鳴瀬 華鳴(fa0506)が『ミラー・オブ・トゥルーラブ』の前に来ると、既にSuccubusの三女、ティリーナ(fz1042)が準備を終えて待っていた。千佳はこの日の為にランプレッサWRXを購入したが、当然、自分では運転出来ず、華鳴に運転してきてもらったのだ。
 ティリーナも携帯電話は持ってはいるが、華鳴と千佳に番号を教えなかった為、現地集合となった。

「さーて、本日のSuccubusのゲリラライブは、ここファンタジーランドで開催にゃ♪ それじゃ、行くにゃ〜♪」
 千佳の掛け声と共に、ティリーナのギターの演奏が始まる。


 人を誘う運命は 優しく微笑まずに
 命の砂時計が 静かに時を刻む
 暗闇に囚われ 迷い彷徨っても
 大切なものだけは 手放さないで

 やがて 光が 君を照らす
 朝の来ない 夜は無い
 挫けないで きっと 乗り越えられるから

 手に握った白地図に 君の望む未来を描こう
 自分の歩いた道を 何時か誇れる時が来る
 その日まで 立ち止まらずに 往けば良い


 『未来への地図』は、出だしは静かに、少し重いイメージで始まる。
 伏し目がちの華鳴、千佳、ティリーナごとに一節ずつ唄い、最後の一節は全員で合唱。
 Bパートに入ると、ティリーナの十八番の早弾きから一気にリズムが軽快になり、華鳴も顔を上げ、足でリズムを刻み、千佳と微笑み合いながら歌を紡ぐ。
 この間、ティリーナは演奏に集中し、最後のCパートで再び合唱に戻る。華鳴りシャムスで飾ったポニーテールを振りながら、始終笑顔を振りまいて歌い終わる。

「今回はぁ、ファンタジーランドという事でぇ、思い切ってイメチェンしてみたんだけどどうかなぁ?」
「まぁ、華鳴もそういう明るい格好が出来るという事は分かりましたが」
 撤収後、華鳴は開始前に聞けなかった服の感想をティリーナに求める。今回は紺ジャケットにジーパン、薄桃色のTシャツといった服装で、髪型はポニーテールにしていた。
 ティリーナの感想は相変わらず素っ気なかったが、そっぽを向いているという事は似合っているので真っ正面から向き合えない、と好意的に解釈し、華鳴は微笑み掛けた。


●13:00〜ブラックマウンテン前〜
 『ブラックマウンテン』は真っ暗な屋内を滑走するレールコースターだ。天候に左右されない事もあり、平均待ち時間1時間という人気アトラクションだ。
「うにゃ、タイお姉ちゃんとシュタリアお姉ちゃん発見にゃ♪ にゃー、華鳴お姉ちゃん達とはぐれちゃったから、時間まで一緒にいていいにゃー?」
「もう華鳴達とはぐれたのか。まぁ、この人出だし仕方ないよなぁ。昼飯がまだなら、ゲリラライブが終わった後、遅い昼飯でも食うか?」
 千佳はTyrantess(fa3596)とシュタリアの姿を見付けると、とてとてと駆けてゆく。Tyrantessは朝は強い方ではないので、今、現地入りし、シュタリアと合流したばかりだ。変装用のサングラスとキャップを外したところで、千佳に見付かった。


 辿り着いたここは GoalじゃなくStart line
 延びる道は無数 でもカラダは一つ

 The Time has just come さあ出発の時
 どこへ行くも自由 そう選ぶのは自分

 24−7−365 さあ突っ走れ!
 立ち止まれば流されるだけ だから止まらず Keep on goin’!
 24−7−365 さあ突き進め!
 そう どこまでだって行けるさ ただ心の命じるまま


 『Nonstop』はアップテンポなパンクロック系の歌だ。
 Tyrantessは最初からガンガン飛ばしていくが、自身のギターにベースのシュタリアが難なく付いてきて、むしろ歌を優先しろと言わんばかりに主旋律をきっちり弾き上げるところは、彼女としても頼もしく、思わずニヤリと笑みが浮かぶ。
 最後は革ジャンを脱ぎ捨て、タンクトップにカットジーンズ姿でシャウトして締める。

 シュタリアとはここで分かれ、Tyrantessと千佳は遅い昼ご飯を食べに行った。
 実は迷子になったのはフリで、千佳は華鳴とティリーナを2人っきりにするつもりだった。その分、Tyrantessにべったりだった。


●15:30〜レールウェイ・ウィズ・レールガン前〜
 『レールウェイ・ウィズ・レールガン』は、参加者は宇宙鉄道と乗員乗客を守る宇宙鉄道警備隊となり、列車を襲う悪者達をレールガン(光線銃)でやっつける体感型アトラクションだ。この手のアトラクションは少年や男性に人気が高い。

「宇宙鉄道の終着駅は決まっているけど、キミ達の終着駅を決めるのはキミ達自身。そんなキミ達の『新たなる旅立ち』にこの曲を贈るわ」
 愛用のフレイムストームを肩から提げ、フェニックスのギミックを発動させるMICHAEL(fa2073)。背中から羽根のような飾り物が広がり、半獣化してちょこんと生やしたネコミミと尻尾と合わせ、“天の使いな猫”を演出する。
 レールウェイ・ウィズ・レールガンの電子音に負けないよう、景気良くチョッパーからギターソロを始める。
 元気の出るような、軽快なメロディを爪弾きつつ、女性にはウインクを贈り、バック転といったパフォーマンスを入れ、演奏後、男性に投げキッス。
 フェニックスのギミックをしまいつつ、笑顔を振りまきながら撤収するMICHAELだった。


●16:10〜トゥーンカー・クラッシュ前〜
 『トゥーンカー・クラッシュ』は、顔が書いてある擬人化した自動車のゴーカートだ。接触すると車が「やったなぁ〜」とか「危ないじゃないか!」と話す事から、子供から少年の間で人気が高い。


 思い出作りに訪れた夢の国
 朝から晩まで時を忘れてはしゃぎ回った
 今この時を忘れないように 心に強く繋ぎ止めるように

 この面子で騒げるのは卒業までだから
 せっかく出会えた仲間との思い出を忘れたくないから

 だけど‥‥
 卒業したらそれでおしまい?
 そんなことないさ
 今までの絆が消えるなんて不安にならなくていい
 きっと数年後も同じ笑顔に出会えるさ
 何年経ってもいくつになってもあたし達の仲は変わらないから

 駆け出して行こう
 新しい風の中へ

 まだ見えない絆が君と結ばれるのを待っている

 きっと数年後も同じ笑顔に出会えるさ
 何年経っても いくつになってもあたし達の仲は変わらない


 Succubusがバックバンドを務め、ひろみが『絆』の歌に専念する。
 曲調は、始めはひろみが語り掛けるようなスローテンポ。
 中盤から次第にテンポアップして行き、最後には盛り上げて終わる。


●17:00〜プリンセス・キャッスル前〜
 憧れの王子様主催の舞踏会に招待されたお姫様。着飾って舞踏会へ行こうとしたところ、意地悪な魔女によってドレスやガラスの靴、アクセサリーをお城の中に隠されてしまう。
 参加者は良い魔女、もしくは魔法使いになってお姫様の衣装を探す。『プリンセス・キャッスル』はそんなアトラクションだ。

 いつものノースリーブのへそ出しシャツはそのままに、上からGジャンを羽織って隠し、細めのストレートジーンズを履き、髪型をポニーテールにして眼鏡を外し、変装していた千尋は、その姿でプリンセス・キャッスルの周りを下見していた。


 何かが終わった気がするけれど
 それは終わりじゃなくて 始まりなの

 新しい場所に向かったとしても
 また新しい何かが生まれていくの

 だけど絆や思い出は消えないの
 貴方が忘れない限り ずっと
 そして絆と思い出は 積み重なっていく
 貴方が捨てない限り 永遠にね
 ずっと‥‥ずっと‥‥


 時間になるとGジャンを脱いで、ポニーテールを解き、眼鏡を掛け直していつもの姿に戻る。
 『〜わすれない‥‥〜』は、ファンタジーランドの中にあって喧騒の少ない、静かなこのプリンセス・キャッスルの雰囲気に合った、ゆっくりで優しい歌だ。
 千尋は事前に主旋律として電子音で弾いて録音しておき、それにキーボードのピアノ演奏と合わせて朗々と歌う。
 駆け付けた華鳴達もバックコーラスを務め、最後はSuccubusの3人を含めたゲリラライブに参加したアーティスト全員の合唱となった。